譲渡抵当

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譲渡抵当(じょうとていとう)またはモーゲージ(英:mortgage)は物的財産(不動産)に対する担保権であり、負債(通常は金銭の貸付)の担保として貸付人により保有される。譲渡抵当自体は負債ではなく、貸付人が負債のために有する担保である。これは、土地(又はその相当物)に対する権益の所有者から譲渡抵当貸付人への移転であり、当該権益は譲渡抵当の条件が満足されまたは履行された際に所有者に返還されるとの条件が付されている。言い換えれば、譲渡抵当は貸付人の借入人に対する貸付けのための担保である。

mortgageという言葉は、「死せる質権」を意味する法律用フランス語(Law French)であり、本来はウェールズ型譲渡抵当(Welsh mortgage)のみを指した(後記参照)が、後に中世においてあらゆる担保に適用され、民間語源により、債権が満足されまたは受戻権喪失(foreclosure)により当該財産が取得された時点で質権が終了する(死ぬ)ことを意味するものと再解釈された[1]

多くの法域においては、譲渡抵当は、不動産担保ローンとの関連が強く、その他の財産(船舶など)との関連は薄いが、法域によっては土地のみが譲渡抵当の対象となる。譲渡抵当は、個人や企業が、自己資金から全額を直ちに支払う必要なく不動産を購入するための標準的な方法である。住宅向けの譲渡抵当付き貸付けについては住宅ローンen:mortgage loan)を、商業用不動産向け貸付けについてはen:commercial mortgageを参照。

関連者と用語法[編集]

各国の法体系は、一定の概念は共通とするものの、異なる用語法を用いる。もっとも、一般論としては、譲渡抵当には以下の当事者が関連する。借入人、すなわち譲渡抵当設定者(mortgagor)が、貸付人、すなわち譲渡抵当権者(mortgagee)に対して譲渡抵当を設定するのである。

貸付人/譲渡抵当権者[編集]

譲渡抵当貸付人は、不動産上の譲渡抵当により担保された金銭を貸し付ける投資者である。今日の世界においては、多くの貸付人は、自ら貸し付けたローンを市場(en:secondary mortgage market)で売却する。譲渡抵当付きローンを売却する際には、サービス・リリース・プレミアム(en:Service Release Premium)と呼ばれる収入を得る。典型的には、ローンの目的は、借入人にとっては当該不動産の購入である。譲渡抵当権者として、貸付人は、借入人が支払を怠った場合にはローンの回収のために当該不動産を売却する権利を有する。

譲渡抵当は土地に付随するため、借入人がその不動産を誰かに譲渡しても、譲渡抵当権者はなお、借入人がローンの完済を怠った場合には当該不動産を売却する権利を有する。

買手が譲渡抵当の負担付きの不動産をうっかり購入してしまわないよう、譲渡抵当は、官公署において権原とともに登記または記録されている。借入人は、負債をひとたび支払えば、譲渡抵当の負担を権原から解除する権利を有する。

借入人/譲渡抵当設定者[編集]

譲渡抵当設定者は、譲渡抵当付き貸付けの借入人である―すなわち、譲渡抵当により担保された債務を負っている。一般に、債務者は、担保されるローンその他の債務の条件や譲渡抵当の条件に従う必要がある。そうでなければ、債務者は、通常、債権者が当該負債を回収するために譲渡抵当の受戻権喪失(foreclosure)を行うリスクを負うこととなる。典型的には、債務者は、ローンによって当該不動産を購入した自宅所有者、土地所有者又は企業である。

その他の関連者[編集]

不動産の譲渡(en:conveyance)の複雑性のため、主たる関連者の一方または双方がその法的な代理人を要することが多い。用語法は法域によって異なる。英語圏では、これはいずれも一般的な法曹、すなわち、弁護士(attorney)もしくは事務弁護士(solicitor)、または、イングランド法の影響を受けた法域(南アフリカを含む。)においては、(資格のある)不動産譲渡取扱人(en:conveyancer)である。大陸法系の法域においてはこれは公証人en:civil law notary)である。

