エクスバニア

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エクスバニア (Exvania)
ジャンル 固定画面アクション
対応機種 アーケード[AC]
PlayStation 4[PS4]
Nintendo Switch[NSW]
開発元 AC
ナムコ
PS4,NSW
ハムスター
販売元 AC
日本の旗ナムコ
PS4,NSW
世界の旗ハムスター
デザイナー 杉山嘉浩[1]
プログラマー 田中信洋[1]
音楽 荒川美恵[1]
人数 1〜4人(同時プレイ)
メディア AC
業務用基板
PS4,NSW
ダウンロード
発売日 AC
日本の旗1992年12月
PS4,NSW
世界の旗2024年4月4日
対象年齢 PS4,NSW
日本の旗IARC:7+[2][3]
アメリカ合衆国の旗ESRBE10+(10歳以上)[4][5]
欧州連合の旗PEGI7[6]
デバイス AC
4方向レバー
2ボタン
システム基板 NA-1
CPU AC
MC68000 (@ 12.52825 MHz)[7]
M37710 (@ 12.52825 MHz)[7]
サウンド AC
C140 (@ 42.667 KHz)[7]
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エクスバニア』(: Exvania)は、1992年12月にナムコから発売された業務用ビデオゲームである[8][9][10]

ゲーム内容[編集]

概要[編集]

『エクスバニア』は4人同時プレイが可能な対戦型の固定画面アクションゲームである[11][12]。操作には4方向レバーと2ボタン(武器攻撃、オーブの設置)を使用する[11][13]

ゲームの舞台は中世ヨーロッパ、魔女エリニュスに攫われたエレクトラ姫を救出するためにプレイヤー同士が生き残りをかけて戦うというストーリーの作品である[8][12][14]

プレイヤーは迷路状のマップの中でオーブを操って、他のプレイヤーを倒して生き残ることが目的となる[14][15]。プレイヤーの1人がラウンド内で3回勝利すると城を獲得して次のラウンドに進み、全8ラウンドをプレイし終えて最終ステージに囚われている姫を救出するとゲームクリアとなる[11][12][14][15]

本作はハドソンの『ボンバーマン』シリーズに類似したシステムを持っており、オーブは『ボンバーマン』の爆弾に相当する物である[16]。プレイヤーはステージに設置された宝箱を武器で破壊して進路を開き、オーブを迷路上に設置して敵のプレイヤーを爆発に巻き込むことが求められる[16][17]。壊された宝箱の中からはアイテムが出現し、獲得すると自分を強化できる[13][14]

また、プレイヤーは武器を使って敵のプレイヤーを押し出して妨害することができる[13]。設置されたオーブを武器で攻撃すると叩く回数に応じて威力が強化され、数回叩くと任意のタイミングで爆発させることもできる[13][18]

本作は参加人数が4人のときは完全な対人対戦となるが、参加人数が1人から3人のときは不足している人数だけ、コンピュータが参加する[11]。また、ゲーム開始時の参加人数に応じて残機の数が変化する仕様が盛り込まれており[注 1]、多人数プレイを推奨する仕様となっている[11]

アイテムの種類と効果[13][20][編集]

  • ブーツ - プレイヤーの移動速度が上昇する。
  • スペルブック - オーブの火力が上昇する。
  • プラス1 - オーブを同時に設置できる数が1上昇する。
  • ブーメラン - 武器がブーメランとなり、武器攻撃の届く範囲が広がる。
  • 地震 - 画面内のオーブおよび宝箱にダメージを1与える。
  • 劇薬 - 取得するとプレイヤーに様々な異常を引き起こす。
  • 通常の武器 - ブーメランが元の武器に戻る。
  • バリア - 一定時間オーブの爆発から守られる。
  • スペシャルフラッグ - 残機が1増加する。

移植版[編集]

ハムスターより『アーケードアーカイブス』の1作品として、PlayStation 4版とNintendo Switch版が2024年4月4日に配信されている[14][17][21][22]。アーケード版の移植であり、家庭用初移植となっている[16]

開発経緯[編集]

企画の杉山嘉浩と試作版のプログラムを担当した大森靖によると、1991年当時は多人数プレイが可能なゲームが家庭用や業務用問わず流行しており、ナムコ社内においてもマルチプレイヤーゲームを開発しようという機運が高まっていた[23]。そこでアタリ社の『ガントレット』の筐体を利用した、4人対戦できる面白いゲームを自分たちで作れないかというのが開発の契機となったという[23]

