弾丸

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ファイル:Bullets(1).jpg
拳銃弾 / 左:.45ACP弾と右:9x19mmパラベラム弾。丸みのある銅色の部分が弾丸。
ファイル:Bullets (2).jpg
ライフル弾 /上: 12.7x99mm NATO弾、中:ベルトリンクで連結された5.56x45mm NATO弾で円錐状の銅色の部分が弾丸。右下:比較用の拳銃弾
鉄製の薬莢を持つ7.62x39mm弾フルメタルジャケット弾
.357マグナム弾 左:ソフトポイント弾、右:ホローポイント弾

弾丸(だんがん)とは、に使用され、それらから発射・推進して主に目標に物理的損傷を与えるもの。材質や形状は用途により多岐に渡るが、基本的に鉛合金の弾芯に銅合金の被甲をかぶせた構造である。英語ではブリット、ブレット[1](bullet [bʊlɪt])。バレットビュレットとも表記される。発射薬(パウダー)や銃用雷管(プライマー)と共に薬莢(ケース)に収められたものは実包(カートリッジ Cartridge)、弾薬(アムニション Ammunition、アモ Ammo)という。なお、弾丸を実際に発射することを発砲(はっぽう)という。

形状

鉄砲や大砲が生まれた時代、弾丸は「丸」の漢字が入っていることからも分かるように、金属製の球形であった。しかし、球の形は銃口から発射された後、空気抵抗の影響が大きく、弾道が安定しない原因となった。

後に装填速度を上げるために火薬と一体化した実包が発明され、さら形状は空気抵抗の影響を減じるために先が尖った形に進化した。

現在、使用されている弾丸の多くはこの形状を継承している。一方、散弾では実包は円柱の形にまとめられ、発射と同時に球状の小さな弾丸をばらまく構造となっている。かつての球形の弾丸は廃れて戦争の現場では見られなくなったが、砲丸投に使用される砲丸などがその名残を今に伝えている。

