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ボンバルディア・バイレベル・コーチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バイレベル・コーチ
Bilevel Coach
車庫に並ぶGOトランジットのバイレベル・コーチ
基本情報
運用者 下記を参照
製造所 ホーカー・シドレー・カナダ英語版UTDC英語版 - SNC-ラバリン英語版[注釈 1]ボンバルディア・トランスポーテーションアルストム
製造年 1976年 -
運用開始 1977年
主要諸元
軌間 1,435 mm
設計最高速度 165.8 km/h(103 mph)
車両定員 最大353 - 361人
(着席148 - 162人)
車両重量 49.5 - 56.2 t(109,130 - 124,000 lbs)
全長 25,908 mm(85 ft)
全幅 2,997 mm(9 ft 10 in)
全高 4,851 mm(15 ft 11 in)
床面高さ 635 mm(25 in)(1階部分)
1,295 mm(51 in)(車端・中2階部分)
車輪径 838 mm(33 in)
制動装置 ディスクブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6]に基づく。
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バイレベル・コーチ英語: Bilevel Coach)は、アメリカ合衆国カナダ各地の通勤鉄道に導入されている2階建て客車1977年から営業運転を開始し、2022年現在はアルストムによって展開が行われている[1][5][6]

歴史

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カナダオンタリオ州トロントの公共交通事業者であるGOトランジットは、1967年5月23日からGOトレイン(Go Train)のブランド名で通勤列車の運行を開始したが、1970年代以降乗客増加による列車の混雑が大きな課題となっていた。従来使用されていた1階建ての車両ではラッシュ時の乗客を捌ききれない状況であったが、増結のためにはプラットホームの拡張を行わなければならず、長期の工事期間が必要となった。そのため、GOトランジットはプラットホームの長さを変える事なく大量の乗客を輸送できる2階建て車両を導入する事を決定した[7][1][8][9][10]

当初はアメリカ合衆国カナダ各地の通勤列車に導入されていた2階建て客車であるギャラリーカーの導入が検討されたが、扉が中央に1箇所しかなく乗降に時間がかかる事、座席配置が窮屈である事などが課題として挙げられた。そこで、カナダの車両メーカーであったホーカー・シドレー・カナダ英語版(Hawker Siddeley Canada)はより通勤輸送に適した2階建て客車"バイレベル・コーチ"(Bilevel Coach)を新たに開発し、1975年にGOトランジットからの発注を獲得した。営業運転には1977年から導入されている[1][8][9][11][12]

バイレベル・コーチはサンダーベイの工場で生産が行われたが、1980年代にホーカー・シドレー・カナダはUTDC英語版およびSNC-ラバリン英語版に買収され[注釈 1]2002年以降はボンバルディア・トランスポーテーション、更に2021年にはアルストムの工場となり、2020年現在は同社によって展開が行われている[13][11][5][6]

概要

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車端部分が1階建て構造(中2階)となっている2階建て車両で、乗降扉は低床構造となっている1階部分に2箇所設置されている。八角形の側面を持つ車体はアルミニウム製で、台枠は鋼製となっている。初期の車両は製造の際にリベットが用いられたが、ボンバルディアの移行後は車体製造は全溶接式に変更されている。定員数は導入された事業者によって異なるが、従来の1階建て車両の1.5 - 1.7倍以上の収容力を持ち、最初の導入先となったGOトランジットで運用される10両編成の客車列車は着席定員だけでも1,400人以上の乗客の輸送を可能としている。これにより、運用コストも1階建て車両使用時に比べ15 - 30%削減される。車内電源は連結された機関車から供給される集中電源方式を採用している[7][13][1][5][10]

通常の客車に加え、1983年からは2階部分に運転台を備えた制御車の生産も開始され、プッシュプル運転が可能となっている。大半の車両は貫通扉が設置された切妻型の前面形状を有するが、2012年にGOトランジットが発注し2015年から営業運転に投入された車両以降はクラッシャブルゾーンを備えた流線形の非貫通式デザインに変更され、運転台の位置も2階部分の高さに移設されている[1][14][15][16]

2018年までに計8次に渡って量産が行われており、1,300両以上の車両がアメリカ合衆国カナダの通勤鉄道へ導入されている。更に2019年にも9次車となるGOトランジット向けの車両の発注が実施されている[1][13][17]

運用

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2018年現在、バイレベル・コーチが使用されている通勤鉄道は以下の通りである[13][5]

関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ a b 車両製造はカナディアン・カー・アンド・ファウンドリー英語版によって行われた。

出典

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  1. ^ a b c d e f g Daniel Garcia (2016年1月17日). “THE BI-LEVEL COACHES (1977-?)”. Transit Tronto. 2020年1月19日閲覧。
  2. ^ Metrolinx 2010, p. 29.
  3. ^ SunRail 2011, p. 22.
  4. ^ a b Sound Transit (2014年10月23日). “Transit Development Plan 2014-2019 and 2013 Annual Report” (英語). pp. 34-36. 2020年1月19日閲覧。
  5. ^ a b c d e Brian Solomon 2016, p. 87-88.
  6. ^ a b c 欧州委、仏アルストムのボンバル鉄道事業買収認める 世界2位に”. 日本経済新聞 (2020年8月1日). 2020年4月22日閲覧。
  7. ^ a b 「外国の貨車」『客車・貨車』学習研究社〈学研の図鑑〉、1981年8月10日、54頁。ISBN 4-05-004290-8 
  8. ^ a b Mike Filey (1998). Discover & Explore Toronto's Waterfront: A Walker's, Jogger's, Cyclist's, Boater's Guide to Toronto's Lakeside Sites and History. The Toronto Sketches Series. Dundurn. pp. 88. ISBN 9781550023046 
  9. ^ a b Brian Solomon 2016, p. 87.
  10. ^ a b Metrolinx 2010, p. 9.
  11. ^ a b William D. Middleton; George Smerk; Roberta L. Diehl (2007-4-6) (英語). Encyclopedia of North American Railroads. Indiana University Press. ISBN 978-0253349163 
  12. ^ SunRail 2011, p. 23.
  13. ^ a b c d BiLevel Coaches - Canada & USA”. Bombardier. 2018年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月19日閲覧。
  14. ^ a b Dallas Area Rapid Transit 2019, p. 40.
  15. ^ Updated BiLevel coaches ordered for GO Transit”. Railway Gazette (2012年6月1日). 2020年1月19日閲覧。
  16. ^ Seattle welcomes BiLevel cab car”. Railway Gazette (2017年7月21日). 2020年1月19日閲覧。
  17. ^ Metrolinx orders 36 additional bi-level cars for GO Transit”. Railway Technology (2019年9月11日). 2020年1月19日閲覧。
  18. ^ SunRail 2011, p. 22-23.
  19. ^ MultiLevel Coaches - New Jersey and Maryland, USA & Montreal, Canada”. Bombardier. 2017年12月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月19日閲覧。
  20. ^ US SCRRA/SFRTA Double-deck coach” (英語). Hyundai Rotem. 2020年1月19日閲覧。

参考資料

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  • Brian Solomon (2016-5) (英語). Field Guide to Trains: Locomotives and Rolling Stock. Voyageur Field Guides. Voyageur Press. ISBN 978-0760349977 

外部リンク

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