今野晴貴
今野 晴貴(こんの はるき、1983年 - )は、NPO法人「POSSE」代表理事。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程在籍(労働政策、労働社会学)。2013年に大佛次郎論壇賞及び流行語大賞トップ10受賞。
人物
宮城県仙台市出身。仙台第二高等学校卒業。労働法を専攻していた中央大学法学部の学生時代にNPO法人「POSSE」を立ち上げた。一橋大学大学院に進学後、雇用政策の研究の傍ら、若者からの労働相談に関わり続けている[1][2]。 労働相談の経験と労働政策研究の知見から、2008年から雑誌『POSSE』を発行しているほか、多数の著書を世に出している。 また、経済雑誌、労務・人事雑誌等に多数論考を寄稿しているほか、行政、大学、弁護士会、労組などで頻繁に講演活動を行っている。
2013年には、公明党の国会議員団への講演、民主党の幹事長との対談等を通して、各政党関係者に対しブラック企業問題について告知し、また厚生労働事務次官から勉強会の依頼を受けるなど、政府のブラック企業対策の実現に貢献した[3][4][5][6][7]。
2013年9月からは「ブラック企業対策プロジェクト」の共同代表にも就任し、現在もブラック企業問題に精力的に取り組んでいる。
2013年6月、著書である 『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』の記述に関し、ユニクロから「警告状」が出された[8]。2013年12月には「ブラック企業」が新語・流行語大賞の「2013トップテン」に選ばれ、授賞式でブラック企業について「社会問題だ。」と述べた[9]。また同年同月20日には、同書で第13回大佛次郎論壇賞を受賞[10]。
NPOを組織基盤としている点や、弁護士、人事コンサルタント、福祉関係者など幅広い分野の人物と共同して取り組む姿勢が実践家の特徴として挙げられる[11][12]。
職歴
- 2006年 - 「POSSE」設立、代表理事就任[13]。
- 2007年
- 2010年4月 - 日本学術振興会特別研究員(DC1:社会科学)[14]。
- 2013年
- 3月 - 同満期[15]
- 9月11日‐ブラック企業対策プロジェクト設立。共同代表就任。
インターネット上の名誉棄損事件
2015年7月、今野と東京大学大学院の本田由紀教授らが記者会見を開き、「事実に反し、彼らの名誉を傷つける内容の誹謗中傷メールが関係者に送られていた」旨の発表をした。この問題について、警視庁尾久署は同年6月、名誉毀損の疑いで横浜市の30代自称フリーデザイナーの男を書類送検している。2014年10月、今野らが名誉毀損罪で警視庁に告訴していた。
男は2013年5月、実在するコンサルタントを名乗り「今野晴貴 新左翼カルト POSSEに注意!」「特定非営利活動法人POSSE及び同法人代表理事である今野晴貴は、特定の政治団体・セクトと関係しているが、その事実を秘して活動を行っている」「カルトの広告塔・本田由紀教授」などと記したメールを本田の所属する東京大学の教授ら52人に送信するなど、NPO法人POSSEと2人の名誉を毀損した疑いがもたれている。 告訴後に明らかになった被害実態も多く、これらのメールは今野の所属する大学院の研究科、今野らの講演を主催した団体やテレビ番組の共演者、今野の著書を出版しようとした出版社など、100件以上にわたり送られていた。今野やPOSSEが不信感を抱かれ、今野は日本科学者会議への加入を拒否されたこともあった[16][17]。
また、男はインターネット上に「POSSEは新左翼」「今野氏は過激派」などといった書き込みがなされている「まとめサイト」を複数作成し、そのリンクを今野の所属する大学の研究者やPOSSEと接点を持った団体、研究者、著名人などに送り、アフェリエイトを稼ぐなどしていた[18]。
上記メールやまとめサイトについて、「記載事項は事実無根であり、今野・本田・POSSEは特定の政治団体・セクトとの間には何らの関係のない」旨の声明が出されている[19]。
著書
単著
- 『マジで使える労働法―賢く働くためのサバイバル術』イーストプレス、2009年5月。ISBN 978-4781601786。
- 『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』文藝春秋〈文春新書878〉、2012年11月。ISBN 978-4166608874。
