ミヤマオトコヨモギ

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ミヤマオトコヨモギ
ミヤマオトコヨモギ、御嶽山の高山帯、長野県木曽郡木曽町にて、2014年9月6日撮影
ミヤマオトコヨモギ Artemisia pedunculosa
2014年9月、御嶽山長野県木曽郡木曽町にて
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asteridae
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: ヨモギ属 Artemisia
: ミヤマオトコヨモギ
A. pedunculosaa
学名
Artemisia pedunculosa Miq.[1]
和名
ミヤマオトコヨモギ

ミヤマオトコヨモギ(深山男蓬、学名Artemisia pedunculosa Miq.[1])は、キク科ヨモギ属分類される多年草の1[2][3][4][5][6][7][8][9]種小名pedunculosa花梗のあるを意味する[8]和名は実が1 mmにも満たないほど小さく、種子がないと思い、オス()のヨモギとしたと言われている近縁であるオトコヨモギ[10]の高山に生育するものであることに由来する[9]

特徴[編集]

地下茎はよく分枝し[6]、長く伸びる[5]。高さ10-35 cmで、大きいものは50 cm以上になる[2]花茎は直立または[8]多くは斜上し[6]、そう生し[5]、紫色を帯び、はじめ絹毛があり[2]、上方で短く枝分かれし、下部にふく枝がある[8]根生葉はさかさ卵状へら形、葉柄とともの長さは3-8 cm、幅1-2 cm、円頭、不規則な鋭いきょ歯と切れ込みがあり、上面は深い緑色、下面は黄色を帯びた緑色で柔らかい絹毛があり、洋紙質、基部は次第に細く、翼のある柄に続き、やや密につく[8]は単葉で[4][7]、葉柄はなく[5]、長さ2-6 cm、幅0.5-1.5 cmの倒披針状へら形で、先は浅く3-5裂し、基部はなかば茎を抱き[2]、まばらに互生する[8]をつけない短茎の先にロゼット状に葉をつける[2][3][5][7]。ロゼット状の葉は、広いさじ形、欠刻状の鋭い鋸歯があり[3]、はじめ絹毛があるが、のちに無毛[5]

頭花は茎の中部から上端の葉腋に1-2個ずつつき、直径0.5-1 cmで[4]、10数個が総状または複総状につき、下向きに咲き[2][4]、両性花と雌花がある[6]。頭花柄は細くて長くのび、絹毛がある[2]総苞は長さ4-6 mmの半球形で[2]、無毛[5]。総苞片は3-4列で[2]、やや同長、外片は卵状楕円形、内片は楕円形、縁は広く透明膜質で黄白色[5]、背部は黄緑色[6]。花期は7-9月[2][9]8-10月[3][5]、7月下旬-9月[4][7])。果実痩果で、長楕円形、長さ2 mm[5]、はじめ細毛がある[8]染色体数は2n=18(2倍体[4]

分布・生育環境[編集]

富士山の宝永火口付近の高山帯の砂礫地にオンタデとともに生育するミヤマオトコヨモギ

日本固有種[2][5]本州群馬県新潟県富山県石川県福井県山梨県長野県岐阜県静岡県)に分布する[4]。東限と南限は富士山、西限は白山、北限は白馬岳でやや狭い地域に分布する[8]基準標本は富士山のもので[2][4]、富士山の高山帯では普通に見られる[9]

亜高山帯から高山帯にかけての岩場や砂礫地の乾性の草地に群生して[6]生育する[2][4]

種の保全状況評価[編集]

日本では環境省による国レベルのレッドリスト受けていないが[11]、以下の都道府県のレッドリストで指定を受けている。

脚注[編集]

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “ミヤマオトコヨモギ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月23日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m 豊国 (1988)、100頁
  3. ^ a b c d 林 (2009)、78頁
  4. ^ a b c d e f g h i 清水 (2014)、432-433頁
  5. ^ a b c d e f g h i j k 佐竹 (1981)、171頁
  6. ^ a b c d e f 小野 (1987)、11頁
  7. ^ a b c d 久保田 (2007)、51頁
  8. ^ a b c d e f g h 前沢 (1970)、6-7頁
  9. ^ a b c d 佐野 (2019)、130頁
  10. ^ 林 (2009)、82頁
  11. ^ 環境省レッドリスト2020の公表について”. 環境省 (2020年3月27日). 2023年12月23日閲覧。
  12. ^ 改訂版 福井県の絶滅のおそれのある野生動植物・維管束植物” (PDF). 福井県. pp. 418. 2023年12月23日閲覧。
  13. ^ レッドデータブックにいがた” (PDF). 新潟県. pp. 409. 2023年12月23日閲覧。

参考文献[編集]

  • 小野幹雄林弥栄『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年3月30日。ISBN 4832600079 
  • 久保田修『高山の花―イラストでちがいがわかる名前がわかる』学習研究社、2007年6月。ISBN 978-4054029033 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038 
  • 佐野光雄『イラストで見る富士山の草花』東洋館出版社、2019年11月16日。ISBN 978-4491037509 
  • 清水建美、門田裕一、木原浩『高山に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日。ISBN 978-4635070300 
  • 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1 
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421 
  • 前沢秋彦『高山植物』保育社〈標準原色図鑑全集 11〉、1970年1月。ISBN 4586320117 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]