アクシスジカ

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アクシスジカ
アクシスジカ
アクシスジカ Axis axis
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
: 偶蹄目 Artiodactyla
亜目 : 反芻亜目 Ruminantia
: シカ科 Cervidae
亜科 : シカ亜科 Cervinae
: アクシスジカ属 Axis
: アクシスジカ A. axis
学名
Axis axis
(Erxleben, 1777)[2]
和名
アクシスジカ
英名
Chital
亜種

Chital range map.png

アクシスジカ(学名:Axis axis[3])は、シカ科アクシスジカ属に分類されるシカの一種。

名前と分類[編集]

インドの森では最も普通に見られるシカの仲間であり、多くの地方名を持つ。本種はチタール (chital) と呼ばれることもあるが、これベンガル地方の言葉で「斑点のある」という意味である。本種はいわゆる単型であり、本種だけでアクシスジカ属 (Axis) を構成する。かつてはこの属には本種の他にHyelaphus亜属の3種が含まれていたが、Hyelaphus亜属については遺伝子による分類に基づいて属への格上げが行われたため、本種とは属単位で異なることになった[4][5]

本種は以下の2つの亜種で構成される。

Axis axis axis
基亜種。
Axis axis ceylonensis

分布[編集]

南アジア地域、インド(ただし北部を除く)を中心にバングラデシュネパールブータンを原産地とする。亜種 Axis axis ceylonensisスリランカに生息する。

いくつかの国に外来種として定着しており、オーストラリアクイーンズランドチリアルゼンチンウルグアイアメリカ合衆国テキサス州フロリダ州カリフォルニア州の一部地域、それにクロアチアブリユニと呼ばれる地域でアドリア海に浮かぶ無人島Velki Brijun Islandにも分布している。

本種は落葉性もしくは半常緑性の森林や開けた草原で頻繁に見かけることが出来、数も多い[6]最も生息数が多いのはインドの森でそこでは背の高い草や低木を食べて暮らしている[7] ブータンの国立公園である「Phibsoo Wildlife Sanctuary」の森でも見つかっている。この公園は天然のサラソウジュ Shorea robusta が残る唯一の場所である。標高の高い地域ではサンバー Cervus unicolorの様な種と競合するのであまり見られない。直射日光には弱いために林冠が良く茂って林床は日陰になるような森林も好む[7][6]

形態[編集]

背中の毛皮黄褐色で。腹の部分は白いという一般的なシカのイメージである。背中に多数あらわれる白い斑点が特徴的で。角は三つに分かれることが多く、長さは70-80 cmで1年ごとに生え変わる。かつて同属とされた近縁種の Hyelaphus porcinus (英名:Hog deer) と比較してみると本種はより走るのに適した体を持っている。加えて角の柄は短いことは形態学的な進化と考えられ、auditory bullaeも小さい。肩高90 cmで体重は約90 kgでありオスはメスよりも大きくなる傾向がある。寿命は8-14年ほど。

生態[編集]

食植性で主な食べ物はイネ科の草の新芽である[7]。他にも広葉性の草の新芽や樹木の果実や枝も食べることがあり、特に樹上のサルが落とした時にはよく食べている[6]。特にオスは後ろ脚で立ちあがり、樹上の葉もよく食べることも多い[6][7]。毎年生え変わる古くなった角も食べてしまう。これはミネラルの接種だろうと言われている[6][7]。水辺を好み暑い季節には朝夕水を飲む。捕食者としてはトラインドライオン (ライオンはごく限られた地域のみ)、ヒョウドールヌマワニなど。他にも子供はアカギツネに襲われることもある。一般にメスの成獣と子供はオスの成獣よりも捕食されることが多い[7]。ドールは集団で狩りをし本種のオスの成獣であってもよく捕え、狩りの成功率はトラやヒョウよりも高い[7]。捕食者から逃げるときには最高70 km/hで走ることが出来る。

南アジア一帯に広く分布するサルの一種ハヌマンラングール Semnopithecus entellus の群れと本種の群れの間には興味深い関係が観察されている。サルの群れは樹上で葉や木の実を食べ、シカは地上で草を食んでいる。サルは樹上からあたりを見回し、捕食者の接近を見つけると警告する[6]。シカはこれを聞いて早く逃避体制に入れるので明らかに利益がある。サルの立場で見るとシカの優れた嗅覚によって敵の接近が分かると考えられている[6]。シカにとっては他にも利益があり、樹上のサルが木の実を落とすことによってそれを食べることが出来る[8]

