MSX2
MSX2(エム・エス・エックス・ツー)とはMSX規格の一つで、1985年に発表された。
初代規格と比べてグラフィック機能が大幅に強化されている。次世代規格のMSX2+は小改造にとどまり、また後年に低価格路線を推し進めたことでユーザー数が大幅に増加したため、一連のMSX規格のうち事実上の標準と見做されることもある。
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[編集] 主な仕様
- CPU
- MSX1準拠
- VDP
- 画面モード 〔〕内はVRAM64KBの機種の場合
- SCREEN0:テキスト40×24または80×26文字(1文字6×8ピクセル) 文字・背景とも(512色中)16色パレット中1色 スプライト使用不可
- SCREEN1~3:MSX1準拠に加え、固定16色ではなく512色中16色を選択可能
- SCREEN4:グラフィック256×192ピクセル 512色中16色(横8ドット内2色まで) ライン単位色指定のスプライト使用可能(以下の画面モードも同じ)スプライト機能以外はSCREEN2と同一。
- SCREEN5:グラフィック256×212ピクセル×4画面〔2画面〕 512色中16色
- SCREEN6:グラフィック512×212ピクセル×4画面〔2画面〕 512色中4色
- SCREEN7:グラフィック512×212ピクセル×2画面〔使用不可〕 512色中16色
- SCREEN8:グラフィック256×212ピクセル×2画面〔使用不可〕 固定256色
- SCREEN9:韓国版MSX2にのみ搭載(ハングル表示用のモードで、日本国内版を含め他国版には搭載されていない)
- メインメモリー
- 64KB~
- VRAM
- 64KBまたは128KB
- サウンド
- MSX1準拠
- PPI
- MSX1準拠
メイン・メモリーが最小でも64KBと規定された。また、スロットとは別に、メイン・メモリーをバンク切り替えで増設するメモリー・マッパーがオプションで規格に加えられ、これを用いることで最大4MBまでのRAMを搭載することもできた。 メモリーマッパーはRAMページのみを拡張する仕様で、スロットとは異なりメモリーマッパー上のページを任意のスロットに割り当てることが可能な柔軟性を持つ点が、スロット上に配置されたROMやメモリーマッパー非対応RAMとの最大の違いである。 海外ではメモリーマッパーを内蔵している機種が標準とされたが、日本では内蔵していない機種もあり、メモリーマッパーを想定していないソフトウェアも存在する。MSX-DOSおよびBASICとしてはサポートされないが、メモリーマッパーはスロットへ割り当てられるため、複数のマッパーメモリーを直接操作することで、最大32MBに及ぶメインメモリーの実装、管理も理論上は可能となった。
小容量ながら乾電池によるバックアップ機能も付加され、RTCや起動時の画面モードの保存、起動時パスワードの保持、Beep音の設定保存などに排他的に使用された。
VDPはTMS9918とソフトウェア的な互換性を保ちつつ、ビットマップ画面の追加やスプライトの拡張などの性能の向上を図ったV9938へと変更された。これらにより、本格的なパソコンとしての性格を強めた。VRAMの容量は64KBまたは128KB(機種ごとに固定、拡張不可)、システムの起動時には縦スクロールして大きいMSXロゴが現れ、規格内のVRAM搭載容量が表示された。 起動時に設定されるカラーパレットのデフォルト色はMSX1に近いものに設定されたが、カラーテーブルに完全な互換性が無いため、実際にテレビに写る色は微妙に異なる。
一方で、V9938は「スプライトの同時表示枚数が強化されていない」「ビットマップの描画があまり速くない」「PCGも強化されていない」「横方向のハードウェアスクロールには対応していない」など、本格的なアクションゲームを作るには不向きだった。例えば、面ごとの多彩なスクロールが持ち味であるコナミ「魂斗羅」のMSX2移植版は画面切り換え方式になっていた。作るとしても、VRAMの使用量が比較的少なく速度的に余裕がある、16色横256ドットのモードが使用されることが多かった。CPU速度が非力なまま据え置き、かつメインRAMも標準ではVRAMに比して小容量だったことも大きかった。 後に横スムーススクロールについては表示位置の補正機能を用い、ソフトウェア的に実現するソフトウェアが現れた。