弾丸の種類

フルメタルジャケット弾(full metal jacket / 被覆鋼弾、完全被甲弾)
貫通性が高い通常の弾丸。弾芯が金属(メタル)の覆い(ジャケット)で覆われているメタルジャケット弾の一つ。ボール(Ball)弾とも呼ばれる。
ほとんどのフルメタルジャケット弾は弾芯である鉛をギルディング・メタル(真鍮。混合率は95%、亜鉛5%)で覆っている。
軍用ライフルでは、目標衝突時の弾頭変形を防ぎ貫通力を高めるため、このフルメタルジャケット弾が使われる。
メタルジャケット弾にはフルメタルジャケット弾(弾頭を完全に真鍮で覆った弾)とパーシャルジャケット弾(弾頭の先端部分以外を真鍮で覆った弾)があり、パーシャルジャケット弾は目標に衝突した際にメタルに被われていない弾頭先端が変形し破壊力を増す構造で、主に大型動物のハンティング用に用いられる。ハーグ陸戦条約第23条の「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」(平仮名訳)への抵触を避けるなどの人道上の理由から、軍用弾にはフルメタルジャケット弾が用いられる。
ソフトポイント (soft point)
弾頭先端がギルディング・メタルで覆われておらず、鉛が剥き出しの弾丸。命中すると柔らかい鉛により弾頭が激しく変形・破砕し、目標内部で運動エネルギーを効率的に伝えることにより、致命的なダメージを与える。鉛が剥き出しの為、その発射熱により鉛が融解し銃身寿命を縮める欠点がある。この欠点と上記の人道的理由により、軍用としての使用は限定的で、ギルティング・メタルで覆わない分コストが安いため狙撃・練習に使用される。主に狩猟用や、ストッピングパワーが求められる警察用として利用されている。
ホローポイント (hollow point)
弾頭が凹レンズのように窪んでいる弾丸。人体などに命中すると先端がキノコ状に変形(マッシュルーミングという)し、径が大きくなった先端部が運動エネルギーを効率よく目標に伝達して大きなダメージを与える。ライフル弾と比べて威力の低いピストル弾に用いられる弾種である。広義ではダムダム弾もこれに分類される。なお、ホローポイント弾は、特殊な加工が施されていない限り、固い目標(建材等)に命中すると窪みに目標物が詰まり本来の威力を発揮しない。
AP弾(アーマーピアシング armor-piercing bullet)
AP弾は通常は徹甲弾と訳されるが弾丸のサイズの弾では、「アーマー」は主にポリエチレン繊維によって構成されるボディーアーマー(防弾チョッキ)のことで、この場合は日本語の徹甲弾の意味する装甲(ArmourPlating)を貫くものではない。弾頭を針のようにしたりリングの様にすることで貫通力を上げている。[1]
純銀弾(Silver Bullet)
銀の比重は10.49と比較的軽く(鉛:11.36)、真鍮系合金より硬度が低く伸展性が高いため、ジャケットとしての実用性は無い。銀白色の弾頭としては「シルバーチップ」と呼ばれるものがあり、通常の鉛銅ジャケット弾頭より軽量で、高速で射出されるが、これはアルミニッケル合金を利用したホローポイント弾であり、銀製ではない。
ただし、貴金属を用いて製造される弾丸には実用性のある物も存在し、高比重のイリジウム(22.50)・白金(21.45)・金(19.32)などを使って通常の弾頭よりも重量を増やして小口径化を図っている。
照明弾
発射されると強いを放つ弾丸。夜間戦闘や信号弾に用いられる。通常は照射のために上空に向けて打ち上げられる。星弾(せいだん)、スターシェルとも呼称する。弾丸と呼ばれるサイズの照明弾は信号銃専用を除いて存在しない。
曳光弾 (tracer bullet)
発射されると後方に光を曳く、弾道を視認しやすくするための弾丸。トレーサーとも呼ばれる。機関銃などの照準確認用として通常弾に一定の割合で混合され用いられる。飛翔距離と共に内蔵した発火薬が減少して軽くなるため、ある程度の距離を飛翔すると通常弾とは違う弾道を描くので、あくまで目安である。また射手に“残弾あと僅か”を示す目的で使用されることもある。
一般的には、5~7発に1発の割合で曳光弾が混入される(残数確認の場合は残り5発程度の部分に用い、つまり弾込めの場合はまず5発の曳光弾を入れてから通常弾を入れる)。燃料タンクなどに着弾した場合、ごくまれに発火させる効果もある。
ゴム弾 (rubber bullet)
弾頭を硬質ゴムで作成した弾丸。多くの場合、弾丸は切れ目の有る円筒状で先端にくぼみがあり、発射されると先端のくぼみが受ける風圧で切れ目に沿って十字形に開いて飛翔する。弾丸の重量やその構造上、有効射程が短く、目標に対して弾丸が貫通することがないので非致死性兵器として扱われる。しかし、至近距離では十分な殺傷力があり、目標にヘビー級プロボクサーのパンチ並みの衝撃を与えるうえ、数m以内では皮膚を貫通する威力のものがほとんどのため、当たり所によっては目標が死亡することも十分あり得る。この特性を生かして大型獣の撃退、警察軍隊による暴徒鎮圧などに用いられる。
エクスプローダー (exploder)
ホローポイントのくぼみに銃用雷管や少量の火薬を埋め込み、命中すると炸裂する。殺傷能力の向上を期待されたが、威力の上昇が製造コストの上昇に見合わなかったため、現在では製造されていない。
鉛の中に水銀(13.55)を封入して標的に貫入した際の急減速で鉛を破裂させる弾も存在する。
散弾 (shot)
散弾銃を参照。
フランジブル弾 (en:Frangible bullet)
粉体金属(銅、スズなど)を押し固めた弾丸。
