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「グアンロン」の版間の差分

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== 記載 ==
== 記載 ==
[[File:Guanlong scale.png|thumb|left|グアンロンとヒトの大きさ比較]]
[[File:Guanlong scale.png|thumb|left|グアンロンとヒトの大きさ比較]]
全長は3メートルほど<ref name="csotonyi"/><ref name="Holtz2008">Holtz, Thomas R. Jr. (2008) ''Dinosaurs: The Most Complete, Up-to-Date Encyclopedia for Dinosaur Lovers of All Ages'' [http://www.geol.umd.edu/~tholtz/dinoappendix/DinoappendixSummer2008.pdf Supplementary Information]</ref>で、有名な親戚であるティラノサウルスから9200万年昔に遡る約1億6000万年前にあたる後期ジュラ紀オックスフォーディアンの石樹溝層から化石が発見された<ref name="csotonyi"/>。この二足歩行の[[竜盤類]][[獣脚亜目]]の恐竜は子孫と様々な特徴を共有し、頭部の大きな[[トサカ]]といった特異的な特徴も持つ。後のティラノサウルスと異なり、グアンロンの前肢には3本の長い指があった。特有の鶏冠を除けば近縁な[[ディロング]]に似ており、ディロングと同様に原始的な[[羽毛]]が存在した可能性がある<ref name="Xetal06"/>。
全長は3メートルほど<ref name="csotonyi"/><ref name="Holtz2008">Holtz, Thomas R. Jr. (2008) ''Dinosaurs: The Most Complete, Up-to-Date Encyclopedia for Dinosaur Lovers of All Ages'' [http://www.geol.umd.edu/~tholtz/dinoappendix/DinoappendixSummer2008.pdf Supplementary Information]</ref>で、有名な親戚であるティラノサウルスから9200万年昔に遡る約1億6000万年前にあたる後期ジュラ紀オックスフォーディアンの石樹溝層から化石が発見された<ref name="csotonyi"/>。この二足歩行の[[竜盤類]][[獣脚亜目]]の恐竜は子孫と様々な特徴を共有し、頭部の大きな[[トサカ]]といった特異的な特徴も持つ。後のティラノサウルスと異なり、グアンロンの前肢には3本の長い指があった。特有の鶏冠を除けば関連する[[ディロング]]に似ており、ディロングと同様に原始的な[[羽毛]]が存在した可能性がある<ref name="Xetal06"/>。

=== 四 ===
後ろ脚の研究から、グアンロンを含むティラノサウルス上科は全体として俊足の持ち主であったことが示唆されている。ただしグアンロン自体の走行能力は同グループ内の[[ディロング]]や[[ドリプトサウルス]]、[[ユウティラヌス]]と並んでやや低いとされている。ただし脚の長さ、特に膝から下が長いのは上の4も同じである。これらの差異は走行性能が高いとされるアレクトロサウルスやティラノサウルスが中足骨に[[アークトメタターサル]]と呼ばれる特殊な構造を進化させたのが原因とされている<ref>{{cite journal |author1=W. Scott Persons IV |author2=Philip J. Currie |date=2016-01-27 |title=An approach to scoring cursorial limb proportions in carnivorous dinosaurs and an attempt to account for allometry |journal=[[Scientific Reports]] |doi=10.1038/srep19828}}</ref>

前肢は多くのコエルロサウルス類と共通した特徴が見られ、外見もよく似ていた<ref>{{cite journal |author1=Xings Xu ''et.al.'' |date=2006-02-09 |title=A basal tyrannosauroid dinosaur from the Late Jurassic of China |journal=[[Nature]] |doi=}}</ref>第一指と第二指の末節骨いわゆる“指先”で爪の芯となる骨の大きさは等しく、第三指のみが小ぶりである。後のティラノサウルスのように退縮した構造にはなっておらず、手としての機能を残した形状だった。ただし[[マニラプトル類]]のように折り畳める構造ではなかったので、その可動性は低い。


