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[[早稲田大学]]時代は「幻想文学会」に所属し、[[東雅夫]]、[[浅羽通明]]らと知り合う。東がのちに創刊した雑誌『[[幻想文学 (雑誌)|幻想文学]]』には、[[レビュー]]等を大量に寄稿する。


大学事務員として就職したものの[[フリーライター]]を志望して退職する。しかし生計が成り立たず[[印刷会社]]に入社、[[文字校正]]係として11年間勤務の後、退職。校正者としては有能であったが、会社では浮いた存在であり、無意味な集団活動等には参加せず(末期には、病死した直属上司の通夜への顔出しさえ断っている)、また、顧客からの理不尽な要求に逆上することも多かった。この11年間の経験は、のちに『活字狂想曲』として出版されている。これは後日の回想ではなく、勤務と平行してひそかに同人誌に連載していたものに注記を加えたものだが、一方的な会社批判に終始せず、異分子としての自己をも、かなり客観的に描いている。
大学事務員として就職したものの[[フリーライター]]を志望して退職する。しかし生計が成り立たず[[印刷会社]]に入社、文字[[校正]]係として11年間勤務の後、退職。[[校正者]]としては有能であったが、会社では浮いた存在であり、無意味な集団活動等には参加せず(末期には、病死した直属上司の通夜への顔出しさえ断っている)、また、顧客からの理不尽な要求に逆上することも多かった。この11年間の経験は、のちに『活字狂想曲』として出版されている。これは後日の回想ではなく、勤務と平行してひそかに同人誌に連載していたものに注記を加えたものだが、一方的な会社批判に終始せず、異分子としての自己をも、かなり客観的に描いている。


[[1987年]]短篇集『地底の鰐、天上の蛇』([[幻想文学出版会]])でデビュー。1995年、短編「赤い羽根の秘密」で[[日本ホラー小説大賞]]最終候補作に。第二短編集『怪奇十三夜』(幻想文学出版会)を経て、[[1997年]]『百鬼譚の夜』([[出版芸術社]])で再デビュー。
[[1987年]]短篇集『地底の鰐、天上の蛇』([[幻想文学出版会]])でデビュー。1995年、短編「赤い羽根の秘密」で[[日本ホラー小説大賞]]最終候補作に。第二短編集『怪奇十三夜』(幻想文学出版会)を経て、[[1997年]]『百鬼譚の夜』([[出版芸術社]])で再デビュー。

2013年12月7日 (土) 16:19時点における版

倉阪 鬼一郎(くらさか きいちろう、1960年1月28日 – )は、小説家評論家俳人翻訳家三重県上野市(現伊賀市)生まれ。三重県立上野高等学校早稲田大学第一文学部文芸科卒業。環境経済学者の倉阪秀史は実弟。名字を「倉坂」と誤記されることが多い。

経歴

早稲田大学時代は「幻想文学会」に所属し、東雅夫浅羽通明らと知り合う。東がのちに創刊した雑誌『幻想文学』には、レビュー等を大量に寄稿する。

大学事務員として就職したもののフリーライターを志望して退職する。しかし生計が成り立たず印刷会社に入社、文字校正係として11年間勤務の後、退職。校正者としては有能であったが、会社では浮いた存在であり、無意味な集団活動等には参加せず(末期には、病死した直属上司の通夜への顔出しさえ断っている)、また、顧客からの理不尽な要求に逆上することも多かった。この11年間の経験は、のちに『活字狂想曲』として出版されている。これは後日の回想ではなく、勤務と平行してひそかに同人誌に連載していたものに注記を加えたものだが、一方的な会社批判に終始せず、異分子としての自己をも、かなり客観的に描いている。

1987年短篇集『地底の鰐、天上の蛇』(幻想文学出版会)でデビュー。1995年、短編「赤い羽根の秘密」で日本ホラー小説大賞最終候補作に。第二短編集『怪奇十三夜』(幻想文学出版会)を経て、1997年『百鬼譚の夜』(出版芸術社)で再デビュー。

初期は「日本唯一の怪奇小説家」を名乗っていたが、再デビュー後は、モダン・ホラー的な作品、本格ミステリとホラーとの融合作品、奇抜な趣向を偏執的に凝らしたバカミス(バカミステリー)など、速筆を保ちつつ作風を広げる。現在の自称は「特殊小説家」。また、海外怪奇小説の翻訳も多数手掛けているほか、俳人として句集も出している。

