村中璃子

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村中 璃子(むらなか りこ)は、日本の医師[1]ジャーナリストである。WHO(世界保健機関)の医療社会学者、外資系製薬会社疫学調査担当ディレクターを経て、臨床医並びにペンネーム「村中璃子」でのフリージャーナリスト活動を行う。京都大学大学院医学研究科ゲノム医学センター非常勤講師[2]。2017年ジョン・マドックス賞受賞[3][4][5][6][7][8]

人物・経歴[編集]

東京都生まれ。父は政治記者。母の家系には祖父母の代から医者が多い[9]。都立高校中退[10]一橋大学出身の探検家外科医関野吉晴の本を読んだのをきっかけに、一橋大学社会学部に進学。在学中は中東などに一人で訪れ、国際社会学梶田孝道教授のゼミに1期生として参加[11]。1995年同学部卒業[12]後、一橋大学大学院社会学研究科国際社会学専攻修士課程修了、社会学修士。同博士課程1年で中退[13]後、北海道大学医学部[10]医学科卒業[14]

WHOでの活動[編集]

医師免許取得後、世界保健機関西太平洋地域事務局(WPRO)新興・再興感染症チームでアウトブレイクサーベイランスパンデミック対策に従事。感染症に関するインターネット報道をモニタリングする「噂の監視」業務や、「医療社会学者」の肩書で鳥インフルエンザのアウトブレイク後のカンボジア農村調査などを行った[15]

肺炎球菌の疫学調査[編集]

日本に帰国後、小児用肺炎球菌ワクチンを取り扱う外資系製薬会社のディレクターとして2年間勤務、肺炎球菌の疫学調査に従事する。発症率を見る疫学調査を沖縄と北海道で実施し、調査結果を学術論文にまとめ、同社退職後に学会や専門誌で発表。この調査研究は厚生労働省の班研究に引き継がれ、ワクチンは日本に導入され、定期接種にも定められている[16]

医療ジャーナリストとして[編集]

2009年新型インフルエンザの世界的流行を機に世界保健機関の仕事を挟んでから、大学時代の友人である新聞記者にメディア関係者の懇親会に招かれたのを機に、ペンネームのフリージャーナリストとなる[17]2014年の西アフリカエボラ出血熱流行の際には、バイオセキュリティーの観点から論考を発表し[18]読売新聞の「回顧論壇2014」で、国際政治学者の遠藤乾北海道大学教授による論考三選の一本に選ばれた[19]。2016年京都大学大学院医学研究科非常勤講師[20][2]

HPVワクチン副反応関連報道[編集]

HPVワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン、子宮頸がんワクチン)が引き起こしたとされている「激しい副反応」について2014年から取材を開始し[21]、2015年から月刊WEDGEの誌面やウェブサイトで主張を展開した[22]。村中は、「多くの小児科医や精神科医によれば、子宮頸がんワクチンが導入される前からこの年齢のこういう症状の子供たちはいくらでも診ていた」として「『ワクチンによって患者が生まれた』のではなく『ワクチンによって、思春期の少女にもともと多い病気の存在が顕在化した』」と主張した[23]。また、村中は、HPVワクチン薬害説がエビデンスを無視していると西岡久寿樹日本線維筋痛症学会理事長、横田俊平元日本小児科学会長、黒岩義之日本自律神経学会理事長を批判し[24][25][26]、薬害騒動が日本から世界に波及することを懸念し[27]、メディアや厚生労働省に対する批判[28][29]を積極的に行った。

とりわけ、池田修一信州大学第三内科(脳神経内科)教授[30]兼医学部長兼副学長(特命戦略(地域医療・地域貢献担当))[31]らが厚生労働省の依頼を受けて、2016年3月16日に発表した研究成果[32]に不正があったとして、雑誌記事上で批判した[33]