== 発見 ==
== 発見 ==
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[[File:Guanlong fossil.jpg|thumb|成体の骨格]]
[[File:Guanlong fossil.jpg|thumb|成体の骨格]]
現在のところグアンロンは2体の標本が知られており、1つはもう一方の標本の上で他の3体の獣脚類とともに石樹溝層で発見された。上で発見された標本がホロタイプ標本 IVPP V14531 で、部分的に繋がった成体の骨格である。もう一方の未熟な標本はパラタイプ標本 IVPP V14532 であり、完全に繋がった保存状態の良い骨格であることから知られている。死亡した後に成体に踏まれたと推定されている。幼体の頭骨の鶏冠はとりわけ小さく、鼻先の前方のみに制限されている。一方で成体の鶏冠は大きく、広範囲に及ぶ。両標本の鶏冠は薄くデリケートな構造であり、[[交尾]]のような行動に用いられるディスプレイだったと考えられている<ref name="Xetal06"/><ref name="csotonyi"/>。
現在のところグアンロンは2体の標本が知られており、1つはもう一方の標本の上で他の3体の獣脚類とともに石樹溝層で発見された。上で発見された標本がホロタイプ標本 IVPP V14531 で、部分的に繋がった成体の骨格である。もう一方の未熟な標本はパラタイプ標本 IVPP V14532 であり、完全に繋がった保存状態の良い骨格であることから知られている。死亡した後に成体に踏まれたと推定されている。幼体の頭骨の鶏冠はとりわけ小さく、鼻先の前方のみに制限されている。一方で成体の鶏冠は大きく、広範囲に及ぶ。両標本の鶏冠は薄くデリケートな構造であり、[[交尾]]のような行動に用いられるディスプレイだったと考えられている<ref name="Xetal06"/><ref name="csotonyi"/>。

グアンロンの発見状況はやや特殊で<ref>https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=guanlong+wucaii&oq=guanlon#d=gs_qabs&u=%23p%3DSGwWqe0TvYIJ</ref>先に挙げた2体の標本はどちらも同じ足跡化石の中から折り重なるようにして発見された。さらに幼体のグアンロンの真下からは、合計3体の[[リムサウルス]]が同じく折り重なるようにして発見されている。この足跡は大型竜脚類の[[マメンチサウルス]]によって残されたものとされており、この竜脚類が沼地を歩いた際に深さ1〜2m、直径1mの縦穴が生まれ、この中に付近の火山から吹き出された火山灰が混ざったことで脱出の難しい”(デスピット)となった。経緯は不明だが、ここにグアンロンやリムサウルスが嵌り込むことで後に化石化したとされている。
グアンロンの発見状況はやや特殊で<ref>https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=guanlong+wucaii&oq=guanlon#d=gs_qabs&u=%23p%3DSGwWqe0TvYIJ{{出典無効|date=2020-02-20 |title=検索けっかのうちどの文献に基づくかが不明}}</ref>先に挙げた2体の標本はどちらも同じ足跡化石の中から折り重なるようにして発見された。さらに幼体のグアンロンの真下からは、合計3体の[[リムサウルス]]が同じく折り重なるようにして発見されている。この足跡は大型竜脚類の[[マメンチサウルス]]によって残されたものとされており、この竜脚類が沼地を歩いた際に深さ1〜2メートル、直径1メートルの縦穴が生まれ、この中に付近の火山から吹き出された火山灰が混ざったことで脱出の難しい罠デスピットとなった。経緯は不明だが、ここにグアンロンやリムサウルスが嵌り込むことで後に化石化したとされている<ref>{{Cite web|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2178/ |publisher=[[ナショナルジオグラフィック協会]] |title=巨大恐竜の足跡が“死の落とし穴”に? |date=2010-01-19 |accessdate=2020-02-20}}</ref>


