レスター・ボウイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
レスター・ボウイ
レスター・ボウイ(1978年)
基本情報
生誕 (1941-10-11) 1941年10月11日
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 メリーランド州フレデリック
死没 1999年11月8日(1999-11-08)(58歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヨーク州ブルックリン
職業
担当楽器
  • トランペット
  • フリューゲルホルン
  • パーカッション
活動期間 1965年 - 1999年
レーベル
共同作業者

レスター・ボウイ: Lester Bowie1941年10月11日 - 1999年11月8日)は、アメリカジャズトランペッター作曲家

Association for the Advancement of Creative Musicians(以下、AACM)のメンバーで、アート・アンサンブル・オブ・シカゴを結成した。

生い立ち[編集]

メリーランド州フレデリックのバートンビルに生まれ、ミズーリ州セントルイスで育つ。バートンビルは歴史ある黒人集落で、ボウイ家はフレデリック郡のリンガノア・バートンズビル地区に長いルーツがある。

5歳の時にプロ・ミュージシャンである父からトランペットを学び始めた。

影響を受けたミュージシャンにルイ・アームストロングを挙げている。ドキュメンタリー『ケン・バーンズ・ジャズ』第二章にて「最初のアイドルの1人はルイ・アームストロングだった。ほんとうにルイを偶像視していた。ルイのようになりたかったんだ。キング・オリヴァーシカゴにルイを呼んだ話は全部読んだよ」と語っている。

ブルースのリトル・ミルトンとアルバート・キング、そしてリズム&ブルースソロモン・バークジョー・テックスルーファス・トーマスと演奏した。

1965年、歌手フォンテラ・バスの音楽監督を務め、また夫となった。

セントルイスでブラック・アーティスト・グループ(BAG)を結成。

1966年シカゴに移住し、スタジオ・ミュージシャンとして活躍。ムハル・リチャード・エイブラムスとロスコー・ミッチェルと出会い、AACMに参加。

アート・アンサンブル[編集]

1984年 ハンブルグにて

1968年に、アート・アンサンブル・オブ・シカゴをロスコー・ミッチェル、ジョセフ・ジャーマン、マラカイ・フェイヴァーズと結成。

レスターは生涯、グループのメンバーであり続け、ジャック・ディジョネットのカルテット、ニュー・ディレクションズのメンバーも務めた。

ジャマイカアフリカに住み、フェラ・クティと演奏し、レコーディングした。

レスターの二つ分けのあごひげと白衣はアート・アンサンブルのステージショーにおけるトレードマークでもあった。

1984年、「レスター・ボウイ・ブラス・ファンタジー」(ノネット)を結成。アート・アンサンブルよりもポピュリスト的なアプローチをとり、ホイットニー・ヒューストンマイケル・ジャクソンマリリン・マンソン、そしてスパイス・ガールズの曲を演奏し、時おり真面目な楽曲を演奏した。

彼の「ニューヨーク・オルガン・アンサンブル」にはジェームズ・カーターとアミナ・クロディーヌ・マイヤーズが在籍した。

1980年代半ばには、テナー・サクソフォーン奏者のチコ・フリーマンアルト・サクソフォーン奏者のアーサー・ブライス、ドラマーのファマドゥ・ドン・モイエ、ピアニストのカーク・ライトシー、そしてベーシストのセシル・マクビーと共に、ジャズのスーパーグループ「ザ・リーダーズ」の一員を務めた。

音楽性ほか[編集]

アヴァンギャルドと見られるが、ボウイはジャズ・トランペットの全体の歴史から技術を採用し、汚い音・破裂音・うなり音・ハーフバルブ効果などを使い、ユーモアを混ぜている。

レゲエスカへの愛は「Ska Reggae Hi-Bop」などの曲に見られ、Skatalitesと1994年のアルバム『Hi-Bop Ska』にて同曲を演奏、James Carterとは「Conversin' With The Elders」という楽曲にて演奏した。

1994年、Red Hot Organizationのコンピレーション・アルバム『Stolen Moments: Red Hot + Cool』に参加。同作はAIDSのチャリティー・アルバムで『タイム』誌のアルバム・オブ・ザ・イヤーとなった。