- 『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』星海社〈星海社新書32〉、2013年4月。ISBN 978-4061385320。
- 『ヤバい会社の餌食にならないための労働法』幻冬舎、2013年5月。ISBN 978-4344420267。
- 『生活保護:知られざる恐怖の現場』筑摩書房〈ちくま新書1020〉、2013年7月。ISBN 978-4480067289。
- 『ブラック企業ビジネス』朝日新聞出版〈朝日新書451〉、2013年11月。ISBN 978-4022735317。
- 『ブラック企業2 「虐待型管理」の真相』文藝春秋、2015年3月。ISBN 978-4166610037。
- 『求人詐欺 内定後の落とし穴』幻冬舎、2016年3月。ISBN 978-4344029149。
- 『君たちはどう働くか』皓星社、2016年3月。ISBN 978-4774406107。
- 『ブラックバイト―学生が危ない』岩波書店〈岩波新書1602〉、2016年4月。ISBN 978-4004316022。
共編著
- 遠藤公嗣、木下武男・布川日佐史・本田由紀・後藤道夫・今野晴貴・小谷野毅・河添誠・田端邦彦共著『労働、社会保障政策の転換を―反貧困への提言』岩波書店〈岩波ブックレット746〉、2009年1月。ISBN 978-4-88320-407-6。
- 今野晴貴、川村遼平共著『ブラック企業に負けない』旬報社、2011年9月。ISBN 978-4845112319。
- 今野晴貴、常見陽平共著『IT企業という怪物 組織が人を食い潰すとき』双葉書店〈双葉新書064〉、2013年7月。ISBN 978-4575154153。
- 今野晴貴編著『断絶の都市センダイ ブラック国家・日本の縮図』朝日新聞出版、2014年5月。ISBN 978-4022511799。
- 今野晴貴、棗一郎・藤田孝典・上西充子・大内裕和・嶋崎量・常見陽平・ハリス鈴木絵美共著『ブラック企業のない社会へ―教育・福祉・医療・企業にできること』岩波書店〈岩波ブックレット905〉、2014年7月。ISBN 978-4002709055。
- 今野晴貴、ブラック企業被害対策弁護団共著『ドキュメント ブラック企業―「手口」からわかる闘い方のすべて』筑摩書房、2014年8月。ISBN 978-4480432049。
- 森岡孝二、今野晴貴・佐々木亮共著『いのちが危ない残業代ゼロ制度』岩波書店〈岩波ブックレット913〉、2014年11月。ISBN 978-4002709130。
- 今野晴貴、大内裕和共著『ブラックバイト』堀之内出版、2015年4月。ISBN 978-4906708574。
- 岸-金堂玲子、森岡孝二編著『健康・安全で働き甲斐のある職場をつくる―日本学術会議の提言を実効あるものに』ミネルヴァ書房、2016年3月。ISBN 978-4623075157。
メディア出演・講演など
受賞
- 第30回(2013年)流行語大賞トップ10
- 「ブラック企業」
- 第13回(2013年)大佛次郎論壇賞
- 『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)
- 第26回(2014年)日本労働社会学会奨励賞
- 『ブラック企業ビジネス』(朝日新書)・『生活保護:知られざる恐怖の現場』(ちくま新書)
学会
- 日本大学社会学会 テーマ部会「検証 若者の今とこれから」(2013年)
- 報告「ブラック企業と大学生の就職活動」
- 日本労働社会学会 第26回 公開シンポジウム「若者の就労と労働社会の行方」(2014年)
- 報告「若年正社員における近年の変化 ― 新しい雇用類型に着目して」
- 労務理論学会 第24回全国大会 統一論題「雇用の大選別時代における人事労務管理」(2014年)
- 報告「「ブラック企業」言説を生み出した労務管理の変化と労働組合の課題」
- 日本社会学会 社会学系コンソーシアム第7回シンポジウム「現代の雇用危機を考える」(2015年)
- 報告「若年雇用の変容と政策・制度の機能不全——労働管理戦略の変質を中心に——」
講演
- 2013.11.1 埼玉県労働者福祉協議会主催 教育フォーラム2013「ブラック企業の実態とその対応 ~今こそ重要な“労働”に関する教育~」(ときわ会館)
- 2013.12.7 中京大学国際教養学部主催 学術講和会「「ブラック企業問題」とは何か 問題の構造から、見分け方、対処法を考える」(中京大学)
