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ネバダ級戦艦

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ネバダ級戦艦
竣工時の「ネバダ」。公試中の写真
艦級概観
艦種 戦艦
艦名 州名。1番艦はネバダ州にちなむ。
前級 ニューヨーク級
次級 ペンシルベニア級
性能諸元
排水量 常備:27,500 トン(1943:30,500 トン)
満載:28,400 トン(1943年:33,901 トン)
全長 583 ft (177.7 m
水線長 575 ft (175.26 m)
全幅 95 ft 3 in (29 m)
(1929年:32.9 m)
吃水 28.5 ft (8.7 m)
(1929年:9.0 m)
機関 ネバダ:ヤーロー重油専焼水管缶12基
(1929年:ビューロー・エクスプレス式重油専焼水管缶6基)
+ブラウン・カーチス直結タービン(低速・高速)2組2軸推進


オクラホマ:バブコック・アンド・ウィルコックス式重油専焼水管缶12基
+直立型三段膨脹式四気筒レシプロ機関2基2軸推進

最大出力 ネバダ:26,291 hp
オクラホマ:31,759 トン
最大速力 20.5 ノット (38 kp/h)
(1943年「ネバダ」:19.0 ノット)
航続距離 12ノット/5,192海里
乗員 士官、兵員:864名(1943年:1,301名)
武装 35.6cm(45口径)連装砲2基&同三連装砲2基
Marks7 12.7cm(51口径)単装速射砲21基
Marks20 7.62cm(50口径)単装高角砲4基
ブローニング 12.7mm(50口径)単装機銃6基
53.3cm魚雷発射管単装2基
(1943年:35.6cm(45口径)連装砲2基&同三連装砲2基
Marks12 12.7cm(38口径)連装両用砲8基
ボフォース 4cm(56口径)四連装機関砲10基
エリコン 2cm(76口径)連装機銃20基&同単装機銃5基)
装甲 舷側:343mm(水線部主装甲)、203mm(水線末端部)
上甲板:30.5mm、主甲板:53~64mm
主砲塔
連装砲塔:406mm(前盾)、229mm(側盾)、-mm(後盾)、76mm(天蓋)
三連装砲塔:457mm(前盾)、229mm(側盾)、-mm(後盾)、-mm(天蓋)
主砲バーベット部:330mm(最厚部)
司令塔:406mm(側盾)(1942年に司令塔撤去)

ネバダ級戦艦(ネバダきゅうせんかん、Nevada-class battleships)は、アメリカ海軍戦艦の艦級。本級はアメリカ海軍において初めて三連装砲塔を搭載した艦であり、集中防御形式を採用した最初のクラスである。

概要

本級は主機の燃料に重油を採用した最初のアメリカ戦艦であり、最後の2軸推進艦であった(以降の戦艦は全て4軸推進)。とりわけ、比較研究のために2隻は異なる推進機関が採用されオクラホマはレシプロ機関を採用した最後の艦であった。

武装は当初舷側部分に5インチ砲を装備していたが、艦首及び船尾部分に装着されていた砲は波の影響を受け非常に多湿だったため間もなく撤去された。オクラホマの装備した「三段膨脹式レシプロ機関:VTE(Vertical Triple Expansion)」は信頼性に欠け、タービン機関を搭載したネバダに比べて振動が大きく採用した艦は少数であった。

ネバダ級はアメリカ海軍における「標準型戦艦」コンセプトの一部であった。その設計概念は、アメリカ海軍が低速部隊と高速部隊の包括的な運用を可能とするためには重要なものであった。「標準型」の概念は長距離射撃、21ノットの速度、700ヤード(640m)の回転半径およびダメージ・コントロールの改善が含まれていた。この「標準型」にはペンシルベニア級テネシー級ニューメキシコ級およびコロラド級が含まれた。

艦形について

1925年に撮影された「ネバダ」。第一次世界大戦時の戦訓により艦橋が密閉化されて上に探照灯が載っている。前側に着いた時計状の物は僚艦に射撃データーを表示するレンジ・クロック。

