電子監視

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
性犯罪者GPS監視から転送)
ナビゲーションに移動 検索に移動
足首に装着するGPSアンクレット (Bracelet électronique)

電子監視(でんしかんし)とは、犯罪者などを在宅拘禁する際に自宅にいるかどうかを電子的に監視すること、また性犯罪を犯した前歴者が社会に出た場合にGPSを利用して監視することをいう[1]

現在特定の前歴者にGPSの取り付けを義務付ける制度がある国はアメリカ合衆国(半分以上の州)、大韓民国イギリスフランスドイツカナダスウェーデンなどで実施されており[2]、日本、台湾オーストラリアブラジルでも導入が検討されている。

韓国[編集]

韓国では2007年に、位置追跡電子装置装着法が成立し、2008年9月に性的暴行犯を対象にGPSアンクレット付着制度が本格的に施行した。法案はハンナラ党議員による議員立法であり、当初は人権侵害だとの反対があったが、2006年に発生した執行猶予中の性犯罪者によって小学生が性的暴行後に殺された事件が法案成立を後押しした。

監視は24時間体制で、禁止地域や禁止地域近くの緩衝地域に対象者が入ると、警察が対象者に電話する。緊急事態と判断される場合には警察が急行する。

制度導入前と比較して、2014年の性暴行などの再犯率は8分の1の水準になった。制度施行前の2004年から2008年間の性暴行犯罪者の再犯率は14.1%だったのが、制度施行後の2009年から2014年までは1.7%となり、再犯率が88%減少した[3]

2021年7月時点で、電子足輪の装着義務がある人は8000人以上、韓国法務省によれば制度の施行前と比べると性犯罪の再犯率は7分の1に減少したという[4]

ただ、マニュアルが無いことや軽視、性犯罪への軽い刑罰と批判される韓国では、強姦の前科持ちで出所後に複数回にわたってGPSアンクレットを切断して逃走した前歴もある男が、国外逃亡する事態が何度も起きている。原因として韓国検察が男の逮捕状を請求したが、韓国裁判所は「逃走の恐れがない」と却下し、その理由として逮捕した韓国警察も男の出国禁止申請をしなかったこと、出国禁止措置が出ていないとGPSアンクレットをしていた場合も韓国の空港が男の嘘を確認せずに乗せることにある……と指摘した[5]

2021年9月には電子足輪を切断し逃走して逮捕された男が女性2人を殺害していた事件が起こり、制度への有効性が議論となっている[4]

対象者[編集]

当初は、「13才未満の児童に対する性暴力犯罪者」のみが対象とされていたが、再犯率の予防効果が注目され、その後の法改正によりその他の凶悪犯へも適用されている。

  • 2008年 … 13才未満の児童に対する性暴力犯罪者
  • 2009年 … 未成年者誘拐犯
  • 2010年 … 殺人犯・性暴行犯への遡及適用
  • 2014年6月 … 強盗犯

GPSアンクレットの機能[編集]

  • 足首のブレスレットが外れたり、切断されたりすると当局に通報される。
  • プールのロッカーの鍵付きリストバンドに似ていて、重さは80グラム。
  • 端末と充電器がセットになっている。
  • 完全防水機能付きのため、入浴も問題ない。
  • 短いズボンを履くと一目でわかるため、夏の暑い日でも靴下の下に付けたり、長ズボンを履いたりする[6]

アメリカ[編集]

全州で性犯罪者はミーガン法に基づき顔写真と個人情報をネットで公開される。特に常習性が見られる犯罪者はジェシカ法によりGPSの装着が義務付けられる。80年代アメリカの刑務所が過剰収用になった際に施行されたジェシカ法は、90年代以降GPSを利用した追跡が採用され、以後欧米を中心に子供を狙う性犯罪者を監視する目的で導入された。

なお、現在では性犯罪者だけでなく在宅の被疑者や仮釈放中の者にも装着されている。逃亡及び改ざん防止措置が施されており、装着者が移動を許可された地域から抜け出したり装置を破壊しようとすると当局に通知が行く仕組みになっている。

日本[編集]

