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[[1962年]]登場。MR/MAR系などに搭載される直列6気筒の6DB1(8,550cc)とモジュラー設計のV型8気筒エンジン・8DB1(11,400cc)を搭載し、高速観光バス向けに発売された。
[[1962年]]登場。MR/MAR系などに搭載される直列6気筒の6DB1(8,550cc)とモジュラー設計のV型8気筒エンジン・8DB1(11,400cc)を搭載し、高速観光バス向けに発売された。


=== B806、B905/906/907 ===
=== B805/806、B905/906/907 ===
[[1967年]]、高速輸送時代の到来に合わせて新たに開発したショートストロークの90゜V型ディーゼルDC系エンジンと共に、MR/MARの観光用とMAR820の後継車として発売されたのが新系列のB8/B9シリーズ。V型8気筒8DC2エンジン(265PS)・11.2m尺の'''B905N'''型1型式のみでスタートし、後年12m車(型式末尾記号がS)や8DC20エンジン(230PS)搭載車('''B806系''')、8DC4エンジン(300PS)搭載車('''B907系''')、12DC20エンジン(350PS)を搭載した[[日本国有鉄道|国鉄]]向けの専用モデル([[国鉄専用形式]])('''B906R'''型)などが追加されて一大ファミリーを形成した。
[[1967年]]、高速輸送時代の到来に合わせて新たに開発したショートストロークの90゜V型ディーゼルDC系エンジンと共に、MR/MARの観光用とMAR820の後継車として発売されたのが新系列のB8/B9シリーズ。V型8気筒8DC2エンジン(265PS)・11.2m尺の'''B905N'''型1型式のみでスタートし、後年12m車(型式末尾記号がS)や8DC20エンジン(230PS)搭載車('''B806系''')、8DC4エンジン(300PS)搭載車('''B907系''')、12DC20エンジン(350PS)を搭載した[[日本国有鉄道|国鉄]]向けの専用モデル([[国鉄専用形式]])('''B906R'''型)などが追加されて一大ファミリーを形成した。


* B800シリーズには、V型6気筒エンジンを搭載した路線モデル(B800/805系)も存在した。これらについては'''[[三菱ふそう・エアロスター|エアロスター]]'''の項目を参照されたい。
* B800シリーズには、V型6気筒エンジンを搭載した観光モデルや路線モデル(B800/805系)も存在した。路線モデルについては'''[[三菱ふそう・エアロスター|エアロスター]]'''の項目を参照されたい。


* なおB806系でも標準の観光ボディのほかに、路線バス用のボディ(G4型)を架装したモデルも[[阪急バス]]などで見られた。
* なおB8、B9系でも標準の観光ボディのほかに、路線バス用のボディ(G4型)を架装したモデルも[[阪急バス]]などで見られた。


* [[三菱自動車工業]](三菱自工、[[名古屋]]・大江工場)製の新設計のボディ(B35型)は次に記すMS512/513系から採用されるが、[[両備バス]]はこれに先駆けてB905に新設計の標準ボディを架装した。
* [[三菱自動車工業]](三菱自工、[[名古屋]]・大江工場)製の新設計のボディ(B35型)は次に記すMS512/513系から採用されるが、[[両備バス]]はこれに先駆けてB905に新設計の標準ボディを架装した。
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Image:Kotodenbus takamatsubus B805L kureha.jpg|コトデンバス(高松バスカラー) B805L 呉羽車体
Image:Kotodenbus B905N kureha.jpg‎|コトデンバス B905N 呉羽車体
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Image:Kotodenbus takamatsubus B806L kureha.jpg‎|コトデンバス(高松バスカラー) B806L 呉羽車体
Image:Kotodenbus takamatsubus B806L kureha.jpg‎|コトデンバス(高松バスカラー) B806L 呉羽車体

2008年7月17日 (木) 13:37時点における版

エアロエース(帝産観光バス)
エアロクィーンI(遠州鉄道)

