アナポリス級駆逐艦

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アナポリス級駆逐艦
基本情報
艦種 護衛駆逐艦 (DDE)
ヘリコプター駆逐艦 (DDH)
命名基準 カナダの河川名
運用者  カナダ海軍
就役期間 1964年 - 1998年
前級 マッケンジー級
次級 イロクォイ級 (DDH)
ハリファックス級 (FFH)
要目
#諸元表を参照
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アナポリス級駆逐艦 (英語: Annapolis-class destroyer) はカナダ海軍駆逐艦の艦級。サン・ローラン級の最終発達型として、1964年より2隻が就役した[注 1][1][2][3]

来歴[編集]

カナダ海軍では、1940年代末より初の独自設計大型水上戦闘艦としてサン・ローラン級の計画に着手し、1952年発注分はレスティゴーシュ級、1957年発注分はマッケンジー級と、順次に小改正型を建造してきた[3]

そして1959年の発注で、サン・ローラン級系列艦の最終発達型が建造されることになった。これが本級である[3]

設計[編集]

上記の経緯より、本級の基本設計はサン・ローラン級以来のものが踏襲された。またサン・ローラン級シリーズで導入された各種の改修がすべて導入されており、格納庫ヘリコプター甲板も設置された[3]。なお本級では広範にブロック工法が導入されたため、本級には明確な起工日時の発表はなく、また船台上での建造作業が開始される以前から、実際の船体の建造は着手されていた[4]

機関もサン・ローラン級以来の構成が踏襲され、出力30,000馬力イングリッシュ・エレクトリックギアード・タービンが搭載された。ボイラーバブコック・アンド・ウィルコックス(B&W)社製の水管ボイラー2缶で、蒸気性状は圧力43.3 kgf/cm2 (616 lbf/in2)、温度454 °C (849 °F)であった[2]

装備[編集]

C4ISR[編集]

レーダーはサン・ローラン級と同様で、対空捜索用としてAN/SPS-12、対水上捜索用としてAN/SPS-10を搭載していた[3]。その後、1980年代のDELEX改修の際に、AN/SPS-12はSPS-503に更新され、一般航海用レーダーも新型機に更新された。このSPS-503はCMR-1820とも称され、プレッシー社のAWS-4レーダーのアンテナを利用して国内開発したものであった。ただしこのアンテナの運用成績は不良であった[2]

ソナーとしては、探信儀としてSQS-503、海底捜索用としてSQS-501(英海軍162型)のほか、可変深度式のSQS-504を搭載した[3]。その後、1980年代のDELEX改修の際にSQS-503はSQS-505に換装されたほか、1987年から1988年にかけて、SQS-504もSQR-501 CANTASSに換装され、試験に供された[1][2]

また1980年代のDELEX改修では、ADLIPS(Automatic Data Link Plotting System)情報表示装置およびCCS-280戦術情報処理装置を搭載し、リンク 11の運用に対応したほか、CANEWS電波探知装置を搭載した[1][2]

武器システム[編集]

艦砲は、レスティゴーシュ級・マッケンジー級では艦首側の31番砲を70口径76mm連装速射砲ヴィッカースMk.6)、艦尾側の32番砲を50口径76mm連装速射砲(Mk.33 3インチ砲)としていたのに対し、本級では、航空艤装の設置に伴って32番砲は省かれ、また上部重量増大を補うために31番砲は50口径76mm連装速射砲とされた[3]砲射撃指揮装置(GFCS)としては、艦橋上にMk.69(AN/SPG-48追尾レーダー)を備え[1]、後にデジタル化されたMk.60に更新された[2]

上記の通り、本級ではDDH改修後のサン・ローラン級と同様、シーキング哨戒ヘリコプター1機分の格納庫およびヘリコプター甲板を設置した。艦尾甲板にこの航空艤装と可変深度ソナーを設置したことから、対潜兵器は、DDH改修後のサン・ローラン級と同様、艦尾甲板に3連装のリンボーMk.10対潜迫撃砲1基を設置するのみとされた[4]。また後に324mm3連装短魚雷発射管も搭載された[1][2][3]

諸元表[編集]

護衛駆逐艦
(新規建造時)
ヘリコプター駆逐艦
(DELEX改修後、最終形態)
満載排水量 3,000 t
全長 113.1 m
全幅 12.8 m
吃水 4.4 m
機関 バブコック・アンド・ウィルコックスボイラー×2基
イングリッシュ・エレクトリック蒸気タービン×2基 (計30,000 shp)
スクリュープロペラ×2軸
速力 28kt
航続距離 4,750海里 (14kt巡航時)
乗員 246名 228名
兵装 50口径76mm連装速射砲×1基
リンボーMk.10対潜迫撃砲×1基 324mm3連装短魚雷発射管×2基
艦載機 シーキング哨戒ヘリコプター×1機
C4I CIC設置、音声リンクのみ ADLIPS戦術情報処理装置
レーダー AN/SPS-12 対空捜索用 SPS-503 対空捜索用
AN/SPS-10 対水上捜索用
ソナー SQS-501 海底捜索用 (英162型)
SQS-503 捜索用 SQS-505 捜索用
SQS-504 VDS SQR-501 CANTASS

同型艦[編集]

# 艦名 起工 就役 退役
DDE-265 アナポリス
HMCS Annapolis
1961年9月2日 1964年12月19日 1996年11月15日
DDE-266 ニピゴン
HMCS Nipigon
1960年8月5日 1964年5月30日 1998年7月7日

運用史[編集]

本級の2隻はその艦歴の大半をカナダの沿岸で過ごし、「アナポリス」はエスクワイモルト海軍基地を、「ニピゴン」はハリファックス海軍基地を拠点として活動した。

「ニピゴン」は1983年6月27日から1985年5月22日、また「アナポリス」は1985年8月から1986年8月にかけて、艦齢延伸改修(DEstroyer Life EXtension program, DELEX)が行われた。これは上記のように各種電装品の更新を伴うものであった[2]

その後、1992年より、後継となるハリファックス級フリゲートが就役を開始したのに伴って、1996年に「アナポリス」、1998年に「ニピゴン」が退役して、運用を終了した。「ニピゴン」はカナダ海軍の戦闘用艦艇としては最後の蒸気動力艦であった(補助艦艇を含めれば、プロテクチュール級補給艦がカナダ海軍最後の蒸気動力艦である)。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ジェーン海軍年鑑やアメリカ海軍協会(USNI)ではフリゲートとして類別している。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e Sharpe 1989, p. 77.
  2. ^ a b c d e f g h Prezelin 1990, p. 55.
  3. ^ a b c d e f g h Gardiner 1996, pp. 44–46.
  4. ^ a b Moore 1975, p. 59.

参考文献[編集]

  • Gardiner, Robert (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. ISBN 978-1557501325 
  • McClearn, Sandy (2006年). “Canadian Navy of Yesterday & Today: Annapolis class destroyer escort” (英語). 2009年10月12日閲覧。
  • Moore, John E. (1975). Jane's Fighting Ships 1974-1975. Watts. ASIN B000NHY68W 
  • Prezelin, Bernard (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. ISBN 978-0870212505 
  • Sharpe, Richard (1989). Jane's Fighting Ships 1989-90. Janes Information Group. ISBN 978-0710608864 

関連項目[編集]