== 分類 ==
== 分類 ==
[[File:Guanlong wucaii by durbed.jpg|thumb|left|復元図]]
[[File:Guanlong wucaii by durbed.jpg|thumb|left|復元図]]
グアンロンは[[シノティラヌス]]や[[ジュラティラント]]および[[ストケソサウルス]]が属する[[プロケラトサウルス科]]に分類され、特にその中でも[[プロケラトサウルス]]や[[キレスクス]]と同じ分類群に属することが判明している。しかし[[2014年]]に別の研究が発表され、ストケソサウルスをプロケラトサウルス科から除外し、キレスクス、グアンロン、プロケラトサウルス、シノティラヌスをのみをプロケラトサウルス科に分類することが提案された。
グアンロンは[[シノティラヌス]]や[[ジュラティラント]]および[[ストケソサウルス]]が属する[[プロケラトサウルス科]]に分類され、特にその中でも[[プロケラトサウルス]]や[[キレスクス]]と同じ分類群に属することが判明している。しかし[[2014年]]に別の研究が発表され、ストケソサウルスをプロケラトサウルス科から除外し、キレスクス、グアンロン、プロケラトサウルス、シノティラヌスをのみをプロケラトサウルス科に分類することが提案された<ref name=nanuq/>


以下のクラドグラムは Fiorillo と Tykoski による後者の研究に基づく<ref name="nanuq">{{Cite journal| last1 = Fiorillo | first1 = A. R. last2 = Tykoski | first2 = R. S. | year = 2014| title = A Diminutive New Tyrannosaur from the Top of the World| url = http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0091287| editor-last = Dodson| editor-first = Peter| editor-link = Peter Dodson| journal = [[PLoS ONE]]| volume = 9| issue = 3| pages = e91287| doi = 10.1371/journal.pone.0091287| ref = {{sfnRef|Fiorillo & Tykoski|2014}} | pmid=24621577 | pmc=3951350}}</ref>。
以下のクラドグラムは Fiorillo と Tykoski による後者の研究に基づく。
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|label1=[[プロケラトサウルス科]]
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[[組織学]]的解析を用いて2つの標本の年齢が特定された。成体は7歳で成熟して12歳で死亡したことが示された。幼体は6歳で死亡し、まだ成長途中であった。それぞれが別の年齢であるため、成長途中に何らかの変化があったことが分かる。幼体では鶏冠が鼻先のみに制限されていて比率として短い。眼窩と手も比較的大きく、脚も長く、[[恥骨]]の端は伸びておらず、より派生した[[コエルロサウルス類]]と[[ティラノサウルス上科]]の特徴がみられた<ref name="Xetal06"/>。
[[組織学]]的解析を用いて2つの標本の年齢が特定された。成体は7歳で成熟して12歳で死亡したことが示された。幼体は6歳で死亡し、まだ成長途中であった。それぞれが別の年齢であるため、成長途中に何らかの変化があったことが分かる。幼体では鶏冠が鼻先のみに制限されていて比率として短い。眼窩と手も比較的大きく、脚も長く、[[恥骨]]の端は伸びておらず、より派生した[[コエルロサウルス類]]と[[ティラノサウルス上科]]の特徴がみられた<ref name="Xetal06"/>。


グアンロンの鶏冠はディスプレイに用いられた可能性がある。[[ディロフォサウルス]]や[[モノロフォサウルス]]のものに似ており、高度な含気性を示した。しかし、他の属のものよりはデリケートな構造であり、体に対する比率は大きく、そして精巧に構成されていた。また鶏冠には大きな穴が3つ開いていて脆弱かつ繊細な構造のため、激しい闘争に使われたものではないとされている<ref>『地球46億年の旅』p18〜p21</ref>獣脚類では他にも[[ディロフォサウルス]]と[[モノロフォサウルス]]の鶏冠も種の認識に用いられたことが示唆されているが、より細長いグアンロンの鶏冠はよりディスプレイの目的の可能性が高い<ref name="Xetal06"/>。
グアンロンの鶏冠はディスプレイに用いられた可能性がある。[[ディロフォサウルス]]や[[モノロフォサウルス]]のものに似ており、高度な含気性を示した。しかし、他の属のものよりはデリケートな構造であり、体に対する比率は大きく、そして精巧に構成されていた。また鶏冠には大きな穴が3つ開いていて脆弱かつ繊細な構造のため、激しい闘争に使われたものではないとされている<ref name=t46>『地球46億年の旅』p18〜p21</ref>獣脚類では他にも[[ディロフォサウルス]]と[[モノロフォサウルス]]の鶏冠も種の認識に用いられたことが示唆されているが、より細長いグアンロンの鶏冠はよりディスプレイの目的の可能性が高い<ref name="Xetal06"/>。

