フィチン酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

フィチン酸
フィチン酸の構造式
別名 IP6
分子式 C6H18O24P6
分子量 660.08 g/mol
CAS登録番号 [83-86-3]
形状 淡褐色油状
SMILES C1(OP(=O)(O)(O))C(OP(=O)(O)(O)) C(OP(=O)(O)(O))C(OP(=O)(O)(O)) C(OP(=O)(O)(O))C1(OP(=O)(O)(O))

フィチン酸(フィチンさん、phytic acid)は生体物質の一種で、myo-イノシトールの六リン酸エステルmyo-イノシトール-1,2,3,4,5,6-六リン酸(myo-inositol-1,2,3,4,5,6-hexaphosphate または hexakisphosphate または hexakis(dihydrogenphosphate))ともいう。略称は IP6。組成式は C6H18O24P6分子量は 660.08、CAS登録番号は [83-86-3]。種子など多くの植物組織に存在する主要なリンの貯蔵形態であり、特にフィチン(Phytin: フィチン酸のカルシウムマグネシウム混合塩で、水不溶性)の形が多く存在する。キレート作用が強く、多くの金属イオンを強く結合する。


フィチン酸の形のリンは、非反芻動物ではフィチン酸消化酵素であるフィターゼ(フィチン酸を加水分解しリン酸を遊離する)がないため、一般に吸収されにくい。一方反芻動物はルーメン(反芻胃)内の微生物によって作られるフィターゼがこれを分解するためフィチンを利用できる。現在非反芻動物(ブタニワトリなど)は主にダイズトウモロコシなどの穀物で肥育されているが、これらに含まれるフィチンは動物に吸収されずに腸管を通過するため、自然界のリン濃度を上昇させ、富栄養化などの環境問題につながる恐れがある。飼料にフィターゼを添加することでフィチン由来のリンの吸収を増すことができる。またいくつかの穀物で、種子のフィチン酸含量を大幅に低下させ無機リン含量を上昇させた品種が作出されている。しかし生育に問題があることからこれらの品種は広く利用されるに至っていない。

フィチン酸は亜鉛など重要なミネラルに対して強いキレート作用を示すため、特に発展途上国ではミネラル不足の原因となっている可能性がある。一方、この性質が腸管での酸化ダメージを減らすことで大腸がんの予防に役立つ可能性がある。また詳しい機序は明らかでないが、抗がん作用が指摘され、がん治療への利用が研究されている。

フィチン酸の pKa値は現在のところ不明である。

[編集] 外部リンク