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ファイバーチャネル

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ファイバーチャネル(英: Fibre Channel[1]、略称: FC)は、ギガビット級ネットワーク技術の一種であり、主にストレージ・ネットワーク用に使用されている。ファイバーチャネルは、情報技術規格国際委員会(INCITS)の T11 技術委員会が標準化した。 ちなみに、INCITS とは、米国規格協会(ANSI)が信任した委員会である。

当初はスーパーコンピュータ領域で使われはじめたが、ストレージエリアネットワーク(SAN)で大規模ストレージを接続する際の標準規格となった。FC ネットワーク上では、IP ではなく SCSI コマンドがやり取りされ、その上にトランスポート層(IP における TCP と同様)であるファイバーチャネル・プロトコル(FCP)が載る。

その名前にもかかわらず、ファイバーチャネルは、銅線のツイストペアケーブルでも構築可能である。

歴史

ファイバーチャネルは1988年に検討が開始された。当初、同様な役割を持っていたHIPPIシステムを簡素化することを目的としており、1994年にANSIによって規格が承認された。HIPPI は 50対のケーブルを使った大規模な規格であり、コネクタも巨大で、ケーブル長にも制限があった。ファイバーチャネルでは、それを単純化して可能なケーブル長を延ばすことに主眼が置かれ、高速化は二の次であった。後にSCSIディスク装置を接続することを視野に入れ、高速化と接続可能なデバイス数を増加させていったのである。

また、様々な上位プロトコルもサポートしていった。SCSI、ATMIPなどである。中でもSCSIが主に使われている。

トポロジー

3つの主要なファイバーチャネルのトポロジー(ネットワーク形態)がある。

ポイント・ツー・ポイント (FC-P2P)
ふたつの機器が相互に接続される。最も単純なトポロジーであり、接続性も制限される。
調停ループ (FC-AL)
全ての機器がループ状に接続される。トークンリングとよく似たトポロジーである。このループから機器を取り外したり、ループに機器を接続する場合、ループ全体が一旦使えなくなる。機器のひとつが故障するとループ全体の通信ができなくなる。ファイバーチャネル用のハブを使って複数の機器を接続したり、単純なP2P接続をすることもできる。ふたつの機器だけを接続したループをP2Pとみなして通信することもできるが、規格上それが要求されているわけではない。
ファブリック (FC-SW)
全ての機器を複数のファイバーチャネル・スイッチに接続する。現在のイーサネットの実装と似たトポロジーである。スイッチはファブリックの状態を管理し、最適化された相互接続状態を提供する。そのセキュリティ機能は現在でも貧弱である。
属性 P2P 調停ループ ファブリック
最大ポート数 2 127 ~16777216 (2^24)
最大バンド幅 2×リンクレート 2×リンクレート (ポート数)×リンクレート
アドレス割当て Nポートログイン ループ初期化とファブリックログイン ファブリックログイン
同時コネクション数 1 1 ポート数/2
ポート障害の影響 リンク障害 ループ障害 スイッチおよびポートリンク障害
メンテナンスの影響 リンクダウン ループ全体ダウンの可能性あり スイッチおよびポートリンクダウン
拡張方法 P2Pリンクを追加 ループをファブリックに接続 ファブリックを拡張
冗長性 予備P2Pリンクを追加 二重ループ化 予備スイッチを追加
可能なリンクレート 全て 全て(ただし全体が同じレート) 全て(レートの混在可)
可能な媒体種類 全て 全て 全て
可能なサービスクラス 全て 1, 2, 3 全て
フレーム配送順 発送順通り 発送順通り 順序保証されず
媒体アクセス 独占 調停 独占
ポート当たりの費用 ポート費用 ポート費用+ループ機能費用 ポート費用+ファブリック費用

プロトコル階層

ファイバーチャネルは階層化されたプロトコルを持つ。それは以下の5層から構成される。

FC0
物理層。ケーブル、光ファイバー、コネクタなどを含む。
FC1
データリンク層。8b/10bシリアル転送方式を採用(Base 2)。64b/66bシリアル転送方式を採用(Base 10)。
FC2
ネットワーク層。FC-FS標準により定義されている。ファイバーチャネルプロトコルの中心。
FC3
共通サービス層。暗号化やRAIDなどの機能を実装するのに使われる。
FC4
プロトコル変換層。FC2向けにSCSIなどの他のプロトコルをカプセル化して情報単位に変換するために使われる。