当初は『ディグダグブラザーズ』という名称の同社の『ディグダグ』シリーズの世界観を持った対戦ゲームとして企画され、システム基板SYSTEM II」を対象に開発されていた[23]。そのゲーム内容は格子状のフィールドでディグダグが爆弾とポンプを使い、他のプレイヤーおよびディグダグのキャラクターである「プーカァ」や「ファイガ」を倒していくというものであった[23][24]

大森によると『ディグダグブラザーズ』には、完成版の『エクスバニア』に含まれていない複雑な仕様がかなり盛り込まれていたと述べている[23]。その中には『ディグダグII』の島を削っていく仕様[注 2]や、マップ上のモンスターが設置された爆弾を操作するギミック[注 3]、プレイヤーが爆弾をポンプで膨らませて蹴飛ばす技などが含まれている[23][24]。結果として、完成版と比べるとかなり難易度の高いゲームバランスに仕上がっており、「複雑でわかりにくい」「ルールを把握するのが難しい」などの指摘も開発内部からは上がっていた[23][24][注 4]

その後、システム基板が「NA-1」へと変更になり、杉山によるとそのNA-1基板をこれから世界展開していくにあたって『ディグダグ』のキャラクターでは日本国外の人気は得られないという指摘があったという[25]。また、世界観が『ディグダグ』のままでは舞台設定となるものがなく、統一性に欠けるという指摘も加えられていた[23]。そのため、『ディグダグブラザーズ』の持つ基本ルールはそのままに、よりシンプルなルールに変更した上で、日本国外の市場を意識したキャラクターや舞台設定に作り直すことが決まった[23][25]。杉山はその対応に苦慮し、どういう経緯でオーブの設定が生まれたのかすら記憶にないと述べている[25]

また、『ディグダグブラザーズ』のプログラムを担当していた大森は『スティールガンナー2』の開発を担当するために、試作段階で本作の開発から離脱することとなった[23][25]。そのため、主にハードウェア設計を担当する畑違いの部署に所属していた田中信洋が本作のプログラムを引き継いだ[25]

1Pプレイおよび多人数プレイ時の不足人数の穴埋めを担当するCPUキャラクターの思考部分は、社内コンペによってナムコ社内のプログラマーに募集をかけて選定されることとなった[25]。CPUキャラクターの思考部分を担当した中村勝男はコンペが実施された理由を大きく二つ挙げている[25]。その一つは 複数の人間が担当することでCPUキャラクターの挙動にバリエーションを持たせる目的、もう一つは本作の開発スケジュールが切迫していたためにメインプログラマーの田中に掛かる負担を減らす目的があったと述べている[25]。最終的には募集されたCPUキャラクター同士を戦わせて、その中から勝ち上がったものを採用し、そこから初心者でも瞬殺されないようにバランス調整を加えてゲーム内に実装されたという[25]

本作の開発は試作段階の『ディグダグブラザーズ』の期間を含めて1991年1月ごろから1992年9月ごろまで行われた[26]。その開発期間は約1年半以上と、1990年代当時の業務用ゲームの開発としては比較的長期間であったとされる[26]。また、本作は1992年8月に開催された第30回AMショー[27]に『エクスカリバー』という仮称がつけられた上で参考出展されている[11][15][28]

本作のロケテストの結果は杉山曰く「最悪」というものであり、社内テストでも酷評が多数存在したと述べている[29]。ロケテストでは日本国内ではキャラクターが受け入れられず、日本国外ではルールが複雑すぎるという理由で評価が低く、結果的にはゲームを愛好するマニアのみが遊んでいる状況となっていた[29]。しかし、本作は一度作り直しを経ていることから再度仕切り直すことも現実的に不可能であり、応急処置を加えることによって完成に至ったという[29]

なお杉山は、試作段階の『ディグダグブラザーズ』に対する思い入れが強く、キャラクターが『ディグダグ』の世界観のままであれば、せめてまだ日本市場においては良い反応が得られたのではないかとの感想を残している[29]。また、『エクスバニア』が好きかどうかという質問に対しても『ディグダグブラザーズ』が好きと回答している[30]

スタッフ[編集]

『エクスバニア』ゲーム内スタッフクレジット[編集]

  • 企画:デンジャラスお杉、CAPTAIN GUN
  • プログラム:バブルス君、OMORI、デビル中村、AIRTIME 西牧、SAM、TENTEN、KRD
  • サウンド:すとろんぐ よしえ
  • ビジュアル:KAN、マエモラリー、OTOMARU、ミタちゃん、えっちだいお、まっはっほ!

