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'''酢酸菌'''(さくさんきん)とは、[[エタノール]]を[[酸化]][[発酵]]して[[酢酸]]を生産する[[グラム陰性]]の[[好気性細菌]]の総称である。その名の通り[[酢酸]]を産生し、耐酸性を有する。[[水素イオン指数|pH]] 5.0 以下でも問題なく増殖するが、好適な範囲は5.4から6.3である。酢酸菌の代表例として[[食酢]]を醸造する際に用いられる [[アセトバクター属]] ''Acetobacter aceti'' や グルコノバクター属 ''Gluconacetobacter'' が存在する<ref name=jslab.26.118>惠美須屋 廣昭、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/26/2/26_118/_article/-char/ja/ 酢酸菌の酢酸耐性機構について] 日本乳酸菌学会誌 Vol.26 (2015) No.2 p.118-123, {{doi|10.4109/jslab.26.118}}</ref>。 |
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酢酸菌はアセトバクター属 ''Acetobacter'' と グルコノバクター属 ''Gluconobacter'' に大別される。アセトバクター属が[[フランス人]][[細菌学者]]の[[ルイ・パスツール]]により[[1864年]]発見された。 |
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アセトバクター属 ''Acetobacter'' は、エタノールを[[細胞膜]]にある[[解糖系]](EMP経路)と[[クエン酸回路]]によって酢酸に変化させる。一方、グルコノバクター属 ''Gluconobacter'' は、[[ソルビトール]](D-[[グルコース]])を [[ソルボース|L-ソルボース]]に変化させる。 |
アセトバクター属 ''Acetobacter'' は、エタノールを[[細胞膜]]にある[[解糖系]](EMP経路)と[[クエン酸回路]]によって酢酸に変化させる。一方、グルコノバクター属 ''Gluconobacter'' は、[[ソルビトール]](D-[[グルコース]])を [[ソルボース|L-ソルボース]]に変化させる。 |
2017年7月5日 (水) 08:25時点における版
酢酸菌 | |||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||
Acetobacteraceae (ex Henrici 1939) Gillis and De Ley 1980 | |||||||||||||||
下位分類(属) | |||||||||||||||
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酢酸菌(さくさんきん)とは、エタノールを酸化発酵して酢酸を生産するグラム陰性の好気性細菌の総称である。その名の通り酢酸を産生し、耐酸性を有する。pH 5.0 以下でも問題なく増殖するが、好適な範囲は5.4から6.3である。酢酸菌の代表例として食酢を醸造する際に用いられる アセトバクター属 Acetobacter aceti や グルコノバクター属 Gluconacetobacter が存在する[1]。
解説
酢酸菌はアセトバクター属 Acetobacter と グルコノバクター属 Gluconobacter に大別される。アセトバクター属がフランス人細菌学者のルイ・パスツールにより1864年発見された。
アセトバクター属 Acetobacter は、エタノールを細胞膜にある解糖系(EMP経路)とクエン酸回路によって酢酸に変化させる。一方、グルコノバクター属 Gluconobacter は、ソルビトール(D-グルコース)を L-ソルボースに変化させる。
生物学的特徴
常在菌として広く自然界に存在し、天然には糖や植物性の炭水化物が酵母により醗酵してエタノールが生成しているような場所に存在する。花の蜜や傷ついた果実などからも単離される。また、低温殺菌・濾過滅菌していない、作りたてのリンゴのシードルやビールにもよくみられる。酢酸菌は好気性を持つため、そのような液体においては表面に膜を作る形で成長する。ワインなどの比較的アルコール度数の低い酒に酢酸菌が作用すると酢ができる。
アセトバクター属など一部の属は、クエン酸回路酵素によって酢酸を二酸化炭素にまで酸化できる。グルコノバクター属などはクエン酸回路酵素を完全な形では持っていないため、酢酸をさらに酸化することはできない。
Acetobacter xylinum はグルコースなどの糖類を発酵してセルロース繊維を合成する。1990年代初め頃にブームとなったデザート、ナタ・デ・ココもこの作用の産物である。Acetobacter xylinum の産生するセルロースは、植物性由来のセルロースと比較して1⁄100以下と非常に細く、それらが緻密に絡み合うことで非常にヤング率の高いシートがつくられ、工業利用法が検討されている[2]。酢酸菌をはじめとした植物以外の生物が産生するセルロースはバクテリアセルロースまたはマイクロバイアルセルロースと呼ばれている。フィリピンの食品であるナタ、ナタデココは上記の酢酸菌の産出したセルロースゲルであるが、これを生成する酢酸菌のことをナタ菌と呼ぶことがある。
下位分類
- アセトバクター属(酢酸菌属) Acetobacter
- アセトバクター・アセチ Acetobacter aceti
- アセトバクター・オリエンタリス Acetobacter orientalis
- アセトバクター・パスツリアナスAcetobacter pasteurianus
- アセトバクター・キシリナム Acetobacter xylinum
- Acidicaldus
- アシディフィラム属 Acidiphilium
- アシディスファエラ属 Acidisphaera
- アシドセラ属 Acidocella
- アシドモナス属 Acidomonas
- アサイア属 Asaia
- Belnapia
- クラウロコッカス属 Craurococcus
- グルコナセトバクター属 Gluconacetobacter
- グルコノバクター属 Gluconobacter
- コザキア属 Kozakia
- Leahibacter
- ムリコッカス属 Muricoccus
- Neoasaia
- Oleomonas
- パラクラウロコッカス属 Paracraurococcus
- ロドピラ属 Rhodopila
- ロゼオコッカス属 Roseococcus
- ルブリテピダ属 Rubritepida
- Saccharibacter
- ステラ属 Stella
- Swaminathania
- テイココッカス属 Teichococcus
- ザヴァルジニア属 Zavarzinia
酢酸菌を使用した食品
酢酸菌を使用した工業製品
- ナタ・デ・ココ - 「食品以外での利用」の項を参照
脚注
- ^ 惠美須屋 廣昭、酢酸菌の酢酸耐性機構について 日本乳酸菌学会誌 Vol.26 (2015) No.2 p.118-123, doi:10.4109/jslab.26.118
- ^ 深谷正裕、川村吉也、酢酸菌の生産するバイオセルロース 日本醸造協会誌 Vol.89 (1994) No.7 P.536-543, doi:10.6013/jbrewsocjapan1988.89.536
参考文献
- 正井博之、『食酢醸造微生物学の進歩 (1)』 日本釀造協會雜誌 Vol.79 (1984) No.6 P.403-408, doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.79.403
- 正井博之、『食酢醸造微生物学の進歩 (2)』 日本釀造協會雜誌 Vol.79 (1984) No.7 P.467-474, doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.79.467
- 足立収生、『酢酸菌の糖代謝系酵素に関する研究』 日本農芸化学会誌 Vol.53 (1979) No.8 P.R77-R86, doi:10.1271/nogeikagaku1924.53.8_R77
外部リンク
- 外内尚人、『酢酸菌利用の歴史と食文化』 日本乳酸菌学会誌 Vol.26 (2015) No.1 p.6-13, doi:10.4109/jslab.26.6