カインとアベル

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「アベルを死へと導くカイン」(ジェームズ・ティソ画)

カインとアベルは、旧約聖書創世記』第4章に登場する兄弟のこと。アダムとイヴの息子たちで兄がカインקַיִן)、弟がアベル(הֶבֶל)である。人類最初の殺人の加害者・被害者とされている。

カインとは本来ヘブライ語で「鍛冶屋、鋳造者」を意味し、追放され耕作を行えなくなったカインを金属加工技術者の祖とする解釈も行われている。

創世記の記述[編集]

カインとアベルは、アダムとイヴ(エバ)がエデンの園を追われた(失楽園)後に生まれた兄弟である。また、この二人の弟にセトがいる。カインは長じて農耕を行い、アベルは羊を放牧するようになった。

ある日2人は各自の収穫物をヤハウェに捧げる。カインは収穫物を、アベルは肥えた羊の初子を捧げたが、ヤハウェはアベルの供物に目を留めカインの供物は無視した。嫉妬にかられたカインはその後、野原にアベルを誘い殺害する。その後、ヤハウェにアベルの行方を問われたカインは「知りません。私は弟の監視者なのですか?」と答えた。これが人間のついた最初の嘘としている。しかし、大地に流されたアベルの血はヤハウェに向かって彼の死を訴えた。カインはこの罪により、エデンの東にあるノド(נוֹד、「流離い」の意)の地に追放されたという。この時ヤハウェは、もはやカインが耕作を行っても作物は収穫出来なくなる事を伝えた。また、追放された土地の人たちに殺されることを恐れたカインに対し、彼を殺す者には七倍の復讐があることを伝え、カインには誰にも殺されないための刻印をしたという。

カインは息子エノクを儲け、ノドの地で作った街にもエノクの名をつけた。

ヨベル書・エノク書での記述[編集]

エチオピア正教会の聖典『ヨベル書』(他の教会では偽典とされる)によれば、カインは第2ヨベル第3年週にアダムの妻から長男として生まれた。妻は同ヨベルの第5年週に生まれた妹のアワンである。

旧約聖書偽典、エチオピア語『エノク書』第22章には、冥界を訪れたエノクが大天使ラファエルの案内で死者の魂の集められる洞窟を目撃した事が記されている。それによると、アベルの霊はその時代になってもなお天に向かってカインを訴え続けており、カインの子孫が地上から絶える日まで叫び続けるという。

子孫[編集]

アベルの死を嘆くアダムとイヴ(ウィリアム・アドルフ・ブグロー画)

カインの子孫であるトバルカインは「青銅や鉄で道具を作る者」と『創世記』第4章に記されている。また、トバルカインの異母兄弟であるヤバルは遊牧民、ユバルは演奏家の祖となった。さらに彼らの父であるレメクは戦士だったらしく「わたしは受ける傷のために人を殺し、受ける打ち傷のために、わたしは若者を殺す。 カインのための復讐が七倍ならば、レメクのための復讐は七十七倍」と豪語している。

ベオウルフ』に登場する魔人グレンデルはカインの末裔とされている。

後世への影響[編集]

親の愛をめぐって生じた兄弟間の心の葛藤等を指すカインコンプレックスは、この神話から名付けられたものである。小説および映画『エデンの東』のほか、小野不由美のホラー小説・屍鬼ではカインとアベルが重要なファクターとして登場するなど、この二人の物語を題材にした作品も多い。

カインとアベルは兄弟の代名詞でもあり、「運命的な兄弟」を暗示させる言葉として下記作品のタイトルにも使用されている。

関連項目[編集]