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テレホンカード

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テレホンカードと10円・100円硬貨に対応する磁気テレホンカード公衆電話 (MC-3PNC)。卓上や電話ブースに設置される。アナログ回線に接続されている。
初期の磁気テレホンカード公衆電話 (MC-2)
初期の磁気テレホンカード・硬貨兼用公衆電話 (MC-1PN)
磁気テレホンカード公衆電話 (DMC-8A)
テレホンカード販売機

テレホンカードとは、公衆電話で使用できるプリペイドカードである。日本で発売・流通し利用ができるものはテレカと呼ばれることが多いが、これはNTTカードソリューション登録商標である。本項では、特筆がない限り、日本電信電話公社および後継企業のNTT東日本NTT西日本が発行するテレホンカードについて述べる。また、公衆電話も参考にされたい。

概説

日本では1982年(昭和57年)12月に旧日本電信電話公社(電電公社)が発行・発売を開始した。テレホンカード対応の公衆電話は首都圏から設置が進められ、全国に普及した。

1972年(昭和47年)に日本国内で100円硬貨の利用できる黄色の公衆電話機が設置され始めたが、100円硬貨が電話機の金庫に収納された場合、釣り銭の返却は行われない構造になっている[1]。当初は釣り銭式電話機の開発も検討されたが、製造・運用コストの増嵩が見込まれ、見送られた。そこで、釣り銭の現金払い出しに代わる手段として磁気媒体を利用するカード式公衆電話が製造された。

小銭が不要で、1度数(10円)単位で引き落とされるため無駄がなく、長時間通話時にも、常に硬貨を投入し続ける必要がない。設置者も、金庫が硬貨で一杯になり、機能が停止する事態を避けられる他、硬貨集金の巡回経費を節減できるメリットがあった。

しかし、携帯電話が普及することにより、公衆電話の利用率が減少したため、テレホンカードの必要性も大きく変化した。また、公衆電話事業がNTTにとって不採算事業であることから、公衆電話そのものが撤去されつつあり、小銭不要で電話がかけられるというテレホンカード本来の利便性も薄れつつある。

「テレフォンカード」と表記される事があるが、NTTでは「テレンカード」と表記する。

テレホンカードの種類

磁気テレホンカード

一般的に、テレホンカードと言えばこの磁気テレホンカードを指す。後に登場したICテレホンカードと区別するため、NTTなどではこの呼称を使用している。

発売開始当初は、50度数・100度数・300度数・500度数の4種類が発売された。後に100度数以上のカードについてはプレミア(おまけ)が加えられ、販売価格は据え置きでそれぞれ105度数・320度数・540度数として売り出された。日本で最初に発行されたテレホンカードは岡本太郎がデザインした。

また、発売開始当初は、カード購入時に公衆電話での使用方法を書いた「ご利用の手引き」「テレホンカードが利用できる公衆電話の設置場所の案内(例: 都内では江東区役所内など)も渡された。現在は、ピンク電話を除くほとんどの公衆電話がテレホンカードを使用できるものになっている。むしろ、硬貨が使用できない公衆電話もある(右上の硬貨投入口があるであろう部分に「テレホンカード専用」という表記がある)。

後述の偽造テレホンカード問題のため、現在50度数と105度数の2種類のみが販売されている。また、106度数以上の残度数があるテレホンカードは、現在電話機による使用もできない。ただし、320度数や540度数で発売されたテレホンカードでも、残り度数が105度数以下のカードは使用可能である。

なお、磁気異常などにより使用できなくなってしまったテレホンカードは、NTTの各営業所に持ち込むことで使用できなくなったカードおよび手数料と引き換えに新しいカードと交換してもらうことができたが、現在ではNTTが営業所窓口の多くを閉鎖してしまったため、NTT東西共に郵送での交換手続きとなっており、専用の電話番号で交換手続きを案内している[2][3]

ICテレホンカード

ICカード式専用公衆電話 (ICT-2AO)。ISDN回線につながっていたため、サブアドレスを持つISDN電話機への発信や音声通話と共にデータ通信が可能であった。
ICテレホンカード(裏面)。カード右下の角を折り取ること(写真のように)で使用できる仕組みである。

1999年(平成11年)に、日本では横行する偽造テレホンカード対策として、それまでの磁気式に加えてICカードを利用したICテレホンカードと、これに対応するICテレホンカード対応公衆電話機が登場。30度数・50度数・105度数・210度数・320度数の5種類がある。うち、30度数と50度数は注文で製作するもののみで、一般に流通していたのは105度数と210度数であった。高額テレホンカードも210度数と320度数で復活した。

