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{{Otheruses|銀河の集団|[[任天堂]]のゲーム『[[ポケットモンスター ダイヤモンド・パール]]』に登場する組織|ポケットモンスター ダイヤモンド・パールの登場人物#ギンガ団}}
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'''銀河団'''(ぎんがだん、{{lang-en-short|''cluster of galaxies''}} )は[[銀河]]が数百-数千という単位で集まって作る[[システム]]。<ref>{{Cite web|url=https://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/tenmon/tenmon_006_2.html|title=銀河団とはなにか|publisher=[[国立天文台]]|work=[[理科年表]]オフィシャルサイト|date=2011-06|author=[[国立天文台ハワイ観測所]] [[田中壱]]|accessdate=2014-06-30}}</ref>
'''銀河団'''(ぎんがだん、cluster of galaxies)は多数の[[銀河]]が互いの[[重力]]の影響によって形成された銀河の集団である<ref name="spaceinfo">[http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/galaxies.html 銀河群・銀河団 宇宙情報センター JAXA]</ref>。冷たい[[暗黒物質]]による階層的構造形成シナリオ([[Λ-CDMモデル|Λ-CDM]])に基づくと、[[ビッグバン]]によって[[宇宙]]が誕生した直後、宇宙の物質密度に場所によってわずかな揺らぎがあったため、この密度揺らぎが次第に成長し、密度の高い部分が重力によって収縮して銀河が生まれたと考えられている。その後、この銀河同士が互いの重力によって集合したものが銀河団であるとされている。銀河団には数十個から数千個の銀河が含まれている。銀河団自身もまた、[[超銀河団]]というより大きなスケールの構造の一部となっている<ref name="spaceinfo"/><ref name="rikanenpyo">[https://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/tenmon/tenmon_031.html 宇宙の大規模構造、超銀河団、超空洞、壁 理科年表オフィシャルサイト]</ref>。


銀河の集団の中で規模の小さいものは'''銀河群'''(ぎんがぐん、group of galaxies)と呼称される<ref name="spaceinfo"/>。
銀河の集団の中で規模の小さいものは'''銀河群'''(ぎんがぐん、group of galaxies)と呼称される<ref name="spaceinfo"/>。


== 銀河 ==
== 銀河団の特徴 ==
'''銀河群'''は銀河の集団の中では最も規模の小さなものである。典型的な銀河群に含まれる銀河はせいぜい50個程度で、銀河群の直径は約2M[[パーセク|pc]]程度である。銀河群の[[質量]]はおよそ10<sup>13</sup>[[太陽質量]]である。銀河群内で個々の銀河は約150km/sの速度で運動している。

銀河団内の銀河は互いに重力で拘束されており、銀河団のサイズと各銀河の固有運動速度から考えて、今後10億年単位で衝突・合体して巨大銀河に集約すると考えられている。

我々の[[銀河系|銀河系(天の川銀河)]]が属している銀河群は[[局部銀河群]]と呼ばれ、40個以上の銀河が含まれている。

== 銀河団 ==
銀河団は銀河群よりも規模が大きい銀河集団を指す。[[可視光]]で観測すると、銀河団は互いの重力によって銀河が引き合っている集団のように見える。しかし、銀河団内の銀河の運動速度は、可視光で見えている銀河同士の重力で束縛されているとするには速すぎる。このことから、銀河団には[[光]]では観測できない別の質量成分が存在することが示唆される。[[X線]]での観測によって、銀河団の中には膨大な量の[[銀河団ガス]]が存在することが明らかになっている。このガスは約10<sup>8</sup>[[ケルビン|K]]という非常に高温のガスで、[[熱制動放射]]によってX線を放射してい。このガスの総質量目に見える物質の大半を占めるかしこのガスの質量を考慮に入れても、銀河と高温ガスを銀河団の中に束縛するのには十分ではない。銀河団の質量・質量分布は長年の間高温ガスが[[静水圧平衡]]にあると仮定して求められていた。このようにして求めた銀河団の総質量は、銀河と銀河間ガスを合わせた質量よりもずっと大きい。この見えない質量成分は暗黒物質([[暗黒物質|ダークマター]])として知られているが、その正体は不明である。典型的な銀河団では、銀河として存在するのはおそらく全質量の数%程度、X線を放射する高温ガスが約20%に過ぎず、残りは暗黒物質(ダークマター)が占めていると考えられている。