ボウイは多種多様な音楽アプローチを志していたため、ウィントン・マルサリスの保守的アプローチを批判していた。マイルス・デイヴィスはアート・アンサンブルの作品を褒め、「レスター・ボウイはいつだってヒップな演奏をするよな」とインタビュー集『マイルス・オン・マイルス』で発言している。

死と死後[編集]

1999年、2番目の妻であるデボラと20年間暮らしていたブルックリンの家で肝臓がんにより他界。生まれ故郷のバートンズビルに埋葬された。

翌年、『ダウン・ビート』誌の「ジャズの殿堂」入り。

2001年、アート・アンサンブル・オブ・シカゴは、レスターへの追悼アルバム『レスター・ボウイに捧ぐ』をリリースしている。

ディスコグラフィ[編集]

リーダー・アルバム[編集]

  • 『ナンバーズ、1&2』 - Numbers 1 & 2 (1967年、Nessa)
  • 『ギッティン・トゥ・ノウ・ヨール』 - Gittin' to Know Y'All (1970年、MPS) ※バーデン=バーデン・フリー・ジャズ・オーケストラ名義
  • 『ファースト・ラスト』 - Fast Last! (1974年、Muse)
  • 『ロープ・ア・ドープ』 - Rope-A-Dope (1976年、Muse)
  • African Children (1978年、Horo)
  • 『デュエット』 - Duet (1978年、Improvising Artists) ※with フィリップ・ウィルソン
  • 『ザ・フィフス・パワー』 - The 5th Power (1978年、Black Saint)
  • 『ザ・グレイト・プリテンダー』 - The Great Pretender (1981年、ECM)
  • 『オール・ザ・マジック!』 - All the Magic! (1983年、ECM)
  • Bugle Boy Bop (1983年、Muse) ※with チャールズ・ボボ・ショウ
  • 『デュエット』 - Duet (1985年、Paddle Wheel) ※with 井野信義
  • 『マザーズ・モード』 - Jazzbühne Berlin '82 (1990年、Repertoire) ※1982年録音。レスター・ボウイ・アンサンブル名義

レスター・ボウイ・ブラス・ファンタジー[編集]

  • 『瞳は君故に』 - I Only Have Eyes for You (1985年、ECM)
  • 『アヴァン・ポップ』 - Avant Pop (1986年、ECM)
  • 『トワイライト・ドリームズ』 - Twilight Dreams (1987年、Venture)
  • 『シリアス・ファン』 - Serious Fun (1989年、DIW)
  • 『マイ・ウェイ』 - My Way (1990年、DIW)
  • 『ライヴ・アット・トーキョー・ミュージック・ジョイ'90』 - Live at the 6th Tokyo Music Joy (1990年、DIW) ※with アート・アンサンブル・オブ・シカゴ
  • The Fire This Time (1992年、In & Out)
  • The Odyssey Of Funk & Popular Music (1999年、Atlantic)
  • When the Spirit Returns (2003年、Dreyfus Jazz) ※1997年10月録音

レスター・ボウイ・ニューヨーク・オルガン・アンサンブル[編集]

  • 『ジ・オルガナイザー』 - The Organizer (1991年、DIW)
  • 『ファンキーT、クールT』 - Funky T. Cool T. (1992年、DIW)

アート・アンサンブル・オブ・シカゴ[編集]

ザ・リーダーズ[編集]

  • 『マッドフット』 - Mudfoot (1986年、Black-Hawk)
  • Out Here Like This (1987年、Black-Hawk)
  • Unforeseen Blessings (1988年、Black Saint)
  • 『スリッピング・アンド・スライディング』 - Slipping And Sliding (1994年、Sound Hills)

参加アルバム[編集]

デヴィッド・ボウイ

ジャック・ディジョネット

  • 『バイユー・フィーヴァー』 - New Directions (1978年、ECM)
  • 『ニュー・ダイレクション・イン・ヨーロッパ』 - New Directions in Europe (1980年、ECM)
  • 『ゼブラ』 - Zebra (1989年、MCA)

ブリジット・フォンテーヌ

メルヴィン・ジャクソン

  • Funky Skull (1969年、Limelight)

フェラ・クティ

  • No Agreement (1977年、FAK)

フランク・ロウ

  • 『フレッシュ』 - Fresh (1975年、Freedom)

