ケプラー90
ケプラー90 Kepler-90 |
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太陽系とケプラー90系の惑星の大きさと軌道の比較
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星座 | りゅう座 |
視等級 (V) | 13.8[1] |
分類 | 恒星 主系列星 |
位置 元期:J2000.0 |
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赤経 (RA, α) | 18h 57m 44.038s[2] |
赤緯 (Dec, δ) | +49° 18′ 18.58″[2] |
視線速度 (Rv) | 1.2 ± 0.6 Km/s[2] |
距離 | 2542.8 ± 326 光年 (780 ± 100 パーセク[2]) |
軌道要素と性質 | |
惑星の数 | 8 |
物理的性質 | |
半径 | 1.166+0.059 −0.044 R☉[3] |
表面積 | 8.277×1012 km2 |
体積 | 2.237×1018 km3 |
質量 | 1.118+0.039 −0.058 M☉[3] |
平均密度 | 0.977 ± 0.114 g/cm3[3] |
表面重力 | 4.38+0.10 −0.26 (log g)[1] |
自転速度 | 4.6 ± 2.1 km/s[2] |
スペクトル分類 | G6 - F6[2] |
表面温度 | 6,238+195 −227 K[1] |
金属量[Fe/H] | 0.04 ± 0.10[3] |
金属量 | -0.17 ± 0.21[M/H][2] |
年齢 | ~20億年 |
別名称 | |
別名称 |
KOI-351, KIC 11442793
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ケプラー90(英語: Kepler-90)とは地球からおよそ2500光年離れた、りゅう座の方向にある太陽より大きい恒星である。ケプラー宇宙望遠鏡による観測で、8個の太陽系外惑星が発見されており、太陽系に並ぶ規模であることが判明した初の惑星系である[4]。
名称と歴史[編集]
ケプラー90は、ケプラーによる観測が行われる前から、2MASS J18574403+4918185という名称を持っていた。ケプラーの観測視野内に位置していたため、Kepler input catalogに、KIC 11442793という名称として登録された。その後、惑星候補が存在する可能性が浮上すると、Kepler object of interestに、KOI-351という名称が与えられた。
惑星はNASAのケプラーミッションで発見された。ケプラーは、惑星が恒星の手前を通過する際に生じる、恒星の光度の変動を検知する「トランジット法」で、太陽系外惑星を発見する。Kepler-90という名称は、ケプラーミッションにおいて、惑星の存在が正式に確認された、90番目の恒星である事に因む。
各惑星には、恒星名の後ろに小文字のb、c、d、e、f、g、h、iが付く。bは、恒星を公転している事が確認された、最初の惑星に与えられる。それ以降は発見順に応じて、アルファベットの小文字が付いていく[5]。ケプラー90系には、8つの惑星があるため、iまでが使用される。最も最近に発見されたのはiであり、Googleの機械学習システムを使用して発見されたことが2017年12月14日にアメリカ航空宇宙局(NASA)によって発表された[4]。
特徴[編集]
太陽 | ケプラー90 |
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ケプラー90は質量と直径が共に太陽より大きく、表面温度もわずかに高い。しかし、これらのデータの詳細な値は論文によってまちまちであり、例えば2014年に発表された論文では質量は太陽の1.118倍、半径は1.166倍としている[3]が、2015年に発表された論文ではどちらも太陽の1.2倍と記されている[1]。表面温度は、6,238Kで、太陽の5,778K[6]よりも、やや高温である。年齢は約20億年とされており、これは太陽の約46億年[7]よりも若い。
見かけの視等級は14等級で、肉眼での観測は出来ない。
惑星系[編集]
名称 (恒星に近い順) |
質量 | 軌道長半径 (天文単位) |
公転周期 (日) |
軌道離心率 | 軌道傾斜角 | 半径 |
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b | — | 0.074±0.016 | 7.008151±0.000019 | — | 89.4±1.5° | 1.31±0.17 R⊕ |
c | — | 0.089±0.012 | 8.719375±0.000027 | — | 89.68±0.74° | 1.19±0.14 R⊕ |
i | — | — | 14.44912±0.00020 | — | 89.2+0.59 −1.3° |
1.32±0.21 R⊕ |
d | — | 0.32±0.05 | 59.73667±0.00038 | — | 89.71±0.29° | 2.87±0.30 R⊕ |
e | — | 0.42±0.06 | 91.93913±0.00073 | — | 89.79±0.19° | 2.66±0.29 R⊕ |
f | — | 0.48±0.09 | 124.9144±0.0019 | 0.01 | 89.77±0.31° | 2.88±0.52 R⊕ |
g | <0.8[1] MJ | 0.71±0.08 | 210.60697±0.00043 | — | 89.80±0.06° | 8.1±0.8 R⊕ |
h | <1.2[1] MJ | 1.01±0.11 | 331.60059±0.00037 | — | 89.6±1.3° | 11.3±1.0 R⊕ |
