リュウキュウイノシシ

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リュウキュウイノシシ
大石林山のリュウキュウイノシシ
大石林山のリュウキュウイノシシ
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
亜目 : イノシシ亜目 Suina
: イノシシ科 Suidae
: イノシシ属 Sus
: イノシシ S. scrofa
亜種 : リュウキュウイノシシ
S. scrofa riukiuanus
学名
Sus scrofa riukiuanus Kuroda[1]1924
和名
リュウキュウイノシシ
英名
ryukyu wild boar

リュウキュウイノシシ(琉球猪、学名:Sus scrofa riukiuanus)は、南西諸島の一部に分布するイノシシ固有亜種である。

分布と名称[編集]

南西諸島のうち、以下の島に分布する[2][3]

このうち奄美群島では、もともと奄美大島と徳之島に分布していたが、海を渡って加計呂麻島請島与路島に分布を拡大したと考えられている[3]。また、上記以外に、慶良間諸島[4]宮古島[2]にも人為的に移入されている。

リュウキュウイノシシは、琉球語(琉球方言)の各方言では以下のように呼ばれる。

形態[編集]

体型は生息する島によって異なるが、ニホンイノシシと比較すると概して小さく、頭胴長50 - 110cm、体重は20 - 50kg程度である[4][9][10]。このような小型化は、ベルクマンの法則島嶼化現象によるものと考えられている[8]

分類[編集]

リュウキュウイノシシは、イノシシの亜種とされるが、頭蓋骨の形状の違い等から別種の原始的なイノシシと考える研究者もいる[11][12][13]

西表島及び石垣島の個体群は、沖縄本島及び奄美群島の個体群と、遺伝的に塩基配列が異なる。また、形態上も、上顎骨にある涙骨や口蓋裂の形状が異なるとともに、乳頭の数や位置も相違する。このため、西表島及び石垣島の個体群を独立した亜種とすることが提唱されている[2][4]

生態[編集]

食性は雑食性。シイの実やタケノコ柑橘類サツマイモサトウキビ等の農作物、昆虫ミミズカタツムリネズミヘビ等の小動物を食物とする[10]。奄美群島や八重山列島では、近年、リュウキュウイノシシによるウミガメの卵の食害が問題になっている[14][15][16]

ニホンイノシシの繁殖期が通常年1回であるのに対して、リュウキュウイノシシの繁殖期は年に2回(10 - 12月、4 - 5月)である[10][13]

人間との関係[編集]

食用[編集]

鍋物(シシ汁)、焼肉刺身チャンプルー等として食用とされる[17][18][19]沖縄県島尻郡八重瀬町にある旧石器時代港川フィッシャー遺跡港川人の発見で知られる)からは、食用と考えられる多数のイノシシの骨が出土している。ただし、出土した骨の大きさはニホンイノシシに近く、島嶼化の兆候も見られるものの、現生のリュウキュウイノシシとの関係は明らかになっていない[20]。奄美群島では、縄文時代からリュウキュウイノシシが食用とされてきた[21]。近年個体数が増え、道路や民家周辺にも頻繁に現れるため、 捕獲して、食肉への加工、流通も盛んとなっている。西表島でも古くから食用とされてきたが、近年、観光客や人口の増加に伴ってリュウキュウイノシシ肉の需要が増大して、狩猟圧が高まっており、生息数の減少が懸念されている[11][19]

交雑[編集]

近年、イノシシの家畜種であるブタや、イノシシとブタの雑種であるイノブタとの交雑が進んでおり、遺伝子のかく乱が懸念されている[4][9][22]

保全状態評価[編集]

  • LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[4]
    Status iucn3.1 LC.svg
  • 沖縄県版レッドデータブック - 絶滅危惧II類(VU)[4][22]
徳之島のリュウキュウイノシシ
徳之島は、もともと山地が少ない上に農業開発が進んでおり、リュウキュウイノシシの生育に適した森林が減少している。また、リュウキュウイノシシは、狩猟や有害駆除の対象にもなっている。そのため、徳之島のリュウキュウイノシシは、環境省レッドリストで絶滅のおそれのある地域個体群(LP)に指定されている[10]

