観測問題

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量子力学
不確定性原理
紹介英語版 · 数学的基礎

観測問題(かんそくもんだい、: measurement problem)とは、量子力学における問題のひとつで、観測に伴う問題を言う[1]。あるいは観測(観察)過程を量子力学の演繹体系のなかに組み入れるという問題と言い換えることもできる[2]

概説[編集]

渡部鉄兵は、観測における次の3つの条件のうち、いずれの2つも整合的であるにも関わらず、3つを同時に仮定できないことを観測問題と呼んでいる[1]

  • (A)固有値と固有状態のリンク
  • (B)孤立系のシュレーディンガー方程式に従った波動関数の時間的発展
  • (C)測定により測定値が得られる事実

渡部鉄兵は、いずれかの条件を否定することで観測問題は解決できるとし、条件(A)の否定として隠れた変数理論、条件(B)の否定として標準理論の射影公準、条件(C)の否定として多世界解釈をそれぞれ挙げている[1]

さまざまな解釈[編集]

この問題について説明を与えようとする様々な解釈がある。

コペンハーゲン解釈は基本的に収縮を認める立場であるが、収縮を道具(実用的な利用価値だけを認め、解釈には触れない)と見做す道具主義的な立場である現代コペンハーゲン派の立場と、「収縮の詳細を積極的に解釈すべきである」とする立場に分かれる。

アルベルト・アインシュタインは、「どの波動関数になるかについて、人間の知識が不足しているだけで、実際には決まっている」とし(と主張し)(隠れた変数理論)、1926年12月にアルベルト・アインシュタインからマックス・ボルンに送られた手紙で、"He does not throw dice" (「彼(Old One、創造主)は賽を投げない」あるいは「神はサイコロを振らない」)と書いた。だが、このアインシュタインの解釈では、ベルの定理によりクラスター分解性を失うことが知られるなど、不適切だと考えられるようになった。

1960年代になると哲学的な研究が盛んになり、パリ大学[3]の理論物理学者 B.デスパニヤ(Bernard d'Espagnat(英語版))の最初の著作『量子力学と観測の問題―現代物理の哲学的側面』[4]が出版された。この本は当時の観測問題の代表的な説を俯瞰するようになっている。

さらに 1968年7月には、ケンブリッジ大学でE.W.バスティン(Ted Bastin(英語版))とデヴィッド・ボームの企画による非公式のコロキウム(シンポジウム) "Colloquium : Quantum Theory and Beyond" が開催され、1971年その成果である同名の論考・討論集が出版された。訳書『量子力学は越えられるか』[2]には一部割愛があるものの、当時の代表的な研究者の執筆や討論が収録されている。

その他の新しい解釈としては、マクスウェルの電磁方程式から導かれる遅延波と先進波(先行波)に基づく、アメリカの理論物理学者ジョン・クレイマー (John G. Cramer(英語版)) の「交流解釈(transactional interpretation(英語版))」がある[5]

注・出典[編集]

  1. ^ a b c 白井仁人, 東克明,森田邦久,渡部鉄兵『量子という謎 = Quantum Enigma : 量子力学の哲学入門』 勁草書房 2012年 ISBN 978-4326700752 p.7-13 (渡部鉄兵が『第1章 量子力学における観測とその問題』を担当している)
  2. ^ a b T.バスティン編『量子力学は越えられるか』(柳瀬睦男村上陽一郎黒崎宏丹治信春 訳、1973年 東京図書株式会社、"Quantum Theory and Beyond: Essays and Discussions Arising from a Colloquium", edited by Ted Bastin, 1971、但し訳書は第5部の一部割愛)第3部 観測問題
  3. ^ オルセー理科大学(La Faculté des Sciences d'Orsay、現在のパリ第11大学
  4. ^ 『量子力学と観測の問題―現代物理の哲学的側面』1971年 亀井理 訳 ダイヤモンド社、Conceptions de la physique contemporaine; les interprétations de la mécanique quantique et de la mesure.,1965
  5. ^ The transactional interpretation of quantum mechanics, John G. Cramer, Rev. Mod. Phys. 58, 647 – Published 1 July 1986
    これはシュレーディンガー方程式の相対論的な拡張であるクライン-ゴルドン方程式の2つの解が、当初波動関数と見なされたため確率解釈に困難をきたし理論から放棄されていたが、遅延波と先進波(先行波)が干渉して合成したところに電子が実体化するという解釈として提起された。

関連項目[編集]