SCREEN4以上の画面モードでのスプライトはモード2とされ、横ライン毎の着色指定と、重なり合った二枚のスプライトによりスプライト1の色・スプライト2の色・両者のORを取った色・透明の4色の表示が可能となった。また、横方向に同時に表示できる枚数が4枚から8枚になり、実際の色が重なっている座標を検出する割り込みモードの追加などが強化されている。ただし、一画面同時表示が32枚までであることに代わりはない上に、重ね合わせの多色表示を行うとそれらの恩恵は利用できないという制約があったため、シューティングゲームの敵などは相変わらず単色のことも多かった。後に画面割り込みを利用して、見かけ上、倍の64枚表示を売り物にしたゲームも発売されたが、ごく特殊な例といえる。
高解像度モードも、横512ドットで、他のパソコンの640ドットに比べてドット数が少ない。
一方で、256色同時発色のモードは、少色・高解像度一辺倒だった当時のパソコンの中では異彩を放つ、充分にインパクトのある仕様だった。この後にシャープから256色表示のMZ-2500が、富士通から4096色表示のFM77AVが発売されるなど、当時の傾向に一石を投じたと言える。
なお、SCREEN5以降のモードでは、2画面切り替えでインターレース表示をする事で、縦方向の解像度を見かけ上、倍にする事が出来た。標準のBASICでは設定ができるのみで活用されてはいなかったが、後に発売された漢字BASICでは正式に使用された他、一部のゲームソフトやグラフィックツールでも使われていた。これにより、漢字表示の文字数などでは当時の他のパソコンにほぼ並ぶ事が出来た。ただし、「家庭用テレビにつなげる」はずのMSXにあっては、アナログRGB入力端子つきのテレビ・モニターを所有しているか、さもなくばRF・ビデオ出力では目立ってしまうちらつきを許容できるか、と、いささかばかりユーザーを選ぶものだった感は否めない。
サウンドではオプションとして、文字多重放送とキャプテンシステムに対応したFM音源/ADPCM音源を採用したMSX-AUDIO(Y8950)も規格に盛り込まれた。しかし松下電器産業が商品化したMSX-AUDIO対応カートリッジは、34,800円と本体価格に比して高価で、かつ対応ソフトもほとんど発売されず、普及しなかった。標準ではMSX1据え置きのPSG音源のままであり、この頃からFM音源をオプションとして用意、もしくは標準搭載され始めた他のパソコンに遅れを取っていた。この状態は1988年に松下電器産業から7,800円とより安価なFM音源カートリッジFM-PAC(MSX-MUSIC)が発売して、これがMSX-MUSICとして規格化されるまで続いた。
このような要因もあり、MSX2になってもゲームマシンとしてはファミコンに遠く及ばず、パソコンとしてもパソコン御三家などからグラフィックを書き直して移植されたものが大多数で、MSX2オリジナルのパソコン然としたソフトは少なかった。漢字ROMがオプションだったことも移植に影響した。またMSXのバンク切り替えを多用する規格上の制約からフロッピーディスクドライブなどの転送中はCPUの割り込み処理を止めざるを得なかったため、サウンドの再生が途切れる等の演出上の制約も、“チープさ”に拍車をかけていた側面は否定できない。
MSX2は当初、MSX1と並行して販売され、マーケティング上の差をつけるためにFDD・漢字ROM・マッパーメモリー(128KB~256KB)を搭載し、さらに本体・キーボードが分離するセパレートタイプで「本格的なパソコン型」の高価な製品が多かった。 これには、新規設計されたMSX-SYSTEMやMSX-SYSTEMII、V9938などの周辺チップ搭載や、8ビットパソコンとしては破格の大容量メモリーを搭載する必要があったこと等から、製造原価を押し上げてしまったという事情もある。
こうして発売後しばらくは「2~6万円のMSX1」・「10万円クラスの標準的MSX2」・「FDD・漢字ROM内蔵、キーボードセパレートタイプで20万円程度の高級MSX2」の3路線のマシンが併売された。当時はワープロ専用機の全盛期でもあり、ワープロソフトを内蔵または付属した製品は数多く、10万円クラスの製品にはプリンターと一体化した製品も存在した。
MSX2発売当初はまだメガROMカートリッジは存在せず、FDDの無い標準的仕様のMSX2ではグラフィック機能を有効に用いられる事が難しかった。また高級機は、一般向けには他の独自仕様ホビー・ビジネス機と対象が重なり、16ビット機の台頭も著しかったことから、その性能の大きな変貌とは裏腹に、一般ユーザーのMSX2への移行は緩やかなものとなった。
