フェルミ推定
フェルミ推定(-すいてい、Fermi estimate)とは、実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算すること。オーダーエスティメーションともいわれる。
その際の問いかけのほうをフェルミ問題(-もんだい、Fermi problem/Fermi question)と呼ぶことがある。名前は物理学者のエンリコ・フェルミに由来する。フェルミはこの手の概算を得意としていた。
フェルミ推定はコンサルティング会社や外資系企業などの面接試験で用いられることがあるほか、欧米では学校教育で科学的な思考力を養成するために用いられることもある[1]。
フェルミ推定という語句が日本に入ってきたのは、『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス』(スティーヴン・ウェッブ著、松浦俊輔訳、青土社、2004年、ISBN 978-4791761265)が最初だろうと細谷功は述べている[2]。ただしこのような考え方自体は、理工系学部では講義などで教えられていた。
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[編集] 具体例
例えば「東京都内にあるマンホールの総数はいくらか?」「地球上に蟻は何匹いるか?」など、見当もつかないような量を推定する。
フェルミ推定で特に知られているものは、「アメリカのシカゴには何人(なんにん)のピアノの調律師がいるか?」を推定するものである。これはフェルミ自身がシカゴ大学の学生に対して出題したとされている[3]。
この問題に対して、例えば次のように概算することができる。
まず以下のデータを仮定する。
- シカゴの人口は300万人とする
- シカゴでは、1世帯あたりの人数が平均3人程度とする
- 10世帯に1台の割合でピアノを保有している世帯があるとする
- ピアノ1台の調律は平均して1年に1回行うとする
- 調律師が1日に調律するピアノの台数は3つとする
- 週休二日とし、調律師は年間に約250日働くとする
そして、これらの仮定を元に次のように推論する。
- シカゴの世帯数は、(300万/3)=100万世帯程度
- シカゴでのピアノの総数は、(100万/10)=10万台程度
- ピアノの調律は、年間に10万件程度行われる
- それに対し、(1人の)ピアノの調律師は1年間に250×3=750台程度を調律する
- よって調律師の人数は10万/750=130人程度と推定される
フェルミ推定では、前提や推論の方法の違いによって結論にかなりの誤差を生じることもある。 フェルミ推定を模倣したケーススタディと呼ばれるテストが、80年代90年代のアメリカ企業の採用活動でよく行われていた。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- デジタル大辞泉の「フェルミ推定」[1]の項目と、「オーダー‐エスティメーション」[2]の項目を参照のこと。
- 細谷功 『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』 東洋経済新報社、2007年、ISBN 978-4492555989。
- 村上綾一 『絶妙な「数字で考える」技術』 明日香出版社、2008年、12-32頁、ISBN 978-4756911582。
- ローレンス・ワインシュタイン・ジョン・A・アダム著、山下優子・生田りえ子訳 『サイエンス脳のためのフェルミ推定力養成ドリル』 日経BP社、2008年、ISBN 978-4822283698。
- 畑村 洋太郎 (著) 「数に強くなる (岩波新書) 」岩波書店 (2007/02)
- 関根 一昭 (著) 「理系力が高まる痛快ゼミナール」 日本実業出版社 (2004/03)
- Lawrence M. Krauss (原著), 青木 薫 (翻訳) 「物理の超発想―天才たちの頭をのぞく 」講談社 (1996/04)