銀河団は通常、以下のような特徴を持つ。
銀河団は通常、以下のような特徴を持つ。
* 50個から1000程度の銀河、X線を放射する高温ガス、質量の大半を占める暗黒物質(ダークマター)から構成される。
* 数百個から数千規模の銀河からなりこれに付随するX線を放射する高温ガス、質量の大半を占める暗黒物質([[ダークマター]])から構成される。
* 銀河団内らの三成分の質量分布はどれもほぼ同じであると考えられてきたが、近年構造形成過程にある銀河団(衝突銀河団)では、銀河・暗黒物質(ダークマター)高温ガスの分布が大きくことている場合があることが明らかになってきた
* 銀河団の全質量は10<sup>14</sup>~10<sup>15</sup>太陽質量である。
* 銀河団の全質量は10<sup>14</sup>~10<sup>15</sup>太陽質量である。
* 銀河団の典型的な直径は約4-6Mpcである。
* 銀河団の典型的な直径は約4-6Mpcである。
* 銀河団内の個々の銀河の速度分散は約800~1000km/sである。
* 銀河団内の個々の銀河の速度分散は約800~1000km/sである。
* 銀河団同士の平均距離はおよそ10Mpcである。
* 銀河団同士の平均距離はおよそ10Mpcである。
* 銀河団内を構成する銀河、高温ガス、ダークマターそれぞれの質量分布はどれもほぼ同じであると考えられてきたが、近年構造形成過程にある銀河団([[衝突銀河団]])ではそれ大きくる分布を示すものが発見されている。
=== 主な銀河団 ===
* [[おとめ座銀河団]]
* [[かみのけ座銀河団]]
* [[うみへび座銀河団]]


== 銀河団 ==
== スケールの違いによる銀河団の分類 ==
=== 銀河群 ===
銀河団のなかでも、よりちいさな領域に数十個程度の規模で集まるものを'''銀河群'''、またはよりわかりやすく'''コンパクト銀河群'''と呼ぶことがある。Paul Hickson は1982年にこのような銀河群を[[ヒクソン・コンパクト銀河群]]という銀河カタログにまとめている。[[太陽系]]を含む[[銀河系|銀河系(天の川銀河)]]が属している銀河群は[[局部銀河群]]と呼ばれ、最大規模の[[アンドロメダ銀河]]を始め40個以上の銀河が含まれている。

典型的な銀河群に含まれる銀河はせいぜい50個程度で、銀河群の直径は約2M[[パーセク|pc]]程度である。銀河群の[[質量]]はおよそ10<sup>13</sup>[[太陽質量]]である。<!--以下、対象は銀河団か銀河群か(銀河群の節内で説明してあるが)、一般系に対してか特定系を指した記述かが出典もなく不明で念のためCO「銀河団内で個々の銀河は約150km/sの速度で運動している。」-->銀河団内の銀河は互いに重力で拘束されており、銀河団のサイズと各銀河の固有運動速度から、今後10億年単位で衝突・合体して巨大銀河に集約すると考えられている。

=== 銀河団 ===
{{Main|超銀河団}}
{{Main|超銀河団}}
銀河群や銀河団やいくつかの孤立した銀河は'''超銀河団'''と呼ばれるより大きな構造を形作っている。宇宙での最も大きな空間スケールでは、物質はフィラメント状あるいは[[超空洞|ボイド]]と呼ばる空洞を取り囲む壁のような構造を作って集まっている。この[[宇宙の大規模構造]]は泡に似ているめ、'''泡構造'''などとも呼ばれる
銀河群や銀河団やいくつかの孤立した銀河は'''超銀河団'''と呼ばれるより大きな構造を形作っている。1978年に初めて発見され、[[かみのけ座銀河団]]と名付けられた。


=== 超銀河団Complex ===
{{Main|銀河フィラメント}}
銀河団や超銀河団の距離分布の観測(銀河サーベイや[[赤方偏移]]サーベイ)から、これらがさらに大きな空間スケールで集まっている構造が知られるようになった。観測によれば、分布は物質はフィラメント状に、大きな空洞の周りを取り囲む壁のような構造を作って集まっている。このような[[宇宙の大規模構造]]を探る方法は、[[ガンマ線バースト]]や[[クエーサー]]の分布など銀河団以外に対しても行われ、さらに大きな構造<ref>[[ヘルクレス座・かんむり座グレートウォール]]など。</ref>も発見されている。

== 理論 ==
[[可視光]]で観測すると、銀河団は多数の銀河が互いの[[重力]]によって銀河が引き合って形成された集団のように見える<ref name="spaceinfo">[http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/galaxies.html 銀河群・銀河団 宇宙情報センター JAXA]</ref>。しかし、銀河団内の銀河の運動速度は、可視光で見えている銀河同士の重力で束縛されているとするには速すぎる。このことから、銀河団には[[光]]では観測できない別の質量成分が存在することが示唆される。

[[X線]]での観測によって、銀河団には高温の[[銀河団ガス]]があり、X線源は約10<sup>8</sup>[[ケルビン|K]]という非常に高温のガス[[熱制動放射]]によるであることが明らかになっており、ガスの総質量目に見える物質の大半を占める膨大な量であるが、[[静水圧平衡]]にあると仮定て求めた銀河団と銀河団ガスの質量を考慮に入れても、これらを銀河団の中に束縛するのには十分ではな実際の総質量はずっと大きい。この見えない質量成分は暗黒物質([[暗黒物質|ダークマター]])として知られているが、その正体は不明である。典型的な銀河団では、銀河として存在するのはおそらく全質量の数%程度、X線を放射する高温ガスが約20%に過ぎず、残りはダークマターが占めていると考えられている。