近年は時代小説にも進出し、いわゆる「文庫書き下ろし時代小説」作家の1人に数えられる。

人物

昭和レトロ歌謡のマニアで、作家仲間などとのカラオケではナツメロを歌いまくる。また作曲も趣味。将棋囲碁も趣味でそれぞれ有段の腕前。近年の趣味はマラソンで、湘南マラソンに参加している。

「ミーコ姫」となづけた黒猫のぬいぐるみが長年のパートナーだったが、2006年、唐突にミステリマニアの女性と遠距離恋愛の末、結婚。なお、婚約発表時のウェブ日記には「暗く長く寂しかった前半生に別れを告げ、遅ればせながら生誕の災厄派から祝福派に転向しようかと思っております」と記した。

独身時代は、大の偏食で肉・卵類が一切食べられなかったが(そのため、蕎麦の食べ歩きをよくしていた)、結婚を機に改善中。また本物の猫を飼うようにもなった。

2007年には長女が誕生した。

現代俳句協会日本推理作家協会本格ミステリ作家クラブ日本SF作家クラブ会員。

作品リスト

現代小説

  • 地底の鰐、天上の蛇(1987年8月 幻想文学出版局)
  • 怪奇十三夜(1992年4月 幻想文学出版局)
  • 百鬼譚の夜(1997年7月 出版芸術社
  • 妖かし語り(1998年7月 出版芸術社)
  • 赤い額縁(1998年9月 幻冬舎
  • 死の影(1999年6月 廣済堂文庫 / 2004年3月 ワンツーポケットノベルス)
  • 田舎の事件(1999年7月 幻冬舎 / 2003年6月 幻冬舎文庫
  • 緑の幻影(1999年9月 出版芸術社)
  • 白い館の惨劇(1999年12月 幻冬舎)
  • 迷宮 Labirynth(2000年1月 講談社ノベルス
  • ブラッド(2000年4月 集英社 / 2003年2月 集英社文庫
  • 屍船(2000年8月 徳間書店
  • 不可解な事件(2000年10月 幻冬舎文庫)
  • 文字禍の館(2000年11月 祥伝社文庫
  • 首のない鳥(2000年12月 祥伝社ノン・ノベル)
  • サイト(2001年4月 徳間書店)
  • 四重奏 Quartet(2001年4月 講談社ノベルス)
  • ワンダーランドin大青山(2001年6月 集英社 / 2004年6月 集英社文庫)
  • 百物語異聞(2001年9月 出版芸術社)
  • Bad(2001年9月 エニックスEXノベルズ)
  • 十三の黒い椅子(2001年12月 講談社
  • 青い館の崩壊 ブルー・ローズ殺人事件(2002年7月 講談社ノベルス / 2005年7月 講談社文庫
  • 夢見の家(2002年8月 集英社)
  • 内宇宙への旅(2002年9月 徳間デュアル文庫
  • 泉(2002年12月 白泉社
  • 鳩が来る家(2003年1月 光文社文庫
  • 無言劇(2003年6月 東京創元社
  • 学校の事件(2003年8月 幻冬舎 / 2006年12月 幻冬舎文庫)
  • The End(2003年12月 双葉社
  • 大鬼神 平成陰陽師国防指令(2004年5月 祥伝社ノン・ノベル)
  • 42.195 すべては始めから不可能だった(2004年7月 光文社カッパ・ノベルス
  • 十人の戒められた奇妙な人々(2004年7月 集英社)
  • 呪文字(2004年8月 光文社文庫)
  • 冥い天使のための音楽(2005年1月 原書房ミステリー・リーグ
  • 紫の館の幻惑 卍卍教殺人事件(2005年6月 講談社ノベルス)
  • 汝らその総ての悪を(2005年9月 河出書房新社
  • 泪坂(2005年9月 光文社文庫)
  • 下町の迷宮、昭和の幻(2006年7月 実業之日本社 / 2012年6月 実業之日本社文庫
  • ダークネス(2006年8月 早川書房
  • うしろ(2007年3月 角川ホラー文庫
  • 騙し絵の館(2007年3月 東京創元社)
  • 四神金赤館銀青館不可能殺人(2007年7月 講談社ノベルス)
  • 留美のために(2007年9月 原書房ミステリー・リーグ)
  • 湘南ランナーズ・ハイ(2007年12月 出版芸術社)
  • ブランク 空白に棲むもの(2007年12月 理論社ミステリーYA!
  • すきま(2008年6月 角川ホラー文庫)
  • 紙の碑に泪を 上小野田警部の退屈な事件(2008年9月 講談社ノベルス)
  • 遠い旋律、草原の光(2009年4月 早川書房)
  • ひだり(2009年4月 角川ホラー文庫)
  • 夜になっても走り続けろ(2009年6月 実業之日本社ジョイ・ノベルス)
  • 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人(2009年9月 講談社ノベルス)
  • 恐怖之場所、死にます。(2010年1月 竹書房文庫)
  • 忍者ルネッサンス!(2010年2月 出版芸術社)
  • さかさ(2010年2月 角川ホラー文庫)
  • 薔薇の家、晩夏の夢(2010年6月 東京創元社)
  • 新世界崩壊 上小野田警部の恥辱の事件(2010年9月 講談社ノベルス)
  • おそれ(2011年4月 角川ホラー文庫)
  • 五色沼黄緑館藍紫館多重殺人(2011年9月 講談社ノベルス)
  • 不可能楽園〈蒼色館〉(2012年9月 講談社ノベルス)
  • 赤い球体 美術調律者・影(2012年9月 角川ホラー文庫)
  • 黒い楕円 美術調律者・影(2012年11月 角川ホラー文庫)
  • 白い封印 美術調律者・影(2013年3月 角川ホラー文庫)
  • 殺人鬼教室 BAD(2013年6月 TO文庫)
  • 百物語の娘 ―泉―(2013年7月 TO文庫)