拡張アダプターによりMSX1規格のコンピューターをMSX2規格相当にすることができた。拡張アダプターを用いてMSX2化したマシンとMSX2とでは、VDPが接続されるI/Oポートのアドレスが異なり、MSXの規格ではVDPを拡張したコンピューターの事情も考慮してアプリケーション側でその差を検出して吸収することになっていた。しかし、アプリケーションの中には僅かな高速化のためにこの処理を省略して拡張アダプターでMSX2化した環境では動作しないものがあった。これには、この拡張アダプター発売の可能性はMSX2規格発表当初からアナウンスされてはいたが、実際に発売されたのは1986年の夏で、発売直後に拡張アダプターよりも安価なMSX2本体が出たためすぐに存在理由を失ってしまったという背景もある。
1986年秋、松下電器産業とソニーが本体・キーボード一体型の低価格機として、それぞれ定価29,800円のFS-A1と定価32,800円のHB-F1を発売する。これは前出のMSX-SYSTEMやMSX-SYSTEM II、V9938の製造設備の償却が終了し単価が大幅に下げられたことと、他社16ビットパソコンの普及でメモリーの価格が低下していたこと等の相乗効果による。その直前にメガROMカートリッジが登場したこともあり、安価に高機能グラフィックを楽しめるようになり、高額な他社のMSX2や表現力で劣るMSX1を抑え、主にゲーム機として小中学生を中心に普及した。
1987年、この両シリーズの後継モデルであるFS-A1F/HB-F1XDが登場。1基のFDDを内蔵して、定価はいずれも54,800円だった。ようやくソフトの供給メディアでは他機種と同列に並び、移植ゲームが多数発売された。また、ユーザーがそのグラフィックを中心としてデータを自由に扱える環境が整い、その後のMSX2規格を牽引していった。 両シリーズが普及したことで、MSX2以降も「キーボード一体型の、安価なオモチャのパソコン」というイメージが定着した。
一方、ソニー、松下電器産業、三洋電機以外の各社は、MSX/MSX2規格からは撤退していった。ホビーパソコンの市場は既に8ビットから16ビットの転換期にあり、パソコンから撤退したメーカーや、16ビットのAX規格にも参入するメーカーもあった。
MSX1に対応するソフトも、ROMカートリッジで供給されるゲームを中心に、MSX2+が登場する頃までは地道に作り続けられた。特にコナミなどには「MSX2に匹敵するグラフィック」を実現したソフトもあった。
MSX1・MSX2は合わせて、世界的には400万台が出荷されたと公称されている。
[編集] 参入したメーカーと発売した主な機種
(太字はVRAM64KB、斜体は本体・キーボード分離型のセパレートタイプ)
- キヤノン
- V-25,V-30F
- 三洋電機
- WAVY25F,WAVY25FD,WAVY25FK,WAVY25FS,WAVY23,WAVY-77
- WAVY-77はMSX-JE(MSX-Write)内蔵・プリンター搭載のワープロ型機種。
- WAVY25F,WAVY25FD,WAVY25FK,WAVY25FS,WAVY23,WAVY-77
- ソニー
- HB-F5,HB-F500,HB-F700,HB-F900,HB-T7,HB-T600,HB-F1,HB-F1mk2,HB-F1XD,HB-F1XDmk2
- HB-F1シリーズは漢字ROM非搭載、スピコン(CPU速度を遅くする機能)・連射ターボ(スペースキーを連射化する機能)・ポーズキー(CPU動作を停止)付き。
HB-F900はRAM256KB、FDDが2基で本体色は白と黒、別売の専用デジタイザ(HBI-F900、色は黒のみ)を接続可能。
HB-T7とHB-T600は通信モデムと漢字ROMを搭載。HB-T600はFDD1基とRAM128KBも搭載、株式ターミナルと銘打って株式パッドと専用の株式管理ソフトが同梱された。標準キーボードはオプションで、HB-F900等と同一のものを使用。
- HB-F1シリーズは漢字ROM非搭載、スピコン(CPU速度を遅くする機能)・連射ターボ(スペースキーを連射化する機能)・ポーズキー(CPU動作を停止)付き。
- HB-F5,HB-F500,HB-F700,HB-F900,HB-T7,HB-T600,HB-F1,HB-F1mk2,HB-F1XD,HB-F1XDmk2