グアンロンは主に小動物を捕食していたと考えられている。ジュンガル盆地からは様々な小型脊椎動物([[両生類]]、[[爬虫類]]の[[翼竜]]や[[ワニ]]、[[カメ]])、哺乳類を含む[[キノドン類]])発見さている。また共存した恐竜類としては、小型の[[ケラトサウルス]]類である[[リムサウルス]]や、複数の[[アルヴァレスサウルス]]類(一例としては[[アオルン]]など)。そして小型角竜の[[インロン]]や複数の小型鳥盤類が確認されているため、それらが獲物になった可能性がある。
また同地域には大型竜脚類の[[マメンチサウルス]]や大型獣脚類の[[シンラプトル]]や[[モノロフォサウルス]]が生息していたため、彼らの卵や幼体を攫って食べていた可能性もある。
ただしグアンロン自体はティラノサウルスに含まれるとはいえ身体が比較的小型だったため、上記の大型獣脚類シンラプトルやモノロフォサウルスによって捕食されることもあったと考えられる<ref>https://www.nature.com/articles/439665a </ref>また上記の大型捕食者の存在があるため、グアンロンをはじめとする初期のティラノサウルス類は、ジュラ紀から白亜紀初頭にかけて生態系における二次捕食者の地位に収まっていのではないかと指摘されている。
とはいえ[[肉食動物]]が肉食動物を襲撃するケースはあまりない。それでも相手をライバルと認識した場合や余程の空腹時に襲撃することがある(例としては[[トラ]]が[[ヒョウ]]を襲撃するなど)<ref>『ホルツ博士の最新恐竜辞典』{{要ページ番号|date=2019年5月}}</ref><ref>『日経ナショナルジオグラフィック』
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2178/?ST=m_news </ref><ref>『地球46億年の旅』p18〜p21</ref>。

== 四 ==

後ろ脚の研究から、<ref>https://www.nature.com/articles/srep19828 </ref>グアンロンを含むティラノサウルスは全体として俊足の持ち主であったことが示唆されている。ただしグアンロン自体の走行能力は同グループ内の[[ディロング]]や[[ドリプトサウルス]]、[[ユウティラヌス]]と並んでやや低いとされている。ただし脚の長さ(とりわけ膝から下)が長いのは上の4も同じである。これらの差異は(走行性能が高いとされる)アレクトロサウルスやティラノサウルスが中足骨に[[アークトメタターサル]]と呼ばれる特殊な構造を進化させたのが原因とされている。

前肢に特筆すべき点なく、多くのコエルロサウルス類と共通した特徴が見られ、外見もよく似ていた<ref>https://www.nature.com/articles/nature04511</ref>第一指と第二指の末節骨(いわゆる“指先”で爪の芯となる骨)の大きさは等しく、第三指のみが小ぶりである。後のティラノサウルスのように退縮した構造にはなっておらず、手としての機能を残した形状だった。(ただし[[マニラプトル類]]のように折り畳める構造ではなかったので、その可動性は低い。)

== 生息環境/共存生物 ==

環境

当時のジュンガル盆地では豊富な水源の辺りに裸子植物が生い茂る豊かな熱帯性気候だとされている。また一部の水辺は沼地であったことも分かっている。そして森や水源から近い距離に活火山があった<ref>https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=guanlong+wucaii&oq=guanlon#d=gs_qabs&u=%23p%3DSGwWqe0TvYIJ</ref>


生物

[[恐竜]]

記載されていない[[ステゴサウルス類]](剣竜)

記載されていない[[鳥脚類]]

未記載の[[アンキロサウルス]]類(鎧竜)

“ゴングブサウルス”(鳥盤類)
全長1.3〜1.5mの小型植物食恐竜。脛骨の長さが19.5cmと長く、快速を出せるランナーだったと推測されている。
が記載に問題があったため、現在では“ゴングブサウルス”の学名は非公式名となった。[[Eugongubsaurus]]という代替名が後に提唱されたものの、こちらも依然として非公式名である。(そのため上記では“”を付けてある)

・[[ジャンジュノサウルス]][[Jiangjunosaurus]](剣竜)
全長が約6mの基盤的な[[ステゴサウルス]]類。先端に嘴の生えた細長い頭部を持ち、背中には2列の突起を備えていた。