FC0、FC1、FC2は、総称してFC-PH(ファイバーチャネル物理層)とも呼ばれる。

ファイバーチャネル製品としては、デバイス向けに1, 2, 4, 8Gbit/s のものが既にあり、16 Gbit/s 規格のものは開発中である。 そして、1, 2, 4, 8 Gbit/s の製品は相互運用可能が望ましいとされている。 スイッチ間接続用に10Gbit/s のものが既にあり、20 Gbit/s 規格のものは開発中である。 1, 2, 4, 8 Gbit/s 規格の製品と10 Gbit/s 規格の製品とでは、エンコード・デコード方式が全く異なるものとなる。

光伝送媒体のバリエーション

メディア種別 速度 (MB/s) 送信機 バリエーション 距離
シングルモード光ファイバー 400 1300nm 長波長レーザー 400-SM-LL-I 2m - 2km
200 1550nm 長波長レーザー 200-SM-LL-V 2m - >50km
1300nm 長波長レーザー 200-SM-LL-I 2m - 2km
100 1550nm 長波長レーザー 100-SM-LL-V 2m - >50km
1300nm 長波長レーザー 100-SM-LL-L 2m - 10km
1300nm 長波長レーザー 100-SM-LL-I 2m - 2km
マルチモード光ファイバー (50μm) 400 850nm 短波長レーザー 400-M5-SN-I 0.5m - 150m
200 200-M5-SN-I 0.5m - 300m
100 100-M5-SN-I 0.5m - 500m
100-M5-SL-I 2m - 500m
マルチモード光ファイバー (62.5μm) 400 850nm 短波長レーザー 400-M6-SN-I 0.5m - 70m
200 200-M6-SN-I 0.5m - 150m
100 100-M6-SN-I 0.5m - 300m
100-M6-SL-I 2m - 175m

基板

ファイバーチャネルアダプタ
(QLogic製QLA2200)

ファイバーチャネルスイッチは2つに分類される。この分類は標準の一部ではなく、メーカー側の都合によるものである。


ダイレクタースイッチ
ポート数が多く、モジュール化され、一箇所が故障しても動作し続ける (no single-point-of-failure) 高可用性が特徴である。
ファブリックスイッチ
一般にあまりモジュール化されていない固定構成の冗長でないスイッチである。


ブロケード(含むMcDATA、CNT)、シスコシステムズ、はディレクタースイッチもファブリックスイッチもリリースしている。QLogic はファブリックスイッチをリリースしている。

ホストバスアダプタ

ファイバーチャネルのホストバスアダプタ(HBA = コンピュータ用コントローラカード)は、様々なシステム、様々なバスに用意されている。 各HBAは、イーサネットのMACアドレスと同様、ユニークなWorld Wide Name(WWN)を付与され、IEEEが割り当てたOUIを使っている。 しかし、WWNの方がMACアドレスよりも長い(16バイト)のと、WWNは二種類存在する。 ひとつはHBA単位に割り当てられるWorld Wide Node Name(WWNN)で、HBAに複数のポートがあればそれらポート間で共有される。 もうひとつはポート単位のWorld Wide Port Name(WWPN)である。

ファイバーチャネルのHBAメーカーとしては、ATTOテクノロジー、ブロケード、Emulex、LSIロジック、QLogicなどがある。

RFC

  • RFC 4369 - Internet Fibre Channel Protocol (iFCP)のための管理オブジェクト定義
  • RFC 4044 - ファイバーチャネル管理 MIB
  • RFC 3723 - Securing Block Storage Protocols over IP
  • RFC 2837 - ファイバーチャネル標準におけるファブリック要素のための管理オブジェクト定義
  • RFC 2625 - ファイバーチャネル上の IP および ARP
  • RFC 4625 ファイバーチャネル・ルーティング情報 MIB
  • RFC 4626 ファイバーチャネルのFSPF(Fabric Shortest Path First)ルーティングプロトコルのためのMIB

関連項目

脚注

  1. ^ ファイバーは、アメリカ英語で「Fiber」とつづることが多いが、ファイバーチャネルではイギリス英語の「Fibre」とつづる。ファイバチャネルFAQ参照。

外部リンク