市場の複雑な性格のため、債務者は、住宅ローン・ブローカー(en:mortgage broker)や財務顧問に対して、(典型的には最も競争的なローンを発見することにより)適切な債権者を見つけるための助言を求めることができる。

負債を担保するこの仕組みは、大陸法系の法域においては、ラテン語のhypothecaに由来する言葉(例:スペイン語のhipoteca、フランス語のhypothèque、ドイツ語のHypothekによって呼ばれ、当事者は、抵当権設定者(借入人)と抵当権者(貸付人)と呼ばれる。大陸法における抵当権は、イングランドのコモン・ロー上の担保権による譲渡抵当(mortgage by legal charge)またはアメリカのリーエン理論の譲渡抵当に相当する。

歴史[編集]

アングロ=サクソン法とノルマン法[編集]

イングランド法において金銭の支払を土地によって担保することは、アングロ=サクソン期(en:Anglo-Saxon England)にまで遡るが[2]、 当時は利息付き貸付けは違法であった。主要な方法はwadset(中世英語:wedset)であり、これは、売買の形式をまとった貸付けであった。借入人(担保権設定者(reverser))は、証書(charter)によって貸付金を約因(consideration)として単純封土権(fee simple)を有する土地を貸付人(担保権者(wedsetter))に対して譲渡し、貸付人は受戻しにより当該土地を2つ目の証書によって担保権設定者(reverser)に返還した。この仕組みの欠点は、担保権者(wadsetter)は当該不動産の絶対的な所有者であり、これを売却することも、その担保権設定者(reverser)への返還を拒絶することもでき、担保権設定者(reverser)は、さらに返済の主要な手段を奪われていることもあって、弱い立場にあった。後世においては、wadsetと(担保権設定者(reverser)に人的権利としての復帰権(reverter)を付与する)復帰権証書(bond of reversion)が同時に締結されるようになった。

もう1つの方法は、ノルマン法から輸入された、物的財産に対する用益権質権であり、gage of land(土地質権)と呼ばれる。質権(gage)においては、借入人(質権設定者(gagor))は貸付人(質権者(gagee))に対して、所有権ではなく占有を、無期限で返済時までとの条件で譲渡した。この担保は以下の2つの形態をとる。

  • 生ける質権(living gage;アングロ=ノルマン:vif gage):土地から派生する賃料、収益および農産物が負債を減少させる(すなわち、負債は自動的に返済される。)。
  • 死せる質権(dead gage;アングロ=ノルマン:mort gage):賃料および収益は利息の代わりに取得され、負債を減少させない。[3]

質権は貸付人にとっては魅力的ではなかった。なぜなら、質権設定者(gagor)は新侵奪(en:nobel disseisin)を用いて質権者(gagee)を容易に追い出すことができ、質権者(gagee)は―ut de vadio(担保として)有するだけの立場であるため―自由土地保有者(freeholder)の有する占有回復の救済手段を行使することができなかったためである[4]。こうして、収益性の低い生ける質権(living gage)は用いられないようになったが、死せる質権(dead gage)はウェールズ型譲渡抵当(Welsh mortgage)として用いられ続け、1922年に廃止された。

後期中世[編集]

13世紀までに―イングランドと大陸において―質権(gage)は強化され、一定の年数に期間が制限されるとともに、当該期間満了後に負債が返済されなければ権原は貸付人に没収される旨の没収条項(lex commissaria)が挿入された。すなわち、当該年数の期間を経て自動的に単純封土権(fee simple)に転化するのである。これはshifting feeと呼ばれ、これによって貸付人は返還のための手段を十分に行使することができることとなった。しかしながら、国王裁判所はやがてshifting feeを尊重しなくなった。なぜなら、en:livery of seisin(すなわち、正式な譲渡)が存在しないし、国王裁判所は土地保有権(tenure)の拡大を認めなかったためである。[5]