エアロエースは、三菱ふそうトラック・バスが製造している大型観光バスのシリーズ名である。

スーパーハイデッカーのエアロクィーン(Aero Queen)とハイデッカーのエアロエース(Aero Bus)と二階建てのエアロキング(Aero King)がある。

なお本項では、エアロエース以前の三菱ふそうの大型観光バス・MS系の略歴及びその前身である三菱大型観光バスシリーズ(エアロクィーンなど)についても記述する。

エアロバス誕生までのふそう純観光バス

国鉄専用形式 B906R

MAR820

1962年登場。MR/MAR系などに搭載される直列6気筒の6DB1(8,550cc)とモジュラー設計のV型8気筒エンジン・8DB1(11,400cc)を搭載し、高速観光バス向けに発売された。

B805/806、B905/906/907

1967年、高速輸送時代の到来に合わせて新たに開発したショートストロークの90゜V型ディーゼルDC系エンジンと共に、MR/MARの観光用とMAR820の後継車として発売されたのが新系列のB8/B9シリーズ。V型8気筒8DC2エンジン(265PS)・11.2m尺のB905N型1型式のみでスタートし、後年12m車(型式末尾記号がS)や8DC20エンジン(230PS)搭載車(B806系)、8DC4エンジン(300PS)搭載車(B907系)、12DC20エンジン(350PS)を搭載した国鉄向けの専用モデル(国鉄専用形式)(B906R型)などが追加されて一大ファミリーを形成した。

  • B800シリーズには、V型6気筒エンジンを搭載した観光モデルや路線モデル(B800/805系)も存在した。路線モデルについてはエアロスターの項目を参照されたい。
  • なおB8、B9系でも標準の観光ボディのほかに、路線バス用のボディ(G4型)を架装したモデルも阪急バスなどで見られた。
  • 三菱自動車工業(三菱自工、名古屋・大江工場)製の新設計のボディ(B35型)は次に記すMS512/513系から採用されるが、両備バスはこれに先駆けてB905に新設計の標準ボディを架装した。

MS512/513系

1976年、前述のB806系とB900シリーズを統合する(ただしB8・B9系は翌年まで併売)形で発売。エンジンはいずれも直噴式の8DC4(265PS)をB806系に代わるMS512系に、8DC8(305PS)をB900シリーズを受け継ぐMS513系にそれぞれ搭載。ボディはK11型を継承。

1977年には、MS513N型/513R型に三菱自工純正のB35型ボディを架装したフルデッカーパノラマデッカーなどの高床モデルが追加され、上級仕様として人気を博した。

この系統でも、阪急バスにはMS512Mをベースに後乗り・前降りの路線用ボディ(呉羽自工製73MC型)を架装した車両が存在していた(六甲・有馬地区で運用され、晩年は某電機メーカーの従業員輸送用として使われた)。

K-MS613/615系

MS512/513系の54年排出ガス規制対応モデルで、1980年に登場した。MS613系のエンジンは旧MS512系と同じ8DC8型であるが、排ガス・騒音対策から定格回転数が引き下げられ、最高出力も275PSとなった。また、MS615系には8DC9型エンジン(310PS)が搭載された。

フルデッカー仕様も引き続き生産されたが、溶接組み立て・リベットレス構造のボディを架装した「フルデッカII」モデル(改造型式扱い)が主力となっていった。後に呉羽自工から登場する「サンシャインデッカー」モデルは、このフルデッカIIのデザインを発展させたものといわれる。

初代エアロバス/エアロクィーン

シリーズの概要

初代エアロバス・ハイデッカ

P-MS725SA改 JRバス関東
初代エアロバスの運転席(エアロクィーンW:JRバス関東)
奥道後温泉観光バス サンシャインデッカ

初代エアロバスは1979(昭和54)年、当時の三菱自工・名古屋自動車製作所で開発・設計が始められ、「ふそう誕生50周年」の1982(昭和57)年11月15日に発売された。