脚注[編集]

  1. ^ 黒田長礼(1889-1978)鳥類学者 もしくは 黒田徳米(1886-1987)貝類学者
  2. ^ a b c “八重山のイノシシ 独自の亜種 DNA、頭骨に違い”. 八重山毎日新聞. (2016年12月30日). http://www.y-mainichi.co.jp/news/30966/ 
  3. ^ a b 高橋春成「南西諸島の海を泳ぐイノシシ」『総合研究所所報』第23号、2015年、 1-12頁。
  4. ^ a b c d e f 伊澤雅子『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版 動物編 3.3 哺乳類』(レポート)、沖縄県、2017年3月、104-105頁。
  5. ^ 奄美方言音声データベース 沖縄言語研究センター
  6. ^ 今帰仁方言データベース 沖縄言語研究センター
  7. ^ 首里那覇方言音声データベース 沖縄言語研究センター
  8. ^ a b c “沖縄のイノシシが小さいワケ知ってる?【島ネタCHOSA班】”. 琉球新報 週刊レキオ. (2019年1月1日). https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-854558.html 
  9. ^ a b 沖縄諸島の外来種”. 環境省. 2020年1月23日閲覧。
  10. ^ a b c d 徳之島のリュウキュウイノシシ”. いきものログ. 環境省. 2020年1月23日閲覧。
  11. ^ a b 石垣長健、新里孝和、新本光孝「西表島におけるイノシシ猟の伝統技術と実状」『琉球大学農学部学術報告』第53号、琉球大学農学部、2006年12月、 11-18頁。
  12. ^ 細井 佳久. “自然探訪2019年2月 西表島に暮らすリュウキュウイノシシ”. 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所. 2020年1月26日閲覧。
  13. ^ a b リュウキュウイノシシ”. 生物多様性ってなんだろう?. 財団法人奄美文化財団. 2020年1月26日閲覧。
  14. ^ “ウミガメ卵のイノシシ食害続く 過疎化で浜に行きやすく 鹿児島・奄美大島など”. 毎日新聞. (2019年12月27日). https://mainichi.jp/articles/20191227/k00/00m/040/251000c 
  15. ^ “ウミガメ卵食害率 過去最大の24.8%”. 奄美新聞. (2016年3月8日). http://amamishimbun.co.jp/2016/03/08/9687/ 
  16. ^ “イノシシ産卵巣襲う 実態調査で撮影に成功”. 八重山毎日新聞. (2009年9月22日). http://www.y-mainichi.co.jp/news/14492/ 
  17. ^ 奄美大島の自然”. 奄美パーク. 2020年1月26日閲覧。
  18. ^ “皮からうまいと言われるイノシシ 「幻の逸品」求め西表島で猟が活溌に”. 沖縄タイムス. (2020年1月19日). https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/523727 
  19. ^ a b 石垣長健、新里孝和、新本光孝、呉立潮「西表島におけるリュウキュウイノシシの餌植物と解体利用」『琉球大学農学部学術報告』第54号、琉球大学農学部、2007年12月、 23-27頁。
  20. ^ 長谷川善和、姉崎智子、大山盛弘、松岡廣繁、知念幸子「沖縄県港川人遺跡の哺乳類とくに大型イノシシの形態変化について」『群馬県立自然史博物館研究報告』第22号、2018年3月、 23-49頁。
  21. ^ 奄美の歴史”. 電子ミュージアム奄美. 奄美遺産活用実行委員会. 2020年1月23日閲覧。
  22. ^ a b “ヤンバルクイナの絶滅危惧度格上げ 沖縄の動物「レッドデータブック」12年ぶり改訂 新たに絶滅4種も”. 沖縄タイムス. (2017年5月18日). https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/97941 

関連項目[編集]