流束

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

流束(りゅうそく、: flux)とは、流れの場、あるいはベクトル場の強さを表す量である。 英語のままフラックスとも呼ばれる。 様々なベクトル場に対応した流束が用いられる。流束は流体の理論からの類推であるが、何らかの実体が流れているとは限らない。 なお、単位面積あたりの流束である流束密度flux density)を指して単に流束と呼ばれることも多い。

概要[編集]

速度分布 v(t, x)質量分布 ρ(t, x)流体に対して、曲面 S を時間あたりに通り抜ける質量は

となる。これは流体の質量流量mass flux)と呼ばれる[1]。 流量を様々な流れの場、あるいはベクトル場で置き換えたものが流束である。 ベクトル場 A(t, x) に対して、曲面 S に対する流束は

で定義される。 このベクトル場 A は面積あたりの流束であり、流束密度と呼ばれるが、流束密度を指して流束と呼ばれることも多い。

流束の例
流れ(SI単位) 流束(SI単位) 流束密度(SI単位) 備考
質量kg 質量流量(kg s−1 質量流束密度(kg m−2 s−1
体積m3 体積流量m3 s−1 速度分布(m s−1 ダルシーの法則など
エネルギーJ エネルギー流束W エネルギー流束密度(W m−2
運動量(kg m s−1 運動量流束 (N) 運動量流束密度=応力Pa ニュートンの粘性法則など
(J) 熱流束(W) 熱流束密度(W m−2 フーリエの法則熱伝導方程式など
電荷C 電流A 電流密度(A m−2 オームの法則など
物質量mol 拡散流束[2](mol s−1 拡散流束密度(mol m−2 s−1 フィックの法則など
光量(lm s) 光束lm 光束発散度(lm m−2
放射エネルギー(J) 放射束(W) 放射発散度(W m−2 シュテファン=ボルツマンの法則など
電束(C) 電束密度(C m−2 マクスウェルの方程式など
磁束Wb 磁束密度(Wb m−2 マクスウェルの方程式など

関連項目[編集]

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 巽友正 『連続体の力学』岩波書店〈岩波基礎物理シリーズ〉、1995年。ISBN 4-00-007922-0 
  • 浅野康一 『物質移動の基礎と応用』丸善、2004年。ISBN 4-621-07356-7