人体には貫入するが、壁や柱など固い物質に当ると粉々に砕けるので、屋内戦闘での跳弾防止や運行中の航空機内での犯罪者制圧に利用される。
フレシェット弾 (en:flechette)
APFSDS様のプラスチック製サボットを用いて状の弾体を発射する弾丸。矢は1本とは限らず、散弾銃の散弾代わりに矢型子弾を詰めた実包も存在する。
フレシェット弾は1980年代にオーストリアのSteyr社によってACR(Advanced Combat Rifle)として試作され、従来のライフル銃を大きく凌ぐ初速と貫通力を実現したが、軽量であるため横風の影響を受け易く、ライフル弾のような命中精度は実現できなかった。尚、砲弾としてもフレシェット弾は存在しており、その場合は5,000~6,000発の矢を広範囲に散布する。
ダムダム弾 (en:Dumdum bullet)
19世紀に英領インドコルカタ近郊にあるダムダム工廠で製造された対人用拡張弾頭の総称であり、1899年にダムダム弾禁止宣言が、次いで1907年にハーグ陸戦条約が結ばれ軍用弾としての使用が禁止された。日本ではルパン三世などの影響で爆発性の弾頭と信じられていたり、弾頭に十字の切れ込みがあるという俗説が信じられているが、実際に製造されたのは狩猟用のソフトポイント弾やホローポイント弾と同じ構造である。
ダムダム弾はハーグ陸戦条約第23条に抵触するため戦争での使用は禁止されているが、これに拘束されない狩猟や警察等では、一発で多大なダメージを与えることができ、また対象物内部で弾丸が止まる可能性が高い(貫通による二次被害の軽減)ため、現在でも多く使用されている[2]
なお、映画や漫画等のエンターテイメント作品では通常のフルメタルジャケットに刃物等で弾丸の先端に切れ目(前述の十字型が多い)を入れて殺傷力を高めた弾丸を作る描写がなされこれをダムダム弾と称しているケースが時々見られるが、これはダムダム弾が開発されるよりはるか以前、銃の精度がまだ悪い時代に猛獣を仕留める等の目的で弾丸の殺傷力を高めるためにごく一部のハンターの間で個人的に行われていた方法[3]であり、近代ではまず行われることはない。実際にそのような弾薬を発射すると弾芯である鉛だけが押し出されてジャケットのみが銃身内に残されてしまい、次弾がこれに引っ掛かって詰まってしまえば銃身が破裂するため大変危険である。
フラグメンテーション弾(en:Fragmentation (weaponry))
現在のライフル弾は高速化がすすみ、通常のフルメタルジャケットでも人体等に命中すればその強力な運動エネルギーに弾丸が耐え切れず、容易に弾芯とジャケットが破壊・分離するフラグメンテーション現象が発生する。
これを利用して、ダムダム弾に匹敵する銃創を引き起こすとされるのが、現在各国で広く使用されている5.56x45mm NATO弾となったM855/SS109の弾頭である。
しかし、実際にはこの現象は短距離でしか発生せず、5.56mm弾が有効な殺傷力・貫通力を発揮できるのは近距離に限定されるという事実はベトナム戦争以来変わっておらず、6.8mm×43SPC6.5 mm グレンデル弾といった、より弾頭重量を増加させた第二世代の小口径高速弾薬が開発されている。
対人スチール・コア弾
現在の軍用小銃弾の主流である小口径高速弾は、弾頭重量が軽いため1発あたりの対人ダメージが小さくなっており、ボディアーマーの発達で軍用弾薬により高い貫通力が求められるようになっている事から、これを両立させるための弾薬として、特殊なスチール・コア(鋼製弾芯)弾が開発されている。
5.45x39mm弾の構造
もともとのスチール・コア弾は徹甲弾として対物用に使用されていた弾丸だったが、ボディアーマーを着用した部位と着用していない部位をともに効率よく破壊できる弾薬として開発されたのが、旧ソ連で採用された5.45x39mm弾である。
FN社で開発され後に5.56x45mm NATO弾となったM855/SS109の弾頭はこの構造をフラグメンテーション現象を利用する弾丸と誤認して試作されたが、その実態が判明したのはソ連軍のアフガン侵攻によって、同弾による酷い銃創がムジャーヒディーン勢力の野戦病院で確認されてからの事だった。
同弾は弾丸の先端を中空構造とし、前方に少量の鉛、後方に鋼棒(スチール・コア)を挿入して、両素材の比重の違いを利用して、軟目標に入った場合には即座に先端が変形して転倒し、回転しながら人体組織を切り裂き、ダムダム弾以上に治療困難な被害をもたらすほか、硬目標に対しては弾丸後方の鋼棒が突き刺さって貫通するため、通常弾頭より高い貫通力をもたらす。
現在使用されている7N10弾薬の場合、スチール・コアの先端が尖った形状に変更されており、14mm厚の鋼板を100mで貫通してしまい、ボディアーマー強化繊維部分の弱点である鋭く尖った刃物による貫通と、セラミック・プレートの弱点である打撃による破断という二つの効果をもたらしている。
左:フルメタルジャケット、中:ワッドカッター、右:ホローポイント
ワッドカッター (wadcutter)
射撃競技用の弾丸。先端が平坦で、紙の標的にパンチしたように丸い穴を開ける。このため着弾位置の確認が容易である[4]。また形状が円筒に近いため、他の弾丸に比べて銃身内との接触面積が大きく、より正確な弾頭の中心軸周りの回転が得られ、安定した弾道特性を持つ。
ピストン・プリンシプル弾
薬莢そのものに消音効果を持たせた弾丸。薬莢内部にピストンがあり、発射ガスをピストンで受け止める事で弾丸を押しだし、発射ガスを薬莢内部にとどめ、発射音を軽減する構造を持つ。

