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橋口公一

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橋口 公一
生誕 1942年1月11日
居住 日本の旗 日本
国籍 日本の旗 日本
プロジェクト:人物伝
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橋口 公一(はしぐち こういち、1942年(昭和17年)1月11日 - )は、日本の応用力学者。

来歴

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[1] 福岡県立修猷館高等学校を経て九州大学農学部で学び、1964年に卒業。1966年、九州大学農学部助手1980年、同助教授1989年、同教授となり、2005年定年退職、九州大学名誉教授2007年第一工業大学教授、2013年大阪大学招へい教授を経て、2016年、MSC Software, Ltd. 技術顧問として現在に至っている。1976年工学博士東京工業大学)、1977年農学博士九州大学)の学位(論博)を取得している。日本学術会議連携会員。

業績

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固体弾塑性変形現象を究明し、次のような成果を上げた。

  • 本モデルによれば、接線剛性係数は常に滑らかに変化し[4][5][6]、任意性を伴うと共に数値計算の煩雑さをもたらす降伏判定は不要である。また、塑性状態においては、応力は降伏面に引付けられ、有限な増分ステップによる数値計算において降伏面から飛び出す応力を降伏面に引き戻す自動制御機能が賦与され、本モデルは際立った長所を有する[7][8][9][10]
  • 本モデルにより、繰返し負荷挙動[11][12][13][14]、非比例負荷挙動[15][16][17]速度依存性変形現象[18]損傷現象、相変態現象等も合理的に表現される。特に、弾塑性変形現象と弾粘塑性変形現象の研究の歴史は一世紀以上に亘るが、これらの現象を統一的に表現し得る「下負荷面超過応力モデル」の創出は、これらに潜む共通の基本現象を解明し定式化した普遍的成果である。
  • 自然界の物体は、真空中に浮遊している場合を除いて摩擦現象を生じている。したがって、中高の理科物理教科書にも、静止摩擦動摩擦等の用語が記されているが、これらが数理論で表現されたのは、2008年に下負荷面の概念に基づく“下負荷摩擦モデル[19]が創出された極く近年のことである。なお、下負荷摩擦モデルは、夥しいすべり系を対象とする結晶塑性解析、大陸プレート摺動型の決定論的地震予測等にも不可欠である。
  • 下負荷面モデルは、固体の非可逆力学現象の支配法則とみなされる[19][20][21]。本モデルは、MSC Softwere Corporationの大型商用・構造解析ソフトウェアMarcに標準搭載されている。

略歴

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学協会役員歴

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賞歴

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著作

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単著

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  • 橋口公一 (1990): 最新・弾塑性力学、1990年、朝倉書店、全207頁
  • Hashiguchi、K.、2009年、Elastoplasticity Theory、Lecture Note in Applied and Computational Mechanics、Springer,全430頁
  • Hashiguchi、K.、2013年、同上 改訂版、全460頁
  • Hashiguchi、K.、2017年、Foundations of Elastoplasticity: Subloading Surface Model、Springer, 全796頁
  • Hashiguchi、K.、2020年、Nonlinear Continuum Mechanics for Finite Elasticity-Plasticity: Multiplicative Decomposition with Subloading Surface Model、Elsevier, 全420頁
  • Hashiguchi、K.、2022年、Foundations of Elastoplasticity: Subloading Surface Model、改訂版、Springer, 全830頁

共著

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  • Hashiguchi、K. and Yamakawa、Y.、2012年、Introduction to Finite Strain Theory for Continuum Elasto-Plasticity、Wiley Series in Computational Mechanics、Wiley、430頁