・[[インロン]][[Yinlong]]全長1.2mの知られている限り最古の角竜類。細く短い前脚と太く短い後ろ脚で二足歩行を主に活動していた。角竜でありながら目立った骨質の角や襟飾り(後頭部のフリル)はない。口元には[[プロトケラトプス]]に見られるような犬歯状の鋭い歯が生えていた。

[[マメンチサウルス]](竜脚類)

[[ベルサウルス]](竜脚類)

[[アオルン]](獣脚類)

[[ハプロケイルス]](獣脚類)

[[ズオロン]](獣脚類)


グアンロンは主に小動物を捕食していたと考えられている。ジュンガル盆地からは様々な小型脊椎動物が発見されており、具体的には[[両生類]]、[[爬虫類]]の[[翼竜]]や[[ワニ]]、[[カメ]]、哺乳類を含む[[キノドン類]]が挙げられる。また共存した恐竜類としては、小型の[[ケラトサウルス]]類である[[リムサウルス]]や、アオルンなど複数の[[アルヴァレスサウルス]]類がいた。そして小型角竜の[[インロン]]や複数の小型鳥盤類が確認されているため、それらが獲物になった可能性がある。また同地域には大型竜脚類の[[マメンチサウルス]]や大型獣脚類の[[シンラプトル]]や[[モノロフォサウルス]]が生息していたため、彼らの卵や幼体を攫って食べていた可能性もある。
[[リムサウルス]](獣脚類)
ただしグアンロン自体はティラノサウルス上科に含まれるとはいえ身体が比較的小型だったため、上記の大型獣脚類シンラプトルやモノロフォサウルスによって捕食されることもあったと考えられる<ref>{{cite journal |author=Thomas R. Holtz Jr |date=2006-02-08|title=A Jurassic tyrant is crowned |journal=[[Nature]] |volume=439 }}</ref>また上記の大型捕食者の存在があるため、グアンロンをはじめとする初期のティラノサウルス類は、ジュラ紀から白亜紀初頭にかけて生態系における二次捕食者の地位に収まっていのではないかと指摘されている。


[[肉食動物]]が肉食動物を襲撃するケースはあまりないが、相手をライバルと認識した場合や極度の空腹時に襲撃することがある。グアンロンの場合、最初に発見された化石の下から小型個体の化石が発見されたため、沼で身動きが取れなくなった若いグアンロンを成熟したグアンロンが狙った可能性が指摘されている<ref>{{Cite web|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0808/feature02/_02.shtml |title=進化の謎を解く恐竜の墓場 |date=2008-08 |accessdate=2020-02-20 |publisher=ナショナルジオグラフィック協会}}</ref>。
[[シンラプトル]](獣脚類)


== 古環境 ==
[[モノロフォサウルス]](獣脚類)
{{出典の明記|date=2020年2月|section=1}}
=== 環境 ===
当時のジュンガル盆地では豊富な水源の辺りに裸子植物が生い茂る豊かな熱帯性気候だとされている。また一部の水辺は沼地であったことも分かっている。そして森や水源から近い距離に活火山があった<ref>https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=guanlong+wucaii&oq=guanlon#d=gs_qabs&u=%23p%3DSGwWqe0TvYIJ{{出典無効|date=2020-02-20 |title=検索結果のうちどの文献に基づくかが不明}}</ref>


