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芦川絵里

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
あしかわ えり
芦川 絵里
本名 不明
別名義 芦川 絵理
生年月日 1949年8月
出生地 日本の旗 日本 神奈川県
職業 女優
ジャンル 劇場用映画成人映画
活動期間 1968年 - 1971年
事務所 プロダクション鷹
主な作品
処女ゲバゲバフランス語版』(1969年)
女学生ゲリラ英語版』(1969年)
裸体の街』(1969年)
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芦川 絵里(あしかわ えり、1949年8月 - )は、日本の女優[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14]芦川 絵理と表記された作品もある[14]木俣堯喬プロダクション鷹に所属し、同社のほか若松孝二若松プロダクションの作品に多く出演した[3][4][6][9][10][12][13][14]。『処女ゲバゲバフランス語版』(監督若松孝二、1969年)のキーヴィジュアルである、十字架にかけられた女を演じたことで知られる[15][16]

人物・来歴

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木俣堯喬と若松孝二

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1949年(昭和24年)8月、神奈川県に生まれる[1][5]

1968年(昭和43年)3月、高等学校を卒業、絵画の勉強をしながら、ファッションモデルの仕事をしていた[1]。満19歳を迎えるこの年、正確な時期は不明であるが、木俣堯喬(1915年 - 2004年)が芦川をスカウトし、プロダクション鷹の専属女優になる[1]水城リカ(1943年 - )、あるいは珠瑠美(1949年 - )・谷身知子(1951年 - )姉妹らとともに木俣堯喬の門下生として育てられた[1][3]。同年、木俣が監督し水城リカが主演した成人映画『送り狼』に出演して、映画界にデビューする[1]。同作が、諸記録に残る最初の出演作品である[6][9][10][11][12][13][14]

当時の専門誌『成人映画』の編集長であった川島のぶ子は、「中性的な顔立ちとスリムなプロポーションで人気を集めた」と評す[1]。『日本映画発達史』の田中純一郎は、同書のなかで黎明期の成人映画界のおもな出演者として、扇町京子橘桂子、城山路子(光岡早苗と同一人物)、内田高子香取環新高恵子松井康子西朱実朝日陽子火鳥こずえ華村明子森美沙湯川美沙、光岡早苗、路加奈子有川二郎里見孝二川部修詩佐伯秀男の名を挙げているが、芦川についての言及はない[17]。1966年(昭和41年)デビューの一星ケミ(1947年 - )や祝真理(1948年 - )、1967年(昭和42年)デビューの辰巳典子(1947年 - )や谷ナオミ(1948年 - )、青山リマ(1949年 - )、白川和子(1947年 - )、あるいは同じ1968年デビューのハニー・レーヌ(1952年 - )や谷身知子ら同様、戦後生まれの第二世代に属する。

翌1969年(昭和44年)1月に公開された『人肉の市』、翌2月公開の『広域重要指定一〇八号拳銃魔 嬲りもの』、同年4月公開の『密室』、同年5月公開の『裸体の街』といった木俣の監督作に次々に主演する[9][10][11][12][13][14]。『広域重要指定一〇八号拳銃魔 嬲りもの』は前年秋に起きた「広域重要指定一〇八号事件」、いわゆる「永山則夫連続射殺事件」に題材をとり、逮捕前に犯人像を創造したフィクション作品である[18]。また、とくに作家の田中小実昌がゲスト出演した『裸体の街』では、田中が演じるヒモを支える薄幸の女を演じて好評を得た[1]。当時、同社は若松プロダクションと提携しており、同年4月に公開された若松孝二の監督作『処女ゲバゲバ』では、富士山麓の荒野で磔刑に処される女「花子」を演じた[9][10][12][13][14][15][16]。同年5月26日に公開された若松プロダクション製作、足立正生監督の『女学生ゲリラ英語版』でも主演している[9][10][12][13][14]。『人肉の市』は1971年(昭和46年)8月18日に Les Esclaves du plaisir の題でフランスで公開されている[19]

同年7月に公開された若松孝二監督による主演作『私は濡れている』を最後に引退した[1]。満22歳であった。以降の消息は知られていない。引退後の1975年(昭和50年)4月、映画評論家の松田政男が『現代の眼』での連載『集団の発見 52』で、「映画スター」としての「芦川絵里という若い娘さんのことを思い出す」として1960年代末の芦川を回想し、「若松プロのピンク映画にひっきりなしに姿を見せていた」「今や主婦をやっているのかもしれず」と書く[4]。同じプロダクション鷹の谷身知子も翌1972年(昭和47年)に結婚引退、渡米した[20]。存命であれば2014年(平成26年)には満65歳である[1][5]