解決方法は、wadsetと没収付き質権(gage)を統合し、2つの文書により構成される単一の取引とすることであった。すなわち、(1)貸付人に対する封土の、または一定年数の絶対的な譲渡証書(charter)と(2)貸付けを証し、これが返済された場合には土地が借入人に返還されるが、そうでなかれば貸付人が権原を保持する旨を規定する証書(権利消滅条件証書(defeasance))。返済期限内に返済されれば、貸付人は、返還証書(reconveyance deed)を用いて権原を返還する。これが、古典的な譲渡抵当であり、すなわち、mortgage by charter and reconveyance(証書と権利消滅条件証書による譲渡抵当)である。[6] 譲渡抵当権者は必ずしも占有を取得しなかったため、譲渡抵当権者が訴権を有し、かつ、譲渡抵当設定者への復帰を約している場合には、譲渡抵当は適切な担保であった。こうして、譲渡抵当は土地の譲渡とされ、表面的には絶対的で単純封土権(fee simple)を譲渡するものであったが、実際には条件付きで一定の条件が成就した場合には何ら効力を有しないものであった。

負債は、形式上絶対的であり、質権(gage)とは異なって、農作物や家畜の育成・売却または担保目的土地において育成された農作物や家畜の単なる譲渡による返済のみに条件付きで依存するということはなかった。譲渡抵当付き負債は、当該土地が負債の返済に十分な所得を生産したか否かにかかわらず存続した。理論的には、譲渡抵当においては、貸付人は(例えば返済として農作物や家畜を受領するといった)追加的な段階を踏むことを何ら要しなかった。

ルネサンス以降[編集]

しかしながら、借入人が負債の返済を1日でも遅れると、借入人は、その土地は貸付人に没収され、にもかかわらず依然として負債を負担していた[7]。やがて衡平法裁判所は借入人の利益を保護するようになり、そしてサー・フランシス・ベーコン(1617-21)[8]の下で、借入人は、すでに返済期限後であっても受戻しによる返還を求める絶対的な権利を有することとなった。この借入人の権利はen:equity of redemption(受戻権)と呼ばれる。

この仕組みは、貸付人は理論上は絶対的所有者であるものの、実際には所有権としての実際的な権利はほとんど有しておらず、多くの法域においては不器用に不自然だと考えられた。制定法によってコモン・ローの地位は変更され、譲渡抵当設定者は所有権を保持することとなったが、譲渡抵当権者の権利(受戻権喪失(foreclosure)、売却権限(power of sale)および占有を取得する権利など)は保護された。米国においては、この方法で譲渡抵当の本質を改めた州はリーエン州と呼ばれる。同様の効果はイングランドおよびウェールズにおいても1925年財産権法(Law of Property Act 1925)によって達成され、これにより単純封土権の譲渡としての譲渡抵当は廃止された。

17世紀から、貸付人は、受戻権(en:equity of redemption)原則の下で被担保ローンを超えて当該土地から利益を得ることは禁止された。契約を通じて転換社債と類似する方法で不動産のエクイティ的利益を取得しようとする貸付人の試みは、裁判所により"足枷(clogs)"であるとして妨げられたが、1980年代と1990年代に、とりわけ「契約の自由」に回帰する理論家の関心により、この原則が緩和されることで進展した。[9]

債務不履行と分割された不動産[編集]

ある土地が譲渡抵当付きで購入され、その後分割されて売却された場合、"inverse order of alienation rule"(譲渡の逆順序ルール)が適用され、不払の負債について責めを負う当事者が決定される。

ある譲渡抵当付き土地が分割されて売却された場合、債務不履行時には、譲渡抵当権者による受戻権喪失は、最初に譲渡抵当設定者が依然として所有する土地について行い、それから他の所有者に対して、売却されたときとは「逆順序」で行うこととなる。例えば、アリスが3エーカーの譲渡抵当付き土地を取得し、これを1エーカーずつ3つ(X、YおよびZ)に分割して、Yをボブに売却し、その後Zをチャーリーに売却し、Xは自身の下に留めたとする。債務不履行時には、譲渡抵当権者は最初にXに対して(すなわち譲渡抵当設定者に)かかっていくこととなる。もしXに対する受戻権喪失または取戻し(repossession)によっては負債が完全には満足させられなかった場合、譲渡抵当権者はY(ボブ)、続いてZ(チャーリー)に対してかかっていくこととなる。その理由は、最初の購入者がよりエクイティーを有し、続く購入者は薄められた持分しか受領しないということである。

