御用牙

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御用牙
ジャンル 時代劇
漫画
作者 小池一夫神田たけ志
出版社 少年画報社
掲載誌 ヤングコミック
発表期間 1970年10月 - 1976年12月
テンプレート - ノート

御用牙』(ごようきば)は、原作:小池一夫、作画:神田たけ志による日本時代劇漫画作品。『ヤングコミック』(少年画報社)連載。

概要

隠密廻りで一匹狼の同心、板見半蔵の活躍を描いた捕り物時代劇。たんなる時代劇と一線置き、ダークヒーローな趣もあり、完全無敵の存在ではなく殺陣のシーンで負けてしまう、悪を退治するのではなく相手の弱みを握って権力で己の正義を証明するという泥臭いヒーロー像がある。

物語序盤では江戸の町を舞台とし、悪党や権力を笠に着た者たちとの戦いが描かれ、その後「山流し」と呼ばれる甲府勤番勤めとなり甲府での活躍が描かれる。これまでに培った人脈を使って江戸の町奉行所勤めに復帰した半蔵は、そこで天保の改革を推進する老中水野忠邦と南町奉行であり半蔵の最大の敵となる鳥居耀蔵と対決する。鳥居にすべての仲間を殺され、自身も深く傷つきながら、巨悪を倒すためその懐に入り、鳥居の腹心となって働く半蔵は、密かに遠山景元と手を組む。遠山の協力で水野と鳥居の追い落としに成功した半蔵は、次に正体を隠して大坂の町奉行所勤めとなる。そこで新たに仲間を集め、悪党たちと戦うが、生き残るためまたもや仲間を全て失うことになる。危機を脱し、雪の降る町中を巡回していた半蔵は、刃物を持った若者に刺される。路地裏で倒れた半蔵は、生死不明となり、物語の幕は引かれる。

ラストで半蔵は人知れず死んだように描かれていたが、後に描かれた続編では助けられて一命を取り留めたことになっている。なお、作中では11代将軍・徳川家斉が隠居したことで後ろ盾を無くした水野が失脚したことになっているが、実際には天保の改革は徳川家慶が12代将軍に就任していた時期に行われたため、史実とは大幅に違っている。

