「フィンランドの大統領」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集
編集の要約なし
21行目: 21行目:


== 概要 ==
== 概要 ==
大統領は[[内閣]](国家評議会)とともに行政権を行使する<ref name="Section 3">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第3条</ref>。[[フィンランド内戦]]後の1919年に新たな憲法(基本法群)が定められ、大統領職が設置された<ref name="ndl"/>。1980年代以降は、大統領の権限が縮小され、[[議院内閣制]]への移行が図られた<ref name="ndl"/>。2000年及び2012年の憲法改正によって[[議院内閣制]]への移行が決定的なものとなり、現在では大統領の権限は形式上のものに制限されている<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/takahogaku/38/0/38_1/_pdf/-char/ja 山崎博久、「半大統領制から議院内閣制へ」、高岡法学第38号、2019年12月、40~43頁を参照]</ref>
大統領は[[内閣]](国家評議会)とともに行政権を行使する<ref name="Section 3">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第3条</ref>。[[フィンランド内戦]]後の1919年に新たな憲法(基本法群)が定められ、大統領職が設置された<ref name="ndl"/>。1980年代以降は、大統領の権限が縮小され、[[議院内閣制]]への移行が図られた<ref name="ndl"/>。2000年及び2012年の憲法改正によって[[議院内閣制]]への移行が決定的なものとなり、現在では大統領の権限は形式上のものに制限されている{{sfn|山崎博久|2020|p=40-43}}


大統領は国民の直接選挙によって選出され、1回目の投票で過半数の票を得る候補者がいない場合、上位2名による[[決選投票]]が行われる([[二回投票制]])<ref name="Section 54">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第54条</ref>。候補者は18歳以上<ref name="Section 14-27">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第14条及び第27条</ref>の、生来のフィンランド国民に限られ<ref name="Section 54"/>、国会に議席を有する政党もしくは2万人以上の有権者団体の推薦が必要<ref name="Section 54"/>。任期は6年間で1回のみ再選可能<ref name="Section 54"/>。国会議員との兼職はできない<ref name="Section 27">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第27条</ref>。非常時の代理が必要な場合については、首相が行う<ref name="Section 59">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第59条</ref>。
大統領は国民の直接選挙によって選出され、1回目の投票で過半数の票を得る候補者がいない場合、上位2名による[[決選投票]]が行われる([[二回投票制]])<ref name="Section 54">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第54条</ref>。候補者は18歳以上<ref name="Section 14-27">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第14条及び第27条</ref>の、生来のフィンランド国民に限られ<ref name="Section 54"/>、国会に議席を有する政党もしくは2万人以上の有権者団体の推薦が必要<ref name="Section 54"/>。任期は6年間で1回のみ再選可能<ref name="Section 54"/>。国会議員との兼職はできない<ref name="Section 27">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第27条</ref>。非常時の代理が必要な場合については、首相が行う<ref name="Section 59">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第59条</ref>。
29行目: 29行目:
このほかいくつかの布告権を持ち、法の承認と特命議会の招集を行うことができる。また、議会が可決した法案に対して[[拒否権]]を有しているが、議会はこの決定を覆すことができる。
このほかいくつかの布告権を持ち、法の承認と特命議会の招集を行うことができる。また、議会が可決した法案に対して[[拒否権]]を有しているが、議会はこの決定を覆すことができる。


外交については形式上は大統領が行う<ref name="Section 93">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第93条</ref>とされるが、実質的には首相及び内閣が行う<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/takahogaku/38/0/38_1/_pdf/-char/ja 山崎博久、「半大統領制から議院内閣制へ」、高岡法学第38号、2019年12月、42~43頁]</ref>。また、大統領は[[フィンランド国防軍]]の最高司令官であり、士官の形式上の任免権を有するが<ref name="Section 128">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第128条</ref>、これも形式的なものである。軍の動員については、内閣の提案により大統領が行う<ref name="Section 129">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第129条</ref>。
外交については形式上は大統領が行う<ref name="Section 93">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第93条</ref>とされるが、実質的には首相及び内閣が行う{{sfn|山崎博久|2020|p=42-43}}。また、大統領は[[フィンランド国防軍]]の最高司令官であり、士官の形式上の任免権を有するが<ref name="Section 128">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第128条</ref>、これも形式的なものである。軍の動員については、内閣の提案により大統領が行う<ref name="Section 129">2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第129条</ref>。
[[ファイル:PresidentialPalaceHelsinkiApr2007.JPG|thumb|none|300px|首都[[ヘルシンキ]]にある大統領宮殿]]
[[ファイル:PresidentialPalaceHelsinkiApr2007.JPG|thumb|none|300px|首都[[ヘルシンキ]]にある大統領宮殿]]


193行目: 193行目:
== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{Reflist}}
{{Reflist}}

==参考文献==
* {{Cite journal|和書|author=山崎博久 |date=2020 |url=https://doi.org/10.24703/takahogaku.38.0_1 |title=半大統領制から議院内閣制へ : フィンランドの経験から |journal=高岡法学 |ISSN=0915-9339 |publisher=高岡法科大学法学会 |volume=38 |pages=1-50 |doi=10.24703/takahogaku.38.0_1 |id={{CRID|1390848250107389952}} |ref=harv}}


{{ヨーロッパの元首}}
{{ヨーロッパの元首}}

2023年5月26日 (金) 06:13時点における版

 フィンランド共和国
大統領
: Suomen tasavallan presidentti
: Republiken Finlands president
大統領旗
現職者
サウリ・ニーニスト(第12代)
Sauli Väinämö Niinistö