規格としてはISO 14443 Type Aを採用[4]しており、日本国内で広く普及したFeliCaとは異なる規格であった。

ICを使用しているため、「偽造はほぼ不可能」との触れ込みで、鳴り物入りのデビューであったが、以下に挙げるような難点があった。

  • 登場時には、既に携帯電話PHSが普及しつつあり、公衆電話の需要が縮小していた。
  • 従来の磁気カードとの互換性がなく、専用のICテレカ対応公衆電話機でしか利用できない。また、ICテレカ対応電話機では、並行流通している従来の磁気カードは利用できない構造上の問題があった。
  • 専用公衆電話の設置台数も従来型と比べ1割程度と伸び悩み、利用しづらかった。
  • 新たにICテレカ使用可能な専用電話機の研究・開発費用と、従来の電話機交換もしくは新規設置費用などに比べて、需要や電話料金収入が予想を大きく下回る状態が各地で発生。
  • 磁気カードと違い有効期限があるため、期限内に使い切る必要がある。
  • ICテレカシステムならではの独自メリット(電話番号の記憶機能や105度数超の高額カードの復活など)などの周知・広報活動が十分されたとは言い難く、全国規模での知名度アップには自ずと限界を生じさせていた。
  • 購入ルート・手段が十分に整備されず、磁気カードのものに及ばなかった。ICテレカ対応電話機横の自動販売機、あるいは電話機の近くにある駅売店などでしか購入できなかった。
  • 磁気カードと違いおおよその使用可能額(残高額)は手元ですぐ分からないため、利用者に数少ないICテレカ対応電話機を探して確認するといった手間をかけさせていた。
  • カードそのものの耐久性が低く、表層が剝がれ落ちて回路部分が破損しやすかった。

これらがあだとなり、結果的には大きく普及しなかった。ICテレカの販売も縮小され、30度数・50度数・210度数・320度数については先に販売を終了し、105度数のみに限られた。結局、2006年(平成18年)3月末をもって役目を終えた。ICテレカ対応機は撤去され(同型の硬貨併用や硬貨専用タイプも撤去)、その後は磁気カードか従来からの硬貨使用のみとなった。

2002年(平成14年)に開催されたFIFA WORLD CUP KOREA JAPANでは、記念ICテレカが販売された。

30度数・50度数・105度数・210度数には電話番号を1つだけ記憶できるダイヤルメモ機能が、320度数には電話番号を10件登録できる電話帳機能があるが、ダイヤルメモと電話帳の両機能に互換性はない。

現在、未使用分のICテレカについては東西NTTに申し出ることによって等価分の磁気テレカ(端数分は現金)と交換する措置がとられている。有効期限内のICテレカの場合、手数料なしで磁気テレカとの等価交換または残高額と同額分の交換となるが、期限の切れたICテレカの交換の場合、手数料が必要となる。

偽造テレホンカード問題

磁気テレホンカードが広く流通するようになるにつれ、使用済カードに新たに磁気情報を加えて再び使用可能とした、いわゆる「偽造テレホンカード」(または「変造テレホンカード」とも)も広く流通するようになり、社会問題に発展した。

特に1990年代前半はポケットベルの需要が爆発的に伸びた時期でもある。また、一部のカード式公衆電話では国際電話ができるようになり、磁気テレホンカードの需要の高まりから、主に外国人により売られていた偽造テレホンカードが大量に出回った。

当初のカード式公衆電話機には、現在のような106度数以上のカードを拒否するような偽造対策は一切なく、「永久使用テレカ」なるものも生まれていた。また、偽造テレホンカードを用いて国際電話を掛けたり、ダイヤルQ2につないでNTTから情報料を詐取するといった不正行為が増加したため、NTT側も偽造テレホンカード対策に乗り出した。

この結果、320度数・540度数のテレホンカードが1991年(平成3年)12月28日に使用廃止された。以降105度数を越えるカードの使用はできなくなり、さらに翌1992年(平成4年)からはテレホンカードで国際電話がかけられる公衆電話は激減した。公衆電話機自体も改造が施され、106度数以上のカードは受け付けなくなったほか[5]、偽造カードチェックも厳しくなった。NTTでは、傷があるテレホンカードは(正規カードでも)使用できないことがある旨、告知している。カードチェックが厳正化されたカード処理機構を搭載する公衆電話では、テレホンカードによる国際電話の取り扱いが再開されている。

当時はこの犯罪行為を直接的に取り締まる法律がなく、警察は偽造カードの不正使用者については変造有価証券行使罪を適用して摘発にあたった。ただ、当時のこの法律では「使用した時点で触法行為」と見なされる反面、保持しているだけでは摘発できないといった弊害も生まれていた。現在は、2001年(平成13年)の刑法改正によって、テレホンカード等のプリペイドカードは刑法163条の2の支払用カードに当たることになり、人の財産上の事務処理を誤らせる目的で電磁的記録を不正に作れば、支払用カード電磁的記録に関する罪(支払用カード電磁的記録不正作出罪)が適用されることとなる。

なお、公衆電話からテレホンカードで国際通話するよりも、プリペイドカードやプリペイド番号お知らせシートなどに記載されている番号をダイヤルして使用するタイプのプリペイドカードを利用したほうが安く通話できるケースもある。これらは、KDDI国際電信電話 (KDD) 時代から「スーパーワールドカード」の名称で発売しており、NTTコミュニケーションズソフトバンクテレコムのような国内電話会社のほか、日本国外の電話会社が発行するものも増えている。これらは、テレホンカードの必要度低下に拍車をかけている。