本級の船体形状は武装増加に伴う艦内居住空間の増加のために短船首楼型船体に改められた。同時期のイギリス戦艦と同様に艦首水面下に浮力確保用の膨らみを持つ艦首から艦首甲板上に「1914年型 35.6cm(45口径)砲」を1番主砲塔は三連装砲塔に、高所に位置する2番主砲塔は連装砲塔に収めた。2番主砲塔の基部から甲板よりも一段高い艦上構造物が始まり、その上に操舵装置を組み込んだ司令塔が立つ。司令塔の背後からこの当時のアメリカ海軍の大型艦の特色である状の前部マストが立ち、司令塔と前部マストを基部として上から見て五角形状の船橋が設けられていた。前部マストの下部に航海艦橋、頂上部に露天の見張り所を持つ。前部マストの後部に1本煙突が立ち、その周囲は艦載艇置き場となってり、船体中央部に片舷1基ずつの計2基のクレーンにより運用された。後部甲板上に頂上部に露天の見張り台が置かれた籠状の後部マストが立ち、連装砲塔の3番主砲塔と三連装砲塔の4番主砲塔が背負い式配置で1基ずつ配置された。本級の副砲である「12.7cm(51口径)速射砲」は1番主砲塔側面の舷側に開口部を設けてケースメイト(砲郭)配置で片舷8基ずつと艦尾に1基、甲板上に片舷2基ずつの計21基を配置したが、最も艦首に近い2基と艦尾の1基は開口部から波浪が侵入して使い物にならないばかりか浸水被害を齎したために撤去された。なお、副砲撤去と同じ頃の1916年に飛行船による航空爆撃の危険性が示唆されたために「7.62cm(50口径)高角砲」を追加装備する事とし、甲板上に単装砲架で計4基を配置した。

写真は1935年に撮影された「ネバダ」。マストは三脚式に更新され、大型の射撃方位盤室が前後マスト状に乗っている。レンジ・クロックは上方に移された。

本級は第一次世界大戦後の1920年代後半に近代化改装を受け、アメリカ戦艦の特色であった籠状の前後マストは強固な三脚式へと更新され、頂上部の露天の見張り所は新たに射撃方位盤室を載せた2段の密閉型見張り所が設けられた。小型で使い勝手の悪かった艦橋は箱型の大型な物へと増築された。波浪が吹き込む副砲は舷側部は閉塞され、新たに甲板上に増設された上部構造物の側面部に片舷5基ずつと最上甲板上に片舷5基ずつへと移設された。弾着観測用に水上機を搭載し、射出用のカタパルトが3番主砲塔上に1基、艦尾側に旋回式1基が設置され、水上機運用のために船体中央部のクレーンは大型化し、新たに艦尾側にも1基が設置された。これらの改装によるトップヘビーを防ぐためと対水雷防御改善のために1番主砲塔側面から4番主砲塔側面にかけて水線下にバルジを装着された。

最終状態の「ネバダ」。

第二次大戦後に復旧された「ネバダ」は火災により損害を受けた艦上構造物を全て撤去し、前部マストは頂上部に見張り所を載せた軽量な三脚式とし、測距儀や射撃方位盤は箱型の艦橋の上部に移設された。艦橋L構造物が1本煙突の位置にまで伸ばされたために、三脚マストの間を抜けるように筒状のファンネルキャップを後方に傾けて少しでも煤煙を後方に逃す工夫がされた。副砲と高角砲は全て廃止され、替わりに新戦艦と同様に12.7cm連装両用砲を片舷4基ずつ計8基を配置した。後部マストはレーダーアンテナを載せた小型の三脚マストが設置され、射撃照準装置は替わりに大型化した後部艦橋に移設された。

兵装

主砲

本級の主砲は前級に引き続き「1914年型 35.6cm(45口径)砲」を採用した。その性能は重量635kgの主砲弾を最大仰角15度で射距離21,030mまで届かせる事ができる性能で、射距離18,290mで舷側装甲170mmを、射距離10,920mで305mmを貫通できる性能であった。これを新設計の三連装砲塔2基と連装砲塔2基に納めた。これにより前級と同じく10門でありながら砲塔数を減らすことが可能となり、砲塔1基浮いた分を防御装甲に回すことが出来た。砲塔の俯仰角能力は仰角15度・俯角5度で旋回は首尾線方向を0度として左右150度の旋回角度を持っていた。発射速度は毎分1.25発であった。