10頭から50頭の群れを作って生活する。一番大きく支配的なオスたちを中心に周りをメスや子供が取り巻く形となる。オスの子供は大きくなると群れを出なければならず、その目安は角のビロードがとれるときである。同じくらいの大きさのオスが群れに入ろうとしたら、群れのボスであるオスは慎重に角を突き合わせて新参者を観察する[7]。角の突き合いは若い個体で盛んにおこなわれる。体の大きな個体はマーキングすることをより好む[7]。後ろ足で立ちあがって頭上の枝にマーキングを行うことも知られている[6][7]

繁殖期はtropical climateの期間中だらだらと続き、出産は年中行われることもある。発情期の最中オスは大きな声で鳴く。メスの発情周期は約3週間である。オスは発情しているメスを引き連れて守り続け、その間は食事もしない。交尾の前には追いかける期間と互いになめ合う期間がある[6]。メスは1回の出産で1等、まれに2頭を生む[7]

種の保全状況評価[編集]

本種はIUCN (International Union for Conservation of Nature and Natural Resources, 国際自然保護連合) の保全状況評価では軽度懸念 (Least Concern) に位置付けられている。これは本種が広い範囲に分布し、個体数も多いためである[1]。近年では生息が脅かされることも全体的に少なくなり、多くの保護地域で暮らしているが、多くの生息場所では生息密度は環境収容力 (ecological carring capacity) を下回っている。この原因は狩猟家畜との競合のためである。狩猟によって個体数の減少と地域的な絶滅が発生している[1]。このために本種はインドでは1972年の「Indian Wildlife Protection Act(意訳:インド野生動物保護法)」の第三段階(Schedule Ⅲ)において、バングラデシュでは 1974年のWildlife Act(意訳:野生動物法)によって保護されている[1]。この2つの主要な法律が法的な保護の要になっている[1]

スペイン・バルセロナの動物園の群れ

原産地で保護される一方で本種はいくつかの国に移入されており、オーストラリアクイーンズランドチリアルゼンチンウルグアイアメリカ合衆国テキサス州フロリダ州カリフォルニア州の一部地域、クロアチアブリユニと呼ばれる地域でアドリア海に浮かぶ無人島Velki Brijun Islandに分布している。

日本には定着していないものの、ニホンジカ Cervus nipponと交雑する恐れがあるため、外来生物法によって特定外来生物に指定されており[9]、飼育や日本国内への持ち込み・移動が原則禁じられている。この法律には例外規定があり、動物園や研究施設などは逃げ出さないような設備を持つという条件付きで、飼育・輸入が出来る。本種の場合は愛知県東山動物園で生体を見ることが出来る。

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d e Axis axis in IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2.” (英語). 国際自然保護連合(IUCN). 2012年1月28日閲覧。
  2. ^ Axis axis (Erxleben, 1777)” (英語). ITIS. 2012年1月28日閲覧。
  3. ^ Grubb, Peter (16 November 2005). Wilson, Don E., and Reeder, DeeAnn M., eds. ed. Mammal Species of the World (3rd ed.). Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2 vols. (2142 pp.). ISBN 978-0-8018-8221-0. OCLC 62265494.
  4. ^ Pitraa, Fickela, Meijaard, Groves (2004). Evolution and phylogeny of old world deer. Molecular Phylogenetics and Evolution 33: 880?895.
  5. ^ Groves (2006). The genus Cervus in eastern Eurasia. European Journal of Wildlife Research 52: 14-22.
  6. ^ a b c d e f g h i The Deer and the Tiger: A Study of Wildlife in India. George Schaller. University Of Chicago Press. 1967. Pg. 37-92. (Midway Reprint)
  7. ^ a b c d e f g h i j k Deer of the world: their evolution, behaviour, and ecology. Valerius Geist. Stackpole Books. 1998. Pg. 58-73.
  8. ^ Prasad, S.; R. Chellam; J. Krishaswamy & S. P. Goyal (2004) Frugivory of Phyllanthus emblica at Rajaji National Park, northwest India. Current Science 87(9):1188-1190
  9. ^ 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著) 『決定版 日本の外来生物』 平凡社2008年4月21日ISBN 978-4-582-54241-7

参考文献[編集]

  • 決定版 日本の外来生物 多紀保彦監修 平凡社 2008
  • Wikipedia 英語版 en:Chital

関連項目[編集]