車体はイタリアのデザイナー、アルド・セッサーノが基本デザインを手がけ、モノコックボディスケルトンボディの長所を組み合わせた独自の工法“スーパー・コンプ・ストラクチャー”によって組み立てられたもので、その秀逸なスタイリングが全国のバス事業者に注目された。

国産観光バス初の前輪独立懸架採用、8DC9型(320PS)高出力エンジンの搭載など性能面での評価も高く、スーパーハイデッカーのスーパーエアロ新呉羽自動車工業(以下、新呉羽)製ボディ(新呉羽製も三菱純正のボディとされる)を架装したスーパーハイデッカーのエアロクィーンK、3軸スーパーハイデッカーのエアロクィーンW2階建エアロキングなどの派生モデルも含め、6年間でおよそ7,000台という、大型バスとしては驚異的な売り上げを記録した。また、新呉羽製ボディのハイデッカー車も存在し、こちらはサンシャインデッカと呼ばれる。ただし、運転席まわりの機器類(インパネ、ハンドル、シフトレバー)は、先代のMS6系のものを踏襲していた。

1984(昭和59)年に昭和60年騒音規制への適合を中心としたマイナーチェンジが行われ、運転席まわりの機器類が、同年にデビューしたエアロスター(初代:MP2/6系)と同等のものに変更された。

1988(昭和63)年に再度マイナーチェンジが行われ、8DC11型(355PS)エンジンが追加された。スーパーエアロに代わってフロント部分を変更し、エアロクィーンMとなった。そしてハイデッカー車にもエアロクィーンMと同じフロント部分を持つものが登場し、こちらはエアロバス・ハイデッカM(通称:エアロバス・クィーンバージョンエアロバスQverエアロバスQV)と呼ばれる。

エアロクィーンMは大型ヘッドライトの周囲に施された特徴的な処理から「パンダエアロ」の異名をとった。エアロクィーンMは当時のバブル景気による高級観光バス需要の高まりや、相次ぐ長距離高速バス路線の開設などを追い風に、大ヒットモデルとなった。また、このマイナーチェンジでは室内の内装が茶色系から灰色系へと変更されると共に、フロントバンパーの形状も一部変更された。

また、従来型のエアロバスにエアロクィーンW、新呉羽製ボディのエアロクィーンK、エアロキングも引き続き小変更を行いラインナップされている。新呉羽製ボディのハイデッカー車も1988(昭和63)年にボディを全面的に変更し、エアロバスKとなったが、中型車エアロミディと共通のイメージを持つスタイルが好まれなかったのか、特定の事業者に偏る傾向があり、あまり普及しなかった。更に1990(平成2)年には低運転台スーパーハイデッカーのエアロクィーンMVも追加されている。

シリーズの変遷

エアロバス/スーパーエアロ(MS系)

P-MS713/715/715改/725/729系

1982年11月、「ふそうブランド誕生50周年」にあたり、それまでのMS613/615系をフルモデルチェンジ、新たにエアロバス(Aero Bus)と命名。三菱ふそうのバスはマイクロバスのローザを除き順次“エアロシリーズ”で統一されることになり、その第一弾であった。昭和58年排出ガス規制にいち早く適合した。

三菱自工(大江工場)製のハイデッカ、スタンダード(ミドル)デッカーが標準であるが、新呉羽製のサンシャインデッカー・エアロキング類似の車体を架装したエアロクィーンK、改造扱いで西日本車体工業・C-II型に類似したステップアップルーフのスーパーエアロI・段差のない屋根でエアロクィーンWの原型となるスーパーエアロIIも用意された。日本交通(鳥取)のスーパーエアロIIは運転席・客ドア上部がエアロバス同様傾斜した形で導入されている。