これを受け、厚生労働省はサイトに見解を掲載した[34][35]。同年9月1日、信州大学は調査委員会を設置し、同年11月15日、調査委員会は調査結果を公表した[36][37][38]。調査委員会は、研究には捏造や改竄などの不正行為は認められなかったとする一方、マウス実験が各ワクチン一匹のマウスを用いるなど初期段階のものであったにもかかわらず、実験結果を断定的に表現した記述や不適切な表現が含まれていたことで、科学的に証明されたかのような情報として社会に広まり混乱を招いたことについて、研究者3名に猛省を求め、研究成果の発表の修正と検証実験の実施とその結果の公表を求めた[36]。濱田州博信州大学長は「不正行為は認められなかったとの報告を受けました。しかしながら、調査対象となった研究者3名は、実施した実験内容が初期段階のものであったにもかかわらず、確定的な結論を得たかのような印象を与える発表を研究成果報告会やマスメディアに対して行っていました」とコメントを出し[39]、厚生労働省は「池田班へ研究費を補助しましたが、池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾に思っております」という見解をサイト上に掲載した[40][41][42]。同年9月末、池田は多忙を理由に信州大学医学部長を辞任した[43][44]。また第三内科教授を退官して[45]信州大学医学部附属病院難病診療センター特任教授に就任し[46]、「子宮頸がんワクチン接種後副反応が疑われる女児の予後調査」研究責任者を務める[47]

名誉毀損訴訟とバッシング[編集]

2016年8月17日、池田側は、雑誌記事が研究成果を捏造だと断定したのは名誉毀損であるとして、東京地裁に村中および月刊WEDGEを発行するウェッジ、元編集長の大江紀洋に対して訴訟を起こした[48][49][50]

村中は、後述のジョン・マドックス賞の受賞スピーチのなかで、被害者団体の抗議がメディアの編集部や出版社の株主の社長室や株主の会社に影響力のある政治家のところにも及び、元東京都知事の娘で被害者団体と親しいNHKプロデューサーが村中の住所や職場や家族構成といった個人情報を得ようとし、自身と家族には山のような脅迫メッセージが届いたと述べている[51][52]。また、連載中だった村中の記事は全て打ち切られ、刊行予定の書籍の出版も中止され、その後日本を代表する8つの出版社に断られたが、9番目の出版社から刊行予定であると述べている[51]

ジョン・マドックス賞[編集]

ジョン・マドックス賞授賞式に出席した村中(2017年11月)

2017年11月、日本のHPVワクチン接種率が70%から1%に激減する中、ワクチンについての誤情報を指摘し、安全性を説いたとして、ジョン・マドックス賞日本人として初めて受賞した[3][6]。ロンドンの授賞式で村中は受賞スピーチを行った[51]。日本の報道メディアで、この受賞を伝えたのは当初、BuzzFeed Japan[5]東洋経済オンライン[6]、新聞では北海道新聞[7]産経新聞[8]にとどまった[52]。その後、12月18日に厚生労働省で記者会見が行われると、東京新聞[53]朝日新聞[54]でも受賞が伝えられた。

村中の言論活動に対する評価[編集]

週刊金曜日の野中大樹編集長は、HPVワクチン被害を訴える少女に対する村中の取材方法を批判的に報じた[55]

ジョン・マドックス賞受賞に関連して、コンピュータ科学者の坂村健東洋大学情報連携学部長は、「批判した相手から訴訟を起こされながらも、このワクチンは危険だという『常識』に疑問を呈する発信を続けた村中氏の受賞は大きい」と評価した[56]。国際政治学者の三浦瑠麗は、メディアの副反応関連報道を批判しつつ「科学者として名誉ある賞の一つを受賞した村中氏の活動とそこに与えられた国際的評価を、新聞やテレビはきちんと取り上げてしかるべきだろう」と論評した[57]

著作[編集]

記事[編集]

  • 「子宮頸がんワクチン副反応問題を検証する」日本産婦人科医会報(68巻6号)2016年
  • 「【私の一冊】琉球列島における死霊祭祀の構造――琉球列島の死霊祭祀, 昔と今」日本医事新報 (4863号) 2017年

スピーチ[編集]

出演番組[編集]

  • サードプレイス「文系女医のニュースラボ」(JFN

その他の出演[編集]

参考資料[編集]

出典[編集]

