ジュズダマ

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ジュズダマ
ジュズダマ
ジュズダマ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: イネ目 Poales
: イネ科 Poaceae
: ジュズダマ属 Coix
: ジュズダマ C. lacryma-jobi
学名
Coix lacryma-jobi
和名
ジュズダマ
英名
Job's tears
日本の農業百科事典のイラスト(1804)

ジュズダマ(数珠玉、Coix lacryma-jobi)は、水辺に生育する大型のイネ科植物の1種である。

インドシナインドネシアなどの東南アジアインドなどの熱帯アジア原産[1][2][3]。日本では本州から沖縄までの範囲に分布する[4]。主に水辺に生え、野原空き地湿地などに自生する[4][2]。日本には古くから有用植物として渡来ししたものが帰化したと考えられていて[2]、暖地の小川の縁などに野生化している[1]

名称[編集]

和名のジュズダマは、かつて実を数珠の玉にしたことに由来する[5][3]。別名で、ズズ、ズズゴ、ツシダマともよばれ[4]、地方によっては、ズウズク(千葉県)、スズ(和歌山県)、ボダイズ(岡山県)の方言名でも呼ばれる[4]

三秋の季語にもなっている[4]

特徴[編集]

大形の多年草であるが、日本の関東地方では冬期に枯れて一年草となる[1]。草丈は1 - 2メートル (m) ほどになる[3]叢生して大株となり[1]、根元で枝分かれした多数の茎が束になって直立して、茎の先の方までをつける。葉は互生し、細長い線形で、幅は1 - 4センチメートル (cm) 、長さ20 - 50 cmくらいと幅広く、葉縁がざらつき、下の方は鞘になって茎を抱く[1][2]

花期は夏から秋にかけて(7 - 10月)[4][3]葉腋から長短不揃いの柄を持った穂状花序を出し[1]花茎の先端に雌花が入った丸いつぼみ形の(苞葉鞘)をつけ、その先から雄花小穂がのびる[3]。雌花の小穂は固い苞に包まれた花穂で柱頭だけを外に出し、雄花の小穂は苞を貫いて伸びて、雄しべを垂らす[1][3]。花の色は白っぽい[4][3]

果実が熟すると、果実を包む苞葉鞘は灰白色・茶褐色・セピア色・黒褐色など一粒ずつ微妙に色は異なり、光沢があるホーロー質になって表面が非常に固くなり、長さ10ミリメートル (mm) 、直径7 mm卵状球形の数珠玉状になる[1][2]。熟した実は、根元から外れてそのまま落ちる。実は内部に空気を含む隙間があって水に浮き、流れに乗って散布される[6]

ハトムギ[編集]

ハトムギC. lacryma-jobi var. ma-yuen)は、ジュズダマを改良した栽培種である[4]。全体がやや大柄であること、花序が垂れ下がること、実がそれほど固くならないことが、原種との相違点である。ハトムギの実は卵形で光沢がなく、固くなって指でつぶれる[1]。また薬効も異なる[1]

花の構造[編集]

花序

イネ科植物の花は、花序が短縮して重なり合った鱗片の間に花が収まる小穂という形になる。その構造はイネ科に含まれる属によって様々であり、同じような鱗片の列に同型の花が入るような単純なものから、花数が減少したり、花が退化して鱗片だけが残ったり、まれに雄花雌花が分化したりと多様であるが、ジュズダマの花序は、中でも特に変わったもののひとつである。

まず、穂の先端に雄花、基部に雌花があるが、このように雄花と雌花に分化するのは、イネ科では例が少ない。細かいところを見ると、さらに興味深い特徴がある。

のように見えるものは、正しくは果実ではなく、雌花を包んでいる鞘状の葉が分厚く硬く変形した器官で、植物学的には苞鞘(ほうしょう)または、苞葉鞘(ほうようしょう)という[4][5]。この苞葉鞘の先端には穴が開いており、若い苞葉鞘の先端から伸び出ている稲穂のような雄花の集まりを雄花穂(ゆうかすい)と呼んでいる[5]。雄花穂からは黄色いが垂れて、先端が開いて風で花粉が飛ばされる[5]。雌花は苞葉鞘の中に隠れていて、雌しべの先が2本に分かれて白いひも状に伸びた柱頭だけを苞葉鞘の先端から外に出して、風で運ばれてきた花粉を受粉する[5]。一つの苞葉鞘の雄花と雌花は同時に咲くことはなく、必ず雌花が雌しべを出して先に咲いて枯れてから、雄花が葯を出すようになっていて、自身の花の花粉で受精しないように回避している[7]

雌花は受粉して果実になると、苞葉鞘の内で成熟し、苞葉鞘ごと脱落する。一般にイネ科の果実は鱗片に包まれて脱落するが、ジュズダマの場合、鱗片に包まれた果実が、さらに苞葉鞘に包まれて脱落するわけである。

実際には若い苞葉鞘の中には雌花のつぼみが3つ入っていて、このうち1つだけが実をむずび、残り2つは実を結ぶ性能力がなくなって退化し、枯れてしまう不稔雌花(ふねんめばな)になる[7]。この不稔雌花が枯れた跡が、ネックレスなどを作る際に不要になる2本の棒状の芯であり、数珠玉のビーズ穴の元となるものである[5]。雄花穂は花粉を出すと枯れ落ちるが、雌花1個は受精すると、苞葉鞘に守られて中で種子に育つ[5]。中の種子の胚乳部分にデンプンが蓄えられて熟すころには、苞葉鞘は固くツルツルになり、ネズミなどの動物に食べられるのを防いでいる[8]

利用[編集]

脱落した実は、乾燥させれば長くその色と形を保つので、数珠を作るのに使われたことがある。実の穴に詰まっている芯をつつき出して針を通し、糸を通すのも容易にできる[6]。実際に仏事に用いる数珠として使われることはまずないが、子供のおもちゃのように扱われることは多い。古来より「じゅずだま」のほか「つしだま」とも呼ばれ、花環同様にネックレスや腕輪など簡易の装飾品として庶民の女の子の遊びの一環で作られてきた[4]。実は固く光る天然のビーズ玉となり、何の細工しなくても自然に穴が通っているため、針で糸を通してネックレスが作られた[5]。秋から冬にかけて、水辺での自然観察や、子供の野外活動では、特に女の子に喜ばれる。

薬用[編集]

秋に成熟した実を採取し、皮付きのまま砕いて硬い種皮を除いたものは生薬となり、川穀(せんこく)と称する[1]。民間では、リウマチ神経痛肩こりに1回量10グラムの川穀を、水500 ccで半量になるまでとろ火で煎じ、3回に分けて分服する用法が知られている[1]

食用[編集]

ハトムギ同様に、固い実の殻を割って、中の穀粒を取り出して雑穀として食べることができる[5]。食味は、豆の味に似てモチモチ感があり、米飯と一緒に混ぜて炊飯されたりされる[6]

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 稲垣栄洋監修 主婦の友社編『野に咲く花便利帳』主婦の友社、2016年11月10日、143頁。ISBN 978-4-07-418923-6
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、190頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、234頁。ISBN 978-4-09-208303-5
  • 多田多恵子『身近な植物に発見! 種子たちの知恵』日本放送出版協会、2008年5月25日、48 - 51頁。ISBN 978-4-14-040230-6
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、64頁。ISBN 4-416-49618-4