ダン・アリエリー

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Dan Ariely
生誕 (1967-04-29) 1967年4月29日(54歳)
アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市
国籍 イスラエル系アメリカ人
研究分野
研究機関
出身校
公式サイト
danariely.com
プロジェクト:人物伝
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Dan Ariely (PopTech 2010)

ダン・アリエリー(Dan Ariely、1967年4月29日 - )は、イスラエル系アメリカ人の教授、作家である。デューク大学心理学および行動経済学ジェームズ・B・デューク記念教授英語版を務めている[1]。デューク大学先進後知恵研究センター(The Center for Advanced Hindsight)の創設者[2]、BEworksの共同創業者でもある。アリエリーがTEDで行ったプレゼンテーションは780万回以上閲覧されている。また、『予想通りに不合理英語版』、『不合理だからすべてがうまくいく英語版』の著者であり、これらの2冊は『ずる 嘘とごまかしの行動経済学英語版』とともにニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに含まれている[3]

若年期と家族[編集]

父がコロンビア大学MBA課程在籍時にニューヨーク市で生まれた。彼が3歳のとき一家はイスラエルへ戻り、彼はラマトハシャロン(en)という街で育った。[3] 彼が高校3年生の時にはイスラエルの青年運動団体であるハー=ノアル・ハー=オーヴェード・ウェラホメド(en)で活動していた。夜間に行われる伝統儀式のためにktovet esh(火で文字を描くもの)を準備している最中に、彼が混ぜていた可燃物が爆発して彼の体の70パーセント以上がIII度熱傷となった[3]。その治療の過程で肝炎(1985年当時は謎の病気で、後にC型肝炎と命名される)を発症。大学院生時代に肝炎が再発したため、当時は実験的治療だったインターフェロンの治験に参加。強い副作用を伴う自己注射を半年にわたって週3回行うと言う辛い治療を、「注射の前にレンタルビデオ店で映画を借りる」と言う方法で乗り切り、治験を乗り切った唯一の人間となった。肝炎が完治しなかったため治験はさらに1年延び、就職活動をしながらインターフェロンに加えてリバビリンも併用することになったが、同様にしてこの治験を乗り切り、肝炎は完治した[4]。自身の著作でアリエリーは、この経験によってどのように「どうすれば痛みを伴う避けられない治療を患者により良く施せるか」について研究するようになったか述べている。[5]

アリエリーはスミ夫人との間に現在2人の子供(1人の息子と1人の娘)がいる。2007年、デューク大学に職を得て、新婚当時に購入した家を売却して引っ越そうとしているところにサブプライム住宅ローン危機が発生。住宅価格が下がり続ける中、アリエリーはイケア効果(人は自分で作った物を過大評価する)の発見者であるにもかかわらずイケア効果の犠牲となり、夫妻でリフォームした家の価値を過大評価してしまい、不動産業者の「現状復帰」のアドバイスを聞くまで2件分の維持費を払い続け、危うく売り損ねるところであった。

学歴と研究業績[編集]

アリエリーはテルアビブ大学数学物理学を専攻したが、後に哲学心理学に転向した。しかし4年生のとき哲学をやめて心理学のみに注力し、1991年に心理学の学士号を得た。またノースカロライナ大学チャペルヒル校認知心理学修士号(1994年)とPh.D.(1996年)を取得している。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの勧めにより、1998年にはデューク大学D.B.A課程を修了した。[3]

Ph.D.取得後、1998年から2008年までMITで教鞭を執った後、現在デューク大学で心理学と行動経済学のジェームズ・B・デューク教授職(en:James B. Duke Professor)を務める。以前はマサチューセッツ工科大学スローンマネジメントスクール(en:MIT Sloan School of Management)で行動経済学のアルフレッド・P・スローン教授職(Alfred P. Sloan Professor)を務めていた。アリエリーは経済学の正式な訓練を受けていないマーケティングの教授であるにも関わらず、主要な行動経済学者の1人とみなされている。

2021年8月、アリエリーが共著者である『Proceedings of National Academy of Sciences』に掲載された2012年の論文[6]について、匿名の研究者がデータ不正に関する懸念を示した[7]。2012年の論文の結果については、2020年に再現性がないことが、原著者らを含む研究グループによって発表されていた[8]。匿名の研究者らは、2012年の論文でアリエリーが担当した実地実験の元データが捏造されている強い証拠を見出したことを指摘している[7]。アリエリーは、元データは実地実験を実施した保険会社から提供されたものであり、自身と自身の研究グループの共著者らはデータ作成に関与していない、と述べた[7]

コンピュータービジネスにおける活動[編集]

アリエリーは強力なインターネットツールSimpliの創業メンバーだった。Simpliは2000年にNetZeroに売却された。[9]

2001年にはSimpliはNetZeroからSearch123という別企業に売却され統合された。[10] 元々のメンバーのほとんどは新会社に加わった。Search123は2004年にValueClickに売却された。[11]

著書[編集]

  • 『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』(早川書房,2008年)
    • Predictably Irrational: The Hidden Forces That Shape Our Decisions. Second edition in 2012., HarperCollins, (2008), pp. 304, ISBN 978-0-06-135323-9, OCLC 182521026 
  • 『不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」』(早川書房, 2010年)
  • 『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』(早川書房, 2012年)

