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アンゴラサウルス
アンゴラサウルスの頭骨イラスト
地質時代
後期白亜紀後期セノマニアン - マーストリヒチアン, 94–66 Ma
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
: 有鱗目 Squamata
亜目 : トカゲ亜目 Lacertilia
下目 : オオトカゲ下目 Anguimorpha
上科 : モササウルス上科 Mosasauroidea
: モササウルス科 Mosasauridae
亜科 : プリオプラテカルプス亜科 Plioplatecarpinae
: アンゴラサウルス属 Angolasaurus
学名
Angolasaurus Telles-Antunes, 1964

アンゴラサウルス学名:Angolasaurus)は、絶滅したモササウルス科の属。本属の確定的な化石はアンゴラチューロニアンにあたる堆積層から発見され[1]、アメリカ合衆国のチューロニアンやニジェールマーストリヒチアンの堆積層からも可能性のある化石が産出している。かつてはプラテカルプスの種として考えられていたが[2]、後の系統解析でプリオプラテカルプス亜科のセルマサウルスエクテノサウルスの間に位置付けられ、プリオプラテカルプス亜科内での基盤的位置を維持した[3]

アンゴラサウルスの地理的な分布は広く、唯一大西洋を横断する分布域を持ったチューロニアンのモササウルス科爬虫類である[4]

記載

アンゴラサウルスを側面から見た生態復元図。付近に同時代のアンゴラケリスがいる

アンゴラサウルスは小型のモササウルス科爬虫類であり、全長4メートル程度であった。ボディプランの多くは近縁なプラテカルプスと共通するが、わずかに頭骨が全長に対して長い[2]。頭骨には11本の上顎骨の歯と4本の前上顎骨の歯、そして12本の歯骨の歯が並んでいる。アンゴラサウルスの系統関係は、本属の個体が尾ビレと前方に傾いた鼻孔を持ち[5]、流体力学的効率性を高める倒れたウロコが存在した[6]

後の Bientiaba 産地でもあるアンゴラサウルスが生息した海域で海水温が低下したため、アンゴラサウルスや同海域に生息した他のモササウルス科爬虫類は、背側表面の暗い色のパターンに覆われる面積が拡大して体温調節に一役買っていたという仮説が立てられている[7]

発見の歴史

アンゴラサウルスは1964年に部分的な頭骨と骨格に基づいて Miguel Telles Antunes に初めて命名されたが、1994年にプラテカルプスに再分類された[2]。この位置付けは後に2005年の研究で取り消されプリオプラテカルプス亜科に置かれた[1]。2005年から2009年にかけてのフィールドワークで少なくとも2つのアンゴラサウルスの骨格が発見された。タイプ標本の頭骨と別の新しい1つの頭骨がCTスキャンにかけられ、頭蓋内部の複雑な詳細が明らかになり、プリオプラテカルプス亜科内でのより具体的な位置付けが可能となった[4]。モササウルス科に行われたさらに新しい大規模系統解析では、アンゴラサウルスはルッセロサウルス亜科とティロサウルス亜科およびプリオプラテカルプス亜科を含む分類群の基盤的位置に置かれた[8]

2007年にはアメリカ合衆国テキサス州イーグルフォード累層から2個体が産出し、アンゴラサウルス属に属すると記載された。うち1個体には舌骨装置の一部が保存されていた。かつてプラテカルプスに割り当てられていた2本の歯が同論文の要旨でアンゴラサウルスのものとされた。これらの歯はブラジルの Sergipe 盆地から産出し、Angolasaurus bocagei のホロタイプに見られるものと一見識別不能である。この発見により、アンゴラサウルスは大西洋を横断する分布域を持った唯一のチューロニアンのモササウルス科爬虫類となった[4]

古生態学

アンゴラ

Angolasaurus bocagei は Tadi Beds 累層のみから産出し、ティロサウルス亜科の Tylosaurus iembeensis(かつてはモササウルス科に分類されていた)や浅海域のウミガメであるアンゴラケリスが同じ海域に生息していた。未同定のハリサウルス亜科首長竜の化石も同地域から発見されている。陸上動物相には竜脚類のアンゴラティタンがいた[9]

ニジェール

様々な個体発生段階を示す脊椎が Dukamaje 累層から産出している。仲間のプリオプラテカルプス亜科に属するプラテカルプスプリオプラテカルプスハリサウルス亜科ハリサウルスモササウルス亜科モササウルスゴロニオサウルスおよびイグダマノサウルスと共存していた[9]