登場人物

板見 半蔵(いたみ はんぞう)
北町奉行所の隠密廻り同心。奉行所仲間とは一線を画し、しばしば身分を弁えず啖呵を切るが、内容は正論であり異論を許さない。このため上役とは概ねそりが悪い。
幕閣への立場を超えた建言を理由に甲州へ左遷、それでも実力で再び南町へ返り咲く。しかし鳥居耀蔵と壮絶な対決で全てを失い、辛勝のち姓を変えて大坂東町奉行所へ渡る。
刺されて生死の境を彷徨った後は再び江戸に舞い戻り、どこにも与せず沖から大局を眺める「沖同心」として江戸市民の警護に身を投じる。
町民からは「かみそり半蔵」「そりかみ半蔵」等と呼ばれ、強面として恐れられる反面、弱者の味方として慕われており、半蔵のためなら命を捨てる覚悟のある仲間も多い。
これと見込んだ女を取り調べと称して強姦して快楽の虜とし、これを間者として各所に勢力を拡大していく。
体捨流剣術を使うが、真の実力は竹内流小具足術にあり、鎖分銅を仕込んだ「南蛮一品流鼻捻十手」、「あられ鉄拳」と呼ばれる棘のついたメリケンサックなど、多くの武器を取り回して戦う。
風呂場には多くの武器が隠されており、槍が降るなどの罠も仕組まれている。ここでイチモツを打擲し、米俵に挿入して鍛えるのが毎朝の日課。
おゆら
御典医玄竹の義娘。大奥に出入りできる身分を悪用して肌に白粉彫りの恋文を仕込み、中臈たちの逢瀬を仲達して莫大な謝礼を受け取っていた。半蔵に手口を暴かれて情婦となる。
地六(ちろく)
半蔵の配下の岡っ引。無駄口が過ぎる性格で、しばしば半蔵に脅しじみた叱りを受ける。
大西 孫兵衛(おおにし まごべえ)
北町奉行所の筆頭与力。小心者の小悪党で、町奉行をも恐れず行動する半蔵の行動を苦々しく思っている。
大野 木玄蕃(おおのぎ げんば)
徒目付。清貧と士道を貫く傑物で、曲がったことが嫌いなことから「石垣直角」の異名を取る。一悶着を経て半蔵の無二の親友となるが、鳥居の謀略によって殺害される。
さくら
日野宿の道中師、仙八の娘。
大西と津山に命ぜられて半蔵を襲うも、返り討ちに遭って情婦となる。
津山 頼母(つやま たのも)
甲府勤番支配頭。小心で、配下の庭兵吉と共謀して半蔵に数々の嫌がらせを行うが、尽くしっぺ返しを食らう。
鳥居 耀蔵(とりい ようぞう)
甲斐守、南町奉行。その冷酷さと手練手管から「妖怪(耀甲斐)」の異名を持つ。
一見細身の老人だが、素手で石灯籠を叩き割る程の拳法の達人であり、少林寺卍組なる武僧を従えている。
倹約令を徹底させるために強固な手段を取って目覚ましい成果を挙げ、北町と火付盗賊改方を半ば支配下に置いている。
新子(しんこ)
江戸の悪童千五百人を統べる少女。「河童の新子」の渾名を持つ(首斬り朝の同名人物とは別人)。
半蔵に捕られた乾分を救出に殴りこむが、返り討ちに遭って情婦となる。
愚美(ぐみ)
鳥居配下少林寺卍組の間諜。老婆に化けて板見家の菩提寺を見張っていた。鳥居の媒酌で半蔵の妻となる。
遠山 景元(とおやま かげもと)
元北町奉行。イチモツに劣等感の強い小男であるが、腕っ節が強く頭も切れ、発想のスケールでは半蔵をも上回るところがある。
半ば強引に半蔵の仲間に引きこまれ、鳥居との決戦に助力する。
徳川 家斉(とくがわ いえなり)
11代将軍。はじめ顔が見えず、御家人の窮状を速やかに汲むなどの好人物であったが、再登場時は遊興に耽って政務を疎かにする暗君になっていた。
密かに餅を自分で焼いて食する趣味があり、これに付け込まれて暗殺されかけたため、息子に将軍職を譲る。
女籐 於兎(めとう おと)
半蔵を入婿に迎えた女藤家の娘。両親ともども半蔵を深く信頼していたが、卑劣な計略によって自害に追い込まれる。
千々岩 砕八郎(ちぢいわ さいはちろう)
大目付。天下五指に入るという剣客で、その実力は半蔵を遥かに上回る。
公儀の密命を帯び、上方の豪商を尽く取り潰さんと暗躍する。
佐々木 信濃(ささき しなの)
信濃守、大坂西町奉行。諱不明。猛犬を使うことから「白房の狼」の異名を取る。
犬と毒を用いた戦術を好むが、自身も古田宮流鎖打ち術の達人で、相対したものを全て抹殺してきた。
保身的で臆病だが、ゆえに一分の隙もなく、老獪な手段で半蔵を追い詰めていく。
加藤 忠介(かとう ちゅうすけ)
大坂西町奉行所の火盗改方同心。執拗な手練手管で「鳥もち加藤」と呼ばれる。
佐々木の懐刀として卑劣な手段で於兎を篭絡するが、独断専行が過ぎたため粛清される。
あおい
将軍家の姫君。幼少時に盗賊に攫われて以来、背中に葵紋を彫った怪盗「葵小僧」として市中を騒がしていた。
御庭番に誅殺されかけたところを半蔵に匿われ、情婦となる。
雲隅 一角(くもずみ いっかく)
御庭番支配。雲を突く巨漢ながら身のこなしは軽妙。半蔵とたちまち意気投合して悪友となる。
今村 清兵衛(いまむら せいべえ)
「九起の清兵衛」の渾名を持つ盗賊。元は加賀藩お時宜係のため、あらゆる雑事を器用にこなす。
無類の酒豪で、押し込み先で酒の飲み比べをして家人を酔い潰すという手口を好んだが、半蔵に説得されて更生。半蔵に心酔し、彼のために働く手先となる。