法的側面[編集]

譲渡抵当はコモン・ロー上のものでも衡平法上のものでもあり得る。さらに、譲渡抵当は異なる法律構成の中から1つを採用することができ、その利用可能性は譲渡抵当の設定される法域によって異なる。英米法系の法域においては2つの主要な形態の譲渡抵当を発達させた。不動産権利譲渡による譲渡抵当(mortgage by demise)とコモン・ロー上の担保権による譲渡抵当(mortgage by legal charge)である。

不動産権利譲渡による譲渡抵当[編集]

不動産権利譲渡による譲渡抵当(mortgage by demise)においては、譲渡抵当権者(貸付人)は、ローンが返済されまたはその他の譲渡抵当付き債務が完全に満足させられる(受戻し(redemption)と呼ばれる。)まで、譲渡抵当付き不動産の所有者となる。この種の譲渡抵当は、不動産の債権者に対する譲渡という形態をとり、これには受戻しによって当該不動産が返還されるとの条件が付されるのである。

不動産権利譲渡による譲渡抵当は譲渡抵当の本来の形態であり、引き続き多くの法域(米国のごく一部の州を含む。)において用いられている。多くの他の英米法系の法域は不動産権利譲渡による譲渡抵当の使用を廃止するかまたは最小限のものとしている。例えば、イングランドおよびウェールズにおいては、この種の譲渡抵当は、2002年土地登記法(the Land Registration Act 2002)により、土地の登記された権益に関してはもはや利用することはできない(登記されていない権益については引き続き利用可能)。

コモン・ロー上の担保権による譲渡抵当[編集]

コモン・ロー上の担保権による譲渡抵当(mortgage by legal charge)、テクニカルには「コモン・ロー上の譲渡抵当の方法によるものとして表現された捺印証書による負担(a charge by deed expressed to be by way of legal mortgage)[10]においては、債務者は依然として当該不動産のコモン・ロー上の所有者であり、債権者は当該不動産に対してその担保を実行することを可能とするのに十分な権利(例えば、当該不動産の占有を取得し、またはこれを売却する権利)を取得する。

貸付人を保護するため、コモン・ロー上の担保権による譲渡抵当は通常は公記録において記録される。譲渡抵当付き負債はしばしば債務者の負う最も大きな負債であるため、銀行やその他の譲渡抵当付き貸付人は、すでに当該債務者の不動産について登記された譲渡抵当でさらに優先し得るものがないか確認するため、不動産について権原の調査を行う。租税リーエンは、場合によっては、譲渡抵当に優先することがある。そのため、借入人が不動産税を滞納している場合、銀行はしばしば金銭を支払って、リーエン保有者による受戻権喪失および譲渡抵当の抹消を防止する。

この種の譲渡抵当は、米国において最も通常であり、1925年財産権法(en:Law of Property Act 1925)以降は[10] イングランドおよびウェールズにおいても譲渡抵当の通常の形態である(現在では、土地に対する登記された権益に関しては唯一の形態である―前記参照。)。

スコットランドにおいては、コモン・ロー上の担保権による譲渡抵当は、標準担保(Standard Security)とも呼ばれる[11]

パキスタンにおいては、コモン・ロー上の担保権による譲渡抵当は、銀行が融資を担保するための最も通常の方法である[要出典]。これは登記譲渡抵当(registered mortgage)とも呼ばれる。コモン・ロー上の担保権の登記後、銀行の担保権は、土地登記において登記され、当該不動産は譲渡抵当に服し、当該銀行からNOC(No Objection Certification; 無異議証書)を取得しない限り売却できない旨が記録される。

衡平法上の譲渡抵当[編集]