時代小説

  • 影斬り 火盗改香坂主税(2008年12月 双葉文庫
  • 深川まぼろし往来 素浪人鷲尾直十郎 夢想剣(2009年5月 光文社時代小説文庫)
  • 風斬り 火盗改香坂主税2(2009年9月 双葉文庫)
  • 花斬り 火盗改香坂主悦3(2010年9月 双葉文庫)
  • 人生の一椀 小料理のどか屋 人情帖(2010年11月 二見時代小説文庫)
  • 倖せの一膳 小料理のどか屋 人情帖2(2011年3月 二見時代小説文庫)
  • 結び豆腐 小料理のどか屋 人情帖3(2011年7月 二見時代小説文庫)
  • 手毬寿司 小料理のどか屋 人情帖4(2011年11月 二見時代小説文庫)
  • 裏町奉行闇仕置 黒州裁き(2012年3月 ベスト時代文庫)
  • 雪花菜飯 小料理のどか屋 人情帖5(2012年3月 二見時代小説文庫)
  • 裏町奉行闇仕置 大名斬り(2012年8月 ベスト時代文庫)
  • 面影汁 小料理のどか屋 人情帖6(2012年8月 二見時代小説文庫)
  • あられ雪 人情処 深川やぶ浪(2012年11月 光文社時代小説文庫)
  • 命のたれ 小料理のどか屋 人情帖7(2012年12月 二見時代小説文庫)
  • 若さま包丁人情駒(2013年2月 徳間文庫)
  • おかめ晴れ 人情処 深川やぶ浪(2013年5月 光文社時代小説文庫)
  • 夢のれん 小料理のどか屋 人情帖8(2013年5月 二見時代小説文庫)
  • 飛車角侍 若さま包丁人情駒(2013年8月 徳間文庫)

歌集・句集

  • 月光譚(1982年3月) - 塔英介名義
  • 春の匕首(1983年1月)
  • 日蝕の鷹、月蝕の蛇(1989年4月 幻想文学出版局)
  • 怪奇館(1994年8月 弘栄堂書店
  • 悪魔の句集(1998年3月 邑書林
  • 魑魅 倉阪鬼一郎句集(2003年5月 邑書林)
  • アンドロイド情歌(2010年11月 ブックル)

詩集

  • ふるふると顫えながら開く黒い本(2011年2月 ブックル)
  • 何も描かれない白い地図帳(2011年6月 ブックル)
  • だれのものでもない赤い点鬼簿(2011年10月 ブックル)

エッセイ・評論

  • 活字狂想曲 怪奇作家の長すぎた会社の日々(1999年3月 時事通信社 / 2002年8月 幻冬舎文庫)
  • 夢の断片、悪夢の破片 倉阪鬼一郎のブックガイド(2000年5月 同文書院
  • 怖い俳句(2012年7月 幻冬舎新書

翻訳

関連項目

外部リンク