就任日 2012年3月1日
庁舎Presidentinlinna (フィンランド語)
Presidentens slott (スウェーデン語)
任期6年(3選禁止)
初代就任カールロ・ユホ・ストールベリ
創設1919年7月27日
ウェブサイトhttp://www.presidentti.fi/Public/

フィンランド共和国大統領(フィンランドきょうわこくだいとうりょう、フィンランド語: Suomen tasavallan presidenttiスウェーデン語: Republiken Finlands president)は、フィンランド国家元首たる大統領[1]

概要

大統領は内閣(国家評議会)とともに行政権を行使する[2]フィンランド内戦後の1919年に新たな憲法(基本法群)が定められ、大統領職が設置された[1]。1980年代以降は、大統領の権限が縮小され、議院内閣制への移行が図られた[1]。2000年及び2012年の憲法改正によって議院内閣制への移行が決定的なものとなり、現在では大統領の権限は形式上のものに制限されている[3]

大統領は国民の直接選挙によって選出され、1回目の投票で過半数の票を得る候補者がいない場合、上位2名による決選投票が行われる(二回投票制[4]。候補者は18歳以上[5]の、生来のフィンランド国民に限られ[4]、国会に議席を有する政党もしくは2万人以上の有権者団体の推薦が必要[4]。任期は6年間で1回のみ再選可能[4]。国会議員との兼職はできない[6]。非常時の代理が必要な場合については、首相が行う[7]

大統領は、エドゥスクンタ(議会)で選出された首相を任命する[8]。また、首相の指名に基づき大臣の任命を行う[8]。国家公務員や外交官の任命権も大統領の職責である[9]

このほかいくつかの布告権を持ち、法の承認と特命議会の招集を行うことができる。また、議会が可決した法案に対して拒否権を有しているが、議会はこの決定を覆すことができる。

外交については形式上は大統領が行う[10]とされるが、実質的には首相及び内閣が行う[11]。また、大統領はフィンランド国防軍の最高司令官であり、士官の形式上の任免権を有するが[12]、これも形式的なものである。軍の動員については、内閣の提案により大統領が行う[13]

首都ヘルシンキにある大統領宮殿

大統領の一覧

大統領 所属政党 在任期間 備考
01 カールロ・ユホ・ストールベリ英語版
Kaarlo Juho Ståhlberg
国民進歩党 1 1919年7月27日
- 1925年3月2日
5年 + 218日
02 ラウリ・クリスティアン・レランデル
Lauri Kristian Relander
農民同盟 2 1925年3月2日
- 1931年3月2日
6年 + 0日
03 ペール・スヴィンフヴュー
Pehr Evind Svinhufvud
国民連合党 3 1931年3月2日
- 1937年3月1日
5年 + 364日
04 キュオスティ・カッリオ
Kyösti Kallio
農民同盟 4 1937年3月1日
- 1940年12月19日
3年 + 293日 任期満了前に辞任
在任中に死去
05 リスト・リュティ
Risto Heikki Ryti
国民進歩党 5 1940年12月19日
- 1943年
3年 + 229日
6 1943年
- 1944年8月4日
任期満了前に辞任
06 カール・グスタフ・エミール・マンネルヘイム
Carl Gustaf Emil Mannerheim
無所属
軍人
7 1944年8月4日
- 1946年3月8日
1年 + 216日 任期満了前に辞任
07 ユホ・クスティ・パーシキヴィ
Juho Kusti Paasikivi
国民連合党 8 1946年3月8日
- 1950年3月1日
9年 + 359日
9 1950年3月2日
- 1956年3月1日
08 ウルホ・ケッコネン
Urho Kaleva Kekkonen
農民同盟 10 1956年3月2日
- 1962年3月1日
25年 + 331日
11 1962年3月1日
- 1965年
中央党 1965年
- 1968年3月1日
党名変更
12 1968年3月1日
- 1978年3月1日
任期を4年延長
13 1978年3月1日
- 1982年1月27日
任期満了前に辞任
09 マウノ・コイヴィスト
Mauno Henrik Koivisto
ファイル:Mauno Koivisto.png フィンランド社会民主党 14 1982年1月27日
- 1988年3月1日
12年 + 33日
15 1988年3月1日
- 1994年3月1日
10 マルッティ・アハティサーリ
Martti Oiva Kalevi Ahtisaari
フィンランド社会民主党 16 1994年3月1日
- 2000年3月1日
6年 + 0日
11 タルヤ・ハロネン
Tarja Kaarina Halonen
フィンランド社会民主党 17 2000年3月1日
- 2006年3月1日
12年 + 0日
18 2006年3月1日
- 2012年3月1日
12 サウリ・ニーニスト
Sauli Väinämö Niinistö
国民連合党 19 2012年3月1日
- 2018年3月1日
12年 + 96日
20 2018年3月1日
- (現職)

関連項目

脚注

  1. ^ a b c 各国憲法集9 フィンランド憲法”. 国立国会図書館調査及び立法考査局 (2015年3月). 2017年6月25日閲覧。
  2. ^ 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第3条
  3. ^ 山崎博久 2020, p. 40-43.
  4. ^ a b c d 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第54条
  5. ^ 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第14条及び第27条
  6. ^ 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第27条
  7. ^ 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第59条
  8. ^ a b 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第61条
  9. ^ 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第126条
  10. ^ 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第93条
  11. ^ 山崎博久 2020, p. 42-43.
  12. ^ 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第128条
  13. ^ 2000年フィンランド憲法(2011年最終改正) 第129条

参考文献

  • 山崎博久「半大統領制から議院内閣制へ : フィンランドの経験から」『高岡法学』第38巻、高岡法科大学法学会、2020年、1-50頁、doi:10.24703/takahogaku.38.0_1ISSN 0915-9339CRID 1390848250107389952