- 東芝
- HX-23、HX-23F、HX-33、HX-34
- RGBコネクタは独自仕様。いずれも漢字ROM搭載。HX-33やHX-34にはオプションでRS-232C搭載可能、HX-23Fは標準搭載。
- HX-23、HX-23F、HX-33、HX-34
- 日本ビクター
- HC-80,HC-90,HC-95
- HC-90,HC-95(HC-90のFDD2基版)は3.58MHzのZ80Aの他に、日立のZ80上位CPUHD64180を搭載し、6.144MHzの高速動作にする「ターボモード」が存在する。PSGの音程はそのままだが、ほとんどのゲームソフトはスプライトがちらついたり画面が崩れたりと正常に動作しない。スーパーインボーズ機能と、VHDカードなどが挿せる独自のJVCスロットを外部に2基、独自の内部拡張スロットを4基備える。標準仕様のスロットは1基。MSX2+登場以降も業務用途に販売が続けられ、時期により前面パネルやキーボードコネクタ、標準搭載するメインRAM容量が異なり、前期は64KB、後期は256KBである。RGBコネクタは独自仕様のD-Sub25pin。
- HC-80,HC-90,HC-95
- 日立製作所
- MB-H3,MB-H70
- MB-H3は改造でVRAM128KBに増設できる。タブレット部分はセパレート可能。
- MB-H70は三菱ML-G30とキーボードが同一で、それ以外の箇所も酷似しておりOEMの可能性がある。漢字ROMとRAM128KB搭載。
- MB-H3,MB-H70
- 三菱電機
- メルブレイン ML-G10,ML-G30,ML-TS2,ML-TS2H
- ML-G30はセパレート機で漢字ROMとFDDとメインRAM128KB搭載。FDD搭載数とRS-232Cの有無で2モデル存在する。標準スロット1基のほか内部スロット3基搭載。
- ML-TSシリーズは松下電器産業A1・ソニーF1等と同期販売のモデム内蔵機で第2水準漢字ROMも搭載されている。ML-TS2Hは電話器が付属。
- メルブレイン ML-G10,ML-G30,ML-TS2,ML-TS2H
- 松下電器産業(現パナソニック)
- ナショナルブランド
- FS-4500,FS-4600F,FS-4700,FS-5000F2,FS-5500F1/F2
- FS-4500,4600F,4700はワードプロセッサー内蔵モデルで感熱式プリンターが内蔵されている。4600FはMSX-JE内蔵でメインRAM128KB搭載。5000F2はメインRAM128KB搭載、ワープロソフト付属。
- FS-4500,FS-4600F,FS-4700,FS-5000F2,FS-5500F1/F2
- パナソニックブランド
- FS-A1,FS-A1mk2,FS-A1F,FS-A1FM
- A1/A1mk2は漢字ROM非搭載。A1FMにはFDD1基とモデムが搭載されており価格が比較的高かった。この時点では、A1シリーズにワードプロセッサー内蔵モデルはなかった。
なお、FS-A1は松下が「パナソニック」ブランドを国内向けに使用した最初の製品である。
- A1/A1mk2は漢字ROM非搭載。A1FMにはFDD1基とモデムが搭載されており価格が比較的高かった。この時点では、A1シリーズにワードプロセッサー内蔵モデルはなかった。
- FS-A1,FS-A1mk2,FS-A1F,FS-A1FM
- ナショナルブランド
- 日本楽器(現ヤマハ)
- 大山工業(ダイセン)
- MX30A,MX30B
- 業務用途向けで機器組み込みを前提とした機体。メインRAM128KB搭載。FDDは2DD/2HD両用。なお、2HDはMSX規格外である。
- MX30A,MX30B
- NTT
- Captain Multi Station
- キャプテンシステムの端末。
- Captain Multi Station
- 大宇電子(韓国、日本国内での発売は無し)
- テレマティカ(アルゼンチン、日本国内での発売は無し)
- タレント TPC-310
この他、MSX規格に準拠した業務用(店頭端末用・工場などでの制御用・キャプテンシステム・ビデオタイトラー)の特殊な製品も存在する。
[編集] 参入を検討したメーカー
- 新日本電気/日本電気ホームエレクトロニクス(現日本電気、NECグループ各社)
- 1986年にNECでMSXとPC-6001の互換機が計画されていた事が後日NECの開発者へのインタビューにて明かされた[1]。