エンジンはいずれもK-MS613/615系から引き継ぎ、パワーアップした8DC8と8DC9を搭載、さらに高出力を求めるユーザーに向けてターボチャージャーつきも加えられた。スーパーエアロIIは、初期の夜行高速バスでも採用されている。なお1988年のマイナーチェンジでABSが搭載されるようになり、そしてスタンダードデッカの8DC8型エンジン搭載車は型式がMS715改と改造扱いに変更しそしてフルエアブレーキ車は、型式名の末尾に「A」が加わる(KC-MS8系まで同様。)。

U-MS716改/716/726/729系

平成元年排ガス規制に伴い、1990年にマイナーチェンジ。スタイルはほとんどP-MS713/715/725/729系と同一であるが、バンパー形式や内装が前4形式の後期形と同一になった。

エンジンはMS716改(スタンダードデッカ)は8DC9のままであるが、MS716/726は8DC10(335PS)に変更された。1992年に一部改良を実施し、ABSが標準装備になった。MS729はエアロクィーンと同じエンジンをエアロバスのシャシーに搭載した強馬力仕様のモデルで生産台数は少なく、まとまった台数を導入したのは東京空港交通ジェイアール東海バス広交観光程度である。

"最後の国鉄専用形式"P-MS735SA
国鉄専用形式
P-MS735SA
JRバス関東

1984年から86年まで、国鉄東名・名神ハイウェイバス向けに16台が製造された特注モデル。ターボ付き8DC9型エンジン(350PS)やフルエアブレーキの搭載、富士重工業(富士重)製ボディの採用などが大きな特徴。国鉄最後の特注車であると同時に、最初の高床路線車でもあった。2000年に全廃。国鉄専用形式も参照。

エアロクィーンW(MU系)

エアロクィーンW

P-MU525TA改 JRバス関東
エアロクィーンKと同等の車体を架装した例 P-MU525TA改 エアロクィーンKと同等の車体を架装した例 P-MU525TA改リア
エアロクィーンKと同等の車体を架装した例 P-MU525TA改
エアロクィーンKと同等の車体を架装した例 P-MU525TA改リア
エアロクィーンMと同等の車体を架装した例 P-MU525TA改 エアロクィーンMと同等の車体を架装した例 P-MU525TA改リア
エアロクィーンMと同等の車体を架装した例 P-MU525TA改
エアロクィーンMと同等の車体を架装した例 P-MU525TA改リア
P-MU525TA、U-MU525TA(改)

1985年10月、2階建てバス・エアロキングにやや遅れて追加された後2軸スーパーハイデッカー。スーパーエアロIIとほぼ同様の車体で、架装重量に余裕があることから、ハイグレード仕様の観光バスに導入された他、国鉄バスドリーム号」にも採用された。

しかし、車体を全面的に刷新したエアロクィーンMの登場後、エアロクィーンWとしての販売台数はかなり減少している[1]

なお、エアロクィーンKと同等の車体を架装した車両が2台、エアロクィーンMと同等の車体を架装した車両が1台存在する。

エアロクィーンM/MV(MS系)

エアロクィーンMV

U-MS729SA改 東急バス
P-MS729S、U-MS729S

1988年、エアロバスシリーズの追加モデルとして発売。折しも高速バスの開業ブーム・ハイグレード観光需要ブームと重なったため、それまで三菱ふそう車の導入実績がなかった会社も含めて、非常に多くの会社で導入され、生産終了までに800台近い台数が販売された。

フロントガラスが分割された低運転台仕様としてエアロクィーンMVも登場したが、こちらは高速バス車両としての採用はほとんどなかったため、販売台数は多くない。岐阜バス両備バスなどでは、観光用として導入した後に高速バス用に転用された車両がある。また、乗用車との衝突事故で乗務員が死亡する事故が発生、低運転台仕様の安全性に問題を投げかけたモデルでもあった。

西日本車体工業・富士重工業による架装

西日本車体工業製の車体を架装した車両は、九州のバス事業者や阪急バスを中心に多数存在する。また、富士重工業製の車体を架装した車輛も、国鉄バス発注の車両(国鉄専用形式もその例である)をはじめとして数社が導入しているが、西工車体と比べても少数派である。