衡平法上の譲渡抵当(equitable mortgage)は、コモン・ロー上の譲渡抵当の基準を満たさないが、衡平法上は(正義の観点から)譲渡抵当とされるものである。なぜなら、金銭が貸し付けられ、担保が約束されているからである。これは、手続的または書面上の問題によって発生し得る。定義上、さまざまな状況において衡平法上の譲渡抵当が発生し得る[12]。1961年時点では、イングランド法においては、衡平法上の譲渡抵当権者が売却を許容されるには裁判所の事前の同意が必要とされていた[13]。借入人が権原捺印証書(title deed)を貸付人に預託した場合には、イングランドにおいては、歴史的に、これによって衡平法上の譲渡抵当が創設されるものとされていた。しかしながら、この方法による譲渡抵当の創設は、米国においてはより不確実である[14]

衡平法上の譲渡抵当においては、貸付人が保護を受けるには、当該不動産の権原書類の原本の全ての占有を取得し、借入人が権原捺印証書預託覚書(Memorandum of Deposit of Title Deed; MODTD)に署名することが必要である。この文書は、借入人が、銀行から受ける融資を担保するために権原書類を自己の希望と意思によって当該銀行に預託した旨を証するものである。

受戻権喪失とノン・リコース・ローン[編集]

多くの法域においては、貸付人は、一定の条件―主として、譲渡抵当付きローンの不払―が適用される場合には、譲渡抵当付き不動産に対して受戻権喪失(en:foreclosure)を行うことができる。その後、現地法上の要件に従って、当該不動産は売却される。売却により得られた金額(費用を控除後のもの)は担保されていた負債に充当される。

法域によっては、特に米国においては、[15] 譲渡抵当付きローンはノン・リコースである。すなわち、譲渡抵当付き不動産の売却によって回収した金額が負債の残高に足りない場合、貸付人は受戻権喪失(foreclosure)後に借入人に対して遡及(リコース)することができない。その他の法域においては、借入人は、不足金判決(en:deficiency judgment)に基づいて残存する負債について責任を負う。法域によっては、最初の譲渡抵当はノン・リコース・ローンであるが、2番目以降はリコース・ローンである。

受戻権喪失(foreclosure)および譲渡抵当付き不動産の売却については特定の手続がほぼ必ず適用され、関連する政府によって厳格に規制される。ある法域においては、受戻権喪失および売却は迅速に行われるが、法域によっては、受戻権喪失に何ヶ月もあるいは何年もかかることもある。多くの国においては、貸付人の受戻権喪失を行う能力は厳しく制限されており、譲渡抵当付きローンの市場の発展は顕著に遅れている。

米国における譲渡抵当[編集]

譲渡抵当の証書の種類[編集]

米国においては譲渡抵当の証書としては2種類が用いられる。すなわち、譲渡抵当証書(mortgage;譲渡抵当捺印証書(mortgage deed)とも)と信託捺印証書(deed of trust)である[16]

譲渡抵当証書[編集]

ほとんどの州においては、譲渡抵当は譲渡抵当付き不動産に対する権原(title)の上にリーエンen:lien)を創設するものである。当該リーエンの受戻権喪失(en:foreclosure)は、常に、負債が履行期限が到来し債務不履行となっていることを宣言し、当該負債の支払のために当該不動産の売却を命じるための裁判手続が必要である[要出典]。多くの「譲渡抵当証書(mortgage)」には売却権限(power of sale)条項(裁判外受戻権喪失(nonjudicial foreclosure)条項とも)が含まれており、信託捺印証書(deed of trust)と同等のものとなっている。カリフォルニアにおける多くの「譲渡抵当証書(mortgage)」は現に信託捺印証書(deed of trust)である[17]。実際上の違いは、受戻権喪失(foreclosure)の手続が、譲渡抵当証書(mortgage)よりも信託捺印証書(deed of trust)のほうがずっと早いことである。順に、3ヶ月と1年の近いがある。受戻権喪失に裁判所の行為を必要としないため、取引費用がずっと低減され得る[要出典]

信託捺印証書[編集]

信託捺印証書(deed of trust)は、負債を担保する目的における受託者に対する借入人の捺印証書(deed)である。多くの州においては、その条件にかかわらず、これはリーエン(lien)を創設するだけであり、権原(title)の移転をもたらすものではない。譲渡抵当証書(mortgage)と異なるのは、多くの州においては、売却権限(power of sale)を通じて受託者による行われる裁判外の売却によって受戻権喪失(foreclosure)を行うことができる点である[18]。裁判手続を通じて受戻権喪失を行うこともまた可能である[要出典]

