洞房結節
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洞房結節(どうぼうけっせつ、ラテン語: nodus sinuatrialis、英語: Sinoatrial node, 洞結節)は、心臓の右心房上部背側にあるペースメーカーの役目をする心筋の領域である。発見者の名前からキース・フラック結節(Keith-Flack node)とも呼ばれる。洞房結節の大きさはおよそ奥行15mm、幅3mm、厚さ1mmで、上大動脈に隣接している。[1]70回/分のリズムを作る刺激伝導系の初端であり、生理的な心臓の収縮を指令する。その後刺激は房室結節へと伝わる。
構造
[編集]およそ奥行15mm、幅3mm、厚さ1mmの楕円形の構造をしており、サイズには個人差が生じるが、通常奥行は10-30mm、幅は5-7mmm、厚さは1-2mm程度である。[2][3]
位置
[編集]洞房結節は右心房の壁(心外膜)に位置している。詳しく言えば上大動脈の入り口の横の、静脈洞(英語: Sinus venosus)と呼ばれる領域にある。大まかには心臓の内側の表面にある分界稜(英語: Crista terminalis)と呼ばれる領域と、外側の表面にある分界溝(英語: Terminal sulcus (heart))と呼ばれる領域の間に位置している。[4]
顕微解剖学
[編集]洞房結節細胞は神経、血管、コラーゲンや、脂肪を含む結合組織の網の中に分布している。洞房結節組織のすぐ周囲にはが存在する傍絞輪部細胞が広がっている。[4]これらの細胞は洞房結節細胞とそれ以外の心房細胞の中間的な構造を有している。[5]傍絞輪部細胞付近の結合組織は周囲の洞房結節組織以外の心房組織からの絶縁体の役目を果たしており、電気的な洞房結節への影響を防いでいる。[4]洞房結節細胞は周囲の心房細胞よりも小さく、薄い。その大きさは直径8μmで長さは20-30μmほどである。[6]心房細胞とは違い、洞房結節細胞内のミトコンドリア、筋小胞体、筋小胞体の数はどれも少ない。これは洞房結節細胞が心房や心室の細胞と較べると筋収縮に働くための器官を有していないということを意味している。[7]
活動電位は、ギャップ結合と呼ばれる孔を通じて、一つの心筋細胞から次の細胞へと伝わる。これらのギャップ結合はコネクシンとよばれるタンパク質によって形成されている。洞房結節のギャップ結合は少なく、そして小さい。これにより周囲の心房細胞からの活動電位を絶縁しやすくしている。[4][7]
機能
[編集]ペースメイク
[編集]洞房結節な主要な機能は心筋細胞上を通り、収縮の原因となる心臓の活動電位の開始である。活動電位とは、イオンの移動によって引き起こされる膜電位の急激な変化を指す。刺激が存在しない時には、ペースメーカーの役割を担わない細胞(心室、心房の細胞を含む)は比較的一定の膜電位を持っている。これは静止電位として知られている。精神電位の段階は、活動電位が細胞に達した時に終了する。これが脱分極と呼ばれる膜電位の正方向への変化を引き起こし、心臓全体に広がり、筋肉の収縮を最終的に引き起こす。
しかし、ペースメーカーの役割を担う細胞は静止電位を持たない。代わりに、再分極直後に、これらの細胞の膜電位は再度、脱分極を自動的に引き起こす。この現象はペースメーカー電位(英語: Pacemaker potential)と呼ばれている。一度ペースメーカー電位が閾値と呼ばれる一定の値に達すると、活動電位が発生する。心臓内の他の細胞(プルキンエ線維[8]や房室結節を含む)も、活動電位を発生させることができる。しかし、それらは比較的ゆっくりと活動電位の発生を行う。つまり、洞房結節が正しく機能している時は、洞房結節の活動電位が通常他の組織で作られた活動電位を上書きしてしまう。[9]
以下では、洞房結節の活動電位の発生を3段階に分けて要約する。心臓活動電位においては、5つの段階(0-4番)があるが、ペースメーカーの活動電位発生はこのうち第1段階、または第2段階の段階を持たない。
第4段階
[編集]この段階はペースメーカー電位としても知られている。再分極直後に、膜電位が過分極しているとき、電圧はゆっくりと上昇する。これははじめ、カリウムチャネルが閉鎖することによって起き、これによって、K+イオンの流出が減少する。[10]過分極は過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル(HCNチャネル)の活性化も行う。膜電位が大きく負に傾く中で、これらイオンチャネルが活性化されることは通常起こりえない。このような活性化されたHCNチャネルを通過するNa+イオン、および、一部のK+イオンの流れはペースメーカー電流(英語: Pacemaker current)[11]と呼ばれる。このペースメーカー電流によって細胞の膜電位は陽イオンの流入に伴って徐々に増加する。ペースメーカー電位に関する別のメカニズムとして、カルシウムクロックがある。カルシウムクロックとは、カルシウムスパーク(英語: Calcium sparks)という名でも知られており、筋小胞体が細胞質へカルシウムを放出する自然な現象を指している。これにより、細胞内のCa2+濃度が増加し、ナトリウム・カルシウム交換輸送体(NCXともいう)が活性化される。NCXは、1つのCa2+を細胞から排出し、3つのNa+を代わりに細胞内に取り込む。したがって、最終的には膜電位は上昇する。後にカルシウムは細胞膜上のSERCA(英語: SERCA)やカルシウムチャネルを通じて細胞内に再度取り込まれる。[12]
これらのメカニズム(ペースメーカー電流とカルシウムクロック)によって、膜電位は上昇し、T型カルシウムチャネル(英語: T-type calcium channel)が活性化され、非常にゆっくりと開口するL型カルシウムチャネルも活性化される。これらのチャネルはCa2+の流入を促進し、膜電位を更に上昇させる。
第0段階