脚注

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  1. ^ HASHIGICHI, KOICHI, Marquis Who’s Who,
  2. ^ Hashiguchi, K., 1980年, Constitutive equations of elastoplastic materials with elastic-plastic transition, J. Appl. Mech. (ASME), 47, 266-272.
  3. ^ 橋口公一, 2007年, 招待論文:弾塑性論の新体系―下負荷面の概念―, 土木学会論文集, 63巻3号, 691-710.
  4. ^ Hashiguchi, K., 1989年, Subloading surface model in unconventional plasticity, Int. J. Solids Structures, 25, 917-945.
  5. ^ Hashiguchi, K,. 1993年, Fundamental requirements and formulation of elastoplastic constitutive equations with tangential plasticity, Int. J. Plasticity, 9, 525-549.
  6. ^ Hashiguchi, K., 1993年, Mechanical requirements and structures of cyclic plasticity models, Int. J. Plasticity, 9, 721-748.
  7. ^ Hashiguchi, K. and Ozaki, T., 2009年, Formulation of isotropic hardening stagnation in cyclic loading of metals by subloading surface model, Proc. Int. Symp. Plasticity'09, 238-240.
  8. ^ Hashiguchi, K., 1995年, On the linear relations of V-ln p and ln v-ln p for isotropic consolidation of soils, Int. J. Numer. Anal. Meth. Geomech., 19, 367-376.
  9. ^ Hashiguchi, K., 1994年, Loading criterion, Int. J. Plasticity, 8, 871-878.
  10. ^ Hashiguchi, K., 1994年, Fundamentals in constitutive equation: Continuity and smoothness conditions and loading criterion, Soils and Found., 40(3), 155-161.
  11. ^ Hashiguchi, K., Ueno, M. and Ozaki, T., 2012年, Elastoplastic model of metals with smooth elastic-plastic transition, Acta Mech., 223, 985-1013.
  12. ^ Hashiguchi, K. and Chen, Z.-P, 1998年, Elastoplastic constitutive equations of soils with the subloading surface and the rotational hardening, Int. J. Numer. Anal. Meth. Geomech., 22, 197-227.
  13. ^ Hashiguchi, K., Saitoh, K., Okayasu, T. and Tsutsumi, S., 2002年, Evaluation of typical conventional and unconventional plasticity models for prediction of softening behavior of soils, Géotechnique, 52, 561-573.
  14. ^ Hashiguchi, K. and Mase, T., 2011年, Physical interpretation and quantitative prediction of cyclic mobility by the subloading surface model, Japanese Geotech. J., 6, 225-241.
  15. ^ Hashiguchi, K. and Tsutsumi, S., 2001年, Elastoplastic constitutive equation with tangential stress rate effect, Int. J. Plasticity, 17, 117-145.
  16. ^ Hashiguchi, K. and Protasov, A., 2004年, Localized necking analysis by the subloading surface model with tangential-strain rate and anisotropy, Int. J. Plasticity, 20, 1909-1930.