負債の返済を担保するための信託捺印証書(deed of trust)は、その他の目的(遺産計画など)のための信託を設定するために用いられる信託証書(en:trust instrument:これも信託捺印証書(deed of trust)と呼ばれることがある。)と混同されてはならない。形式上は表面的な類似性はあるものの、多くの州においては、負債の返済の担保のための信託捺印証書(deed of trust)は真の信託の仕組みを創設するものではないとされている[要出典]

担保捺印証書[編集]

負債担保捺印証書(deed to secure debt)は、ジョージア州においては用いられる譲渡抵当の証書である。譲渡抵当証書(mortgage)とは異なり、担保捺印証書(security deed)は物的財産を負債の担保のために現に譲渡するものである。この捺印証書(deed)の締結により、権原は譲受人(grantee)または受益者(beneficiary)(通常は貸付人)に移転するが、譲渡人(grantor)(債務者)は譲渡された土地に対して負債契約を遵守しつつこれを使用し収益する衡平法上の権原(equitable title)を維持する。

担保捺印証書(security deed)は当該土地の所在する郡において記録されなければならない。当該捺印証書(deed)を提出すべき特定の期限はないが、負債担保捺印証書(deed to secure debt)の適時における記録を怠ると優先権に影響し得るし、目的となる不動産に対して負債の回収のために執行を行う能力にも影響し得る[19]

「権原理論」と「リーエン理論」[編集]

米国においては、州によっては「権原理論(title theory)」であるが、多くの州は「リーエン理論(lien theory)」である[20]。リーエン理論(lien theory)の州においては、譲渡抵当証書(mortgage)または信託捺印証書(deed of trust)は、譲渡抵当に供される物的財産に対する権原(title)に対して譲渡抵当リーエン(lien)を創設するものであり、譲渡抵当設定者(mortgagor)はコモン・ロー上の権原(legal title)も衡平法上の権原(equitable title)も両方とも保有し続けることとなる。権原理論(title theory)の州においては、譲渡抵当は、負債を担保するためのコモン・ロー上の権原(title)の移転であり、譲渡抵当設定者(mortgagor)は衡平法上の権原(equitable title)を引き続き保有する[21]

優先権[編集]

リーエン(lien)が権原(title)に「付着する(attach)」のは、譲渡抵当証書(mortgage)が譲渡抵当設定者(mortgagor)によって署名されて譲渡抵当権者(mortgagee)に交付され、かつ、譲渡抵当設定者(mortgagor)が譲渡抵当によりその返済が担保される金銭を受領した時点であるとされる。当該土地の所在する州の記録(recording)に関する法律における要件に従って、この付着により、譲渡抵当付きリーエンの、当該不動産に対する権原(title)上の他の多くのリーエンに対する優先権が設定される[22][23] 。譲渡抵当リーエンの前に権原(title)に付着していたリーエンは、譲渡抵当リーエンに優先する。後で付着したものは、劣後する。[24]この優先順位の目的は、リーエン保有者が負債の回収を試みて自身のリーエンについて受戻権喪失を行う際に順位を設定することである。ある不動産に対する権原(title)上に複数の譲渡抵当リーエンがあり、第1順位の譲渡抵当により担保されたローンが完済された場合、第2順位の譲渡抵当リーエンの順位が上昇し、当該権原(title)上の新たな第1順位の譲渡抵当リーエンとなる。この新たな順位を文書化するには完済されたローンを担保する譲渡抵当の解除を要することとなる。

債権譲渡[編集]