  1. ^ 「People」(pdf)一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p43
  2. ^ a b 京都大学2017年度シラバス ゲノム科学と医療
  3. ^ a b Women’s health champion, Dr Riko Muranaka, awarded the 2017 John Maddox Prize for Standing up for Science Sense about Science
  4. ^ Doctor wins 2017 John Maddox prize for countering HPV vaccine misinformation The Guardian.Thursday 30 November 2017 19.00 GMT 2017年12月1日閲覧
  5. ^ a b 海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰 BuzzFeedJapan 2017/12/1 10:30JST
  6. ^ a b c 「「医師とメディア人」二足のわらじを履く理由あの英誌「ネイチャー」が選んだ日本人女医」東洋経済ONLINE 2017年12月01日
  7. ^ a b 英科学誌の賞に北大卒・村中さん ワクチンの記事評価 北海道新聞 12/02 05:00JST
  8. ^ a b ジョン・マドックス賞に日本人医師 村中璃子氏、子宮頸がんワクチン問題について発信 産経ニュース 2017年12月2日16:33JST
  9. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p43
  10. ^ a b Dr.村中璃子の世界は病気で満たされている:日経ビジネスオンライン 2017年12月18日閲覧
  11. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p44
  12. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)P47
  13. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p45
  14. ^ 「「10万個の子宮」が失われる前に - 村中璃子氏に聞く◆Vol.1」|医療維新 - エムスリーm3.comの医療コラム 2017年12月13日
  15. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p45-46
  16. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p46-47
  17. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p47
  18. ^ エボラ上陸『予行演習』で見えた日本の無防備なバイオテロ対策」WEDGE Infinity2014年11月5日
  19. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p45
  20. ^ 「People」一橋大学広報紙「HQ」vol.50 春号 (April 2016)p47
  21. ^ 村中は「HPVワクチンの取材を開始してから最初の記事を2015年10月20日に出すまでに1年かかりました」と述べている(WHOから名指しで批判された日本 - 村中璃子氏に聞く◆Vol.2|医療維新 - m3.comの医療コラム 2017年12月17日 2017年12月20日閲覧)
  22. ^ 記事」の節を参照のこと。
  23. ^ 村中璃子「WEDGE REPORT あの激しいけいれんは本当に子宮頸がんワクチンの副反応なのか 日本発「薬害騒動」の真相(前篇)」WEDGE Infinity 2015年10月20日
  24. ^ 村中璃子「WEDGE REPORT 子宮頸がんワクチン薬害説にサイエンスはあるか 日本発「薬害騒動」の真相(中篇)」WEDGE Infinity 2015年10月21日
  25. ^ 村中璃子「WEDGE REPORT 子宮頸がんワクチンのせいだと苦しむ少女たちをどう救うのか 日本発「薬害騒動」の真相(後篇)」WEDGE Infinity 2015年10月23日
  26. ^ 村中璃子「WEDGE REPORT 子宮頸がんワクチン論争 はっきり示された専門家の総意 小児科学会が投じた決着への一石」WEDGE Infinity 2016年5月17日 2018年1月14日閲覧
  27. ^ 村中璃子「WEDGE REPORT エビデンス無視で作り出される"薬害" 子宮頸がんワクチン再開できず 日本が世界に広げる薬害騒動」月刊WEDGE27(11)2015年
  28. ^ 村中璃子「WEDGE REPORT 「因果関係確認できず」名古屋市の子宮頸がんワクチン調査とメディアの曲解」 WEDGE Infinity 2015年12月17日
