キリ (囲碁)

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キリ(きり、切り)は囲碁用語の一つで、斜めの位置関係にある相手の石を、つながらせないように連絡を絶つ手のこと。「切り」と表記されることも多い。動詞では「キる」「切る」と表現される。


黒1に打つ手が「キリ」の一例である。

概要[編集]

碁においては、弱い石(相手の攻撃目標になる石)を作らないように打つのが基本である。多くの石がつながっていれば、たいていの場合強い石となり、戦いに有利に働く。このためなるべく自分の石同士はつながるように、相手の石は連絡しないように打つのが基本的な考えとなる。このためキリは囲碁において重要な基礎技術であり、「碁は断にあり」と述べる棋士もいるほどである。

例えば上図では、黒1の点に切るのが絶対の一手になる。同じ点を白にツガれると白は連絡して非常に強い石となり、黒は隅の2子と辺の1子に分断されて苦しい姿となる。

このように、キリは相手の石を弱い二団の石に分断し、戦いを挑む手である。もちろん打つ方にとっても兵力を分けて用いる手であるから、ただどこでも切ればいいというものではなく、彼我の石の強さを比べ、局面に合わせて打つべき手である。

キリのいろいろ[編集]

キリは上述のような戦いを挑む手段以外にも、様々な形で現れる。

キリチガイ[編集]

上図のように黒1にツケ、白2のハネと換わって黒3に切る手を「キリチガイ」あるいは「ツケギリ」と称する。サバキの手段として頻出する。

デギリ[編集]

黒1と出て、白2のオサエと換わって3と切る一連の手順を「デギリ」と呼ぶ。敵を強く分断して戦いを挑む手。

捨て石としてのキリ[編集]

高目定石の一形。黒1のキリを捨て石にして、黒3,5と隅を確保する。

黒は上図1と内側を切って、黒5までと運ぶこともある(黒がシチョウがよいことが条件)。白2で3の点にツイで頑張ってもよい結果にならないので、素直に切ってきた石を取っておくのがセオリー(格言:切った方を取れ)

左図で一見△の黒石は取られているように見えるが(単にaやbと打っても攻め合い負け)、右図の黒1のキリが手筋。白2と換わってから黒3と打てば、白が△の黒石を取ろうにもダメヅマリのためcに入れず(先にdに抜くよりない)、黒が攻め合い勝ちとなる。

キリコミ[編集]

このままであれば白からa,b両方のハネツギを先手で打たれる。黒1のキリを捨て石にして黒3・白4を交換すれば一方のハネツギを先手で防げる。こうした黒1のような小技のキリを「キリコミ」などと表現することがある。

キリトリ[編集]

黒1のキリから黒3と取り上げる一連の打ち方をキリトリと称する(カミトリ、噛み取りなどとも)。状況によるが、ヨセとして10目前後の大きさがある、また石の根拠にかかわる場合には、序盤であっても急がれる着点となる。

参考図書[編集]

  • 趙治勲『キリの技法(最強囲碁塾)』河出書房新社
  • 『切りちがい対策 (二子アップ中級シリーズ) 』誠文堂新光社