ちなみに、西日本車体工業製の車体を架装したMS725Sには、車体の前後を切り詰め、S尺でありながら全長11.5mの車両(改造車扱い。主に同社のS型車体搭載車。)が多数存在していた(同型式の本来の車両長は11.99m)。

エアロバス(2代目)/エアロクィーン(2代目)

シリーズの概要

2代目エアロバスの運転席
エアロクィーンIIIの客室
中扉・床下トイレ装備車

1992年10月にはエアロバスシリーズの観光・高速系のみがフルモデルチェンジが実施され、2代目エアロバスが登場した。2代目エアロバスから自社製車体と新呉羽製車体の設計が統一された。スーパーハイデッカ仕様にはフロント1枚ガラスのエアロクィーンIと、旧エアロクィーンMV・エアロクィーンKに代わる低運転台仕様のエアロクィーンIIの2モデルが設定され、さらに翌年には床下運転台(セミダブルデッカ;SDD)構造として客室前方視界を拡大したエアロクィーンIIIが追加された。

初代の流れを汲みながらも社内デザイナーが手掛け、当時のトレンドであったオーガニック・エアロフォルムに一新して発売された2代目エアロバスシリーズは、全シリーズに共通して以下のような特徴を持つ。

  1. ボディスタイル - 初代では三菱自工(大江工場)製と新呉羽製で別々のスタイルであったが、2代目は三菱自工(大江工場)(1998年まで)、翌1993年に新呉羽を完全子会社化した三菱自動車バス製造(MBM:現三菱ふそうバス製造=MFBM)製は共通化され、製造工場が異なるだけとなった。また初代では途中から追加された通称パンダマスクと標準の2種類があったが、2代目はすべて共通のフロントマスクになった。フロントガラスはいち早く2枚ガラスをやめ、1枚ガラスのみが用意された。前照灯は角形2灯に代わってプロジェクターランプ(廉価版は角形4灯)を採用した。
  2. シャーシ - サスペンションは、フロントはダブルウィッシュボーン独立懸架式車軸懸架式の2種類、リアは初代のリファイン版に加えて、前後車軸の重量配分を最適化した上級車種にはラテラルロッドを追加した4リンク式を採用。また4輪電子制御サスペンション(ECS)を初めて採用することで乗り心地を向上させている(スタンダードデッカ、ハイデッカSA観光を除く。)。なお、スーパーハイデッカ及びハイデッカ車は、全長は変わらないもののホイールベースが350mm短縮された(例:長尺車でS尺6,500mm→P尺6,150mm)。更に、低出力車(U-/KC-車は8DC9機関搭載車、KL-車では8DC11機関搭載車)以外では、パワータードブレーキ(オプションとしてリターダも装着可能)やホイールパーク式サイドブレーキが標準装備となった。

1995(平成7)・2000(平成12)・2005(平成17)年には排気ガス規制強化に伴うマイナーチェンジが施され、特に2005年10月実施のマイナーチェンジでは、搭載エンジンが従来のV型8気筒自然吸気エンジンから、大型トラックのスーパーグレートに採用されている直列6気筒インタークーラーターボエンジン(6M70系)に変更され、それにともないリアオーバーハングの延長とホイールベースの短縮が行われた。また2006年1月実施の灯火器保安基準改正に対応するため、リアコンビネーションランプの位置変更なども行われた。

また、この間の1998年には大型バス生産がMBMに一本化されているが、優美なイメージを持つ基本デザインは変化しておらず、15年間にわたり多数の国内バス事業者からの支持を獲得し続けた。なお、エアロクィーンIIIは2005年のマイナーチェンジ時に製造を中止している。

