シュテファン=ボルツマンの法則

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シュテファン=ボルツマン定数
Stefan-Boltzmann constant
記号 σ
5.670 373(21)×10−8 W m-2 K-4
相対標準不確かさ 3.6×10−6
語源 ヨーゼフ・シュテファンルートヴィッヒ・ボルツマン
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シュテファン=ボルツマンの法則(シュテファンボルツマンのほうそく、: Stefan-Boltzmann law)は、黒体の表面から放射されるエネルギーフラックス (単位面積から、単位時間当たりに放出される電磁波のエネルギー) I が、その黒体の熱力学温度 T の4乗に比例するという物理法則である。ステファン=ボルツマンの法則ともいう。ヨーゼフ・シュテファンが本法則を実験的に明らかにし(1879年)、弟子のルートヴィッヒ・ボルツマンが理論的な証明を与えた(1884年)。

この法則によると、IT の間には

 I = \sigma T^4

という関係が成り立つ。比例係数σをシュテファン=ボルツマン定数(ステファン=ボルツマン定数)という。この定数σの値は光速度cプランク定数hボルツマン定数k から導くことができ、次の通りである[1]

\sigma = {2\pi^5 k^4 \over 15 c^2 h^3} = 5.670 373(21) \times 10^{-8} \, \mathrm{W} \cdot \mathrm{m}^{-2} \cdot \mathrm{K}^{-4}

実際の物体は黒体であるとは限らない。その場合, シュテファン=ボルツマンの法則は以下のように修正される:

 I = \epsilon \sigma T^4

εは0以上1以下の定数であり, 放射率もしくは射出率 (emissivity)と呼ばれる。厳密には, 放射率は波長に依存するため, 上式のような関係は近似的なものである。

プランクの放射公式からの導出[編集]

黒体放射プランクの放射公式は、振動数 ν の関数として、

\rho(\nu) = {8\pi \nu^2\over c^3}{h \nu\over e^{h \nu/kT}-1}

c :光速度,hプランク定数kボルツマン定数

と表される。空洞内のエネルギー密度は、全振動数について積分することにより求められるから、

\rho = \int_{0}^{\infty} \rho(\nu) \mathrm{d}\nu = \int_{0}^{\infty} {8\pi \nu^2\over c^3}{h \nu\over e^{h \nu/kT}-1} \mathrm{d}\nu = {8\pi h\over c^3} \int_{0}^{\infty} {\nu^3\over e^{h \nu/kT}-1} \mathrm{d}\nu

である。ここで、

x = {h \over kT} \nu

とおくと、

\rho = {8\pi h\over c^3} \int_{0}^{\infty} {1\over e^x-1} {k^3 T^3 \over h^3} x^3 {kT\over h} \mathrm{d}x = {8\pi k^4 T^4\over c^3 h^3} \int_{0}^{\infty} {x^3\over e^x-1} \mathrm{d}x


と表され、\int_{0}^{\infty} {x^3\over e^x-1} \mathrm{d}xの値は、{\pi^4 \over 15}となるから[脚注 1]


\rho = {8\pi^5 k^4 \over 15 c^3 h^3} T^4

となる。

これをエネルギー密度と放射照度の関係式 I = {c \over 4} \rhoに代入し、

I = {c \over 4} \rho = {c \over 4} {8\pi^5 k^4 \over 15 c^3 h^3} T^4 = {2\pi^5 k^4 \over 15 c^2 h^3} T^4

を得る。π, k, c, h は全て定数であるので、\sigma = {2\pi^5 k^4 \over 15 c^2 h^3}とおくと、シュテファン=ボルツマンの法則を得る。

応用例[編集]

太陽の表面温度の導出[編集]

この法則を用いて、太陽の表面温度を導くことができる。

太陽の表面温度T 、太陽の半径をr とすると、太陽の表面積は 4πr2 なので、太陽が1秒間に放出する電磁波の全エネルギー E1 は、シュテファン=ボルツマンの法則より、

E_1 = \sigma T^4 \times 4\pi r^2

と計算できる。

地球と太陽の距離をR とすると、太陽から放出された電磁波は地球に届くまでに、電磁波が表面積 4πR2 の球状の範囲にまで広がっている。電磁波が全方向へ均等に広がると仮定すると、E1 を表面積 4πR2 で割ることにより、地球付近での単位面積当たりのエネルギー E2 が導ける。

E_2 = \frac{\sigma T^4 \times 4\pi r^2}{4\pi R^2} = \sigma T^4 \times \frac{r^2}{R^2}

これは太陽定数と呼ばれる値であり、およそ E2 = 1.37×103 W/m2である[2]ことが大気圏外の人工衛星による観測で分かっている。

したがって、r = 6.960×108 m[2]R = 1.496×1011 m(軌道長半径[2]を代入し、T を求めると、

 T = \sqrt[4]{\frac{E_2 \, R^2}{\sigma \, r^2}} \simeq 5780\, \mathrm{K}

である事が分かる。

ヨーゼフ・シュテファンはこの法則を用いて、太陽の表面温度を約6000℃と推定した[3]

脚注[編集]

  1. ^ リーマンゼータ関数は、ガンマ関数を用いて、
    \zeta (s)=\frac{1}{\Gamma(s)} \int_0^\infty \frac{u^{s-1}}{e^u-1} du と定義され、従って、\int_0^\infty \frac{u^{s-1}}{e^u-1} du = \zeta (s) \Gamma(s) となる。
    ここでs = 4とおくと、\int_0^\infty \frac{u^{3}}{e^u-1} du = \zeta (4) \Gamma(4) となる。
    \zeta (4)={\pi^4 \over 90}\Gamma(4)\,=3!=6 \,であるから、
    \int_{0}^{\infty} {u^3\over e^u-1} \mathrm{d}u={\pi^4 \over 15}

参考文献[編集]

  1. ^ Fundamental Physical Constants
  2. ^ a b c 国立天文台編 (2010). 理科年表 平成23年. 丸善. 
  3. ^ 物理学辞典編集委員会 (2005-9). 物理学辞典 三訂版. 培風館. 

関連項目[編集]