黒体

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黒体(こくたい、: black body)あるいは完全放射体(かんぜんほうしゃたい)とは、外部から入射する電磁波を、あらゆる波長にわたって完全に吸収し、また熱放射できる物体のこと。

概要[編集]

物体のというのは、その物体が反射する可視光線の波長に由来する。通常、光源となる可視光にはさまざまな波長の光が混ざっており、物体は光源の可視光から特定の波長の可視光を吸収し、吸収された以外の波長がまざりあったまま反射し、これを人間は視覚によってその物体の色として認識している[1]。物体が可視光を全反射すればく見え、可視光を全吸収すればく見えることになる。さらに、光源自体も、すべての波長の可視光を放射する光源は「白」く見え、可視光を全く放射しない光源(もはや「光源」とは呼べないが)は「黒」く見えることになる。

実際の光は可視光以外の波長も含んでおり、また光は電磁波であることがわかっている。全ての波長にわたって電磁波を全く反射をしない物体を黒体と呼ぶ。ただし通常は光源であっても他の光源からの反射を含んでおり、光を発してないように見える光源も赤外線や電波などの電磁波を放射や反射により発している。全く反射や放射のない物体は存在しない。したがって完全な意味での黒体(完全黒体)は、理想気体や剛体のように現実には存在しない理論的なものである。ブラックホールなど近似的にそうみなせる物質、物体はある。現在、工業的に作り出された最も黒体に近い物質は、99.96 % の光(電磁波)を吸収するベンタブラックである。

物体からの放射(反射を含まない)には、物体の温度によって色が変わることが経験的に知られていた。この色も、さまざまな電磁波の波長の光が混ざっていることは変わりない。この色の変化は、波長ごとのの強度分布の変化であることがスペクトルの分析によりわかっており、また分布の仕方は温度によって一定であることも知られている。温度が高い、すなわち「熱い」とは、物体から放射される電磁波のスペクトル分布が短い波長を多く含んでいることであり、これは温度を持った物体に触れることなく空間を電磁波の放射によりエネルギーが伝わっていると解釈される。これを物体からの熱放射という。特に、黒体からの熱放射を黒体放射と言う(以前は黒体輻射ともいった)。この理想的な物体を考察することで、反射を考えず、物体からの放射だけを考えることができる。

ある温度の黒体から放射される電磁波のスペクトルは一定である。温度 T において、波長 λ の電磁波の黒体放射強度 B (λ) は、

で表される。これをプランク分布という。プランク分布を全波長領域で積分することで、黒体放射の全エネルギーが T4 に比例する(E = σT4σシュテファン=ボルツマン定数)というシュテファン=ボルツマンの法則を得る。また微分して B (λ) が極大となる λ を求めることで、放射強度最大の波長が T に 反比例するというウィーンの変位則を得る。

空洞放射[編集]

十分に大きな空洞を考え、空洞を囲む壁は光を含む一切の電磁波を遮断するものとする。この空洞に、その大きさに対し十分に小さな孔を開ける。孔を開けることによる空洞内部の状態の変化は無視できるとする。外部からその孔を通して入った電磁波(ある特定の波長のものが光)が、空洞内部で反射するなどして再び出てくることは、孔が十分に小さければ無視することができる。つまりこの空洞は、外部から入射する電磁波を(ほぼ)完全に吸収する黒体とみなすことができる。

この空洞からの熱などの放射を空洞放射という。

空洞放射に近い身近な例は、ガラス工房などでガラスを熱する炉である。産業革命以降、製鉄業等で炉内の温度測定をする需要があったため、空洞放射の理論が用いられた背景がある[2]

黒体放射と量子力学[編集]

黒体放射(: black body radiation)とは黒体から放射される光。温度が低いときは赤っぽく、温度が高いほど青白くなる。夜空に輝く星々も青白い星ほど温度が高い。温度はK(ケルビン)で表示される(右図参照)。

理想的な黒体放射をもっとも再現するとされる空洞放射が温度のみに依存するという法則は、1859年グスタフ・キルヒホフにより発見された。以来、空洞放射のスペクトルを説明する理論が研究され、最終的に1900年マックス・プランクによりプランク分布が発見されたことで、その理論が完成された。

物理的に黒体放射をプランク分布で説明するためには、黒体が電磁波を放出する(電気双極子が振動する)ときの振動子の量子化を仮定する必要がある(プランクの法則)。つまり、振動子が持ちうるエネルギー (E) は振動数 (ν) の整数倍に比例しなければならない。

E = nhν (n = 0, 1, 2, ...)

この比例定数 h = 6.626×10-34 [J・s] は、後にプランク定数とよばれ物理学の基本定数となった。これは物理量は連続な値をとり、量子化されないとする古典力学と反する仮定であったが、1905年アルベルト・アインシュタインがこのプランクの量子化の仮定と、光子の概念を用いて光電効果を説明したことにより、この量子化の仮定に基づいた量子力学が築かれることとなった。

灰色体[編集]

工業製品などでの設計では、対象の温度範囲が限られていることから、しばしば放射率が周波数に依存しない理想的な物体として灰色体(かいしょくたい)を用いる。灰色体は、黒体の放射率を 1 より小さい定数としたものと等価であり、黒体よりも現実的なモデルを与える。

応用例[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ このため光源が単色光の場合、その波長の吸収が起きて反射光を見ても、その波長の光の強度、つまり明るさの差しか認識できず、物体を「色」で区別できない(モノクロに見える)。
  2. ^ 高井義造 (2008年6月10日). “プランクが開いた量子論の扉”. 喫茶コーナー. 大阪大学大学院工学研究科. 2012年1月24日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]