2020年6月、政府は性犯罪・性暴力対策の強化方針を取りまとめ、仮釈放中の性犯罪者に対し再犯防止のためのGPSの装着義務化について検討することを表明した[7]。2021年10月、保釈された被告にGPS端末を装着して監視する制度が導入される見通しであるとの報道がされた[8]

電子監視を扱った作品[編集]

Scope
2010年の日本映画。性犯罪の出所者にGPSのチップが体に埋め込まれ、位置情報がネット上で公開される近未来を描いた作品。
悪魔を見た
2011年の韓国映画。婚約者の男性を殺された敏腕捜査官スヒョンは、殺人鬼ギョンチョルを見つけ出し半殺しに。しかし殺害はせず、小型マイク付きのGPSを知られないように取り付ける。ギョンチョルが性犯罪を起こそうとする度に寸止めで嬲りものにする…という作品。
ホワイトカラー
2009年から2014年にかけて放送されたアメリカUSAネットワーク)のテレビドラマ。収監中の天才詐欺師ニール・キャフリーは恋人のため脱獄を果たすが、間もなく知能犯専門チームのFBI捜査官ピーター・バークに捕まる。
4年の刑期延長に対し、ニールはピーターに捜査に協力する代わりに自由にして欲しいと取引を持ちかける。ピーターは取引を承諾し、ニールは知的犯罪捜査のコンサルタントになる代わり制限付きの自由を与えられる。ニールはピーターと協力し、自身の経歴を生かした助言や、時に培ったテクニックを駆使してニューヨークに蔓延する知的犯罪を解決していく一方で、彼自身の問題を解決していく。
装甲騎兵ボトムズ
1983年から1984年にかけて放送された日本のアニメ。主人公のキリコがメルキア軍に捕まった時に体にビーコンを埋め込まれて人工衛星による追跡監視が行われた。キリコはビーコンの存在を知らずにメルキア軍基地から逃亡してウドの街に潜んでいたが、ウドの警察署長との因縁からメルキア軍の介入を含んだ大規模な戦闘へ発展し、ウドは崩壊してしまう。
監視システムのトラブルにより一ヶ月ほど追跡出来なかったが、システム復帰時にはメルキアと対立する内戦の激しいクメン王国にキリコが逃げ込んでいることが判明した。戦場で生きることしか知らないキリコはクメンの傭兵部隊に志願したが、入隊時の身体検査でビーコンの存在が発覚したためメルキア軍のスパイ疑惑を懸けられて拷問を受けることになった。ビーコンはこの時に除去されている。

GNSS腕時計[編集]

アメリカのGPSだけでなく、他の衛星測位システムGLONASSGalileoBDSなど)を利用して性犯罪者を監視する場合もある。ただし、そのような場合でも代名詞的に”GPS"と総称される場合もある。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 甘利航司「犯罪研究動向 電子監視:―「今まで」と「これから」―」『犯罪社会学研究』第42巻、日本犯罪社会学会、2017年、 171頁、 doi:10.20621/jjscrim.42.0_171ISSN 0386-460XNAID 130007502671
  2. ^ “性犯罪仮釈放者にGPS 法務省検討 被害者期待 保護観察官「信頼に影響」”. 読売新聞夕刊: p. 15. (2009年6月1日) 
  3. ^ [FOCUS] 電子足輪の威力…韓国で性犯罪の再犯率88%減少 - もっと! コリア (Motto! KOREA)
  4. ^ a b 韓国・行動監視の電子足輪切断した「前科14犯」の男“逃走前後に女性2人殺害”自供(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース(2021年9月1日). 2021年10月12日閲覧
  5. ^ [1][リンク切れ](朝鮮日報日本語版) 性犯罪:電子足輪38歳男が仁川空港から出国、韓国に送還
  6. ^ “[性暴力を問う]海外からの報告(4)前歴者にGPS付き足輪(連載)”. 読売新聞大阪: p. 38. (2010年10月18日) 
  7. ^ 性犯罪者GPS装着検討 政府強化方針を決定 : 日本経済新聞(2020年6月11日). 2021年10月12日閲覧
  8. ^ 「監視強化」「対象拡大を」保釈の被告にGPS、初導入へ割れた意見(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース(2021年10月9日). 2021年10月12日閲覧

参考文献[編集]

関連項目[編集]