楠木建

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楠木 建(くすのき けん、1964年9月12日 - )は日本経営学者一橋大学大学院経営管理研究科教授。専攻は競争戦略

経歴・人物[編集]

東京都目黒区生まれ。南アフリカ共和国ヨハネスブルグで子供時代を過ごす。1987年一橋大学商学部卒業。1989年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部専任講師、同助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学ビジネススクール(ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授・准教授を経て、2010年より現職。企業が持続的な競争優位を構築する論理について研究している。

  • 経済産業省産業構造審議会委員、組織学会理事、株式会社ビジネスブレイクスルー コンテンツ会議議長、日本取締役協会エマージングカンパニー委員会副委員長(現任)、全日本空輸株式会社経営諮問委員、ポーター賞運営委員(現任)、旭硝子株式会社経営諮問委員(現任)、みさき投資株式会社経営諮問委員(現任)、りそな銀行資産運用アドバイザリーコミッティ委員(現任)などを歴任。
  • 株式会社ファーストリテイリングの経営人材育成に、同社のFRMIC (Fast Retailing Management and Innovation Center)の設立当初から関わっている。
  • "Dynamic Network and Bureaucracy: A Comparative Analysis of Japanese Basic Research Organizations"でMIT-Japan Science and Technology Conferenceの最優秀論文賞(1993)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』でビジネス書大賞(2011)を受賞。
  • 『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010)は本格的経営書として20万部を超えるベストセラーになり、実務家にも大きな影響を与えた。
  • 一橋大学での指導教官だった榊原清則や「ものづくり経営学」の藤本隆宏の影響で、初期の頃は技術開発や製品開発のマネジメントをテーマに研究していた。その後、テーマを競争戦略に変えた。その理由について「向いていなかった。そもそも技術開発という観察対象が好きではなかった。自分のことなのに気づくのにずいぶん時間がかかった」と言っている[1]
  • ただし、大学の講義では専任講師時代から一貫して戦略論を教えている。一橋大学商学部で最初に受け持った講義は「生産管理」だったが、タイトルを無視して戦略論を教えていた[2]
  • Henry Chesbroughとの共同研究をきっかけに、定量的データ分析から定性的な記述を通じて論理構築へとスタイルを変えた。これを本人は「定性復古の大号令」と言っている[3]。アカデミックなフォーマットに沿った研究ではないので、「僕の仕事は『学問』というよりも『学芸』」「経営の当事者である実務家にとって有用な論理の提供を仕事の目的としている」と述べている[4]
  • 音楽をはじめとする「歌舞音曲」が好きで、自分の仕事についても「本はアルバム、論文はシングル、講義や講演はライブ、経営助言はジャムセッション」と、音楽のメタファーでとらえている。ビジネス書大賞の受賞インタビューで「『ストーリーとしての競争戦略』はイーグルスのコンセプトアルバム『ホテルカリフォルニア』をイメージして構成した。最初の章は全体のトーンを決める1曲目の”ホテル・カリフォルニア”、議論の中核となる部分(5章)はこのアルバムのなかでいちばん好きな”ニュー・キッド・イン・タウン”をイメージして書いた」と述べている[5]
  • Twitterで読書と映画視聴の記録を公開している[6]
  • Bluedogsというバンドで定期的に渋谷のライブハウス「Take Off 7」に出演している。ジャンルはロック。担当楽器はベース。

主張[編集]

  • 選択的夫婦別姓制度に賛成し、「別姓にしたい者はし、したくない者はしない、というこれほど社会的なコンセンサスを取りやすいこともないぐらいなのに、別姓というオプションを認めない人がいるのは理解できない」と述べている[7]
  • ブラック企業・ホワイト企業という区別を批判し、「労働基準法などの法令違反、これは単純に「悪いこと」。議論の余地はない。是正しなければならないのは当たり前だ。ところが巷で「ブラック企業」と言うとき、だいたいは「仕事がきつい」とか「プレッシャーが大きい」という社員の認知を問題にしている。キツい仕事それ自体が「悪い」わけではない。プレッシャーが大きくかかる仕事を好きな人もいれば嫌いな人もいる」「好き嫌いは十人十色。会社にしても十社十色である。そこで「ブラック企業・ホワイト企業」に代えて、「ピンク企業・ブルー企業」という色分けを提唱したい。ピンク企業といってもDMMのことではない。ブルー企業といってもみずほ銀行のことではない。会社によってカラーが違うだけだということを言いたいのだ」と述べている[8]