アメリカ合衆国

アンゴラサウルスはテキサス州イーグルフォード累層から産出している[4]。イーグルフォード累層から産出した他のチューロニアンの海生爬虫類には首長竜ポリプチコドンリボネクテスキモリアサウルスプレシオサウルスが含まれ、モササウルス科にはクリダステスがいる。未同定のモササウルス科あるいは首長竜の化石もまたここから産出している[10]

出典

  1. ^ a b Jacobs (2006). “THE OCCURRENCE AND GEOLOGICAL SETTING OF CRETACEOUS DINOSAURS, MOSASAURS, PLESIOSAURS, AND TURTLES FROM ANGOLA”. Paleont. Soc. Korea 22. オリジナルの2017-03-28時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170328200022/http://www.museulourinha.org/pdfs/Papers/OMateus/Jacobs_Mateus-et_al_2006_Angola.pdf 2017年3月28日閲覧。. 
  2. ^ a b c Lingham-Soliar, Theagartan (1994). “The mosasaur "Angolasaurus" bocagei (Reptilia: Mosasauridae) from the Turonian of Angola re-interpreted as the earliest member of the genus Platecarpus” (英語). Paläontologische Zeitschrift 68 (1–2). doi:10.1007/bf02989445. 
  3. ^ Konishi, Takuya; Caldwell, Michaell (2011). “TWO NEW PLIOPLATECARPINE (SQUAMATA, MOSASAURIDAE) GENERA FROM THE UPPER CRETACEOUS OF NORTH AMERICA, AND A GLOBAL PHYLOGENETIC ANALYSIS OF PLIOPLATECARPINES”. Journal of Vertebrate Paleontology 31 (4): 754–783. doi:10.1080/02724634.2011.579023. 
  4. ^ a b c d Everhart, Michael (ed.) (2007). Second Mosasaur Meeting Abstract Book. http://oceansofkansas.com/2ndMosaMtg/Abstracts.pdf. 
  5. ^ Lindgren, Johan; Caldwell, Michael W.; Konishi, Takuya; Chiappe, Luis M. (2010-08-09). “Convergent Evolution in Aquatic Tetrapods: Insights from an Exceptional Fossil Mosasaur”. PLOS ONE 5 (8): e11998. Bibcode2010PLoSO...511998L. doi:10.1371/journal.pone.0011998. ISSN 1932-6203. PMC 2918493. PMID 20711249. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2918493/. 
  6. ^ Lindgren, Johan; Everhart, Michael J.; Caldwell, Michael W. (2011-11-16). “Three-Dimensionally Preserved Integument Reveals Hydrodynamic Adaptations in the Extinct Marine Lizard Ectenosaurus (Reptilia, Mosasauridae)”. PLOS ONE 6 (11): e27343. Bibcode2011PLoSO...627343L. doi:10.1371/journal.pone.0027343. ISSN 1932-6203. PMC 3217950. PMID 22110629. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3217950/. 
  7. ^ Strganac (2015). “Stable oxygen isotope chemostratigraphy and paleotemperature regime of mosasaurs at Bentiaba, Angola”. Netherlands Journal of Geosciences 94: 137–143. doi:10.1017/njg.2015.1. http://s3.amazonaws.com/academia.edu.documents/46318603/Stable_oxygen_isotope_chemostratigraphy_20160607-551-z7eaf1.pdf?AWSAccessKeyId=AKIAIWOWYYGZ2Y53UL3A&Expires=1490678594&Signature=1bBZC9BzTLHecpKnjFa6kl5OYy4%3D&response-content-disposition=inline%3B%20filename%3DStable_oxygen_isotope_chemostratigraphy.pdf. 
  8. ^ Simões, Tiago R.; Vernygora, Oksana; Paparella, Ilaria; Jimenez-Huidobro, Paulina; Caldwell, Michael W. (2017-05-03). “Mosasauroid phylogeny under multiple phylogenetic methods provides new insights on the evolution of aquatic adaptations in the group”. PLOS ONE 12 (5): e0176773. Bibcode2017PLoSO..1276773S. doi:10.1371/journal.pone.0176773. ISSN 1932-6203. PMC 5415187. PMID 28467456. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5415187/. 
  9. ^ a b Fossilworks: Angolasaurus”. fossilworks.org. 2017年3月28日閲覧。
  10. ^ Fossilworks: Gateway to the Paleobiology Database”. fossilworks.org. 2017年3月28日閲覧。