  17. ^ Khojastehpour, M. and Hashiguchi, K., 2004年, Axisymmetric bifurcation analysis in soils by the tangential-subloading surface model, J. Mech. Phys. Solids, 52, 2235-2262.
  18. ^ 橋口公一, 2008年, 詳説・弾塑性力学(19)粘塑性構成式, 機械の研究, 60(12), 養賢堂, 1267-1272.
  19. ^ a b Hashiguchi, K. and Ozaki, S., 2008年, Constitutive equation for friction with transition from static to kinetic friction and recovery of static friction, Int. J. Plasticity, 24, 2102-2124.
  20. ^ Hashiguchi, K., Ozaki, S. and Okayasu, T., 2005年, Unconventional friction theory based on the subloading surface concept, Int. J. Solids Struct., 42, 1705-1727.
  21. ^ Ozaki, S. and Hashiguchi, K., 2010年, Numerical analysis of stick-slip instability by a rate-dependent elastoplastic formulation for friction, Tribology Int., 43, 2120-2133.
  22. ^ 日本農学アカデミー 会員名簿”. 日本農学アカデミー. 2022年9月16日閲覧。
  23. ^ 土木学会 会員構成 フェロー会員一覧”. 土木学会. 2022年9月16日閲覧。
  24. ^ 日本学術会議 連携会員一覧”. 日本学術会議. 2022年9月16日閲覧。
  25. ^ 日本農業工学会 フェロー一覧”. 2022年9月16日閲覧。
  26. ^ 日本生物環境工学会 役員名簿”. 日本生物環境工学会. 2022年9月16日閲覧。
  27. ^ 農業情報学会 歴代役員名簿”. 農業情報学会. 2022年9月16日閲覧。
  28. ^ 日本生物環境工学会 フェロー及び学会賞 日本生物環境工学会顕彰等の一覧表”. 日本生物環境工学会. 2022年9月16日閲覧。
  29. ^ 日本生物環境工学会 役員名簿”. 日本生物環境工学会. 2022年9月16日閲覧。
  30. ^ 日本機械学会 2014年度フェロー”. 日本機械学会. 2022年9月16日閲覧。
  31. ^ 公益社団法人地盤工学会 第57回通常総会 開催報告 (3)第3号議案 名誉会員の推挙”. 地盤工学会. 2022年9月16日閲覧。
  32. ^ 土木学会 技術推進機構 土木学会認定土木技術者資格制度 認定者一覧”. 土木学会. 2022年9月16日閲覧。
  33. ^ 日本工学アカデミー 会員情報 正会員名簿”. 日本工学アカデミー. 2022年9月16日閲覧。
  34. ^ 日本計算力学連合 役員 名誉員”. 日本計算力学連合. 2022年9月16日閲覧。
  35. ^ 日本生物環境工学会 役員名簿”. 日本生物環境工学会. 2022年9月16日閲覧。
  36. ^ 学会概要”. 農業食料工学会. 2015年5月5日閲覧。
  37. ^ 公益社団法人 土木学会賞 論文賞受賞一覧”. 公益社団法人土木学会. 2015年5月5日閲覧。
  38. ^ 地盤工学会賞受賞者リスト”. 公益社団法人地盤工学会. 2015年5月5日閲覧。
  39. ^ 歴代受賞者(1992-2013)”. 農業情報学会. 2015年5月5日閲覧。
  40. ^ a b 日本農学大会・日本農学賞授与式・読売農学賞授与式”. 日本農学会. 2015年5月5日閲覧。
  41. ^ フェロー及び学会賞”. 日本生物環境工学会. 2015年5月5日閲覧。
  42. ^ JACM賞”. 日本計算力学連合. 2015年5月5日閲覧。
  43. ^ 平成25年度土木学会賞受賞一覧”. 公益社団法人土木学会. 2015年5月5日閲覧。
  44. ^ 平成25年度出版文化賞受賞作品”. 土木学会 出版文化賞選考委員会. 2015年5月5日閲覧。
  45. ^ 日本農業工学会賞受者(平成26年度~平成28年度)”. 日本農業工学会. 2016年10月14日閲覧。
  46. ^ 歴代受賞者 - 農業情報学会”. 農業情報学会. 2016年10月14日閲覧。
  47. ^ 平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 受賞者一覧”. 文部科学省. 2016年10月14日閲覧。
  48. ^ 平成27年度土木学会賞受賞一覧”. 公益社団法人土木学会. 2016年10月14日閲覧。
  49. ^ M&M AWARD REPORT”. 一般社団法人日本機械学会 材料力学部門. 2016年10月14日閲覧。
  50. ^ 部門賞受賞者一覧:表彰:計算力学部門”. 一般社団法人日本機械学会 計算力学部門. 2018年11月27日閲覧。
  51. ^ 日本生物環境工学会 日本生物環境工学会顕彰等の一覧表”. 日本生物環境工学会. 2022年9月16日閲覧。
  52. ^ 日本生物環境工学会 日本生物環境工学会顕彰等の一覧表”. 日本生物環境工学会. 2022年9月16日閲覧。

関連事項

[編集]
  • 橋口公一、2013年、我国の大学制度の抜本的改善に向けて、学術の動向、2月号、78-81

外部リンク

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