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'''マギ'''([[ギリシア語]]形: 単 Μάγος、 [[ラテン語]]形: 単 magus, 複 '''magi'''は、本来、[[メディア王国]]で宗教儀礼をつかさどっていた[[ペルシア]]系祭司階級の呼称。[[アヴェスター語]]形マグ(magu, maγu)に由来する。英語での発音はマギではなく、メイジャイである。単数形magusの発音は、メイガス
'''マギ'''([[ラテン語]]複数{{lang|la|magi}})は、本来、[[メディア王国]]で宗教儀礼をつかさどっていた[[ペルシア]]系祭司階級の呼称。


単数形は'''マグス''' ({{lang|la|magus}})。[[アヴェスター語]]形'''マグ'''({{lang|ae|magu, maγu}})に由来し、[[ギリシャ語]]形の単数'''マゴス''' ({{lang|e|μάγος}})、複数'''マゴイ''' ({{lang|e|μάγοι}}) を経由しラテン語化した。英語では単数'''メイガス''' (magus)、複数'''メイジャイ''' (magi)、形容詞'''メイジャン''' (magian)。[[普通名詞]]なので[[小文字]]始まりだが、[[東方三博士]]の意味では[[固有名詞]]あつかいで[[大文字]]始まりである。

==本来のマギと意味の変遷==
[[ヘロドトス]]の『[[歴史]]』には、「マギには、死体を鳥や犬に食いちぎらせたり、
[[ヘロドトス]]の『[[歴史]]』には、「マギには、死体を鳥や犬に食いちぎらせたり、
アリや蛇をはじめその他の爬虫類などを無差別に殺す特異な習慣があった」と記されている。
アリや蛇をはじめその他の爬虫類などを無差別に殺す特異な習慣があった」と記されている。これらの習慣は[[アヴェスター]]に記された宗教法と一致しており、彼らは[[ゾロアスター教]]と同系の信仰を持っていたと考えられる。
これらの習慣は[[アヴェスター]]に記された宗教法と一致しており、彼らは[[ゾロアスター教]]と同系の信仰を持っていたと考えられる。


[[アケメネス朝]]ペルシア史上では、王位簒奪者のマギであったガウマータを、[[ダレイオス1世]]が倒して王位に就いたとされている。
[[アケメネス朝]]ペルシア史上では、王位簒奪者のマギであったガウマータを、[[ダレイオス1世]]が倒して王位に就いたとされている。


しかし、[[キリスト教]]世界では[[新約聖書]]、[[福音書]]の『[[マタイによる福音書]]』にあらわれる東方(ギリシア語anatole当時はペルシャのみならずエジプト北部などその範囲は広い)の三博士(三人の王とも訳される)を指して言う場合が多い。直訳すれば星見すなわち[[占星術]]師であるが、マタイ福音書の文脈では、[[天文学者]]と推測される。
しかし、[[キリスト教]]世界では[[新約聖書]]、[[福音書]]の『[[マタイによる福音書]]』にあらわれる東方(ギリシア語anatole当時はペルシャのみならずエジプト北部などその範囲は広い)の三博士を指して言う場合が多い。三人の王とも訳される。直訳すれば星見すなわち[[占星術]]師であるが、マタイ福音書の文脈では、[[天文学者]]と推測される。


やがて、マギという言葉は 人知を超える知恵や力を持つ存在を指す言葉となり、[[英語]]のmagus、magicなどの語源となった。
やがて、マギという言葉は 人知を超える知恵や力を持つ存在を指す言葉となり、[[英語]]のmagicなどの語源となった。


== 福音書伝える三博士の礼拝==
== 福音書伝える三博士の礼拝==
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『マタイによる福音書』(2:1-12)によれば、[[イエス・キリスト|イエス]]が生まれた時、東方にてマギ(博士たち)が大きな星を見、その星に導かれて[[エルサレム]]まで赴き、新しい王が誕生したのはどこかと[[ヘロデ大王]]に尋ねる。ヘロデは動揺しながらも側近に尋ね、側近は聖書の記述からそれはベツレヘムであると博士たちに教えた。博士たちはさっそくその場を発つと、星にしたがってイエスのいる場所につくことができた。幼子の前にたどり着くと、彼らはひれ伏し、[[金|黄金]]、[[乳香]]、[[没薬]]を贈り物として捧げた。ヘロデは新しい王など生まれては困るので、博士たちに場所を教えるよう命じていたが、博士たちは夢のお告げでヘロデに会わないよう命じられたため、ヘロデを避けて別の道から故郷に戻った。
『マタイによる福音書』(2:1-12)によれば、[[イエス・キリスト|イエス]]が生まれた時、東方にてマギ(博士たち)が大きな星を見、その星に導かれて[[エルサレム]]まで赴き、新しい王が誕生したのはどこかと[[ヘロデ大王]]に尋ねる。ヘロデは動揺しながらも側近に尋ね、側近は聖書の記述からそれはベツレヘムであると博士たちに教えた。博士たちはさっそくその場を発つと、星にしたがってイエスのいる場所につくことができた。幼子の前にたどり着くと、彼らはひれ伏し、[[金|黄金]]、[[乳香]]、[[没薬]]を贈り物として捧げた。ヘロデは新しい王など生まれては困るので、博士たちに場所を教えるよう命じていたが、博士たちは夢のお告げでヘロデに会わないよう命じられたため、ヘロデを避けて別の道から故郷に戻った。
そのためイエスはヘロデに殺害される事を免れた。しかし、ヘロデによってベツレヘムの2歳児以下の男子全て虐殺([[幼児虐殺]])され、イエスは両親とともに[[エジプト]]へ逃れた。
そのためイエスはヘロデに殺害される事を免れた。しかし、ヘロデによってベツレヘムの2歳児以下の男子全て虐殺([[幼児虐殺]])され、イエスは両親とともに[[エジプト]]へ逃れた。
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*[[賢者]]
*[[賢者]]