  29. ^ 村中璃子「WEDGE REPORT 「エビデンス弱い」と厚労省を一蹴した WHOの子宮頸がんワクチン安全声明」WEDGE Infinity 2015年12月21日
  30. ^ 「信州大学第三内科」信州大学
  31. ^ 「役員・教職員」大学概要2016/信州大学
  32. ^ 厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状に関する厚生労働科学研究事業成果発表会
  33. ^ 村中執筆記事として、「子宮頸がんワクチンと遺伝子 池田班のミスリード 利用される日本の科学報道(前篇)」WEDGE Infinity 2016年3月24日、「子宮頸がんワクチン「脳障害」に根拠なし 誤報の震源は医学部長 利用される日本の科学報道(中篇)」WEDGE Infinity 2016年3月29日、「子宮頸がんワクチン薬害研究班 崩れる根拠、暴かれた捏造」月刊Wedge2016年7月号、「子宮頸がんワクチン薬害研究班に捏造行為が発覚 利用される日本の科学報道(後篇)」 WEDGE Infinity 2016年6月17日、「子宮頸がんワクチン研究班が捏造 厚労省、信州大は調査委設置を」WEDGE Infinity 2016年6月23日、がある。他に、川口恭「日本の医療界は腐っているのか?~オプジーボの光と影 番外編」ハフィントンポスト 2016年07月25日
  34. ^ 厚生労働省 平成28年3月16日の成果発表会における発表内容について
  35. ^ 厚労省、異例の見解 研究班の発表に 毎日新聞2016年4月20日
  36. ^ a b 厚生労働省のサイトに信州大学調査委員会調査報告書の概要がある。調査委員会報告書 概要 (pdf)、信州大学学長コメント(pdf) 2017年12月18日閲覧
  37. ^ 研究不正認められず 信州大調査委 毎日新聞2016年11月15日
  38. ^ 信州大「不正認められず」 子宮頸がんワクチン研究  日本経済新聞 2016年11月16日
  39. ^ 信州大学長 濱田州博 (2016年11月15日). “本調査結果を受けて(学長コメント)”. 厚生労働省. 2018年1月13日閲覧。
  40. ^ 厚生労働省 平成28年3月16日の成果発表会における池田修一氏の発表内容に関する厚生労働省の見解について
  41. ^ HPVワクチン、不適切発表問題に厚労省「池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾」 QLifePro 医療ニュース 2016年11月24日 PM04:45配信 2017年12月18日閲覧
  42. ^ 村中は、池田班の子宮頸がんワクチン関連の研究費が「1140万円を超えることは確実」と推計する。子宮頸がんワクチン研究班が捏造 厚労省、信州大は調査委設置を 利用される日本の科学報道(続篇) WEDGE Infinity 2016年6月23日 2017年12月18日閲覧
  43. ^ 信州大:医学部長に田中氏が内定 毎日新聞2016年8月26日 長野地方版 2017年12月18日閲覧
  44. ^ 松医会の沿革|松医会について|信州大学 医学部・松医会 2017年12月18日閲覧
  45. ^ 「教授挨拶」信州大学第三内科
  46. ^ 研究者総覧 池田修一|信州大学学術情報オンラインシステムSOAR 2017年8月28日更新 2017年12月20日閲覧
  47. ^ 研究へのご協力をお願いいたします。 : 信州大学第三内科 ニュース・更新情報 2017年2月21日 2017年12月20日閲覧
  48. ^ 子宮頸がんワクチン記事で月刊誌提訴 信州大教授「名誉毀損」 日本経済新聞 2016年8月17日
  49. ^ 子宮頸がんワクチン研究者「実験捏造」と書かれ、ウェッジを提訴 弁護士ドットコム 2016年08月17日
  50. ^ 訴訟ではなく学会で議論を 頸がんワクチン記事 月刊誌提訴問題 上昌広 Japan In-depth 2016年9月6日投稿 2017年12月18日閲覧
  51. ^ a b c ジョン・マドックス賞受賞スピーチ全文「10万個の子宮」村中璃子 note 2017/12/09 09:27 2017年12月20日閲覧
  52. ^ a b 「産経と道新のみ」とツイートした医師・村中璃子氏 子宮頸がんワクチンの安全性を積極発信のワケ 産経ニュース 2017年12月19日閲覧
  53. ^ 「子宮頸がんワクチン推奨議論「再開の機運に」 安全性検証記事で英科学誌が賞」東京新聞2017年12月19日 朝刊
  54. ^ 「子宮頸がんワクチンの安全性発信、村中医師が受賞」朝日新聞デジタル2017年12月18日19時58分
  55. ^ 「子宮頸がんワクチン被害者に矛先を向ける雑誌「Wedge」 ウソを重ねて被害者接触をはかった元WHO職員」『週刊金曜日』2016年4月22日(1085)号 30-31頁
  56. ^ 坂村健の目:「常識」を問い直す受賞 - 毎日新聞 2017年12月21日東京朝刊 2018年1月10日閲覧
  57. ^ メディア時評:村中璃子氏受賞、なぜ報じない?=三浦瑠麗・国際政治学者 - 毎日新聞 2017年12月28日東京朝刊 2018年1月10日閲覧

外部リンク[編集]