コンテンツにスキップ

「酢酸菌」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
m 内部リンクの最適化。
編集の要約なし
16行目: 16行目:
}}
}}


'''酢酸菌'''(さくさんきん)とは、[[エタノール]]を[[酸化]][[発酵]]して[[酢酸]]を生産する[[グラム陰性]]の[[好気性細菌]]の総称である。その名の通り[[酢酸]]を産生し、耐酸性を有する。[[水素イオン指数|pH]] 5.0 以下でも問題なく増殖するが、好適な範囲は5.4から6.3である。酢酸菌の代表例として[[食酢]]を醸造する際に用いられる ''Acetobacter aceti'' が存在する。
'''酢酸菌'''(さくさんきん)とは、[[エタノール]]を[[酸化]][[発酵]]して[[酢酸]]を生産する[[グラム陰性]]の[[好気性細菌]]の総称である。その名の通り[[酢酸]]を産生し、耐酸性を有する。[[水素イオン指数|pH]] 5.0 以下でも問題なく増殖するが、好適な範囲は5.4から6.3である。酢酸菌の代表例として[[食酢]]を醸造する際に用いられる [[アセトバクター属]] ''Acetobacter aceti'' や グルコノバクター属 ''Gluconacetobacter'' が存在する<ref name=jslab.26.118>惠美須屋 廣昭、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/26/2/26_118/_article/-char/ja/ 酢酸菌の酢酸耐性機構について] 日本乳酸菌学会誌 Vol.26 (2015) No.2 p.118-123, {{doi|10.4109/jslab.26.118}}</ref>


== 解説 ==
== 解説 ==
酢酸菌は[[アセトバクター属]] ''Acetobacter'' と グルコノバクター属 ''Gluconobacter'' に大別される。アセトバクター属が[[フランス人]][[細菌学者]]の[[ルイ・パスツール]]により[[1864年]]発見された。
酢酸菌はアセトバクター属 ''Acetobacter'' と グルコノバクター属 ''Gluconobacter'' に大別される。アセトバクター属が[[フランス人]][[細菌学者]]の[[ルイ・パスツール]]により[[1864年]]発見された。


アセトバクター属 ''Acetobacter'' は、エタノールを[[細胞膜]]にある[[解糖系]](EMP経路)と[[クエン酸回路]]によって酢酸に変化させる。一方、グルコノバクター属 ''Gluconobacter'' は、[[ソルビトール]](D-[[グルコース]])を [[ソルボース|L-ソルボース]]に変化させる。
アセトバクター属 ''Acetobacter'' は、エタノールを[[細胞膜]]にある[[解糖系]](EMP経路)と[[クエン酸回路]]によって酢酸に変化させる。一方、グルコノバクター属 ''Gluconobacter'' は、[[ソルビトール]](D-[[グルコース]])を [[ソルボース|L-ソルボース]]に変化させる。

2017年7月5日 (水) 08:25時点における版

酢酸菌
分類
ドメイン : 真正細菌 Bacteria
: プロテオバクテリア門
Proteobacteria
: α-プロテオバクテリア綱
Alpha Proteobacteria
: ロドスピリルム目
Rhodospirillales
: 酢酸菌科
Acetobacteraceae
学名
Acetobacteraceae
(ex Henrici 1939)
Gillis and De Ley 1980
下位分類(属)
  • アセトバクター属(タイプ属)
他26属(#下位分類参照)

酢酸菌(さくさんきん)とは、エタノール酸化発酵して酢酸を生産するグラム陰性好気性細菌の総称である。その名の通り酢酸を産生し、耐酸性を有する。pH 5.0 以下でも問題なく増殖するが、好適な範囲は5.4から6.3である。酢酸菌の代表例として食酢を醸造する際に用いられる アセトバクター属 Acetobacter aceti や グルコノバクター属 Gluconacetobacter が存在する[1]

解説

酢酸菌はアセトバクター属 Acetobacter と グルコノバクター属 Gluconobacter に大別される。アセトバクター属がフランス人細菌学者ルイ・パスツールにより1864年発見された。

アセトバクター属 Acetobacter は、エタノールを細胞膜にある解糖系(EMP経路)とクエン酸回路によって酢酸に変化させる。一方、グルコノバクター属 Gluconobacter は、ソルビトール(D-グルコース)を L-ソルボースに変化させる。

生物学的特徴

常在菌として広く自然界に存在し、天然にはや植物性の炭水化物酵母により醗酵してエタノールが生成しているような場所に存在する。花の蜜や傷ついた果実などからも単離される。また、低温殺菌濾過滅菌していない、作りたてのリンゴのシードルやビールにもよくみられる。酢酸菌は好気性を持つため、そのような液体においては表面に膜を作る形で成長する。ワインなどの比較的アルコール度数の低いに酢酸菌が作用するとができる。

アセトバクター属など一部の属は、クエン酸回路酵素によって酢酸を二酸化炭素にまで酸化できる。グルコノバクター属などはクエン酸回路酵素を完全な形では持っていないため、酢酸をさらに酸化することはできない。

Acetobacter xylinum はグルコースなどの糖類を発酵してセルロース繊維を合成する。1990年代初め頃にブームとなったデザート、ナタ・デ・ココもこの作用の産物である。Acetobacter xylinum の産生するセルロースは、植物性由来のセルロースと比較して1100以下と非常に細く、それらが緻密に絡み合うことで非常にヤング率の高いシートがつくられ、工業利用法が検討されている[2]。酢酸菌をはじめとした植物以外の生物が産生するセルロースはバクテリアセルロースまたはマイクロバイアルセルロースと呼ばれている。フィリピンの食品であるナタナタデココは上記の酢酸菌の産出したセルロースゲルであるが、これを生成する酢酸菌のことをナタ菌と呼ぶことがある。

下位分類

  • アセトバクター属酢酸菌属Acetobacter
    • アセトバクター・アセチ Acetobacter aceti
    • アセトバクター・オリエンタリス Acetobacter orientalis
    • アセトバクター・パスツリアナスAcetobacter pasteurianus
    • アセトバクター・キシリナム Acetobacter xylinum
  • Acidicaldus
  • アシディフィラム属 Acidiphilium
  • アシディスファエラ属 Acidisphaera
  • アシドセラ属 Acidocella
  • アシドモナス属 Acidomonas
  • アサイア属 Asaia
  • Belnapia
  • クラウロコッカス属 Craurococcus
  • グルコナセトバクター属 Gluconacetobacter
  • グルコノバクター属 Gluconobacter
  • コザキア属 Kozakia
  • Leahibacter
  • ムリコッカス属 Muricoccus
  • Neoasaia
  • Oleomonas
  • パラクラウロコッカス属 Paracraurococcus
  • ロドピラ属 Rhodopila
  • ロゼオコッカス属 Roseococcus
  • ルブリテピダ属 Rubritepida
  • Saccharibacter
  • ステラ属 Stella
  • Swaminathania
  • テイココッカス属 Teichococcus
  • ザヴァルジニア属 Zavarzinia

酢酸菌を使用した食品

酢酸菌を使用した工業製品

脚注

  1. ^ 惠美須屋 廣昭、酢酸菌の酢酸耐性機構について 日本乳酸菌学会誌 Vol.26 (2015) No.2 p.118-123, doi:10.4109/jslab.26.118
  2. ^ 深谷正裕、川村吉也、酢酸菌の生産するバイオセルロース 日本醸造協会誌 Vol.89 (1994) No.7 P.536-543, doi:10.6013/jbrewsocjapan1988.89.536

参考文献

外部リンク