譲渡抵当は、譲渡抵当約束手形(en:mortgage note)とともに他の当事者に譲渡assignment)され得る。法域によっては、約束手形の譲渡は黙示の譲渡抵当の譲渡であるとされるが、他の法域では、衡平法上の権利が創設されるに過ぎないと主張される。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Coke, Edward. Commentaries on the Laws of England. "[I]f he doth not pay, then the Land which is put in pledge upon condition for the payment of the money, is taken from him for ever, and so dead to him upon condition, &c. And if he doth pay the money, then the pledge is dead as to the Tenant(もし彼が支払わねば、当該金銭の支払のための条件の下で質入れされたる当該土地は、彼より永遠に取得されることとなり、したがって、彼にとっては条件等の下で死せるものである。また、もし彼が当該金銭を支払えば、当該質権は質権者にとって死せることとなる。)" 
  2. ^ Jones, Leonard Augustus (1904). A treatise on the law of mortgages of real property, Volume 1. . Link - Google ブックス
  3. ^ Constance Berman, "Gage", in Medieval France: An Encyclopedia, ed. William W. Kibler (New York: Garland, 1995), 380.
  4. ^ Christopher McNall, "Mortage: English Common law", Oxford International Encyclopedia of Legal History, vol.2, ed. Stanle N. Katz (Oxford: Oxford UP, 2009), 188.
  5. ^ The Jersey Law Commission, Consultation Paper: Security on Immovable Property, (8), [pdf], p. 2.
  6. ^ McNall, p. 188.
  7. ^ The Jersey Law Commission, Consultation Paper: Security on Immovable Property, (8), [pdf], p. 2.
  8. ^ McNall, p. 189; Lord Chancellor and head of the Court of Chancery from 1617-1621.
  9. ^ Shanker M. (2003). Will Mortgage Law Survive? Case Western Reserve Law Review 54:1.
  10. ^ Nemo Loans Jargon Buster”. Nemo Personal Finance Ltd. 2009年2月10日閲覧。
  11. ^ Davis G. (1956). The Equitable Mortgage in Kansas. Kansas Law Review.
  12. ^ Hannigan ASJ. The Imposition of Western Law Forms upon Primitive Societies. Comparative Studies in Society and History.
  13. ^ Cocke WA. Equitable Mortgage by Deposit of Title Deeds-The American and English Rule. The Central Law Journal.
  14. ^ Ghent, Andra C. and Kudlyak, Marianna, Recourse and Residential Mortgage Default: Evidence from U.S. States. Review of Financial Studies, Sept. 2011. The authors classify 11 states as nonrecourse.
  15. ^ Kratovil, Robert; Werner, R. (1988). Real Estate Law (9th ed.). Prentice-Hall, Inc.. Sec 20.09. ISBN 0-13-763343-2. 
  16. ^ Alliance Mortgage Co. v. Rothwellにおけるカリフォルニアの物的財産法の背景となる原則に関する議論を参照。10 Cal. 4th 1226, 1235-1238 (1995).
  17. ^ Kratovil, Robert; Werner, R. (1988). Real Estate Law (9th ed.). Prentice-Hall, Inc.. Sec 20.09(b). ISBN 0-13-763343-2. 
  18. ^ Security Interests in Georgia, By Steven M. Mills of Steven M. Mills, P.C.[1] (1999).
  19. ^ Kratovil, Robert; Werner, R. (1981). Modern Mortgage Law and Practice (2nd ed.). Prentice-Hall, Inc.. Sec 1.6. ISBN 978-0-13-595744-8. 
  20. ^ U.S. Bank v. Ibanez, Massachusetts Supreme Judicial Court, SJC-10694, January 7, 2011, page 12. Bank Stocks Slump On Foreclosure Ruling, New York Times Dealbook 参照。
  21. ^ その例外には、不動産租税リーエンや、多くの州においては、職工のリーエン(en:mechanic's lien)がある。
  22. ^ 前に設定された譲渡抵当の記録の懈怠は、状況によっては、後続の譲渡抵当権者(mortgagee)の譲渡抵当に対して、そうでなければ優先していたはずの譲渡抵当に対する優先権が認められることとなり得る。
  23. ^ 当然ながら、リーエン保有者は劣後特約によって異なる順位の取決めを行うことができる。R. Kratovil and R. Werner Modern Mortgage Law and Practice Chs. 30 & 38 (2nd Ed. Prentice-Hall, Inc.)を参照。