=== 生物 ===
断片的な歯化石(おそらく初期の[[ドロマエオサウルス]]類)
*記載されていない[[ステゴサウルス類]](剣竜)
*記載されていない[[鳥脚類]]
*未記載の[[アンキロサウルス]]類(鎧竜)
*“ゴングブサウルス”(鳥盤類)
:全長1.3〜1.5メートルの小型植物食恐竜。脛骨の長さ19.5センチメートルと長く、快速を出せるランナーだったと推測されている。記載に問題があったため、現在では“ゴングブサウルス”の学名は非公式名となった。{{仮リンク|エウゴングブサウルス|en|Eugongubsaurus}}という代替名が後に提唱されたものの、こちらも依然として非公式名であるため上記では“”を付記した。
*{{仮リンク|ジャンジュノサウルス|en|Jiangjunosaurus}}(剣竜)
:全長が約6メートルの基盤的な[[ステゴサウルス]]類。先端に嘴の生えた細長い頭部を持ち、背中には2列の突起を備えていた。
*[[インロン]]
:全長1.2メートルの知られている限り最古の角竜類。細く短い前脚と太く短い後ろ脚で二足歩行を主に活動していた。角竜でありながら目立った骨質の角や襟飾り(後頭部のフリル)はない。口元には[[プロトケラトプス]]に見られるような犬歯状の鋭い歯が生えていた。
*[[マメンチサウルス]](竜脚類)
*[[ベルサウルス]](竜脚類)
*[[アオルン]](獣脚類)
*[[ハプロケイルス]](獣脚類)
*[[ズオロン]](獣脚類)
*[[リムサウルス]](獣脚類)
*[[シンラプトル]](獣脚類)
*[[モノロフォサウルス]](獣脚類)
*断片的な歯化石(おそらく初期の[[ドロマエオサウルス]]類)


== 出典 ==
== 出典 ==
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2020年2月20日 (木) 15:45時点における版

グアンロン
幕張メッセにて、グアンロン骨格(手前)
地質時代
後期ジュラ紀オックスフォーディアン,160 Ma
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : (未整理)コエルロサウルス類 Coelurosauria
上科 : ティラノサウルス上科 Tyrannosauroidea
: プロケラトサウルス科 Proceratosauridae
: グアンロン属 Guanlong
学名
Guanlong
徐星 et al., 2006
下位分類(

グアンロン学名:Guanlong冠龍)は、後期ジュラ紀オックスフォーディアン中華人民共和国に生息したティラノサウルス上科プロケラトサウルス科獣脚類恐竜の属。2006年徐星らが初めて記載し、グアンロンがティラノサウルスに関連する新たな分類群を代表することを発見した。学名は中国語で「5色の鶏冠を持つ竜」という意味。現在のところ、部分的に化石が揃った成体とほぼ完全な幼体の2体が知られている。中国の石樹溝層から標本が発見された。

記載

グアンロンとヒトの大きさ比較

全長は3メートルほど[1][2]で、有名な親戚であるティラノサウルスから9200万年昔に遡る約1億6000万年前にあたる後期ジュラ紀オックスフォーディアンの石樹溝層から化石が発見された[1]。この二足歩行の竜盤類獣脚亜目の恐竜は子孫と様々な特徴を共有し、頭部の大きなトサカといった特異的な特徴も持つ。後のティラノサウルスと異なり、グアンロンの前肢には3本の長い指があった。特有の鶏冠を除けば関連するディロングに似ており、ディロングと同様に原始的な羽毛が存在した可能性がある[3]

四肢

後ろ脚の研究から、グアンロンを含むティラノサウルス上科は全体として俊足の持ち主であったことが示唆されている。ただしグアンロン自体の走行能力は同グループ内のディロングドリプトサウルスユウティラヌスと並んでやや低いとされている。ただし脚の長さ、特に膝から下が長いのは上の4属も同じである。これらの差異は、走行性能が高いとされるアレクトロサウルスやティラノサウルスが中足骨にアークトメタターサルと呼ばれる特殊な構造を進化させたのが原因とされている[4]

前肢は多くのコエルロサウルス類と共通した特徴が見られ、外見もよく似ていた[5]。第一指と第二指の末節骨(いわゆる“指先”で爪の芯となる骨)の大きさは等しく、第三指のみが小ぶりである。後のティラノサウルスのように退縮した構造にはなっておらず、手としての機能を残した形状だった。ただしマニラプトル類のように折り畳める構造ではなかったので、その可動性は低い。

発見

頭部が取り除かれたパラタイプ標本 IVPP V14532

グアンロンは中国のジュンガリア地域で中国科学院古脊椎動物古人類学研究所とジョージ・ワシントン大学の合同調査隊により発見され、2006年に徐星らにより命名された。属名のグアンロンは鶏冠を表す「冠」と竜を表す「龍」からなり、鶏冠について言及している。種小名は5色を意味する「五彩」に由来し、グアンロンが発見された場所である色の混じった岩石(五彩灣)を表現している[3][1]