真説 御用牙<飛花落葉編>

背中に深い傷を負った半蔵が、異人の女性に手当を受けるところから、この物語は始まる。全5話。ここでは半蔵は江戸の北町奉行所勤めとなっている。同田貫上野介正国、通称「鬼包丁」と呼ばれる刀を使用。

『真説 御用牙』の登場人物

峰六(ほうろく)
日本の闇の世界を仕切る五大力の江戸差配。重傷を負った半蔵を助ける。
おぎん
峰六の配下の女。包丁を手裏剣のように投げて使う技を得意とし、”出刃打ち(でばうち)”の異名を持つ。
五蕾(ごらい)
峰六の配下の女。洋妾(らしゃめん)で、南蛮の船医の助手をしていた経験から蘭法医術の心得もある。重傷を負った半蔵を施術して助ける。
木村正吾(きむら しょうご)
南町奉行所の同心。
左木田甚介の娘(さきだ じんすけのむすめ)
18歳。本名不明。竹内判官流の小具足術の遣い手。父親の左木田甚介は北町奉行所の捕物名人と呼ばれた男で、奉行所を退いて浪人となった。半蔵が十手者として生きていくための相方を探していて、女売り(人身売買)の市で見つけた女。彼女の真意や市で売られていた理由等は、連載が途中で終了した為、不明である。

映画版

  • 勝新太郎主演で映画化されている。勝プロダクション製作。 海外ではDVDが発売されている(米国でのタイトルはHanzo the Razor)。
音楽

出演

舞台版

2009年3月20日から29日に紀伊國屋サザンシアターにて上演。

キャスト

スタッフ

テレビ版

渡辺謙主演でフジテレビ系でテレビドラマ化されたが、諸事情によりお蔵入りし、CSの時代劇専門チャンネルで初放送された。

キャスト

スタッフ

  • 脚本 中村努
  • プロデューサー 細井保伯、西村維樹、小川晋一、笠井渉三、松平元子
  • 監督・井上昭
  • 助監督・田中幹人
  • 監督補・小笠原佳文
  • 殺陣・宇仁貫三
  • 記録・清水町子
  • 原作 小池一夫、神田たけ志
  • 制作会社 (制作・映像京都、フジテレビ)
  • 制作協力 円企画
  • 制作 制作担当・丹羽邦夫
  • 制作主任・前田茂司
  • 制作デスク・徳田良雄
  • 俳優担当・安藤仁一朗
  • 企画協力・黒川華乃子
  • 音楽 川崎真弘
  • 選曲・林基継
  • 撮影技術 宮島正弘
  • 照明・中岡源権
  • 録・整音・林土太郎
  • 編集・谷口登司夫
  • 計測・近藤健一
  • 照明助手・長谷川克己
  • 録音助手・清水充
  • 協力・京都映画、IMAGICA(イマジカ)、嵯峨映画
  • 美術 西岡善信
  • 装飾・福井啓三
  • 装置・岡本勝弘
  • 美術助手・加門良一
  • 装飾助手・鎌田康男
  • 特機・西村伊三男
  • 美粧・山崎邦夫、広瀬紀代美
  • 結髪・大槻隆子、西村佳留子
  • 床山・曽我恒夫
  • 衣裳・加藤昌廣
  • 刺青師・毛利清二
  • 協力・新映美術工芸、高津商会、八木かつら、松竹衣裳

脚注