ピアノソナタ第7番 (シューベルト)

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フランツ・シューベルトピアノソナタ第7番変ニ長調D567は、作曲者初期の完成作品。1817年作曲。初版は変ニ長調で作曲されたが、後に変ホ長調に改作され、D568として出版されている。ほぼ同様のソナタ作品を全音高い変ホ長調に改作した理由は明らかではない。同形式作品で同じ楽想を移調させたものがそれぞれ残っているのは本作品のみでなく、例の「ガスタイン交響曲」ホ長調と「ザ・グレート」交響曲のように後期にも見られ、作者の詳細な創作過程が残されている。研究には欠かせない重要作であり、本稿では両方扱う。

D567[編集]

曲の構成[編集]

  • 第1楽章 Allegro 変ニ長調 4/3拍子
ソナタ形式。冒頭はAs-F-As-Des-F-Asの単純な主題。ユニゾンの力強い低音によるもの。変ニ長調は黒鍵が多く、ピアノ演奏に都合がよい。後のショパンによるピアニズムの先駆けともいえる調の選択である。第2主題は属調変イ長調の優雅なもの。展開部は簡単に済ませている。
三連符の多い緩徐楽章。
ソナタ形式。ロンドにも近い繊細な楽章。皆川達夫弦楽四重奏にも似た典雅さを評されている。ベートーヴェン初期作品にも似て短調と長調の対比が美しく、そこにロマン的半音階を入れた秀作。

作者はあまり高速に弾き飛ばされるのを恐れたのか、随所に右手中声部のコードを入れて演奏者に負担を強いている。

D568[編集]

曲の構成[編集]

ほぼD567と同様。ただ再現部でシンコペーションをつけるなどわずかに修飾している。楽譜の読解は簡単であるが、ピアノ演奏としてはD567のほうが運指が簡単。
ほぼD567に同様。
  • 第3楽章 変ホ長調
この楽章だけは変ニ長調のものにはなく、結果として3楽章ソナタから4楽章のそれへと規模を拡大させている。意表をつく転調が多く、作曲者特有のロマン的和声が多い。中間部は変イ長調。
ほぼD567と同様。しかし中間部に左手の華麗なパッセージを新たに挿入し、和声の調整を図っている。変ホ長調では非常に演奏が難しく、D567よりも形式としては完成されていながら、演奏者には負担を強いる。もっとも作者はこうした事情は了解していて、変ホ長調なのは主題とその周辺くらいでしかなく、他は変ロ短調変ホ短調などピアノ奏者にも一定の配慮をした調の選択をしている。

なおハワード・ファーガソンによると「8分の6拍子であっても、不当に速いテンポで演奏することなく、リリックな主題を大きく歌い上げるべき」である。

その他[編集]

変ニ長調のほうがピアニスティックな演奏が可能になり、変ホ長調のものよりピアノソナタとしては優れている。しかし、管楽器で演奏する場合を想定すると変ホ長調のほうが適当である。ベートーヴェン変ホ長調ソナタではホルンの音を模したといわれており、関連が示唆されている。

そのほかの例では「イタリア風序曲」D-590と「ロザムンデ序曲」D-797のコーダが同じテーマで、前者は下書き的要素が強い。

日本では内田光子の録音が有名。