学院
ヨーロッパ
学校・学院は元々はラテン語で schola と表記し、キリスト教の教義の研究、研鑽、経典の写本などを活動の中心にすえた修道院のことを指した。
外部の師弟を預かってラテン語の読み書きを教えたりする学校・学院も備えていることもあるため、外から来てラテン語などを学んだら、俗世に戻る子と教会、修道院の中に留まる子どもに分けて、それを外校(exterior)、内校(interior)と呼び分けた。
こうした学問研究を行う修道院としては、スイスのザンクト・ガレン修道院が有名である。ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』が映画化された際にはここで撮影が行われた。
日本ではNSA; Institut National des Sciences Appliquéesを国立応用科学院、国立応用科学院レンヌ校、ハンガリー科学院言語学研究所、グランゼコールを国立理工科学院連合など、学院と訳す。
日本
今日、日本においては高等学校や大学など様々な教育機関の名称として用いられている。そうした場合、英語では名称の一部として "gakuin" と表記される場合が多い(例えば、青山学院大学であれば、"Aoyama Gakuin University" と表記される)。 青山の學院であり、明治學院、関西學院、東北學院、西南學院も同様である(國學院では國學の院であり命名の趣旨が異なる)。
「学院」と名称が付く学校のほとんどが私立であるが、例外的に秋田市立御所野学院中学校・高等学校という学院と名称が付いた公立の中高一貫校がある。
また、不登校児や学業不振、中途退学の生徒などの学習支援をするサポート校や予備校などの名前にも「学園」とともによく使われており、その場合の「学院」は学校に準じた施設として理解されているようである。こうしたものは、フランス語の lyceum(高校;古代ギリシアでアリストテレスが開いた学校「リツェウム」から由来したもの、現代のフランスではリセ)を訳したものと思われる。
ほかの例として、国立保健医療科学院などの研究機関、徳島歯科学院専門学校、旭川歯科学院専門学校、大阪歯科学院専門学校、日本歯科学院専門学校などの専門学校でみうけられる。
明治・大正年間、宣教師を中心にプロテスタント各宗派の設立した純粋なるキリスト教主義学校(mission school)として明治の代表的なキリスト教指導者である植村正久は明治学院の設立に「キリスト教系学院は、その名によって現状というよりは未来に向けての志の大きさを示したものである」と定義した。 高等教育にいたる諸段階の教育制度や諸種の専門的教育制度を包摂できる総合的 学校組織を目指すうえで、その意図を学校名において明示する必要があった。宗教理念を根底に置く総合的学校組織はキリスト教系学校の多く が目標としたところであり、これらの学校の多くは「学院」の表記を採用した。そうしなければ小学校、中学校、高等学校、大学などのように個別段階 の教育制度に特化した国公立学校との違いを明示できないからである。 学院の命名順に1887年に設立が正式に認可された明治学院、1889年9月28日 神戸に関西学院、1891年9月18日、仙台に東北学院、1894年に青山学院、1916年(大正5年)に西南学院が加わり、各教派の神学部を備える主な高等教育機関が誕生した。宣教師達は日本を地理的に分割して伝道を担当していたのであった。これらの地域を代表するキリスト教系学院を「五大学院」と総称した。西南学院の設立に際し「西南学院と名付ければ、日本の北東から南西にキリスト教主義学校という鎖が完成する」というJ.H.ロウ(John Hasford Rowe:1881‐1976)の提案によるものと記録している[1]。
工科学院の例
- 大阪芸術工科学院 美術研究所 アトリエT
- 美術やデザインの研究・教育機関でデザイン研究・絵画・芸大美大受験・こども美術など。
大学の例
- 東京工業大学 2016年度から学部と大学院を「学院」という新たな組織に統合、学部と大学院一貫教育を行っている。学年や学部・大学院の区別を超えて学ぶことができ、これまでより短期間で大学院を修了することも可能としている。
- 理学院|工学院|物質理工学院|情報理工学院|生命理工学院|環境・社会理工学院
- 北海道大学では大学院に従来の研究科にかえて研究院・学院という組織を設置。
他アジア
韓国では各種の学習塾を指すことが多い。ほか例として、高等科学院など。
その他アジアでは、ベトナム社会科学院、朝鮮社会科学院などがある。
中国・台湾
北京外国語大学国際商学院、中国語語文学学院、湖南文理学院、中信金融管理学院、稲江科技曁管理学院、上海交通大学 安泰経済与管理学院などがある。 中国語圏では日本で言う単科大学、または大学の学部を指すことが多い。ほか例として、中国社会科学院、中国科学院、中国人民解放軍軍事科学院、 台湾警察専科学院、 東方技術学院などがみうけられる。
脚注
- ^ 『日本のC.K.ドージャー』(2002)p.55