- 2013.12.16 神奈川県主催 就活生・若者労働者セミナー「いわゆる「ブラック企業」を見抜く力」(神奈川労働プラザ)
- 2014.5.21 都留文科大学人権委員会主催「いわゆる「ブラック企業問題」とは何か」(都留文科大学)
- 2014.9.27 一般社団法人日本私立大学連盟主催 平成26年度第2回私立大学フォーラム「どうする、シューカツ?-働くことを考える-」(東北学院大学)
- 2014.11.26 東京都消費者月間実行委員会主催「ブラック企業を知る」(大田区立消費者生活センター)
- 2014.12.3 立教大学経済研究所主催 公開講演会「アベノミクスと雇用改革 ― 『ブラック企業』問題からワークライフバランスまで」(立教大学)
- 2014.12.9 福岡県主催 福岡地域労働教育講座「いわゆる「ブラック企業」とは?~その現状と対応策~」(福岡市健康づくりサポートセンター)
- 2015.1.24 日本学術会議社会学委員会・社会学系コンソーシアム 共催シンポジウム 「現代の雇用危機を考える」(日本学術会議大講堂)
- 2015.11.20 若者・就活生・新入社員のための労働法セミナー「いわゆる「ブラック企業」「ブラックバイト」の対処法」(かながわ県民センター)
- 2015.11.25 佐賀県労働委員会主催 委員特別研修「「ブラック企業問題」・「ブラックバイト問題」の実情と背景」(佐賀県庁)
- 2015.12.10 公益財団法人新聞通信調査会主催 シンポジウム「広がる格差とメディアの責務」(JPタワー・ホール&カンファレンス)[20]
メディア出演
- BS朝日「午後のニュースルーム」 2013年4月10日
- TBSラジオ「荻上チキ Session22」 2013年4月15日
- 広島ローカルラジオ「RADIO ONE」 2013年4月29日
- 民主党テレビ「細野豪志幹事長との対談」 2013年7月3日
- IWJ「岩上代表との対談」 2013年7月17日
- NHK総合「NEWS WEB 24」 2013年8月8日
- NHKラジオ「私も一言」 2013年8月28日
- 文化放送 2013年9月2日
- テレビ朝日「朝まで生テレビ」 2013年9月27日
- NHK総合「あさイチ」 2013年10月7日
- TBSラジオ「荻上チキ Session22」 2013年10月21日
- BS11「本格報道 INsideOUT」 2013年10月31日
- FM東京「タイムライン」 2013年12月10日
- TBS「ニュースバード」2014年2月10日
- NHK Eテレ「オトナへのトビラTV」2014年2月27日
- TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」2014年4月28日
- NHK「かんさい熱視線」2014年5月9日
- MBSラジオ「報道するラジオ」2014年12月12日
- NHK「NEWSWEB」2015年6月4日
- TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」2016年3月4日
学会・学術誌
- 「ブラック企業の実態とその対策」『DIO』No.292(2014年4月) 公益財団法人連合総合生活開発研究所
- 「労働NPOの活動がどのように労働問題を社会問題に変えたのか」『大原社会問題研究所雑誌』677号 2015年3月号 pp.6-11 大原社会問題研究所
- 「「ブラック企業問題」の沿革と展望 ―概念の定義及び射程を中心に」『大原社会問題研究所雑誌』681号 2015年7月号 pp.6-21大原社会問題研究所
寄稿
- 「視点 経済再生とブラック企業」『労務事情』No.1247(2013年3月1日) 産労総合研究所
- 「視点 追い出し部屋問題」『労務事情』No.1248(2013年3月15日) 産労総合研究所
- 「ブラック企業が日本の未来を食いつぶす」『世界』No.843(2013年5月) pp.146-155 岩波書店
- 「生活保護に、いま何が起きているか」『ちくま』2013年8月号 pp.4-5 筑摩書房
- 「ブラック企業をめぐる誤解と企業の対策」『月刊人事労務実務のQ&A』NO.38(2013年9月) pp.1 日本労務研究会
- 「ブラック企業にならないための対策」『月刊人事労務』296号(2013年10月号) pp.4-15 日本人事労務研究所