著書・論文[編集]

著書

  • 『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)
  • 『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)
  • 『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)(翻訳は台湾・香港・澳門版がChina Productivity Centerから2015年に出版)
  • 『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)
  • 『経営センスの論理』(2013、新潮新書)
  • 『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)(翻訳は韓国版が2012にJaeum&Moeum Publishingから、中国版が2012にChina CITIC Pressから、台湾・香港・澳門版が2013にChina Productivity Centerからそれぞれ出版)
  • Dynamics of Knowledge, Corporate Systems and Innovation (co-eds. with H. Itami, T. Numagami, and A. Takeishi) (2010、Springer)


主要論文

  • “Redefining Innovation as System Re-definition.” (with Yaichi Aoshima) in Hiroyuki Itami, Ken Kusunoki, Tsuyoshi Numagami, and Akira Takeishi (eds.) Dynamics of Knowledge, Corporate Systems and Innovation. Springer, 2010.
  • “Category Innovation.” (with Satoshi Akutsu) in Hiroyuki Itami, Ken Kusunoki, Tsuyoshi Numagami, and Akira Takeishi (eds.) Dynamics of Knowledge, Corporate Systems and Innovation. Springer, 2010.
  • “Invisible Dimensions of Differentiation: Japanese Electronics Companies.” in Hirotaka Takeuchi and Tsutomu Shibata (eds.) Japan Moving toward a More Advanced Knowledge Economy(Vol. 2). World Bank Institute, 2006.
  • “Invisible Dimensions of Innovation: Strategy for De-commoditization in the Japanese Electronics Industry.” in Cornelius Herstatt et al (eds.) Management of Technology and Innovation in Japan. Springer, 2006.
  • “Value Differentiation: Organizing Know-What for Product Concept Innovation.” in Hirotaka Takeuchi and Ikujiro Nonaka (eds.) Hitotsubashi on Knowledge Management. Wiley, 2004.
  • “Synthesizing Modular and Integral Knowledge.” in Hirotaka Takeuchi and Ikujiro Nonaka (eds.) Hitotsubashi on Knowledge Management. Wiley, 2004.
  • "The Modularity Trap: Innovation, Technology Phase-Shifts, and Resulting Limits of Virtual Organizations." (with H. Chesbrough) Managing Industrial Knowledge (edited by I. Nonaka and D. Teece) Sage, 2001.
  • “The Phase Variety of Product System and System-Based Differentiation: An Alternative View on Organizational Capabilities of the Japanese Firm for Product Innovation” in Daniel Dirks at al (eds.) Japanese management in the Low Growth Era: Between External Shocks and Internal Evolution. Spinger International, 1998.
  • “Organizational Innovation in the Japanese Basic Research.” In Martin Hemmert and Christian Oberlander (eds.) Technology and Innovation in Japan: Policy and management for the Twenty-first Century. Routledge, 1998.
  • "Intra-firm Transfers of Engineers in Japan." (with T. Numagami) in A. Goto (ed.) Innovation in Japan: Empirical Studies on the National and Corporate Activities. Oxford University Press, 1997.
  • 「イノベーションとマーケティング:価値次元の可視性と価値創造の論理」『マーケティングジャーナル』30(3)、2011。
  • 「イノベーションの「見え過ぎ化」:可視性の罠とその克服」『一橋ビジネスレビュー』57 (4)、2010。
  • 「短い話を長くする:ストーリーの戦略論」『組織科学』42 (3)、2009。
  • 「システム再定義としてのイノベーション」(青島矢一との共著)『一橋ビジネスレビュー』55 (4)、2008。
  • 「カテゴリー・イノベーション:脱コモディティ化の論理」(阿久津聡との共著)『組織科学』39 (3)、2006。
  • 「次元の見えない差別化:脱コモディティ化の戦略を考える」『一橋ビジネスレビュー』53 (4)、2006。
  • 「価値分化:製品コンセプトのイノベーションを組織化する」『組織科学』35 (2)、2001。
  • "Organizational Capabilities in Product Development of Japanese Firms: A Conceptual Framework and Empirical Analyses." (with I. Nonaka and A. Nagata) Organization Science. Vol. 9 (6), pp. 699-718, 1998.
  • "Interfunctional Transfers of Engineers in Japan: Empirical Findings and Implications on Cross-Functional Integration." (with T. Numagami) IEEE Transactions on Engineering Management. Vol. 45 (3), pp. 250-262, 1998.
  • 「イノベーションを支える人々:日本企業における技術開発リーダーのキャリアと組織的相互作用の分析」『日本労働研究雑誌』Vol. 458, pp.12-24、1998。
  • 「システム分化の組織論:イノベーションの組織論のイノベーションに向かって」『ビジネス・レビュー』Vol. 45, No. 1, 1997。
  • "Incapability of Technological Capability: A Case Study on Product Innovation in the Japanese Facsimile Machine Industry." Journal of Product Innovation Management. Vol. 14, No. 5, 1997.
  • 「日本企業の組織能力と製品開発パフォーマンス:産業タイプによる比較分析」『ビジネス・レビュー』Vol. 43, No. 4, pp. 23-46, 1996。
  • 「日本企業の製品開発における組織能力」(野中郁次郎・永田晃也との共著)『組織科学』Vol. 29, No. 1, pp. 92-108, 1995。
  • "Effects of Diversification of Career Orientations on Management Systems in Japan." (with K.Sakakibara, et al.) Human Resource Management. Vol. 32, No. 4, pp. 525-544, 1993.
  • 「製品トラジェクトリーの連続性:製品イノベーション戦略の新しい分析枠組み」『ビジネス・レビュー』Vol. 39, No. 2, pp. 63-81, 1992。