後述する近代化改装の折に「1933年型 35.6cm(45口径)砲」を採用した。その性能は重量680.4kgの主砲弾を竣工時の倍の仰角30度で射距離31,360mまで届かせる事ができる性能で、射距離21,400mで舷側装甲305mmを、射距離10,520mで457mmを貫通できるなど大幅な貫通力向上であった。砲塔の俯仰角能力は仰角30度・俯角5度で旋回は首尾線方向を0度として左右150度の旋回角度を持っていた。発射速度は毎分1.75発と僅かに向上した。

副砲、その他武装等

本級の副砲は前級に引き続き「Marks 7 1911年型 12.7cm(51口径)速射砲」を採用した。その性能は重量22.7kgの砲弾を最大仰角15度で射距離12,850mまで届かせる事ができる性能であった。発射速度は毎分8~9発、砲身の仰角は15度・俯角10度で動力は人力を必要とした。射界は露天では300度の旋回角度を持っていたが実際は舷側配置のために射界は制限があった。その他に対艦攻撃用に53.3m水中魚雷発射管を単装で2基を装備した。

WW1後の近代化改装により対空火器が追加され「Mark 10 1914年型 7.6cm(50口径)高角砲」を採用した。その性能は重量5.9kgの砲弾を最大仰角85度で最大射高9,270mまで届かせる事ができる性能であった。発射速度は毎分15~20発、砲身の仰角は85度・俯角15度で動力は人力を必要とした。。射界は露天では360度の旋回角度を持っていたが実際は上部構造物により射界は制限があった。これを単装砲架で計8基装備した。他に近接対空用にブローニング社の「12.7mm(50口径)機銃」を6基搭載した。これらの火器は1942年まで搭載していた。

真珠湾から復帰した「ネバダ。

1943年の復旧工事の際に本級の副武装は全て撤去され、新たに新戦艦に採用されていた「Marks 12 1934年型 12.7cm(38口径)両用砲」を採用した。その性能は重量24.5kgの砲弾を仰角45度で射距離15,903mまで、最大仰角85度で 最大射高11,887mまで届かせられ、射程4,940mで舷側装甲102mmを貫通できる事ができる性能であった。発射速度は毎分12~15発、砲身の仰角は85度・俯角15度で動力は主に電動で補助に人力を必要とした。射界は舷側方向を0度として前後に150度の旋回角度を持っていたが実際は舷側配置のために射界は制限があった。これを片舷4基ずつ計8基を搭載した。 他に近接対空火器として「ボフォース 4cm(56口径)機関砲」を四連装砲架で10基と「エリコン社製2cm(76口径)機銃」を連装砲架で20基、単装砲架で5基を搭載した。

艦歴

就役から第一次大戦後

本級は第一次世界大戦が始まる前は大西洋で活動し、戦争が始まると連合国補給線の保護支援のために1918年にヨーロッパへ展開した。その任務は大戦後も続き、1920年代の初めまで行われた。

両艦とも艦隊主力の中でも最古参の艦であった。1927年から1929年にかけて広範囲な近代化が行われ、主砲仰角の引き上げ、アメリカ戦艦の特徴でもあった籠状マストは三脚式に更新され、頂上部に射撃方位盤室が前後マスト上に設けられた。着弾観測のために水上機2基が搭載され、運用のためにカタパルト2基が設置された。老朽化した「ネバダ」のタービンはこの時期に退役した「ノースダコタ」の物と交換された。オクラホマの主機交換は行われなかった。本級の副砲は波の影響を受ける舷側部分から上部構造部分に移設され、新たに25口径5インチ対空砲が増設された。舷側部分の装甲も強化され、艦幅は33mに増加した。

第二次世界大戦

本級は2隻とも1941年12月8日の真珠湾攻撃太平洋戦争)で撃沈された。これは旧式戦艦の水雷防御対策が充分な物ではなかったことの証明であった。オクラホマは転覆し廃棄されたが、ネバダは1942年に引き上げられ最後の近代化が行われた。既存の副砲と高角砲は撤去され、替わりに「12.7cm(38口径)連装両用砲」が8基搭載され、多数のボフォース40mm機関砲およびエリコン20mm機関銃が搭載された。上部構造物は完全に変更され、司令塔は小型化された。ネバダはヨーロッパ太平洋の両戦線で上陸作戦の砲撃支援(艦砲射撃)を行うなどして活躍した。

大戦後は早々に退役し、ビキニ環礁での原爆実験(クロスロード作戦)に供用された後、1948年に標的艦として沈められた。

関連項目

外部リンク