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2008年10月4日 (土) 13:00時点における版

マギラテン語複数形 magi)は、本来、メディア王国で宗教儀礼をつかさどっていたペルシア系祭司階級の呼称。

単数形はマグス (magus)。アヴェスター語マグ(magu, maγu)に由来し、ギリシャ語形の単数マゴス (μάγος)、複数マゴイ (μάγοι) を経由しラテン語化した。英語では単数メイガス (magus)、複数メイジャイ (magi)、形容詞メイジャン (magian)。普通名詞なので小文字始まりだが、東方三博士の意味では固有名詞あつかいで大文字始まりである。

本来のマギと意味の変遷

ヘロドトスの『歴史』には、「マギには、死体を鳥や犬に食いちぎらせたり、 アリや蛇をはじめその他の爬虫類などを無差別に殺す特異な習慣があった」と記されている。これらの習慣はアヴェスターに記された宗教法と一致しており、彼らはゾロアスター教と同系の信仰を持っていたと考えられる。

アケメネス朝ペルシア史上では、王位簒奪者のマギであったガウマータを、ダレイオス1世が倒して王位に就いたとされている。

しかし、キリスト教世界では新約聖書福音書の『マタイによる福音書』にあらわれる東方(ギリシア語でanatole。当時はペルシャのみならずエジプト北部などその範囲は広い)の三博士を指して言う場合が多い。三人の王とも訳される。直訳すれば星見すなわち占星術師であるが、マタイ福音書の文脈では、天文学者と推測される。

やがて、マギという言葉は 人知を超える知恵や力を持つ存在を指す言葉となり、英語のmagicなどの語源となった。

福音書が伝える三博士の礼拝

『マタイによる福音書』(2:1-12)によれば、イエスが生まれた時、東方にてマギ(博士たち)が大きな星を見、その星に導かれてエルサレムまで赴き、新しい王が誕生したのはどこかとヘロデ大王に尋ねる。ヘロデは動揺しながらも側近に尋ね、側近は聖書の記述からそれはベツレヘムであると博士たちに教えた。博士たちはさっそくその場を発つと、星にしたがってイエスのいる場所につくことができた。幼子の前にたどり着くと、彼らはひれ伏し、黄金乳香没薬を贈り物として捧げた。ヘロデは新しい王など生まれては困るので、博士たちに場所を教えるよう命じていたが、博士たちは夢のお告げでヘロデに会わないよう命じられたため、ヘロデを避けて別の道から故郷に戻った。 そのためイエスはヘロデに殺害される事を免れた。しかし、ヘロデによってベツレヘムの2歳児以下の男子全て虐殺(幼児虐殺)され、イエスは両親とともにエジプトへ逃れた。

※博士たちを導いた星は木星である事は判明。

ルカによる福音書』に描かれたイエスの誕生場面ではこの三博士は登場せず、代わりに飼い葉桶に寝ていた幼子イエスに羊飼い達が訪れる場面がある。西洋美術やクリスマスに飾られる馬小屋の飾りでは、博士と羊飼いが一緒に描かれているものも多い。

前掲の福音書には記述がないが、博士たちの人数は贈り物の数から伝統的に3人とされている。彼らの名前として西洋では7世紀から次のような名が当てられている。それはメルキオール(Melchior, 黄金(王権の象徴)、青年の姿の賢者)、バルタザール(Balthasar, 乳香(神性の象徴)、壮年の姿の賢者)、カスパール(Casper, 没薬(将来の受難である死の象徴)、老人の姿の賢者)である。シリアの教会では、ラルヴァンダド(Larvandad),ホルミスダス(Hormisdas), グシュナサファ(Gushnasaph)という別の名が当てられているが。いずれもペルシア人の名でなく、何らかの意味も確認できない。アルメニア教会では、カグバ(Kagba), バダディルマ(Badadilma) 等の名前を当てている。

なお、インドの一部の伝統では、ある人物が光明を得るためには、三人の他の光明を得た人物によって、その人物の将来の光明が予言される必要があるという言い伝えもある。

関連項目