フランスの100mm艦砲

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Mle.68 100mm単装砲
100mm turret on the La Motte-Picquet
種類 艦砲
原開発国 フランスの旗 フランス
運用史
関連戦争・紛争 湾岸戦争
開発史
開発者 Tonnelé
開発期間 1953年-1961年
製造業者 クルーゾー・ロワール
GIAT
製造期間 1961年-現在
派生型
  • Modèle 53
  • Modèle 64
  • Modèle 68
  • Modèle 100 TR
諸元
重量 22トン
銃身 55口径長

口径 100mm
仰角 29°/s
旋回角 40°/s
発射速度 78発/分
初速 870m/s
有効射程
  • 最大射程:17,000m(仰角40°)
  • 対空射程:6,000m
  • 対水上射程:12,000m
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本項では、フランスの100mm艦砲について解説する。

Mle.53/64[編集]

第二次世界大戦直後のフランス海軍は、アメリカ製のMk 12 5インチ砲と互換性のあるMle.48 5インチ連装砲と、スウェーデン製のMle.51 57ミリ連装砲を使用していた。しかし、これらの艦砲の多くは更新を必要としており、また、補給上も口径の統一が望ましかった。このことからフランス海軍は、単一の両用砲システムによってこの両者を同時に代替することを計画しはじめた。当初は、ドイツ海軍が備蓄していた弾薬を流用できることから105ミリ口径が検討されたものの、まもなく100ミリ口径に変更された。

この決定に基づいて1953年より開発が開始され、最初のモデルであるModèle 53が開発された。1958年よりル・コルス級フリゲートの1隻である「ル・ブレストワ」(F762)において、1961年よりコマンダン・リヴィエル級フリゲートの1隻である「ヴィクトル・シュルシェール」(F725)において実艦での運用試験が開始された。

Mle.53は、フランスが初めて開発した自動砲であったが、初弾については手動で装填する必要があった。初弾を発砲したのち、次弾以降は反動利用によって自動で装填され、60発/分の発射速度を発揮することができた。Mle.53はアナログ式の射撃指揮装置と連接されていたが、射撃指揮装置を改良するとともに発射速度を向上(78発/分)させたModèle 64も開発・配備された。

Mle.68[編集]

Mle 53/64をもとに、完全自動砲として開発されたのがModèle 68である。Mle.68の給弾機構は35発の即応弾と甲板下の弾庫を有し、弾庫には弾薬手が配置されているが、砲塔内は無人となっている。ただし、必要に応じて2名の砲員による砲側射撃も可能である。当初はアナログ式の射撃指揮装置と連接されていたが、1970年より配備されたModèle 68-IIではデジタル化された。

また、Mle.68-IIは継続的な改良を受けており、CADAM(Cadence Améliorée:発射速度改善)改修においては発射速度を78発/分に向上させた。さらに、ラファイエット級フリゲートに搭載されたMle.100TRにおいては、信頼性を向上させるとともに、ステルス性に配慮した新設計の砲塔を採用している。

主な艦砲の比較
アメリカ合衆国の旗AGS 中華人民共和国の旗H/PJ-45 ロシアの旗A-192M アメリカ合衆国の旗Mk45 Mod 4 イタリアの旗127mm/54C イギリスの旗Mk8 Mod 1 フランスの旗Mle.68 イタリアの旗76mm C/SR スウェーデンの旗Mk110
砲身数 単装[1]
口径 155 mm 130 mm 127 mm 113 mm 100 mm 76 mm 57 mm
砲身 62口径 70口径 62口径 54口径 55口径 62口径 70口径
重量 106 t 50 t[1] 24 t 28.924 t 37.5 t[2] 26.4 t 22 t 12 t 7.5 t[3]
要員数 完全自動 不明 3名 6名[注 1] 2-8名[4] 給弾手2名 無人[注 2] 給弾手3名 完全自動
仰俯範囲 +70°/ -5° +75°/ -12° +65°/ -15° +83°/ -15° +55°/ -10° +29° +85°/ -15° +77°/ -10°[3]
旋回範囲 全周 不明 340° 330° 340° 40° 全周
発射速度 10発/分 40発/分[1] 30発/分 16-20発/分 45発/分[2] 25発/分 78発/分 80発[注 3]/分(C)
120発/分(SR)
220発/分[3]
冷却方式 水冷 不明 空冷 水冷 空冷 水冷
最大射程 118,000 m[注 4] 29,500 m[1] 23,000 m[注 5] 37,000 m 23,000 m[注 6][注 7] 21,950 m[注 6] 17,000 m[注 8] 18,400 m[注 6] 21,000 m[注 9]

コンパクト砲[編集]

1977年、クルーゾー・ロワール社は、新しく軽量の100ミリ砲の開発に着手した。これは、90発/分の発射速度を有する一方で、砲塔全重量は17トンに抑えられていた。試作砲1981年に試験に入り、量産型はコンパクト砲として1983年より生産に入った。

本砲は優れた性能を有するものの、フランス海軍はMle.68シリーズの性能に満足していることから、最終的に採用されなかった。

輸出市場においても、既に優れた中口径砲であるイタリア製の76mm砲および127mm砲アメリカ製のMk 45 5インチ砲に席巻されていたことから成約は伸び悩んでいたものの、マレーシアサウジアラビアにおいて採用された。また、1980年代後半より中国海軍が採用しはじめており、713研究所による山寨版である87式55口径100mm単装砲(H/PJ-87)は、1990年代後半以降に建造された全ての駆逐艦に搭載されている。

搭載艦艇[編集]

 フランス海軍

 アルゼンチン海軍

 ウルグアイ海軍

 サウジアラビア海軍

 中国人民解放軍海軍

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 遠隔操作
  2. ^ 必要に応じて2名の砲員による砲側射撃も可能
  3. ^ 性能向上型、IROF改修を行うことで100発
  4. ^ LRLAP弾
  5. ^ 対空で18,000 m
  6. ^ a b c 通常砲弾
  7. ^ 対水上で15,000 m[5]、対空で7,000 m[5]
  8. ^ 対水上で12,000m、対空6,000m
  9. ^ HCER-BB弾[6]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 多田 2015, p. 110.
  2. ^ a b 大塚 2014.
  3. ^ a b c 多田 2015, p. 109.
  4. ^ 梅野 2007, pp. 177–182.
  5. ^ a b Friedman 1997, p. 436.
  6. ^ Friedman 1997, pp. 450–451.

参考文献[編集]