RWS

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ストライカー装甲車に装備されているプロテクターM151 RWSM2重機関銃の下に操作用カメラが見える

RWS(Remote Weapon System、Remote Weapon Station)は、軍用装甲車などの装甲戦闘車両軍用船舶に装備されている遠隔操作式の無人銃架砲塔の事を指す。

RCWS(Remote Controlled Weapon System/Station)やOWS(Overhead Weapon Station)とも呼ばれる。

21世紀に入って実戦で使用された新しい兵器である。代表的なRWSは、市街戦などにおいて、車外に身を晒して対人銃器を操作する乗員の被害が多いことへの対策としてイスラエルラファエル社でラファエル OWSが開発され、その後、各国で同様の物が開発・配備されている。

用途

ZSMU Kobuzを装備したハンヴィー

現在、RWSは後方地域で活動する軽車両に備えられている。特に市街地など待ち伏せを受けやすい場所では、機銃手が車外に露出して警戒すると狙撃されたり、路肩爆弾に巻き込まれる危険があるため、RWSのような装置の需要が生まれる。

逆に、戦車歩兵戦闘車のように積極的な攻撃意図をもって自ら敵と交戦する戦闘車両は、RWSに頼らずとも砲塔などを備えていることが多く、導入されていない。ただし、かつては敵歩兵の肉薄を防ぐリモート機銃を備える戦車が配備されていたこともあり、必要性が出れば装備される可能性はある。

兵士は、車内から搭載カメラの映像を見ながら操作を行い、敵弾に身を晒す事無く安全に攻撃を行う事ができる。搭載カメラには暗視装置が装備されている物が多く、偵察・監視任務にも適している。

対人用の自動小銃を搭載した小型の物から、30mmクラスの機関砲を搭載した無人砲塔とでも言うべき大型の物まで存在する。一種の軍事用ロボットであり、走行中でも標的を照準に捉え続ける機能を備えている他、敵の攻撃を音などで感知して自動的に照準・反撃を行うシステムも研究開発されている[出典 1]

構成

12.7mm機関銃搭載型(ラファエル社製のサムソンRCWS
擲弾銃搭載型
  • 架台
照準装置武装が通常は360度全周旋回と俯仰が可能な架台に取り付けられる。基台より下の給弾機構を省けるものが多い。オプションでスタビライザーが付くものもある。
  • 武装
以下の兵器の1つ、または複数が、照準用光学機器と同軸に架台上に備えられる。
  • 撮影照準用光学機器
TVカメラで撮影した映像を車内のディスプレイに表示して照準操作する。レーザー距離測定機を持つものもある。
  • 車内操作装置
車内から照準・発射操作を行う。

[出典 1]

特徴

ストライカーの車内でM151 RWSを操作する兵士
M151 RWSを搭載したRG-33、左右を警戒しているのが解る
M151 RWS機関銃を点検する兵士
長所
  • 小型である。
  • 操作兵は車内や艦内の比較的安全な位置で操作できる。
  • さまざまな場所に取り付けられるように汎用性を考慮した設計がなされている。
  • 仰角が大きく取れる[出典 1]
  • 多様な型が比較的簡単に作れる。
  • カメラ画像である。
  • 望遠や赤外線、光量増感などの機能に富み、高機能なFCSの中には照準と同時に測距が行えるものがある。発見から発射までが短時間で行える。
  • ディスプレイを増やせば多くの乗員によって同時や交代で周囲視察が行なえる。外部への無線伝送の可能性もある。
短所
  • RWSだけでは周囲を素早く一覧するなど、人間の五感を発揮した索敵・状況把握が行えない。
  • 電力を失うなど作動不能時のバックアップが乏しい。
  • 露出している電子光学機器や銃砲の機関部、給弾部は銃弾や破片、自然気候によって容易に損傷を受け、故障も起きやすい。
  • 幾分高価である。
  • 視察・射撃方向が敵から容易に判る。

新たな状況

従来、戦場後方で使用される軍用車両にはそれほど武装は求められず、せいぜいピントルマウント[6]と呼ばれる棒状の銃架機関銃が1丁付いている程度だったが、20世紀末からは機動力が増し、空陸一体で戦う兵器の登場で、固定的な前線が意味を失い、従来の後方部隊であっても戦闘に巻き込まれる可能性が高くなった。

また、国軍同士が戦う従来型の戦争紛争に代わって、ゲリラとの戦闘や治安維持的な任務が求められるようになり、従来の後方補給活動で使われていたトラックのような非装甲輸送用車両と最前線で活躍した戦車のような装甲戦闘車両の中間的、または両方の機能が求められるようになった。

こういった状況に対応して、従来型の兵員輸送車や、ある程度装甲を備えた輸送的な任務がこなせる車両へ適度な武装能力を与えるためにRWSは開発された。RWSは、棒だけの銃架で車長が肩から上を車上に曝して機関銃を射撃するものと、1人や2人程度の有人砲塔によって機関砲砲撃するものとの、中間的な武装であるといえる[出典 1]

今後

注記

  1. ^ ミニミ軽機関銃を備えたプロテクター M153CROWS IIとしてアメリカ軍に採用され、ハンヴィーMRAPの自衛火器として採用された
  2. ^ イギリス軍FRESに選定され開発中のスイスピラーニャV装輪装甲車では12.7mm重機関銃を装備する
  3. ^ オーストリアパンデュールIIラファエルサムソン RCWS-30 30mm機関砲を装備するものもある
  4. ^ ノルウェーコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社製プロテクター M151は5.56-12.7mm機関銃と40mm自動擲弾発射機を選択可能で、アメリカ陸軍ストライカー装甲車ファミリーの自衛火器として採用された。72-172kgで全周旋回-20度から-60度の俯仰CCD昼光・赤外線カメラ付き
  5. ^ ラファエルサムソン RCWS-30には30mm機関砲と共にスパイク対戦車ミサイルが装備されている。
  6. ^ オーストリアのパンデュールIIは12.7mm重機関銃をピントルマウントに装備している型もある

出典

  1. ^ a b c d e 「ハイパー装輪装甲車」 (株)ジャパン・ミリタリー・レビュー 2008年11月1日発行

関連項目