先述の通り、ケプラー90には8個の太陽系外惑星が発見されている。これらの惑星は恒星から遠いほど、半径が大きくなるという特徴がある。恒星に最も近いケプラー90bの半径は地球の1.31倍だが、一番遠いケプラー90hの半径は木星とほぼ同じである。この、恒星から遠いほど惑星の半径が大きくなる点は太陽系に似ている事からケプラー90系の構造は注目されている。2017年に発見され、今後の研究が待たれるケプラー90iを除く内側の5個は、スーパーアースかミニ・ネプチューンであると考えられている。外側の2つは巨大ガス惑星である。一番外側のケプラー90hは、恒星からの距離が、太陽から地球までの距離(1 au)とほぼ同じである。
再観測の結果、内側の6惑星は、存在を確認するための全ての条件を満たしており、一番外側の惑星も、これが本当の惑星であることを示す、通過のタイミングの変化を示した[3]。
ケプラー90はケプラー宇宙望遠鏡が発見した中では唯一、惑星を8個持つ恒星であり、既知の惑星系の中で8個以上の惑星を持つ恒星は、9個の惑星の存在が考えられるが、そのうち2個の存在がまだ確定していないHD 10180を除くと、他には太陽しか知られていない。8つの惑星は全て、ケプラー90から1au以内の距離を公転しているが、惑星系の軌道シミュレーションでは、これらの惑星の軌道は安定している[9]。ドイツのニュースウェブサイトThe Localによると、あるドイツ航空宇宙センターの天文物理学者は、ケプラー90系に関して、「今のところ、最も広範囲な惑星系を発見した」と述べている。
関連項目[編集]
出典[編集]
- ^ a b c d e f A. Santerne; C. Moutou et al. (2015年11月2日). “SOPHIE velocimetry of Kepler transit candidates XVII. The physical properties of giant exoplanets within 400 days of period”. arXiv:1511.00643v1 [astro-ph.EP]. Bibcode 2016A&A...587A..64S. doi:10.1051/0004-6361/201527329.
- ^ a b c d e f g h J. Cabrera; Sz. Csizmadia; H. Lehmann; R. Dvorak; D. Gandolfi; H. Rauer; A. Erikson; C. Dreyer et al. (2013年11月11日). “The Planetary System to KIC 11442793: A Compact Analogue to the Solar System”. arXiv:1310.6248v2 [astro-ph.EP]. Bibcode 2014ApJ...781...18C. doi:10.1088/0004-637X/781/1/18.
- ^ a b c d e f Jack J. Lissauer et al. (2014年2月25日). “Validation of Kepler's Multiple Planet Candidates. II: Refined Statistical Framework and Descriptions of Systems of Special Interest”. arXiv:1402.6352 [astro-ph.EP]. Bibcode 2014ApJ...784...44L. doi:10.1088/0004-637X/784/1/44.
- ^ a b “8惑星持つ恒星系、AIで発見 太陽系と並び最多、NASA”. AFPBB News. フランス通信社. (2017年12月15日) 2017年12月15日閲覧。
- ^ Hessman, F. V.; Dhillon, V. S.; Winget, D. E.; Schreiber, M. R.; Horne, K.; Marsh, T. R.; Guenther, E.; Schwope, A. et al. (2010年). “On the naming convention used for multiple star systems and extrasolar planets”. arXiv:1012.0707 [astro-ph.SR].
- ^ Fraser Cain (2008年9月15日). “Temperature of the Sun”. Universe Today. 2017年1月15日閲覧。
- ^ Fraser Cain (2008年9月16日). “How Old is the Sun?”. Universe Today. 2017年1月15日閲覧。
- ^ “Shallue & Vanderburg, Identifying Exoplanets with Deep Learning”. 2017年12月15日閲覧。
- ^ PLANET HUNTERS. VI. AN INDEPENDENT CHARACTERIZATION OF KOI-351 AND SEVERAL LONG PERIOD PLANET CANDIDATES FROM THE KEPLER ARCHIVAL DATA. The Astronomical Journal
外部リンク[編集]
- Kepler-90 -- Star SIMBAD
- Kepler-90 b - c - d - e - f - g - h - i NASA Exoplanet Archive
- Planet Kepler-90 b - c - d - e - f - g - h - i The Extrasolar Planet Encyclopaedia
- Kepler-90 Open Exoplanet Catalogue