彼は最初の著書を書いた動機を以下のように語っている。

私は認知心理学と経営学のPh.D.を持っています。しかし私のしていることは心理学と経済学にまたがっています。私は経済学者が立てるのと同じような問いを立てますが、人々は合理的に振る舞うものであるとすぐ決めてかからずに、どのように人々が振る舞うかただ観察するのです。私は『予想通りに不合理』に、どのように人々が物事を考えているか、特に金銭的な決定についてどう考えているかを書きました。私たちが買うものについてです。ある章で「あるものにどの程度の価値があるかどうやって私たちは決めているのか」という問いを立てました。これについて経済理論は非常に単純な仮定を置きます。しかし私は「実際には私たちはどうやっているのか」を問うているのです。[12]

『予想通りに不合理』を読んで人間の不合理な行動を理解することで人生は悪くなりうるのではないか(プラシーボ効果から得られる利益を失うなど)と訊ねられたアリエリーは、短期的には損をするかもしれないが長期的には得をするであろうから自著を読むことでその人の人生が悪くなることはないだろうと答えている。[13] 「不合理だからうまくいく」ことについて訊ねられたときには以下のように述べている。

本の前半は職場でのやる気についてです。著書では「ボーナスの本当の効果は何か」「高いボーナスを与えると何が起きるか」といった問いを立てました。結果として、ボーナスは人々のやる気を引き出すが、より高い成果をいつももたらすとは限らないということがわかりました。実際にはより低い成果をしばしばもたらしたのです。なぜなら金銭は人々にプレッシャーを与えるからです。(中略)本の第二部は私生活についてです。すなわち「どうやって幸せを見つけるのか」「私たちの身に生じる良いことや悪いことにどう適応すればよいか」という問いについてです。またそれは感情についての問いも少しだけ含んでいます。[12]

マイケル・S・ロスは『ずる』について「アリエリーはすべての人にとっての基準を上げてしまった。だんだん競争が激しくなってきている人気の認知科学と行動経済学という分野で、情熱と賢明さというあまり見られない2つの組み合わせをもってこれを書き上げた。彼は私たちが誤った考えと不合理性を持っているということを思い出させてくれるので、私たちは私たち自身を欺く傾向があるがその傾向から身を守れるかもしれない。[14]」と書いている。

2008年にアリエリーは共著者のレベッカ・ウェイバー、ジブ・カルモン、ババ・シブとともにイグノーベル医学賞を受賞した。受賞理由は高価な偽薬は安価なものより効果があることを示したことであった。[15]

その他の業績[編集]

先進後知恵研究センター[編集]

アリエリーの研究所であるデューク大学先進後知恵研究センターは、金銭・医師と患者による意思決定・不正・社会正義についての心理学といったテーマについて研究することを目的としている。[3]

BEworks[編集]

アリエリーは行動経済学をビジネスや政策課題に応用する企業であるBEworks Incの共同創業者である。

Arming the Donkeys[編集]

Arming The Donkeysは社会科学や自然科学の研究者にアリエリーがインタビューを行うポッドキャストである。

論文[編集]

出演した映像と音声[編集]

関連[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Dan Ariely. NNDB.
  2. ^ Dan Ariely | Center for Advanced Hindsight
  3. ^ a b c d e When Dan Ariely found the key to human nature
  4. ^ 『予想どおりに不合理』
  5. ^ Ariely, Dan. “Painful Lessons”. 2013年5月14日閲覧。
  6. ^ Lisa L. Shu, Nina Mazar, Francesca Gino, Dan Ariely, and Max H. Bazerman (2012). “Signing at the beginning makes ethics salient and decreases dishonest self-reports in comparison to signing at the end”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109 (38): 15197-15200. doi:10.1073/pnas.1209746109. 
  7. ^ a b c [98 Evidence of Fraud in an Influential Field Experiment About Dishonesty]” (英語). Data Colada (2021年8月17日). 2021年8月18日閲覧。
  8. ^ Ariella S. Kristal, Ashley V. Whillans, Max H. Bazerman, Francesca Gino, Lisa L. Shu, Nina Mazar, and Dan Ariely (2020). “Signing at the beginning versus at the end does not decrease dishonesty”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 117 (13): 7103-7107. doi:10.1073/pnas.1911695117. 
  9. ^ NetZero acquire Simpli for $23.5 Million”. ClickZ. 2015年5月8日閲覧。
  10. ^ Search123 Acquires Simpli.com from United Online”. Bloomberg. 2015年5月8日閲覧。
  11. ^ ValueClick Acquires Search Marketing Company Search123”. EContent. 2015年5月8日閲覧。
  12. ^ a b アーカイブされたコピー”. 2010年10月1日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2010年9月29日閲覧。
  13. ^ "Predictably Irrational Is an Irresistible Look at Our Not-So-Rational Foibles" Derek Tokaz, The Commentator, Feb. 28, 2008 New York University School of Law
  14. ^ http://www.huffingtonpost.com/michael-roth/dan-ariely-dishonesty_b_1769685.html
  15. ^ Winners of the Ig® Nobel Prize”. Improbable Research. 2013年5月15日閲覧。

外部リンク[編集]