シリーズの変遷

U-MS821/826/815系

エアロクィーンII

U-MS821P 千葉交通

1992(平成4)年にフルモデルチェンジ。MS8シリーズとなる。

8DC9(305PS)を搭載した標準床タイプのMS815、8DC10(355PS)を搭載するMS826、8M20-1(400PS)を搭載するMS821の3種類が存在する。

なお、MS826及びMS815には長尺車(11.99m車。ハイデッカ:P尺、スタンダードデッカ:S尺)及び短尺車(11.2m車。同、M尺及びN尺)の両方が存在するが、MS821にはハイデッカ、スーパーハイデッカ共に長尺車(P尺)しか存在しない。

エアロクィーンIIでエアロクィーンIIIと同等の車体を架装した車両が1台存在する。

KC-MS822/829/815系

エアロクィーンIII

KC-MS822P改 神奈中観光

1995(平成7)年に強化された排出ガス規制に対応するためマイナーチェンジ。8DC9(310PS)を搭載した標準床タイプのMS815、8DC11(355PS)を搭載するMS829、8M21(420PS)を搭載するMS822の3種類が存在する。

1997(平成9)年にはハンドルを衝撃吸収形の形状とするものに変更され、翌1998年(平成10)年にはMBMへの製造一本化と共に、運転席のランプ類がLED式となった。また変速機の作動音も若干変化した。さらに1999(平成11)年には平成10年騒音規制に対応させる為に一部改良を実施し、排気管が左出しから右出しに改められている、そしてヘッドライトがディスチャージヘッドランプに変更された(スタンダードデッカは除く)。

U-車と同様、MS829及びMS815には長尺車(P尺・S尺)及び短尺車(M尺・N尺)の両方が存在するが、MS822にはハイデッカ・スーパーハイデッカ共に長尺車(P尺)しか存在しない。

なおU-車との識別点は、運転席空気圧計高圧側のレッドゾーンの有無(レッドゾーンがあるのがU-車、無いのがKC-車)と、フロントバンパーの形状(エアロクィーンII&IIIを除く)である。

KL-MS86M/85K系

エアロバス(スタンダードデッカー)

KL-MS86MS 東急バス

2000年に強化された排出ガス(長期規制・KL-)に対応するためマイナーチェンジ。KL-MS86M/85K系となる。
型式には、搭載機関が8DC11(330PS)のMS85K(SD/ND:いずれもスタンダードデッカ)、8M21-1(370PS)を搭載するMS86M(PH1/MH1:EX観光、PH1B/MH1B:廉価版のSA観光、SD1/ND1:スタンダードデッカー)、8M21-3(430PS)を搭載するMS86MP(H3:ハイデッカ/Q3:クィーンIスーパーハイデッカGX観光/C3:クィーンI夜行高速バス用ハイウェイランナー/V3:クィーンII/W3:クィーンIII)の3種類が存在する。なお、この型式より、エンジン出力はネット出力となっている他、全車フルエアブレーキ・ホイールパーク式サイドブレーキとなっている。

U-車、KC-と同様、8M21-1機関搭載車には長尺車(P尺・S尺)及び短尺車(M尺・N尺)の両方が存在するが、8M21-3機関搭載車にはハイデッカ・スーパーハイデッカ共に長尺車(P尺)しか存在しない。

本型式よりハンドルにはSRSエアバッグが標準装備された(注文によりエアバッグ無しとすることも可能だった)新設計のものとなっている。さらに、ホイールパーク式サイドブレーキ動作音がKC-車とは若干異なっている。

PJ-MS86系

エアロバス

PJ-MS86JP 大分交通

2005年、平成16年新短期排出ガス規制に適合させマイナーチェンジ。エンジン搭載の関係でホイールベースが更に短縮されて6,150mm→6,000mmになり、リアオーバーハングが延長となった。それまでは2種類の車体長を持つモデルが設定されていたが、この代で12m級のPJ-MS86JP型に一本化され、11.2m級モデルの設定はなくなった。また、スタンダードデッカの設定もなくなった。一方で、従来は特注仕様だった直結エアコン・大容量床下トランク装備モデルがエアロバスに標準設定された(エアポートライナー仕様)。