第471回 『アーケードアーカイバー』内で紹介された開発スタッフ[1][25][編集]

『ディグダグブラザーズ』(試作版)
  • 企画、ビジュアル:杉山嘉浩
  • プログラム:大森靖
『エクスバニア』
  • 企画:杉山嘉浩
  • プログラム(メイン):田中信洋
  • プログラム(CPUの思考担当):中村勝男、黒田洋介、花井直人、西牧
  • ビジュアル:神戸、光永、実谷、手島など
  • サウンド:荒川美恵

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 残機数は1人プレイ時は3機、2人プレイ時は4機、3人から4人プレイ時は5機となる[13][19]
  2. ^ 『ディグダグブラザーズ』の企画書には説明用のゲーム画面の写真と共に、制限時間によってプレイフィールドが削られていく仕様が記載されている[24]
  3. ^ 大森によると、ファイガが設置された爆弾を飲み込んで移動したり、火を吹いて爆発させるギミックが実装されていたという[23][24]
  4. ^ その理由として大森は、まず自分たちが楽しめるものを作るという動機が開発の主軸となっていたため、開発過程の知識を前提とした要素をどんどん投入した結果、初心者には敷居の高いルールに仕上がっていったと述べている[23]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 中村勝男、大森靖、花井直人、うでつ和仁、濱田倫など (2024年4月4日). 『エクスバニア』開発者への質問(3)『エクスバニア』の開発スタッフ(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 0:47:39〜0:50:02. 2024年4月7日閲覧
  2. ^ "アーケードアーカイブス|株式会社ハムスター(『アーケードアーカイブス エクスバニア』 PlayStation 4版 公式サイト)". ハムスター. 2024年4月4日. 2024年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  3. ^ "アーケードアーカイブス|株式会社ハムスター(『アーケードアーカイブス エクスバニア』 Nintendo Switch版 公式サイト)". ハムスター. 2024年4月4日. 2024年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  4. ^ "Arcade Archives|HAMSTER Corporation(『Arcade Archives Exvania』 PlayStation 4版 北米向け公式サイト)". ハムスター. 4 April 2024. 2024年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  5. ^ "Arcade Archives|HAMSTER Corporation(『Arcade Archives Exvania』 Nintendo Switch版 北米向け公式サイト)". ハムスター. 4 April 2024. 2024年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  6. ^ "Arcade Archives|HAMSTER Corporation(『Arcade Archives Exvania』 Playstation 4版 欧州向け公式サイト)". ハムスター. 7 April 2024. 2024年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  7. ^ a b c Exvania, Arcade Video game by NAMCO, Ltd. (1992)” (英語). Arcade History. 2016年4月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧。
  8. ^ a b 「ナムコ、相次ぎ発売、業務用ビデオゲーム──キャラクター使用や多人数型。」『日経産業新聞』、1992年11月24日、13面。
  9. ^ 「<12月発売商品>(新製品インフォメーション)」『アミューズメント産業』1993年1月号、アミューズメント産業出版、1992年12月26日、236頁、doi:10.11501/2874230 
  10. ^ "エクスバニア(メディア芸術データベース)". メディア芸術データベース. 国立アートリサーチセンター. 2024年4月7日閲覧
  11. ^ a b c d e f 「ナムコ、新製品展示会開催 プレゼンタイムで新機種アピール 目玉は「スウィートファクトリー」」『アミューズメント産業』1992年11月号、アミューズメント産業出版、1992年10月26日、89-91頁、doi:10.11501/2874228 
  12. ^ a b c 「(株)ナムコ エクスバニア(新製品インフォメーション)」『アミューズメント産業』1992年12月号、アミューズメント産業出版、1992年11月26日、210頁、doi:10.11501/2874229 
  13. ^ a b c d e f 『エクスバニア』インストラクションカード、ナムコ、1992年。