書籍翻訳

  • アダム・グラント『ORIGINALS:誰もが「人と違うこと」ができる時代』(監訳)三笠書房、2016。
  • マイケル・マッツェオ、ポール・オイヤー、スコット・シェーファー『道端の経営学』(監訳)ヴィレッジブックス、2015。
  • アダム・グラント『GIVE&TAKE:「与える人」こそ成功する時代』(監訳)三笠書房、2014。
  • カーティス・R・カールソン&ウィリアム・W・ウィルモット『イノベーション 5つの原則』(監訳)ダイヤモンド社、2012。

脚注[編集]

  1. ^ 楠木建 (2013). 戦略読書日記. プレジデント社. 
  2. ^ 楠木建 (2016). 「好き嫌い」と才能. 東洋経済新報社. 
  3. ^ “【楠木建】「好き嫌い」へのこだわりが人生戦略の肝” (日本語). NewsPicks. (2018年7月6日). https://newspicks.com/news/3145266 2018年7月7日閲覧。 
  4. ^ 楠木建 (2016). 「好き嫌い」と才能. 東洋経済新報社. 
  5. ^ ビジネス書大賞実行委員会 (2011). このビジネス書を読め! ビジネス書大賞2011. ディスカヴァー・トゥエンティワン. 
  6. ^ 本人のTwitter”. 2017年1月31日閲覧。
  7. ^ 「組織で椅子取りゲームをする男性、それを見ている女性」、『週刊ダイアモンド』、2016年5月24日。
  8. ^ 建, 楠木. “「ブラック企業」批判は、ズレていないか? | 文春オンライン” (日本語). 文春オンライン. http://bunshun.jp/articles/-/1558 2018年7月7日閲覧。 

外部リンク[編集]