温室効果ガス
温室効果ガス(おんしつこうかガス、英: greenhouse gas[1]、GHG)とは、大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体の総称である。対流圏オゾン、二酸化炭素、メタンなどが該当する。近年、大気中の濃度を増しているものもあり、地球温暖化の主な原因とされている。
概要
京都議定書における排出量削減対象となっていて、環境省において年間排出量などが把握されている物質としては、二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4)、亜酸化窒素(N2O、=一酸化二窒素)、ハイドロフルオロカーボン類 (HFCs)、パーフルオロカーボン類 (PFCs)、六フッ化硫黄 (SF6) の6種類がある。
最新のIPCC第4次評価報告書では、人為的に排出されている温室効果ガスの中では二酸化炭素の影響量が最も大きいと見積もられている(地球温暖化の原因を参照)。従って、その場合に温暖化防止に向けての適切な対応が電力消費を抑えることであるのは明白なのである。これに対する懐疑論も見られるが、多くは反論されている。
水蒸気も温室効果を有するものの、蒸発と降雨を通じて、熱を宇宙空間へ向かって輸送する働きも同時に有する。全体的には上記のような物質が気候変動の引き金となり、水蒸気はその効果を増幅するとされる(地球温暖化の原因#影響要因としくみを参照)。この水蒸気の働きの一部だけを捉えて温暖化に対する懐疑論を主張する者もいる(地球温暖化に対する懐疑論#赤外吸収に対する飽和および水蒸気の寄与を参照)。
地球温暖化係数
地球温暖化係数(ちきゅうおんだんかけいすう、英: global warming potential[2]、GWP)とは二酸化炭素を基準に、その気体の大気中における濃度あたりの温室効果の100年間の強さを比較して表したものである[3]。
気体名 | 地球温暖化係数 |
---|---|
二酸化炭素 | 1 |
メタン | 21 |
一酸化二窒素(亜酸化窒素) | 310 |
トリフルオロメタン | 11,700 |
ジフルオロメタン | 650 |
フルオロメタン | 150 |
1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン | 2,800 |
1,1,2,2-テトラフルオロエタン | 1,000 |
1,1,1,2-テトラフルオロエタン | 1,300 |
1,1,2-トリフルオロエタン | 300 |
1,1,1-トリフルオロエタン | 3,800 |
1,1-ジフルオロエタン | 140 |
1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン | 2,900 |
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン | 6,300 |
1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン | 560 |
1,1,1,2,3,4,4,5,5,5,-デカフルオロペンタン | 1,300 |
パーフルオロメタン | 6,500 |
パーフルオロエタン | 9,200 |
パーフルオロプロパン | 7,000 |
パーフルオロブタン | 7,000 |
パーフルオロシクロブタン | 8,700 |
パーフルオロペンタン | 7,500 |
パーフルオロヘキサン | 7,400 |
六フッ化硫黄 | 23,900 |
1,1,1,3,3 - ペンタフルオロブタン | 910 |
排出状況
世界の排出量
世界の主要国の排出量は、2006年時点で二酸化炭素に換算して約266億トンに達している[4]。2005年時点での各国の排出量は、アメリカ (22%) が一番多く、それに中国 (19%)、ロシア (5.8%)、日本 (4.7%)、インド (4.5%)、ドイツ (3.0%)、イギリス (2.2%)、カナダ (2.0%)、韓国 (1.8%)、イタリア (1.7%) と続く。
編注)2009年10月に国際エネルギー機関(IEA)が発表した統計によると、2007年には中国がアメリカを抜いて世界最大の二酸化炭素排出国になった。また日本はインドに抜かれて5位に後退した。
また国連の下部機関であるUNFCCCの集計結果が、温室効果ガスインベントリにて公表されている。
- 参考:2006年の国の二酸化炭素排出量リスト
日本の排出量
日本における温室効果ガスの排出量は、2007年度は前年度よりも2.3%増加して過去最高を記録し[5]、二酸化炭素に換算して13億7400万トンになっている[6]。これは京都議定書の基準年 (1990年)に対して8.7%の増加となっており、2008年 - 2012年の平均値として約束した-6%を達成するには現状よりも最低9.3%の削減が必要になっている[6]。世界の排出量に対しては約5%を占めている[7]。また一人あたりの排出量では2005年時点で4位である[8]。
詳細な数値は、日本国温室効果ガスインベントリにおいて公表されている。これは日本から正式に気候変動枠組条約締約国会議(UNFCCC事務局を通じて)に提出されている値である。
脚注
- ^ 字義的には「温室ガス」の意味。
- ^ 字義的には「地球温暖化(潜在)能力」を意味する。
- ^ a b 。出典:地球温暖化対策の推進に関する法律施行令(平成11年4月7日政令第143号)
- ^ 世界の二酸化炭素排出量−国別排出割合− (JCCCA)
- ^ Japan CO2 hits record, Reuters, Wed Nov 12, 2008 4:17am EST
- ^ a b 我が国の温室効果ガス排出量 (環境省)
- ^ 世界の二酸化炭素排出量−国別排出割合-(JCCCA)
- ^ 世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較
関連項目
外部リンク
- Greenhouse gas (英語) - Encyclopedia of Earth「温室効果ガス」の項目。
- 環境省; 経済産業省. “温室効果ガス排出量 - 算定・報告・公表制度について [トップページ]”. 2012年4月12日閲覧。
- 環境省; 経済産業省. “温室効果ガス排出量 - 算定・報告・公表制度について [温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル]”. 2012年4月12日閲覧。
- “温室効果ガス(GHG)プロトコル 事業者排出量算定報告基準 改訂版” (PDF). 地球産業文化研究所 (2005年3月). 2012年4月12日閲覧。