ジミー・ライオンズ

  • Free Jazz No. 1 (1969年、Concert Hall) ※オムニバス
  • 『アザー・アフターヌーンズ』 - Other Afternoons (1970年、BYG)

ロスコー・ミッチェル

  • 『サウンド』 - Sound (1966年、Delmark)

デヴィッド・マレイ

  • Live at the Lower Manhattan Ocean Club (1978年、India Navigation)

サニー・マレイ

  • Sunshine (1969年、BYG)
  • 『アフリカへの捧げもの』 - Homage to Africa (1969年、BYG)

チャールズ・ボボ・ショウ

  • 『アンダー・ザ・サン』 - Under the Sun (1973年、Freedom) ※ヒューマン・アーツ・アンサンブル名儀
  • Streets of St. Louis (1974年、Moers Music)

アーチー・シェップ

  • 『ヤスミナ、ア・ブラック・ウーマン』 - Yasmina, a Black Woman (1969年、BYG)
  • Blasé (1969年、BYG)
  • Pitchin Can (1970年、America)
  • Coral Rock (1970年、America)

アラン・シルヴァ

  • Seasons (1971年、BYG)

ワダダ・レオ・スミス

  • 『ディヴァイン・ラヴ』 - Divine Love (1979年、ECM)

その他

  • ルーサー・トーマス・ヒューマン・アーツ・アンサンブル : 『ファンキィ・ドンキー』 - Funky Donkey (1977年、Circle)
  • マルチェロ・メリス : Free to Dance (1979年、Black Saint)
  • ジョン・フィッシャー : 6 x 1 = 10 Duos for a New Decade (1980年、Circle)
  • デファンクト : The Razor's Edge/Strangling Me With Your Love (1982年、Hannibal) ※12インチ盤
  • カヒル・エルザバール : The Ritual (1985年、Sound Aspects)
  • ダニー・ウィルソン : 『ダニー・ウィルソンとの出会い』 - Meet Danny Wilson (1987年、Virgin)
  • カヒル・エルザバール : Sacred Love (1988年、Sound Aspects)
  • デファンクト : Avoid The Funk (1988年、Hannibal)
  • ジョン・フィッシャー : Environ Days (1991年、Konnex) ※INTERface名義
  • デファンクト : Cum Funky (1994年、Enemy)
  • スカタライツ : 『ハイ・バップ・スカ』 - Hi-Bop Ska (1994年)
  • Various Artists : 『レッド・ホット・アンド・クール〜ストールン・モーメンツ』 - Stolen Moments: Red Hot + Cool (1994年、Impulse!) ※ディゲブル・プラネッツと1曲に参加
  • ルーファス・トーマスビル・ドゲットチャック・レイニー、ボビー・ワトソン、ウィル・カルホーンスー・フォーリー : Bluesiana Hurricane (1995年、Shanachie)
  • マラカイ・トンプソン & アフリカ・ブラス : Buddy Bolden's Rag (1995年、Delmark)
  • ミウォシュ & レスター・ボウイ : Not Two (1995年、Biodro Records)
  • フォンテラ・バス : 『ノー・ウェイズ・タイアード』 - No Ways Tired (1995年、Nonesuch)
  • マック・ゴルヘン : Mac's Smokin' Section (1996年、McKenzie)
  • ビル・コスビー : Hello Friend: To Ennis with Love (1997年、Verve)
  • ソニア・ダダ : My Secret Life (1998年、Calliope)
  • ロレンツォ・ガスペローニ・マムード・バンド : Amore Pirata (1998年、Il Manifesto)
  • マック・ゴルヘン : Smokin' Live (1999年、McKenzie)
  • ミウォシュ & レスター・ボウイ : Talkin' About Life And Death (1999年、Biodro Records)
  • ソニア・ダダ : Test Pattern (2004年、Razor & Tie)
  • サン・ラ・オールスター・バンド : Hiroshima (2007年、Art Yard)

出典[編集]

参照[編集]

  • Philippe Carles, André Clergeat, and Jean-Louis Comolli, Dictionnaire du jazz, Paris, 1994
  • Ian Carr, Digby Fairweather and Brian Priestley, Jazz: the Essential Companion, London, 1987
  • Richard Cook and Brian Morton, The Penguin Guide to Jazz on CD, 6th Edition, 2002

外部リンク[編集]