- 「ブラック企業は社会にとってなぜ有害か」『労働経済春秋』Vol.9(2013年11月30日) pp.15-21 労働調査会
- 「論点70 「ブラック企業」をなくす方法教えます」『文藝春秋オピニオン 2014年の論点100』 pp.212-213 文藝春秋社
- 「「解雇特区」に隠された罠」『月刊文藝春秋』2013年12月号 pp.115-117 文藝春秋社
- 「特集2014→2020 総予測【予測61 ブラック企業】激変する若年労働者市場労使間の話し合いは不可欠」『週刊ダイヤモンド』2013年12月28日号 ダイヤモンド社
- 雑誌『POSSE』内寄稿・対談など多数
オンライン記事・寄稿
- 「現代労働問題の縮図としての原発 ―― 差別の批判から、社会的基準の構築へ」『SYNODOS』 2011年6月10日
- 「ブラック企業、このとんでもない妖怪に立ち向かうために『ブラック企業』著者、今野晴貴氏インタビュー」『SYNODOS』 2012月25日
- 「今野晴貴さんインタビュー「諦めず、権利を行使する。それは社会人として当然のスキル」―いま、日本で働くということ(2)」『The Huffington Post Japan』 2013年5月20日
- 「解雇規制緩和がブラック企業激増を招く」『ダイヤモンドオンライン』 2013年7月1日
- 「なぜIT労働者たちはネットに「ブラック」と書いたのか?~今野晴貴さんが語る「ブラック企業」という言葉の起源」『BLOGOS』 2013年9月12日
- 「政治の在り方に影響与えた 大佛次郎論壇賞を受賞して「ブラック企業」今野晴貴」『BOOKasahi.com』 2013年12月24日
- 「労働者を食い物にするような会社は潰しても仕方ない~「ダンダリン一〇一」原作者・田島隆氏×POSSE代表・今野晴貴氏対談~」『BLOGOS』 2013年12月25日
- 「時代を読む~若手論客に聞く(4)NPO法人代表・今野晴貴さん、日本型雇用を逆手に」『神奈川新聞』 2014年1月5日
- 「日本再生考 第11回 NPO法人「POSSE(ポッセ)」代表・今野晴貴氏」『47NEWS』 2014年4月25日
脚注
- ^ “賢者の知恵 話題の本の著者に今野晴貴「若者を使いつぶす国に未来はない!」”. 現代ビジネス. (2013年3月31日) 2013年9月28日閲覧。
- ^ “新刊を読む「ブラック企業」はこうして見極めろ!”. 文藝春秋. (2013年2月14日) 2013年9月28日閲覧。
- ^ 「長時間労働の規制必要」公明新聞 2013.5.16
- ^ 「「雇用の立て直し」2 今野晴貴さん「ブラック企業をなくすために」」福島瑞穂×今野晴貴 YouTube 2013.4.18
- ^ 「DPJ スタジオ22時」細野豪志×今野晴貴 YouTube 2013.7.6
- ^ 「各政党に聞くブラック企業特集」『POSSE』Vol.19 堀之内出版 2013 pp61-88
- ^ 「国とメディアを動かしたブラック企業プロジェクト」『POSSE』vol.21 堀之内出版 2014 pp34-41
- ^ “ユニクロ『ブラック企業』著者に「警告」 「違法な論評など2度となされませんよう…」”. J-castニュース. (2013年6月11日) 2013年9月28日閲覧。
- ^ 「「ご当地キャラ」くまモン、ふなっしーは「大事な友達モン」」サンスポ2013.12.3
- ^ “大佛次郎論壇賞に今野晴貴氏”. 時事通信社. (2013年12月21日) 2013年12月22日閲覧。
- ^ ブラック企業対策プロジェクト設立趣旨文
- ^ 今野晴貴『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』星海社 2013
- ^ 木下武男『若者の逆襲-ワーキングプアからユニオンへ-』旬報社 2012 5p
- ^ 『日本の労働市場政策の構造と有効性について』(受入研究機関:一橋大学大学院社会学研究科)
- ^ 研究課題番号:10J05254
- ^ 「労働相談NPO代表をメールで中傷の疑い 男を書類送検」朝日新聞 2015.7.16
- ^ 「中傷メール大量に送った男を書類送検」産経新聞 2015.7.16
- ^ 「坂倉昇平 (magazine_posse) on Twitter」
- ^ 「特定非営利活動法人POSSE、今野晴貴及び本田由紀に対する名誉毀損事件に関する声明」
- ^ 「[1]
外部リンク
- 今野晴貴 (@konno_haruki) - X(旧Twitter)