ジピリダモール

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ジピリダモール
Dipyridamole.svg
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Persantine
Drugs.com monograph
MedlinePlus a682830
胎児危険度分類
  • B
法的規制
投与方法 oral, IV
薬物動態データ
血漿タンパク結合 99%
代謝 Hepatic
半減期 Alpha (40 mins), Beta (10 Hours)
識別
CAS番号
58-32-2 チェック
ATCコード B01AC07 (WHO)
PubChem CID: 3108
IUPHAR/BPS 4807
DrugBank DB00975en:Template:drugbankcite
ChemSpider 2997 チェック
UNII 64ALC7F90C チェック
KEGG D00302 en:Template:keggcite
ChEBI CHEBI:4653en:Template:ebicite
ChEMBL CHEMBL932en:Template:ebicite
化学的データ
化学式 C24H40N8O4
分子量 504.626 g/mol
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ジピリダモール(Dipyridamole)は長期投与において血栓形成を阻害する医薬品である。また短期高用量投与時には血管拡張薬として作用する[1]。腎疾患において蛋白尿を改善させる効果もある。商品名ペルサンチン。日本では錠剤徐放性カプセル注射剤が販売されている。

効能・効果[編集]

(下記の T12.5:錠12.5mg、T25:錠25mg、T100:錠100mg、L150:徐放カプセル150mg、V10:静注10mg)[2][3][4][5][6]

ジピリダモールは閉塞性動脈硬化症および虚血性心疾患の患者の血管を拡張する[7]。また全身血圧を低下させる事なく、肺高血圧を低下させる。

in vivo で炎症性サイトカイン(MCP-1英語版MMP-9英語版)生成を阻害し、患者の高感度CRPを低下させる。生体内で平滑筋細胞の増殖を阻害し、アスピリンとの併用で血液透析に用いる人工血管開存率を若干向上させる[8]。脳微小血管内皮細胞からのt-PA放出を増加させ、内皮細胞基質(SEM)での13-ヒドロキシオクタデカジエン酸(13-HODE)を増加させ、12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸英語版(12-HETE)を減少させてSEMでの血栓形成を低減させる。

ジピリダモールは健常成人における再灌流傷害を減少させる。虚血性心筋症患者における心筋灌流および左心室機能を増強させることが示されている。脳梗塞患者における血小板のトロンビン受容体英語版ならびにPECAM-1英語版受容体数の減少をもたらす。

cAMPは、血小板凝集を阻害し、同時に細動脈平滑筋の弛緩を引き起こすが、長期治療では全身血圧の有意な低下を示さない。

メンゴウイルス英語版RNAの複製を阻害する[9]

心筋ストレステストの際に、トレッドミル等の運動負荷試験の代わりに用いることがある。

脳梗塞への使用[編集]

ジピリダモールとアスピリンとの合剤が脳梗塞の再発予防薬としてFDAに承認されている[7]。同剤の出血リスクはアスピリン単剤と同等であるとされる。消化管からのジピリダモールの吸収はpH依存的であり、プロトンポンプ阻害薬等の胃酸分泌抑制剤を併用すると吸収が阻害される[10][11]。徐放製剤は緩衝作用を受けるので、吸収は胃のpHに影響されない[12][13]

脳梗塞予防へのジピリダモール単剤使用は認可されていないが、コクランレビューでは脳虚血発作後の患者での血管イベントリスクの低下が示唆されている[14]

ジピリダモール、アスピリンクロピドグレルの3剤併用療法が試験された事があるが、出血の増加を招いた[15]

狭窄心血管について[編集]

狭窄英語版した動脈はそのままで、健康な動脈が拡張するので、冠盗血現象を引き起こし、拡張した健康な血管への血流量が増加する一方で狭窄血管への血流量は増えず、臨床的に虚血性の胸痛、心電図異常、心臓超音波検査異常が発生する。血流の不均一性(虚血の前駆状態)は、タリウム-201、テクネチウム-99m-テトロホスミン英語版、テクネチウム-99m-セスタミビ英語版等を用いたガンマカメラSPECTで検出できる。しかし、相対的な血液灌流量の差は、狭窄動脈に栄養される組織の絶対的不足を意味するものではない。

他の用途[編集]

ジピリダモールは実験室で非医療用途にも用いられる。細胞培養時のカルジオウイルス英語版増殖抑制等である。

作用機序[編集]

ジピリダモールはcAMPADPによる血小板凝集を抑制する[7])および/またはcGMP一酸化窒素(NO)やスタチンと併用すると追加効果をもたらす)を分解する酵素であるホスホジエステラーゼを阻害する。

