1980アイコ十六歳

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『1980 アイコ 十六歳』
作者 堀田あけみ
日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出文藝1981年12月号
刊本情報
出版元 河出書房新社
出版年月日 1981年12月8日
総ページ数 187
受賞
第18回文藝賞
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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1980アイコ十六歳』(1980あいこじゅうろくさい)は、堀田あけみの小説。名古屋舞台に、弓道部に所属する高校生三田アイコの学園生活を描いた物語。堀田は愛知県立中村高校在学中の1981年、本作により当時史上最年少の17歳で文藝賞を受賞した。単行本は同年12月に河出書房新社より出版されている。

好きなおしゃべりをしているときの気持ちが描写されているなど、高校生の年代の女性の気持ちを描写した小説として、同世代の共感と、他世代の評価を得た。『アイコ十六歳』のタイトルでテレビドラマ・映画も作られ、テレビドラマは続編も制作されている。『1980アイコ16歳』のタイトルで漫画版が飯塚修子の作画で発表されている。 tbsテレビの市川哲夫が、河出書房からドラマ化権をいち早く獲得。アイドルだった伊藤つかさを主演にドラマ化した。母役に加賀まりこ、先生役に大谷直子、学生起業家に三浦洋一。クラスメートに、三田寛子、遠野友理らを配し、ヒット作となった。音楽には、市川は桑田佳祐を起用すべくアミューズに打診したが、桑田はスコアは書けないと断られた。しかし、アミューズは、企画には関心を持ち、翌年富田靖子で映画化した。

あらすじ

進学校に通う弓道部員、三田アイコ16歳の目下の関心事は、一向に上達しない自身の弓道の腕前と、男子部員に媚びる女子部員・花岡紅子への憤りだった。 中学時代の級友との決別、元彼との別れ、教師との論争などに学校生活を送っていたアイコが、クラスメイトからの中絶カンパの要請を受けたり、発作的に手首を切ってみたり、同じ学校生徒の自殺などを経て、元彼の事故死を眼前で目撃する。

登場人物

主要人物

三田 アイコ(みた アイコ) / ラブたん
本作の主人公。少々名の通った進学校に通う16歳の高校生で弓道部に所属している。
夏が嫌いで冬が好き。家の屋根に登るのが趣味だが、足を滑らせ捻挫をした事もある。将来なりたいものはツアーコンダクターか通訳。アイコという名、特にカタカナである点に不満を持っている。
弓道が好きで真面目に取り組んでいるが、基本的に的に中らず、1中で喜ぶほど下手であり、友人達もそれに対して気を遣っている。震度3の地震でも眠っていたため友人から図太いとからかわれている。
川野 良太(かわの りょうた)
アイコが仄かに思いを寄せている男子弓道部員。アイコが教師の若者論をやり込めたと称賛する。毎朝電車を降りるときに、一番行儀の悪い大人の足を踏むといった所もあり、アイコに「陰険」と指摘される。
花岡 紅子(はなおか べにこ) / B子(ビーこ)
女子弓道部員に嫌われている女子部員。男子部員の前では態度が変わるいわゆる「ぶりっこ」。中学の時から弓道をやっており、その実力は高く、アイコが1級をとった時には初段となっている。
女子ばかりの時には何もせずに、男子か先輩がいるとたちまち忙しそうに仕事をしたり、「女子ばかりのクラブだったらとっくにやめていた」などと発言する。1度アイコが、その行動に対して注意をした際は身に覚えが無いと逆切れした。
テレビはほとんどNHKしか見ないため、ドラえもんを知らない。B子と呼ばれたり、彼女についての話を「B談」と称されたりする。
アイコの彼氏
小学生の頃からのアイコの幼馴染。アイコ以外の女(後にゆうと判明)と仲良くしていて、それを知ったアイコに電話でフラれる。その後、ゆうからもフラれた。落ち込んでいた時、アイコから電話でまた友達になろうと提案されるが、新しい男がいるか探りを入れてしまい電話を切られる。年末にバイクのジグザグ走行をしくじり、対向車に衝突し死亡。作中では名前が登場しないが、ひまわり屋のおばさんに「トミ坊」と呼ばれている。

弓道部

男子部員は紅子のぶりっこにすぐ騙される。

ミッチー
モック
美代子
おきょん
りんりん
ユンちゃん

高校の級友

アイコの通う高校。

平塚詩穂乃 / ゴンベ・らいてふ
アイコの同級生で親友。アイコにとっては姉貴のような存在。あだ名の由来は以下の変遷による。「しほの」→「しお」→「ごましお」→「ごんべ」。アイコは特に彼女に尊敬を込めて「らいてふ」(ライチョウではなく)と呼ぶことがある。もちろん平塚雷鳥に由来している。元気のないアイコに声をかけ、相談に乗る。アイコが基本的に何をやってもダメなことを知っており、それでも一生懸命なところを気に入っている。青少年赤十字の活動をしている。
ナッキー
クラスの生徒に、友人の友人のための中絶カンパを頼み回っている。