これまでの観測から、われわれから少なくとも 80 億光年かなたにまで宇宙の大規模構造がつながっていることが確認され、また宇宙誕生からわずか 10 億年後に既に形成されつつある原始銀河団が見つかっている。 銀河は宇宙初期の小さな密度揺らぎが重力によって成長して形成されたと考えられている。銀河が群れ集まった銀河団や超銀河団などの大規模構造も、長い宇宙の歴史の中で重力がつくりあげた物質分布のパターンだと考えられる。<ref name="spaceinfo"/><ref name="rikanenpyo">[https://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/tenmon/tenmon_031.html 宇宙の大規模構造、超銀河団、超空洞、壁 理科年表オフィシャルサイト]</ref>。

== 主な銀河団 ==
* [[おとめ座銀河団]]
* [[かみのけ座銀河団]]
* [[うみへび座銀河団]]


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2014年6月30日 (月) 04:23時点における版

銀河団(ぎんがだん、: cluster of galaxies )は銀河が数百-数千という単位で集まって作るシステム[1]

銀河の集団の中で規模の小さいものは銀河群(ぎんがぐん、group of galaxies)と呼称される[2]

銀河団の特徴

銀河団は通常、以下のような特徴を持つ。

  • 数百個から数千個規模の銀河からなり、これに付随するX線を放射する高温ガス、質量の大半を占める暗黒物質(ダークマター)から構成される。
  • 銀河団の全質量は1014~1015太陽質量である。
  • 銀河団の典型的な直径は約4-6Mpcである。
  • 銀河団内の個々の銀河の速度分散は約800~1000km/sである。
  • 銀河団同士の平均距離はおよそ10Mpcである。
  • 銀河団内を構成する銀河、高温ガス、ダークマターのそれぞれの質量分布はどれもほぼ同じであると考えられてきたが、近年、構造形成過程にある銀河団(衝突銀河団)ではそれとは大きく異なる分布を示すものが発見されている。

スケールの違いによる銀河団の分類

銀河群

銀河団のなかでも、よりちいさな領域に数十個程度の規模で集まるものを銀河群、またはよりわかりやすくコンパクト銀河群と呼ぶことがある。Paul Hickson は1982年にこのような銀河群をヒクソン・コンパクト銀河群という銀河カタログにまとめている。太陽系を含む銀河系(天の川銀河)が属している銀河群は局部銀河群と呼ばれ、最大規模のアンドロメダ銀河を始め40個以上の銀河が含まれている。

典型的な銀河群に含まれる銀河はせいぜい50個程度で、銀河群の直径は約2Mpc程度である。銀河群の質量はおよそ1013太陽質量である。銀河団内の銀河は互いに重力で拘束されており、銀河団のサイズと各銀河の固有運動速度から、今後10億年単位で衝突・合体して巨大銀河に集約すると考えられている。

超銀河団

銀河群や銀河団やいくつかの孤立した銀河は超銀河団と呼ばれるより大きな構造を形作っている。1978年に初めて発見され、かみのけ座超銀河団と名付けられた。

超銀河団Complex

銀河団や超銀河団の距離分布の観測(銀河サーベイや赤方偏移サーベイ)から、これらがさらに大きな空間スケールで集まっている構造が知られるようになった。観測によれば、分布は物質はフィラメント状に、大きな空洞の周りを取り囲む壁のような構造を作って集まっている。このような宇宙の大規模構造を探る方法は、ガンマ線バーストクエーサーの分布など銀河団以外に対しても行われ、さらに大きな構造[3]も発見されている。

理論

可視光で観測すると、銀河団は多数の銀河が互いの重力によって銀河が引き合って形成された集団のように見える[2]。しかし、銀河団内の銀河の運動速度は、可視光で見えている銀河同士の重力で束縛されているとするには速すぎる。このことから、銀河団にはでは観測できない別の質量成分が存在することが示唆される。

X線での観測によって、銀河団には高温の銀河団ガスがあり、X線源は約108Kという非常に高温のガスの熱制動放射によるものであることが明らかになっており、ガスの総質量も目に見える物質の大半を占める膨大な量であるが、静水圧平衡にあると仮定して求めた銀河団と銀河団ガスの総質量を考慮に入れても、これらを銀河団の中に束縛するのには十分ではなく、実際の総質量はずっと大きい。この見えない質量成分は暗黒物質(ダークマター)として知られているが、その正体は不明である。典型的な銀河団では、銀河として存在するのはおそらく全質量の数%程度、X線を放射する高温ガスが約20%に過ぎず、残りはダークマターが占めていると考えられている。

これまでの観測から、われわれから少なくとも 80 億光年かなたにまで宇宙の大規模構造がつながっていることが確認され、また宇宙誕生からわずか 10 億年後に既に形成されつつある原始銀河団が見つかっている。 銀河は宇宙初期の小さな密度揺らぎが重力によって成長して形成されたと考えられている。銀河が群れ集まった銀河団や超銀河団などの大規模構造も、長い宇宙の歴史の中で重力がつくりあげた物質分布のパターンだと考えられる。[2][4]

主な銀河団

脚注

関連項目