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字音仮字用格

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『字音仮字用格』
著者 本居宣長
発行日 安永5年(1776年
ジャンル 語学書
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 和装本
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字音仮字用格』(じおんかなづかひ/もじごゑのかなづかひ)は、江戸時代中期に本居宣長が著した語学書。いわゆる字音仮名遣の問題について本格的に取り扱った。

概要

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字音仮名遣の研究については、宣長以前にも文雄『和字大観鈔』『魔光韻鏡』などがあり、本書もこれらに負うところが多いが[1]、『韻鏡』と万葉仮名を結びつけて説明した点が画期的とされる[2][3]

安永5年(1776年)1月刊行。1巻。漢字音仮名で書く場合の同音の書き分けを、古代の用法に則して定めたものである[4]。その動機は、宣長によれば「漢字音は鳥のさえずりのような彼の国の発音を真似たものであり、皇国の雅な発音とは似ても似つかないものなので、古代では詠うにも詠むにも汚くて卑しく、交えて使われることがなかったが、次第に日常会話をはじめ文芸作品にも紛れ込み、汚いとも外国由来の音とも感じなくなって、最近では半分以上の言葉が漢語になっており、遂にはその仮名用法を知らないと書記生活が成立しなくなってきたが、それについて解明した書物は存在していない」からであるという[5]

内容

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「喉音三行弁」「おを所属弁」では、ア行ヤ行ワ行における音の違いについて論じ、五十音図で「お」は「ア行」に、「を」は「ワ行」に所属することを明らかにした[6]。これに関連して上代・中古の和歌に見られる字余りの法則を指摘している[7]。また「字音仮名総論」において、『韻鏡』と仮名遣いの関係を説き、イ・ヰ、エ・ヱ、オ・ヲ、及びこれを含むもの、ウ・フと書かれて紛れやすいものについて項目を立て、その下にその仮名で書く漢字を列挙し、『韻鏡』と古文献の用例によって漢音呉音の区別も指摘した。

受容

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宣長が本書で提示した学説は高い評価を得ることになり、同時代においてこれを是正する研究も出現するようになる。太田全斎は『漢呉音図』を著し、複雑な反切を排して字音を演繹的に図上に設定した[8]。宣長の弟子筋にあたる東条義門は、『於乎軽重義』で「おを所属弁」の不備を補ったほか[9]、『男信』において韻尾にm・nの区別があることを説いた[10]。さらに白井寛蔭は『音韻仮字用例』を著し、これによって字音仮名遣の制定が決定的となった[11]

影印・翻刻

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  • 『本居宣長全集』第5巻、筑摩書房、1970年9月。ISBN 4-480-74005-8
  • 『玉あられ・字音仮字用格』勉誠社〈勉誠社文庫10〉、1976年11月。

脚注

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  1. ^ 山内育男 (1961), p. 147.
  2. ^ 築島裕 (1986), p. 122.
  3. ^ 釘貫亨 (2007), p. 112(初出:釘貫亨 2005
  4. ^ 矢田勉 (2016), p. 53.
  5. ^ 釘貫亨 (2013), p. 52(初出:釘貫亨 2008
  6. ^ 西宮一民 (1977), p. 399.
  7. ^ 本居宣長記念館 (2001), p. 36(竹田純太郎「字音仮字用格」)
  8. ^ 小松英雄 (1961), p. 117.
  9. ^ 山内育男 (1961), pp. 149–150.
  10. ^ 小松英雄 (1961), p. 130.
  11. ^ 山内育男 (1961), pp. 150–151.

参考文献

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図書
論文
  • 山内育男 著「かなづかい研究の歴史」、佐伯梅友・中田祝夫・林大 編『国語学』三省堂〈国語国文学研究史大成15〉、1961年2月、132-154頁。 
  • 小松英雄 著「字音研究の歴史」、佐伯梅友中田祝夫林大 編『国語学』三省堂〈国語国文学研究史大成15〉、1961年2月、114-131頁。 
  • 松繁弘之「本居宣長『字音仮字用格』の基礎:「喉音三行辨」の本質」『国語学』第53巻第2号、国語学会、2002年4月、17-28頁。 
  • 松繁弘之「本居宣長『字音仮字用格』における「軽重」と「開合」」『神戸市外国語大学研究科論集』第6号、2003年4月、25-37頁。 
  • 西宮一民 著「文字研究の歴史(1)」、大野晋・柴田武 編『文字』岩波書店〈岩波講座日本語8〉、1977年3月、385-417頁。ISBN 4000100688 
  • 釘貫亨「『字音仮字用格』「おを所属弁」の論構成:「五十音図」テクスト化の最終段階」『訓点語と訓点資料』第115号、訓点語学会、2005年9月、1-10頁。 
  • 釘貫亨「本居宣長『字音仮字用格』成立の背景」『鈴屋学会報』第25号、鈴屋学会、2008年12月、1-13頁。 
  • 矢田勉「本居宣長」『日本語学』第35巻第4号、明治書院、2016年4月、52-55頁。 
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