再評価

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2005年(平成17年)12月22日に紀伊國屋書店が発売した『若松孝二 初期傑作選 DVD-BOX 2』に、芦川の主演作『処女ゲバゲバ』および『裸の銃弾』が収録された[6][13]。同2作は、フランスでも2010年(平成22年)11月16日に発売された Coffret: Koji Wakamatsu vol.3 にそれぞれ、La Vierge violente, Naked Bullet の題で収録された。

2008年(平成20年)3月15日 - 同年4月4日にシネマヴェーラ渋谷で行なわれた「若松孝二大レトロスペクティブ」の特集上映で、『処女ゲバゲバ』および『裸の銃弾』が上映された[21]

2011年(平成23年)9月18日 - 同19日に神戸映画資料館で行なわれた「第二の伝説 知られざる若松孝二」の特集上映で、主演作『真昼の暴行劇』が35mmフィルムの上映用プリントで上映された[22]。同年5月14日 - 同年7月15日にラピュタ阿佐ヶ谷で行なわれた「60年代まぼろしの官能女優たち PART II」特集上映で、主演作『広域重要指定犯108号 嬲りもの』が16mmフィルム版上映用プリントで上映された[18]。2012年(平成24年)9月30日 - 10月1日に神戸映画資料館で行われた「プロ鷹クロニクル PART-2」の特集上映で、主演作『広域重要指定犯108号 嬲りもの』および『裸体の街』の2作がそれぞれ16mmフィルム版上映用プリントで上映された[23]

2014年(平成26年)10月11日 - 同24日にポレポレ東中野で行われた「『道徳のゲリラ』若松孝二監督特集」の特集上映で、主演作『通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇』が『現代性犯罪暗黒編 ある通り魔の告白』題のデジタルHD素材で上映された[24]。同特集上映は同18日からシネマスコーレ[24]、同年12月13日からは第七藝術劇場[25] でもそれぞれ行われた。

フィルモグラフィ

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クレジットはすべて「出演」である[1][3][4][6][7][9][10][11][12][13][14]東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)等の所蔵・現存状況についても記す[10][26]

  • 送り狼』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、主演水城リカ、製作プロダクション鷹、1968年公開(成人映画・映倫番号 不明)
  • 人肉の市』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、製作プロダクション鷹、1969年1月公開(成人映画・映倫番号 15626) - 主演、上映用プリントをNFCが所蔵[26]
  • 広域重要指定一〇八号拳銃魔 嬲りもの』(『広域重要指定犯108号 嬲りもの』[18][23]『嬲りもの 広域重要指定拳銃魔』[14]『嬲りもの』[11]) : 企画・監督・脚本木俣堯喬、製作プロダクション鷹、1969年2月公開(成人映画・映倫番号 15692) - 主演、55分の16mmフィルム版上映用プリントが現存[18][23]
  • 密室』(『密室 異常なる枕芸者』[1]) : 製作・企画・監督・脚本木俣堯喬、主演渚マリ、製作・配給プロダクション鷹、1969年4月公開(成人映画・映倫番号 15751) - 主演・「若い女」役
  • 処女ゲバゲバフランス語版』 : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、助監督小水一男秋山未知汚、共演谷川俊之乱孝寿・林美樹、製作若松プロダクション、1969年4月公開(成人映画・映倫番号 不明) - 主演・「花子」役、62分の上映用プリントをNFCが所蔵[10]・66分の原版が現存・2007年紀伊國屋書店がDVDビデオグラムを発売[6][13]
  • 裸体の街』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、共演田中小実昌、製作プロダクション鷹、1969年5月公開(成人映画・映倫番号 15836) - 主演、55分の16mmフィルム版上映用プリントが現存[23]
  • 愛欲の痴図 鎌倉情死考』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、製作プロダクション鷹、1969年5月公開(成人映画・映倫番号 15898)
  • 女学生ゲリラ英語版』 : 企画・製作若松孝二、監督足立正生、脚本出口出、助監督小水一男・秋山未知汚、共演花村亜流芽福間健二平岡正明、製作若松プロダクション、1969年5月26日公開(成人映画・映倫番号 不明) - 主演[8]・「村山明子」役、73分の原版が現存・2002年アップリンクがDVDビデオグラムを発売[13]
  • 通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇』(『現代性犯罪暗黒篇』[11]) : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、主演福間健二・花村亜流芽、製作若松プロダクション、配給葵映画、1969年7月18日審査・公開(成人映画・映倫番号 15942) - 主演[8]・「若林春代」役、フィルム原版およびデジタルHD素材が現存[24]
  • 血まみれの犯行』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、製作プロダクション鷹、1969年6月30日審査・8月公開(成人映画・映倫番号 15959) - 主演[8]
  • やわ肌無宿 男殺し女殺し』(『男殺し女殺し』[11]) : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、共演林美樹、製作若松プロダクション、配給葵映画、1969年10月14日審査・公開(成人映画・映倫番号 15943)
  • 裸の銃弾』 : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、主演港雄一・林美樹、製作若松プロダクション、1969年10月公開(成人映画・映倫番号 不明) - 出演、72分の原版が現存・2007年紀伊國屋書店がDVDビデオグラムを発売[6][13]
  • 真昼の暴行劇』(『ヌードモデルの告白 真昼の暴行劇』) : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、助監督小水一男、共演一星ケミ、製作若松プロダクション、配給日本シネマ、1970年3月16日審査・公開(成人映画・映倫番号 16282) - 主演[8]・「マリ」役、67分の上映用プリントをNFCが所蔵[10]・70分の上映用プリントが現存[22]
  • 性教育書 愛のテクニック』(カーマスートラ) : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、共演矢島弘、製作若松プロダクション、1970年3月16日審査・公開(成人映画・映倫番号 不明) - 主演
  • 私は濡れている』 : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出(足立正生・荒井晴彦)、製作若松プロダクション、1971年5月7日審査・7月公開(成人映画・映倫番号 16775) - 主演