因みに使用不能となった105度数を越えるカードは、東西NTTに申し出れば、等価分の105度数カード(端数分は現金)に交換してもらえる。

テレホンカードの券種

磁気テレホンカード

  • 販売中
    • 50度数 : 500円 105度数:1000円
  • 販売終了
    • 100度数 : 1,000円
    • 300度数 : 3,000円
    • 320度数 : 3,000円
    • 500度数 : 5,000円
    • 540度数 : 5,000円

ICテレホンカード

  • いずれも販売終了
    • 30度数 : 1,000円(注文で製作するもののみ)
    • 50度数 : 2,000円(注文で製作するもののみ)
    • 105度数 : 1,000円
    • 210度数 : 2,000円
    • 320度数 : 3,000円

コレクターズアイテムとして

多種多様なカード表面のデザインが存在するため、発行当初からコレクターズアイテムとしてのポジションも確立した。テレホンカード全盛の頃は、電電公社時代に発売されたり、限定品など希少性のあるもの(使用済カードも含めて)、人気タレントのテレホンカードなどは、50度数(使用済カードも含む)でも数十万円もの価格で取引された時期もある。テレホンカード毎の時価が記載されたコレクター向けの雑誌やカタログなども多数発行された。

また、コレクターの団体も各地に発足し、コレクター間の情報交換やテレホンカードの交換・授受の場としても利用された。東京都にある「テレカ収集協会」は、その団体の中では最大規模の団体であり、毎月1回交換会を池袋で行っている。

上記の通り、公衆電話での利用機会が激減していることもあり、現在では、プリペイドカードとしてよりもコレクターズアイテムとしての比重が高くなっている。

宣伝媒体として

オリジナルの絵柄をプリントしたフリーデザインのテレホンカードを作成することが可能であるため、一時期は記念品や商品の特典(ノベルティ)や、新規オープンの店舗が名刺代わりに配布するなど贈答用としても有効活用された。

特殊なテレホンカード

カードを挿入すると、自動的に指定番号にダイヤルするオートダイヤルカードがある。バリエーションとしては以下のものがある。

  • カードに度数を持ち、カードを差し込むと登録された番号に発信するカード
  • カードに度数を持たないが、カードを差し込むと指定されたフリーダイヤルに発信するカード(事例として、日本自動車連盟に20年以上継続している会員向けに、挿入方向の違いで2箇所に自動ダイヤルするカードが配布されている)
  • カードに度数を持たず、指定の特番に発信するカード。これを応用したものが、NTTカードCなどである。

その他

公衆電話での利用以外に、以下のような使い方がある。

電話料金への充当

1989年(平成元年)10月より、未使用であれば東西NTT固定電話通話料の支払いに充当できる(基本料への充当は不可。さらに手数料として1枚あたり税込みで52.5円が差し引かれる)。請求された通話料分以上を支払った場合でも、余った分は繰り越して翌月以降の支払いに充当する事が可能である。東西のNTT営業所窓口か郵送での受付となっている。郵送(特定記録郵便を推奨)に関わる費用については利用者が負担する。

かつては金券ショップでテレホンカードを安く仕入れ、支払いに充当するといった節約術も存在したが、NTT営業所の支払い窓口の殆どが営業合理化の名目で大幅な縮小もしくは閉鎖されてしまった(現在は各種手続きは全て116番で受け付けている)ことにより、郵送での手続きにかかる郵送料を考慮すると、有効な節約術とはいえなくなっている。

東京都の場合、2003年(平成15年)に営業所窓口のほとんどを閉鎖してしまい、2011年(平成23年)9月30日、西新宿営業所の閉鎖によって、営業所窓口がすべて営業終了し、充当処理を直接受け付ける窓口はなくなっている。

宿泊料金への充当

福山ニューキャッスルホテルでは、未使用テレホンカードの額面80%を宿泊料金の支払いに充当可能である。

かつてはビジネスホテルチェーンの東横インでも使用できたが、2010年(平成22年)7月31日をもって取扱いを終了した。

脚注

  1. ^ 投入された硬貨は一旦機内に保留され、通話がつながると、10円硬貨から1枚ずつ金庫に収納される(落ちる)。10円で通話できる秒数を超過すると、新たに10円が収納される。100円硬貨は10円硬貨を使い切ってから金庫に落ち、10円10枚分の秒数通話が維持される。金庫に落ちず保留された状態の硬貨は通話終了後返却口に戻るが、10円分以上の残額があっても釣りは返却されない。100円硬貨だけで掛けた場合、間違い電話をかけてしまった場合など大きく損することもあり、電電公社やNTTでは、10円硬貨で通話を開始することを推奨している。
  2. ^ NTT東日本-磁気テレホンカードが使えなくなった
  3. ^ NTT西日本-テレホンカードが使えなくなった。
  4. ^ ITmediaモバイル:ISO 14443【あいえすおー・いちよんよんよんさん】 ITmedia 2004年6月8日
  5. ^ 541度数以上のカードを拒否するシステムも存在していたが、540度数弱の偽造テレホンカードが横行したことで、106度数以上のカードを拒否するシステムに改められた。[要検証]

関連項目

外部リンク