[編集]この段階は脱分極の段階である。膜電位が閾値(およそ-20から-50mV)に達すると、細胞は急速に脱分極を始め、より正の電位へと傾く。[13]この作用は主にはこの時点では完全には開口していない、L型カルシウムチャネルを介したCa2+の流入によるものである。この段階では、T型カルシウムチャネルとHCNチャネルは不活化されている。
第3段階
[編集]この段階は再分極の段階である。この作用はL型カルシウムチャネルの不活化によりCa2+の細胞内への流入が停止すること、そしてカリウムチャネルが活性化されることによってK+イオンが細胞外に流出して膜電位を低下させることによる。[14]
伝達経路
[編集]洞房結節により惹起された興奮は左右の心房筋に伝播され、結節間路を通って房室結節に到達する。ついで房室結節からヒス束に入り、心室中隔上部において左右の脚に分枝し、左右の心室の心内膜下に存在するプルキンエ繊維を経て心室筋に伝播される。洞房結節から房室結節に達するまでに3つの伝導路があり、それぞれ前結節間路、中結節間路、後結節間路という。左心房へは、前結節間路より分かれたバッハマン束により洞房結節の興奮が伝えられている。
参考
[編集]- 刺激伝達系(循環器用語ハンドブック)
関連項目
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- ^ Hall, John E.; Guyton, Arthur C. (2011). Guyton and Hall textbook of medical physiology (12th ed ed.). Philadelphia, Pa: Saunders/Elsevier. ISBN 978-1-4160-4574-8
- ^ Csepe, Thomas A.; Zhao, Jichao; Hansen, Brian J.; Li, Ning; Sul, Lidiya V.; Lim, Praise; Wang, Yufeng; Simonetti, Orlando P. et al. (2016-01). “Human sinoatrial node structure: 3D microanatomy of sinoatrial conduction pathways” (英語). Progress in Biophysics and Molecular Biology 120 (1-3): 164–178. doi:10.1016/j.pbiomolbio.2015.12.011.
- ^ Chandler, Natalie; Aslanidi, Oleg; Buckley, David; Inada, Shin; Birchall, Steven; Atkinson, Andrew; Kirk, Danielle; Monfredi, Oliver et al. (2011-06). “Computer Three‐Dimensional Anatomical Reconstruction of the Human Sinus Node and a Novel Paranodal Area” (英語). The Anatomical Record 294 (6): 970–979. doi:10.1002/ar.21379. ISSN 1932-8486.
- ^ a b c d Monfredi, Oliver; Dobrzynski, Halina; Mondal, Tapas; Boyett, Mark R.; Morris, Gwilym M. (2010-11). “The Anatomy and Physiology of the Sinoatrial Node-A Contemporary Review: SINOATRIAL NODAL ANATOMY AND PHYSIOLOGY” (英語). Pacing and Clinical Electrophysiology 33 (11): 1392–1406. doi:10.1111/j.1540-8159.2010.02838.x.
- ^ Chandler, Natalie J.; Greener, Ian D.; Tellez, James O.; Inada, Shin; Musa, Hanny; Molenaar, Peter; DiFrancesco, Dario; Baruscotti, Mirko et al. (2009-03-31). “Molecular Architecture of the Human Sinus Node: Insights Into the Function of the Cardiac Pacemaker” (英語). Circulation 119 (12): 1562–1575. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.108.804369. ISSN 0009-7322.
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- ^ Clark, Robert B.; Mangoni, Matteo E.; Lueger, Andreas; Couette, Brigitte; Nargeot, Joel; Giles, Wayne R. (2004-05). “A rapidly activating delayed rectifier K + current regulates pacemaker activity in adult mouse sinoatrial node cells” (英語). American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology 286 (5): H1757–H1766. doi:10.1152/ajpheart.00753.2003. ISSN 0363-6135.