成体の骨格

現在のところグアンロンは2体の標本が知られており、1つはもう一方の標本の上で他の3体の獣脚類とともに石樹溝層で発見された。上で発見された標本がホロタイプ標本 IVPP V14531 で、部分的に繋がった成体の骨格である。もう一方の未熟な標本はパラタイプ標本 IVPP V14532 であり、完全に繋がった保存状態の良い骨格であることから知られている。死亡した後に成体に踏まれたと推定されている。幼体の頭骨の鶏冠はとりわけ小さく、鼻先の前方のみに制限されている。一方で成体の鶏冠は大きく、広範囲に及ぶ。両標本の鶏冠は薄くデリケートな構造であり、交尾のような行動に用いられるディスプレイだったと考えられている[3][1]

グアンロンの発見状況はやや特殊で[6]、先に挙げた2体の標本はどちらも同じ足跡化石の中から折り重なるようにして発見された。さらに幼体のグアンロンの真下からは、合計3体のリムサウルスが同じく折り重なるようにして発見されている。この足跡は大型竜脚類のマメンチサウルスによって残されたものとされており、この竜脚類が沼地を歩いた際に深さ1〜2メートル、直径1メートルの縦穴が生まれ、この中に付近の火山から吹き出された火山灰が混ざったことで脱出の難しい罠(デスピット)となった。経緯は不明だが、ここにグアンロンやリムサウルスが嵌り込むことで後に化石化したとされている[7]

分類

復元図

グアンロンはシノティラヌスジュラティラントおよびストケソサウルスが属するプロケラトサウルス科に分類され、特にその中でもプロケラトサウルスキレスクスと同じ分類群に属することが判明している。しかし2014年に別の研究が発表され、ストケソサウルスをプロケラトサウルス科から除外し、キレスクス、グアンロン、プロケラトサウルス、シノティラヌスをのみをプロケラトサウルス科に分類することが提案された[8]

以下のクラドグラムは Fiorillo と Tykoski による後者の研究に基づく[8]

プロケラトサウルス科

キレスクス

グアンロン

プロケラトサウルス

シノティラヌス

古生態

頭部の復元

組織学的解析を用いて2つの標本の年齢が特定された。成体は7歳で成熟して12歳で死亡したことが示された。幼体は6歳で死亡し、まだ成長途中であった。それぞれが別の年齢であるため、成長途中に何らかの変化があったことが分かる。幼体では鶏冠が鼻先のみに制限されていて比率として短い。眼窩と手も比較的大きく、脚も長く、恥骨の端は伸びておらず、より派生したコエルロサウルス類ティラノサウルス上科の特徴がみられた[3]

グアンロンの鶏冠はディスプレイに用いられた可能性がある。ディロフォサウルスモノロフォサウルスのものに似ており、高度な含気性を示した。しかし、他の属のものよりはデリケートな構造であり、体に対する比率は大きく、そして精巧に構成されていた。また鶏冠には大きな穴が3つ開いていて脆弱かつ繊細な構造のため、激しい闘争に使われたものではないとされている[9]。獣脚類では他にもディロフォサウルスモノロフォサウルスの鶏冠も種の認識に用いられたことが示唆されているが、より細長いグアンロンの鶏冠はよりディスプレイの目的の可能性が高い[3]

グアンロンは主に小動物を捕食していたと考えられている。ジュンガル盆地からは様々な小型脊椎動物が発見されており、具体的には両生類爬虫類翼竜ワニカメ、哺乳類を含むキノドン類が挙げられる。また共存した恐竜類としては、小型のケラトサウルス類であるリムサウルスや、アオルンなど複数のアルヴァレスサウルス類がいた。そして小型角竜のインロンや複数の小型鳥盤類が確認されているため、それらが獲物になった可能性がある。また同地域には大型竜脚類のマメンチサウルスや大型獣脚類のシンラプトルモノロフォサウルスが生息していたため、彼らの卵や幼体を攫って食べていた可能性もある。 ただし、グアンロン自体はティラノサウルス上科に含まれるとはいえ身体が比較的小型だったため、上記の大型獣脚類シンラプトルやモノロフォサウルスによって捕食されることもあったと考えられる[10]。また、上記の大型捕食者の存在があるため、グアンロンをはじめとする初期のティラノサウルス類は、ジュラ紀から白亜紀初頭にかけて生態系における二次捕食者の地位に収まっていのではないかと指摘されている。