エンジンは初代エアロバス以来のV型8気筒タイプから、直列6気筒・インタークーラーターボ搭載のタイプに変更され、6M70(T2)型(350PS)と6M70(T4)型(420PS)の2機種に整理された。また、車体関連では後部灯火機器の配置変更やサイドリフレクター(反射板)の追加が行われ、制動灯が従来の位置とリアバンパーの間に設置された。エンジン出力では旧来のV8に比べわずかに劣るものの、低回転域のトルクの向上で総合的にはドライバビリティーは向上しており、燃費も約15%向上し、静粛性も旧来のV8に比べ格段に向上した。

なおこのモデルから、西日本車体工業へのシャーシ供給は取りやめとなっている。

西日本車体工業・富士重工業製

三菱ふそうの純正ボディは、前記のとおり三菱自工(1998年まで)とMBM→MFBMが担当するが、西日本鉄道をはじめ九州・中国・関西地方では西日本車体工業(西工)による架装が多く見られる。1992年10月、純正ボディと同時期にフルモデルチェンジしたネオロイヤルC/SD型のほか、比較的運行距離の短い中距離都市間路線にはS型も架装された。特にC/SD型はスペースをなるべく広く取る工夫がなされており、夜行都市間高速バス用としては最適である。

SD型のうちSD-II型は三菱ふそう専用(ネオロイヤルになり日産ディーゼル・スペースウィングに2軸スーパーハイデッカーモデルが追加されてからは日産ディーゼル向けも製造)で、高出力なMS729Sの後継モデルであるU-MS821P/KC-MS822P/KL-MS86MP(Q3)と組み合わされる。なお、九州内の昼行長距離都市間路線(フェニックス号桜島号)用には、ハイデッカーにセグメントされるSD-I型が採用された。

ちなみに西工架装車には、ECS(SD-IIなど高出力車を除く)を省略した車両が多数存在する。

富士重製は既に少数派であったが、1998年には日野自動車とともにバス車体の架装は中止された。西工製についても2005年秋以降は同社へのシャーシ供給を停止しており、これまでSD-IIボディを採用してきた西日本鉄道や阪急バスにも純正ボディの夜行バスが採用されるようになった。

リコール騒動とその波紋

2002(平成14)年以降、三菱ふそうトラック・バスでのリコール隠し問題が相次いで発覚したことから、各地でエアロバスの新規導入・更新を手控える事業者が後を絶たなかった。例えば系列にふそう系ディーラーを持ち、昭和40年代以降一貫してバス車両を三菱自製に統一していた名鉄バス岡電バスなどでも日野自動車セレガを導入するなど、当面の動向が懸念された。1999年にホイールハブ破損によりタイヤ脱落事故を起こした中国ジェイアールバスでも三菱自工製の車両を多数導入してきたが、2004年8月以降の新車はいすゞ自動車製のみを採用している。

その後、ここ数年の逆境で落ち込んだシェアがかつての水準にまで回復しており、明るい兆しが見え始めた。しかし、いすゞ・日野が2005年9月に大型観光バスをフルモデルチェンジしてセレガ/ガーラとして発売させたり、西工製車体の日産ディーゼル・スペースアローはトルコン式6速ATのみに絞り込まれたのに対し、エアロバスの2005年10月12日の改良では、フルモデルチェンジも新長期規制への対応もなく、新短期規制適合かつ超低PM排出ディーゼル車認定制度75%低減レベルに留まった。メーカー側は中身の充実に重きを置いたと説明している。

マイナーチェンジに留めた理由はリコール問題が原因と受け取られがちだが、事実とは異なる。排出ガス規制適合は継続生産車の場合、適合期限が新規車種(フルモデルチェンジ)とは違うためである。前述の車種に比べると多少は見劣りするかもしれないが、内容的にはまったく遜色は無いので、導入したユーザー(バス事業者から)は好評を得ているようである。