アイコの中学校の同級生

戸田 友紀江(とだ ゆきえ)
アイコと中学校で同じクラスで、「なぜか仲良くしてしまった」女子。アイコの家へ電話をかけ「ひまわり屋」に呼び出し、アイコの元カレが元気がないことを教えたが、アイコが素っ気ない態度を取ったため詳細までは話さず怒って帰った。口が悪く、中学生の頃もアイコとは気が合わなかったが、周りからは仲が良いと思われていた。アイコのオーバーオールを見て不良と罵った。自分は他の女と違う、と考えている。
ゆう
中学校時代のアイコの女友達で元クラスメイト。卒業式以来会っていなかったが、アイコが雑誌を立ち読みしていた時にばったり出会い、「ひまわり屋」に行く途中にアイコの元彼と出会う。中学校の時にアイコの元カレを好きであった。

その他の人物

マーコ
アイコの友人。アイコの彼氏が他の女と付き合っていることを教えた。
ひまわり屋のおばさん
アイコが小さい頃から通っている甘味処「甘党屋ひまわり」を経営する細身のおばさん。子供達の事情に詳しい。

テレビドラマ

1982年に「アイコ16歳」というタイトルで全2回、1984年に「アイコ17歳」というタイトルで全2回、の計4回がTBS系列の『日立テレビシティ』で放送された。ロケ地は神奈川県立川和高等学校

1984年版は一部キャストが変更されている。

テレビドラマ版スタッフ

(1)は1982年版のみ、(2)は1984年版のみの担当。

テレビドラマ版キャスト

1982年のキャスト
1984年からのキャスト

映画

アイコ十六歳
監督 今関あきよし
脚本 桂千穂
秋田光彦
内藤誠
今関あきよし
製作 大里洋吉
小川辰男
製作総指揮 大林宣彦
出演者 冨田靖子
河合美佐
伊神さかえ
松下幸枝
音楽 斎藤誠
サザンオールスターズ
原由子
ウエストウッド
撮影 原秀夫
編集 神谷武信
製作会社 アミューズ・シネマ・シティ
中部日本放送
配給 日本ヘラルド
公開 1983年12月17日
(同年11月19日名古屋の中日シネラマ劇場で先行ロードショー)
上映時間 98分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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出演の高校生役はすべてオーディションで選ばれ、主演のアイコ役は127,000人の応募者の中から中学3年生の富田靖子(当時は冨田靖子)が選ばれた。ロケ地は市邨学園高校富田靖子松下由樹(当時は松下幸枝)のデビュー作である。

映画監督の大林宣彦は、8ミリ映画時代から知っていた今関あきよしの若き才能を世に出すため、製作総指揮という形で参加した[1]。大林は製作会社のアミューズに今関を紹介し、シナリオに桂千穂を付けるなどの[2]事前準備まではしたものの、以降の現場にはタッチしていない。今関は現場スタッフから遊離してしまい苦労を重ね、プロデューサー格の秋田光彦はのちに専門誌『月刊シナリオ教室』3月号6頁に、「孤立無援」「それでも映画はちゃんとできた」と記している。

映画版スタッフ

映画版キャスト

主題歌・挿入歌など

  • イメージソング
    • オレンジ色の絵葉書 - 歌:富田靖子/作詞:長谷川千津、康珍化/作曲:柴矢俊彦/編曲:大谷和夫(映画本編では使用されず。EPに「イメージ・ソング」の表記あり。)
  • 挿入歌
    • Never Fall In Love Again - 歌:サザンオールスターズ/作詞・作曲:桑田佳祐
    • ゆれる想い - ウェストウッド(後の135)/作詞・作曲:高木十喜男
    • Last Single X'mas (Inst) - 作曲:桑田佳祐
  • ED曲
    • ED1:Oh!キャティー - 作詞・作曲・歌:齋籐誠 
    • ED2:恋のメモリー:三昧編 - 作詞・作曲・歌:原由子 

映像ソフト

  • ビデオ
  • レーザーディスク
HERALD VIDEOGRAM FH079-25HD CLV,CX
  • DVD

グッドバイ夏のうさぎ

『アイコ十六歳』のメイキング映画として、同時上映された。

キャスト(グッドバイ夏のうさぎ)

スタッフ(グッドバイ夏のうさぎ)

漫画版

飯塚修子の作画で、『1980アイコ16歳』のタイトルで週刊マーガレット上で連載された。昭和57年『週刊マーガレット』(集英社1982年21号から同年30号まで連載。単行本は全1巻。単行本カバーの宣伝文には“10代の共感をよんだ「ニュー学園ストーリー」の傑作”とある。作中のセリフの一部には原作者の出身地である愛知県方言と思しき訛りが含まれている。

高等学校の弓道部に所属する女子生徒達の人間関係を中心とした恋愛漫画である。弓を引く場面の描写は10ページ未満であり、試合や具体的な練習描写もなく、いわゆるスポーツ漫画ではない。胸当ては付けるが袴を着ているシーンは全くない。

単行本

脚注

  1. ^ 大林宣彦『映画、この指とまれ』徳間書店アニメージュ#レーベルアニメージュ文庫〉、1990年、123頁。ISBN -4-19-669627-9 
  2. ^ 大林宣彦・中川右介『大林宣彦の体験的仕事論 人生を豊かに生き抜くための哲学と技術』PHP研究所、2015年、279頁。ISBN 978-4569825939 

外部リンク