血小板赤血球血管内皮での アデノシン再取り込みを阻害し、細胞外のアデノシン濃度を増加させる。

副作用[編集]

添付文書に記載されている重大な副作用は、狭心症状の悪化、出血傾向(眼底出血、消化管出血、脳出血等)、血小板減少、過敏症(気管支痙攣、血管浮腫等)である。

過量投与[編集]

ジピリダモール過量投与
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
救急医学
ICD-10 T46.3
ICD-9-CM 972.4
DiseasesDB 3840
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ジピリダモールの過剰投与には、血管拡張作用を逆転させる効果を持つアミノフィリン投与で対処する[16]。血管収縮薬の使用を含む臨床症状治療も推奨される。胃洗浄を考慮すべきである。ジピリダモールの蛋白結合率は高いので、ダイアライザーは有効ではないと思われる。

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ "Dipyridamole" - ドーランド医学辞典
  2. ^ ペルサンチン錠12.5mg 添付文書” (2014年12月). 2015年7月21日閲覧。
  3. ^ ペルサンチン錠25mg 添付文書” (2014年12月). 2015年7月21日閲覧。
  4. ^ ペルサンチン錠100mg 添付文書” (2014年12月). 2015年7月21日閲覧。
  5. ^ ペルサンチン-Lカプセル150mg 添付文書” (2015年1月). 2015年7月21日閲覧。
  6. ^ ペルサンチン静注10mg 添付文書” (2014年9月). 2015年7月21日閲覧。
  7. ^ a b c Brown DG, Wilkerson EC, Love WE (March 2015). “A review of traditional and novel oral anticoagulant and antiplatelet therapy for dermatologists and dermatologic surgeons”. Journal of the American Academy of Dermatology 72 (3): 524-34. doi:10.1016/j.jaad.2014.10.027. PMID 25486915. 
  8. ^ Dixon BS, Beck GJ, Vazquez MA, et al; DAC Study Group. (2009-05-21). “Effect of dipyridamole plus aspirin on hemodialysis graft patency.”. N Engl J Med. 360 (21): 2191-2201. doi:10.1056/NEJMoa0805840. PMID 19458364. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0805840 2015年7月21日閲覧。. 
  9. ^ Dipyridamole in the laboratory: Fata-Hartley, Cori L.. “Dipyridamole reversibly inhibits mengovirus RNA replication”. doi:10.1128/JVI.79.17.11062-11070.2005. 2007年2月13日閲覧。
  10. ^ Russell TL, Berardi RR, Barnett JL, O’Sullivan TL, Wagner JG, Dressman JB. (1994-01). “pH-related changes in the absorption of "dipyridamole" in the elderly.”. Pharm Res 11 (1): 136-43. doi:10.1023/A:1018918316253. PMID 7908130. http://link.springer.com/article/10.1023/A%3A1018918316253 2015年7月21日閲覧。. 
  11. ^ Derendorf H, VanderMaelen CP, Brickl R-S, MacGregor TR, Eisert W. (2000-07). “"Dipyridamole" bioavailability in subjects with reduced gastric acidity.”. J Clin Pharmacol 45 (7): 845-50. doi:10.1177/0091270005276738. PMID 15951475. 
  12. ^ http://emc.medicines.org.uk/medicine/304/SPC/Persantin+Retard+200mg/#EXCIPIENTS
  13. ^ Stockley, Ivan (2009). Stockley’s Drug Interactions. The Pharmaceutical Press. ISBN 0-85369-424-9. 
  14. ^ De Schryver ELLM, Algra A, van Gijn J. (2007). Algra, Ale. ed. “Dipyridamole for preventing stroke and other vascular events in patients with vascular disease.”. Cochrane Database of Systematic Reviews (2): CD001820. doi:10.1002/14651858.CD001820.pub3. PMID 17636684. http://www.cochrane.org/reviews/en/ab001820.html. 
  15. ^ Sprigg N, Gray LJ, England T, et al. (2008). Berger, Jeffrey S.. ed. “A randomised controlled trial of triple antiplatelet therapy (aspirin, clopidogrel and dipyridamole) in the secondary prevention of stroke: safety, tolerability and feasibility”. PLoS ONE 3 (8): e2852. doi:10.1371/journal.pone.0002852. PMC: 2481397. PMID 18682741. http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0002852. 
  16. ^ http://www.rxlist.com/cgi/generic/aggrenox_od.htm Aggrenox.”. RxList.com.. 2007年5月1日閲覧。