肉食動物が肉食動物を襲撃するケースはあまりないが、相手をライバルと認識した場合や極度の空腹時に襲撃することがある。グアンロンの場合、最初に発見された化石の下から小型個体の化石が発見されたため、沼で身動きが取れなくなった若いグアンロンを成熟したグアンロンが狙った可能性が指摘されている[11]

古環境

環境

当時のジュンガル盆地では豊富な水源の辺りに裸子植物が生い茂る豊かな熱帯性気候だとされている。また一部の水辺は沼地であったことも分かっている。そして森や水源から近い距離に活火山があった[12]

生物

全長1.3〜1.5メートルの小型植物食恐竜。脛骨の長さが19.5センチメートルと長く、快速を出せるランナーだったと推測されている。記載に問題があったため、現在では“ゴングブサウルス”の学名は非公式名となった。エウゴングブサウルス英語版という代替名が後に提唱されたものの、こちらも依然として非公式名であるため、上記では“”を付記した。
全長が約6メートルの基盤的なステゴサウルス類。先端に嘴の生えた細長い頭部を持ち、背中には2列の突起を備えていた。
全長1.2メートルの知られている限り最古の角竜類。細く短い前脚と太く短い後ろ脚で二足歩行を主に活動していた。角竜でありながら目立った骨質の角や襟飾り(後頭部のフリル)はない。口元にはプロトケラトプスに見られるような犬歯状の鋭い歯が生えていた。

出典

  1. ^ a b c d Csotonyi, J.T.; White, S. (2014). Paleoart of Julius Csotonyi: Dinosaurs, Sabre-Tooths and Beyond. Titan Books. p. 74. ISBN 978-1-7811-6912-4 
  2. ^ Holtz, Thomas R. Jr. (2008) Dinosaurs: The Most Complete, Up-to-Date Encyclopedia for Dinosaur Lovers of All Ages Supplementary Information
  3. ^ a b c d e Xu X.; Clark, J.M.; Forster, C. A.; Norell, M.A.; Erickson, G.M.; Eberth, D.A.; Jia, C.; Zhao, Q. (2006). “A basal tyrannosauroid dinosaur from the Late Jurassic of China”. Nature 439 (7077): 715–718. doi:10.1038/nature04511. PMID 16467836. http://lesdinos.free.fr/Ty160.pdf. 
  4. ^ W. Scott Persons IV; Philip J. Currie (2016-01-27). “An approach to scoring cursorial limb proportions in carnivorous dinosaurs and an attempt to account for allometry”. Scientific Reports. doi:10.1038/srep19828. 
  5. ^ Xings Xu et.al. (2006-02-09). “A basal tyrannosauroid dinosaur from the Late Jurassic of China”. Nature. 
  6. ^ https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=guanlong+wucaii&oq=guanlon#d=gs_qabs&u=%23p%3DSGwWqe0TvYIJ[出典無効]
  7. ^ 巨大恐竜の足跡が“死の落とし穴”に?”. ナショナルジオグラフィック協会 (2010年1月19日). 2020年2月20日閲覧。
  8. ^ a b Fiorillo, A. R. last2 = Tykoski (2014). Dodson, Peter. ed. “A Diminutive New Tyrannosaur from the Top of the World”. PLoS ONE 9 (3): e91287. doi:10.1371/journal.pone.0091287. PMC 3951350. PMID 24621577. http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0091287. 
  9. ^ 『地球46億年の旅』p18〜p21
  10. ^ Thomas R. Holtz Jr (2006-02-08). “A Jurassic tyrant is crowned”. Nature 439. 
  11. ^ 進化の謎を解く恐竜の墓場”. ナショナルジオグラフィック協会 (2008年8月). 2020年2月20日閲覧。
  12. ^ https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=guanlong+wucaii&oq=guanlon#d=gs_qabs&u=%23p%3DSGwWqe0TvYIJ[出典無効]

(ナショナル・ジオグラフィックの記事) https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0808/feature02/_02.shtml