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ピアノソナタ第17番 (シューベルト)

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フランツ・シューベルトピアノソナタ第17番ニ長調D.8501825年の作。翌年出版された。全体的に長大な作品で、次の18番19番20番21番と連なる大作の一群に入る。

わずか12年程度の創作人生でしかない作曲者であるが、初期・中期・後期の3期に分けられるピアノソナタ作品集で、後期にはピアニスティックではない調性が多い。弦楽四重奏曲に編曲される期待があったものと示唆されている。
演奏時間は38分前後とされている大作で、ベートーヴェンのピアノソナタ第29番に匹敵する。

4楽章構成。

小説家の村上春樹はシューベルトのピアノソナタの中で最も愛好していると記し(『意味がなければスイングはない』)、『海辺のカフカ』の中で、「不完全で天国的に冗長で、すべてのピアニストが例外なく二律排反の中でもがく」と、登場人物に評させている。

曲の構成

ソナタ形式。冒頭に主和音(D-Fis-A-D)が両手で鳴らされ、徐々に盛り上がりを迎える。両手のオクターヴによるユニゾンが多い。
ソナタ形式ベートーヴェンの交響曲第2番第2楽章にも似た長大な緩徐楽章。リズムに微妙なシンコペーションをつけているが、「天国的な長さ」[1]と冗長さを指摘される。
弱起の付点リズムが特徴的なスケルツォ。中間部はL'istesso tempo
ロンド。長大な作品の締めくくりにしては安直な作曲だと時に批判される。左手のD-Fisの和音に乗って、付点リズムのついたA-H-A-Fis-D-Dの主題が登場。舞曲に近い楽しげな楽章で、簡単な変奏を交えて主題が繰り返される。中間部はト長調。第1楽章と同じくオクターヴ奏法ユニゾンが多い。

脚注

  1. ^ ここでは揶揄として使われているが、元々はシューマンが、シューベルトの交響曲第8番の長大さを称えて言った言葉。himmlische Länge。なお、himmlisch は「天国 Himmel」の形容詞形で「天国の」という意味があるが、ほかに「すばらしい」といった賞賛にも使われる。シューマンの本来の文脈では、単に「すばらしい長さ」と言っているだけかもしれない。