ビブリオグラフィ

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国立国会図書館蔵書等にみる書誌である[6]

  • グラビア : 『成人映画』第39号所収、現代工房、1969年4月1日発行
  • 「裸体の街」芦川絵理 : 『週刊影』5月26日増刊号・第2巻第10号通巻25号所収、辰巳出版、1969年5月26日発行
  • グラビア : 『映画情報』8月号所収、国際情報社、1969年8月発行
  • グラビア : 『キューティ画報』5月号所収、文献資料刊行会、1970年5月発行
  • グラビア : 『週刊プレイボーイ』4月7日号・第5巻第14号所収、1970年4月7日発行
  • 『緊縛フォト集IV』、『風俗奇譚』12月特別号所収、文献資料刊行会、1970年12月10日発行
  • 『緊縛フォト集V』、『風俗奇譚』3月特別号所収、文献資料刊行会、1971年3月10日発行
  • 「眠れぬ夜のドキドキ連続ショット集『私は濡れている』」芦川絵里 : 『映画エロチカ封切館 PINKY』8月号所収、東京三世社、1971年8月発行

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l キネ旬[1980], p.24.
  2. ^ 日外[2003], p.61.
  3. ^ a b c d キネ旬[1976], p.140.
  4. ^ a b c d 現代の眼[1975], p.256-261.
  5. ^ a b c 芦川絵理jlogos.com, エア、2014年11月5日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h 国立国会図書館サーチ 検索結果、国立国会図書館、2014年10月30日閲覧。
  7. ^ a b 年鑑[1973], p.137-139, 153, 170.
  8. ^ a b c d e キネ旬[1973], p.43, 59, 76, 111.
  9. ^ a b c d e f g Eri Ashikawa, インターネット・ムービー・データベース (英語)、2014年11月5日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i j 芦川絵里東京国立近代美術館フィルムセンター、2014年11月5日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g 日本映画情報システム 検索結果、文化庁、2014年11月5日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g 芦川絵里KINENOTE, 2014年11月5日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g h i j k 芦川絵里allcinema, 2014年11月5日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i 芦川絵理日本映画データベース、2014年11月5日閲覧。
  15. ^ a b キネ旬[1973], p.124.
  16. ^ a b 処女ゲバゲバポスター、若松プロダクション、2014年11月5日閲覧。
  17. ^ 田中[1976], p.85-86.
  18. ^ a b c d 60年代まぼろしの官能女優たち PART IIラピュタ阿佐ヶ谷、2014年11月5日閲覧。
  19. ^ Les Esclaves du plaisir, Encyclociné, 2014年11月5日閲覧。
  20. ^ キネ旬[1980], p.434.
  21. ^ 若松孝二大レトロスペクティブシネマヴェーラ渋谷、2014年11月5日閲覧。
  22. ^ a b 上映プログラム神戸映画資料館、2012年9月付、2014年11月5日閲覧。
  23. ^ a b c d 上映プログラム、神戸映画資料館、2012年9月付、2014年11月5日閲覧。
  24. ^ a b c 道徳のゲリラ 若松孝二監督特集ポレポレ東中野、2014年11月5日閲覧。
  25. ^ 道徳のゲリラ 若松孝二監督特集第七藝術劇場、2014年11月5日閲覧。
  26. ^ a b 平成16年度独立行政法人国立美術館事業実績統計表独立行政法人国立美術館、2014年11月5日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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画像外部リンク
人肉の市
1969年1月日本公開
(プロダクション鷹)
広域重要指定一〇八号拳銃魔 嬲りもの
1969年2月公開
(プロダクション鷹)
処女ゲバゲバ
1969年4月公開
(若松プロダクション)
通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇
1969年7月公開
(若松プロダクション)
ヌードモデルの告白 真昼の暴行劇
1970年3月公開
(若松プロダクション)