鉛弾問題

現在、狩猟家たちの間で製の弾頭についての問題が持ち上がっている。

鳥は歯を持たず、代わりに食べ物をすり潰すための砂嚢と呼ばれる器官を持っており、これに外部から摂取された砂粒を蓄えている。鳥を撃つための散弾粒のサイズが、砂嚢に蓄えるために鳥が好んで飲み込む砂礫のサイズに近いことから、散弾粒を誤飲して鉛中毒になるという現象が観察されている。このプロセスで鉛中毒になって死亡する野鳥個体は少なくない。

また、鉛中毒によって衰弱した個体や、鉛弾によって仕留められたが放置された獲物などが食物連鎖に乗ることにより、その死骸を食べた猛禽類や哺乳類にも鉛中毒が広まっている。米国では保護動物であるオオイヌワシがこの被害にあっているとされる。日本でも北海道においてイヌワシが鉛中毒により死亡した事例が報告されている。

また、放置された発射後の散弾(回収は不可能である)による、鉛による土壌汚染が起きることも指摘されている。

このため日本を含む世界の各地でも狩猟用の鉛弾規制が進められており、代替としてスチール・タングステン・錫・銅等の素材で出来た物が製造されている。当初は、銅弾は柔らか過ぎて銃腔内に銅の層が付着して銃腔内を狭め、スチール弾は硬すぎて鉛散弾仕様の銃腔内を傷つけてしまうため、共に銃身破裂などの問題を起こしやすいとして、鉛弾規制反対の声もかなり聞かれたが、近年ではそれらに対応した銃器の普及も進み、規制反対の声は少なくなっている。ただし、主としてコスト面での課題は残されている。

関連項目

参考資料

  1. ^ “bullet”:英辞郎 on the Web:”. スペースアルク. 2008年12月11日閲覧。
  2. ^ パッケージにも「使用は司法関係者に限る」の注意書きがされている事が多い
  3. ^ 偉大なる王(バイコフ)の作中、重要登場人物のトン・リが主人公の虎王大との対決を前に弾頭にナイフで傷を付けると言う描写がある。
  4. ^ 他の尖った弾丸では、紙を指で突き抜くような乱れた穴になるので、着弾の中心が判別しにくく、競技の際に採点に影響が出る

外部リンク