新長期規制への対応は、後述の2007年の日産ディーゼル工業との業務提携・バス事業の相互OEM供給が行われる車種からとなった。

エアロエース/エアロクィーン(3代目)

エアロエース エアポートライナー

BKG-MS96JP 東京空港交通

2007年6月、15年ぶりにフルモデルチェンジを実施し3代目エアロシリーズが発表された(発売は同年8月29日)。

ハイデッカーは今回から新しい車名としてエアロエース(Aero Ace)が登場した。スーパーハイデッカーにおいては従来と同じエアロクィーン(Aero Queen)の名称が継続して使用されている。プレスリリース

また、排出ガス後処理装置に新たに尿素SCRシステムを採用することになった。この尿素SCRシステムは日産ディーゼル工業との業務提携により、同社より供給が行われ、スペースウィングやスペースアローなどと同一のコンポーネントとなっている。尿素水の補給は、燃料の3%と見積もられている。

これらのほかにコモンレール噴射方式、高精度クールドEGRといった技術も併せ、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の削減を行う。こうした技術により低燃費化がはかられたほか、低回転域のトルクが増大された。

全高は、サブエンジン冷房車の場合、エアロクィーンは3.52m、エアロエースは3.26mである。

また、この車両は日産ディーゼル工業にOEM供給され、スーパーハイデッカーが「スペースウィングA」、ハイデッカーが「スペースアローA」として発売される。

BKG-MS96JP(現行車種)

エアロクィーン(3代目)

BKG-MS96JP 北都観光

2007年8月29日に発売を開始した型式で、新長期規制(平成17年排出ガス規制)に対応している。前述のように、新規に尿素SCRシステムを採用するなどした結果、基準に対し窒素酸化物(NOx)・粒子状物質(PM)の10%減を達成した。また、平成27年燃費基準も達成しており、「BKG-」の取得となったが、これは国内のディーゼルバスでは初である。

エンジンは6M70エンジンを搭載しており、出力は309Kwあるいは257Kw(エアロエースのみに設定)である。トランスミッションは6MTのみである。車体は、引き続き三菱ふそうバス製造製である。

2007年10月には、高速路線仕様のハイウェイライナーおよび空港路線仕様のエアポートライナーが追加設定された。

型式は、BKG-MS96JPになり、日産ディーゼルへのOEM供給車はBKG-AS96JPとなる。

海外における姉妹車

韓国現代自動車は三菱自工と業務提携していたことから、エアロバスを「エアロスペース」シリーズの名称でライセンス生産している。ボディスタイルも三菱と同時期にフルモデルチェンジされ、前面2枚ガラスや直結エアコンを特徴とする。エンジンは以前から直列6気筒インタークーラー付きターボチャージャーを搭載しているようで、日本より先進的であった。ただし、廉価版の車種では日本向けにないリーフサス(板バネ)仕様のものが存在するなど、一部にコストダウンの影響も垣間見える。

また、中国ではコピーされた類似車が多数製造されている。

ラインナップ

  • エアロクィーン:12m
  • エアロエース:12m
  • エアロエース ショートタイプMM:9m

過去のラインナップ

  • エアロクィーンI:12m
  • エアロクィーンII:12m
  • エアロクィーンIII:12m
  • エアロバスMS EX:12m
  • エアロバスMS SA:12m
  • エアロバスMS SX:12m
  • エアロバスMS SD:12m
  • エアロバスMS EX:11m
  • エアロバスMS SX:11m
  • エアロバスMS SD:11m
  • エアロバスMM EX:9m
  • エアロバスMM SD:9m

関連項目

外部リンク

  1. ^ 他社が2階建てバス製造を中止した後もエアロキングのベース車としてシャーシ型式そのものは存続されていたため、シャーシ型式で見た販売台数はさほど落ちていない