  14. ^ a b c d e "【アケアカ】『エクスバニア』Switch/PS4向けに4月4日配信。"オーブ"の爆発でライバルを倒し、エレクトラ姫を救うアクションゲーム". ファミ通.com. KADOKAWA Game Linkage Inc. 2024年4月3日. 2024年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  15. ^ a b c 「エクスカリバー(仮称)<(株)ナムコ>(出展各社の主力製品 第30回アミューズメントショー)」『アミューズメント産業』1992年10月号、アミューズメント産業出版、1992年9月26日、164頁、doi:10.11501/2874227 
  16. ^ a b c Jack Yarwood (2024年4月3日). "Namco's 1992 Arcade Game 'Exvania' Is About To Get Its First Ever Console Release". Time Extension (英語). Hookshot Media. 2024年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  17. ^ a b 或鷹 (2024年4月3日). "「アーケードアーカイブス エクスバニア」,4月4日に配信。1992年にナムコから発売された,爆弾を使って戦うアクションゲームだ". 4Gamer.net. Aetas, Inc. 2024年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  18. ^ ハム十三郎、濱田倫 (2024年4月4日). オーブを赤くさせよう(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 3:13:00〜3:13:45. 2024年4月7日閲覧
  19. ^ ハム十三郎、濱田倫 (2024年4月4日). マルチプレイが得(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 3:12:05〜3:13:00. 2024年4月7日閲覧
  20. ^ 「アイテムについて」『『アーケードアーカイブス エクスバニア』内マニュアル』、ハムスター、2024年4月4日、5-6頁。 
  21. ^ 緑里孝行 (2024年4月3日). "「アーケードアーカイブス エクスバニア」4月4日より配信開始! 4月は4週連続でナムコタイトルが登場". GAME Watch. インプレス. 2024年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  22. ^ Gamer編集部 (2024年4月3日). "「アーケードアーカイブス エクスバニア」が4月4日に配信!オーブを爆発させてライバルを倒すアクションゲーム". Gamer. ixll. 2024年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月7日閲覧
  23. ^ a b c d e f g h i j k l 中村勝男、大森靖、花井直人、うでつ和仁、濱田倫など (2024年4月4日). 『エクスバニア』開発者への質問(4)『エクスバニア』の開発経緯(前半)(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 0:50:02〜1:04:17. 2024年4月7日閲覧
  24. ^ a b c d e 中村勝男、大森靖、花井直人、うでつ和仁、濱田倫など (2024年4月5日). 『エクスバニア』開発者への質問(4)『エクスバニア』の開発経緯(後半)(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 1:10:00〜1:12:10. 2024年4月7日閲覧
  25. ^ a b c d e f g h i j 中村勝男、大森靖、花井直人、うでつ和仁、濱田倫など (2024年4月4日). 『エクスバニア』開発者への質問(6)『エクスバニア』の工夫箇所(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 1:14:01〜1:28:31. 2024年4月7日閲覧
  26. ^ a b 中村勝男、大森靖、花井直人、うでつ和仁、濱田倫など (2024年4月4日). 『エクスバニア』開発者への質問(5)『エクスバニア』の開発期間(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 1:12:10〜1:14:01. 2024年4月7日閲覧
  27. ^ 展示規模拡大で充実 幅広い分野カバーしたJAMMAショー」『ゲームマシン』第434号(アミューズメント通信社)、1992年9月15日、1面。オリジナルの2020年1月31日時点におけるアーカイブ。
  28. ^ ナムコ(アミューズメントマシンショー各社出展内容)」『ゲームマシン』第435号(アミューズメント通信社)、1992年10月1日、23-24面。オリジナルの2020年1月31日時点におけるアーカイブ。
  29. ^ a b c d 中村勝男、大森靖、花井直人、うでつ和仁、濱田倫など (2024年4月4日). 『エクスバニア』開発者への質問(8)ロケテストや社内発表(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 1:30:46〜1:35:45. 2024年4月7日閲覧
  30. ^ 中村勝男、大森靖、花井直人、うでつ和仁、濱田倫など (2024年4月4日). 『エクスバニア』開発者への質問(10)「エクスバニア」好きですか?(第471回 アーケードアーカイバー エクスバニアスペシャル!). ハムスター. 該当時間: 1:40:00〜1:46:30. 2024年4月7日閲覧

外部リンク[編集]