アメリカ時間

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2007年10月以降のアメリカ合衆国の時間帯

アメリカ時間(アメリカじかん)ではアメリカ合衆国で使用されている標準時について記す。アメリカ合衆国の時間は法律により海外領土を合わせると9つのタイムゾーンに分けられており、大部分の地域では3月から11月にかけて夏時間が適用される。タイムゾーンの境界と夏時間の適用は、アメリカ合衆国運輸省によって規定されている。高精密な公式標準時はアメリカ合衆国商務省配下のアメリカ国立標準技術研究所(NIST)と、アメリカ海軍天文台(USNO)の2つの連邦機関によって提供されている。これらの標準時は他の国際的な計時機関の時刻と同様に、互いに同期している。

タイムゾーンと夏時間の規定、そして提供される標準時の組み合わせによって、アメリカ合衆国内の任意の場所の法定常用時が決定される。

歴史[編集]

1913年のアメリカ合衆国のタイムゾーンを示した地図。現在の境界とは異なっている。

アメリカ合衆国大陸部に4つの標準時が導入される以前、多くの都市や町では太陽が正中する正午に時計を合わせ、観測日の均時差を補正して現地の平均太陽時としていた。場所により正午の時間はそれぞれ異なっていたものの、19世紀以前は移動に時間がかかり、また電信の発達前には遠距離の即時通信も出来なかったため、離れた場所との時差はほとんど気にされることはなかった。

鉄道や通信が発達するにつれて、それぞれの場所の太陽時を使用することは不便になっていった[1]。19世紀後半、アメリカの鉄道会社はさまざまなタイムゾーンを整備していたが、駅ごとに時間が違うため列車の時刻調整が難しく乗客も混乱していた。アメリカ議会図書館によれば、時に1日に何百マイルも移動する列車の乗客にとって、時間の計算は深刻な問題となった。また列車の運転手は、出発時間を知るために自分の時計の再計算が必要であった。アメリカ合衆国では都市ごとに異なる時間を使用していたため、太陽時の数は300以上にものぼった。従ってタイムゾーンは、複雑な地理的関係を緩和しつつ、地方時間を太陽平均時と近似させるための妥協策であった。鉄道経営者は100の鉄道時間帯を設定して問題に対処しようとしたら、これは問題の部分的な解決にすぎなかった[1]

アメリカ国立気象局クリーブランド・アッベ英語版気象官署に4つの標準時間帯を導入し、そのアイデアを鉄道会社に提案した[2]。新設された路線の運営者は、出発と到着のスケジュールを統一するための新たな案を必要としていた。アメリカ合衆国大陸部の4つの標準時は1883年11月18日正午、イリノイ州シカゴから電信により各都市に報時信号が送信されたことにより導入された[3][4]

1884年10月、ワシントンD.C.で開催された国際子午線会議では、グリニッジ天文台子午儀の中心を通過する子午線を経度および時刻計算の基準となる子午線とする案が採択された。この会議でグリニッジ子午線本初子午線とし、グリニッジ標準時(GMT)が世界の時刻の基準として確立された。アメリカ合衆国の時間帯制度はこれを発展させたもので、すべてのゾーンが本初子午線上のGMTを参照していた[1]

アメリカ合衆国各地域の時間帯[編集]

アメリカ合衆国とその海外領土の標準時間帯は現在、合衆国法典第15編第260条 15 U.S.C. § 260により連邦レベルで定義されている。また連邦法では、夏時間を実施する場合の移行日時も定められている。どの地域がどの時間帯を採用するか、また夏時間を実施するかどうかは、州と連携した運輸長官が最終的な決定権を持つ[5]。2007年8月9日より、標準時間帯は協定世界時(UTC)からの1時間ごとのオフセットで定義されている[6] 。それ以前は、グリニッジから西に経度15度ずつ離れたいくつかの子午線の平均太陽時を基準としていた。

アメリカ合衆国本土と海外領土を含めると、アメリカ法[7]で定められた以下の9つの標準時間帯が使用されている。

時間帯 標準時 夏時間 地域
大西洋標準時(AST) UTC−04:00 (なし) アメリカ領ヴァージン諸島プエルトリコ
東部標準時(EST) UTC−05:00 UTC−04:00 ウェストバージニア州オハイオ州コネチカット州サウスカロライナ州ジョージア州デラウェア州ニュージャージー州ニューハンプシャー州ニューヨーク州ノースカロライナ州バージニア州バーモント州ペンシルベニア州マサチューセッツ州メイン州メリーランド州ロードアイランド州ワシントンD.C.
州の一部が属する:インディアナ州ケンタッキー州テネシー州フロリダ州ミシガン州
夏時間なし、合衆国法典で未定義:ナヴァッサ島バホヌエボ礁セラニャ礁
中部標準時(CST) UTC−06:00 UTC−05:00 アーカンソー州アイオワ州アラバマ州イリノイ州ウィスコンシン州オクラホマ州ミシシッピ州ミズーリ州ミネソタ州ルイジアナ州
州の一部が属する:インディアナ州、カンザス州、ケンタッキー州、サウスダコタ州テキサス州、テネシー州、ネブラスカ州ノースダコタ州、フロリダ州、ミシガン州
山岳部標準時(MST) UTC−07:00 UTC−06:00 アリゾナ州ナバホ・ネイションを除いて夏時間なし)、コロラド州ニューメキシコ州モンタナ州ユタ州ワイオミング州
州の一部が属する:アイダホ州オレゴン州、カンザス州、サウスダコタ州、テキサス州、ネブラスカ州、ノースダコタ州
太平洋標準時(PST) UTC−08:00 UTC−07:00 カリフォルニア州ネバダ州ワシントン州
州の一部が属する:アイダホ州、オレゴン州
アラスカ標準時(AKST) UTC−09:00 UTC−08:00 州の一部が属する:アラスカ州
ハワイ・アリューシャン標準時(HAST) UTC−10:00 UTC−09:00 ハワイ州(夏時間なし)
州の一部が属する:アラスカ州
夏時間なし、合衆国法典で未定義:ジョンストン島
サモア標準時(SST) UTC−11:00 (なし) アメリカ領サモア
合衆国法典で未定義:ジャーヴィス島ミッドウェー島パルミラ環礁キングマン・リーフ
UTC−12:00 (なし) 合衆国法典で未定義:ベーカー島ハウランド島
UTC+12:00 (なし) 合衆国法典で未定義:ウェーク島
チャモロ標準時(ChST) UTC+10:00 (なし) グアム北マリアナ諸島

アメリカ合衆国本土で使われる時間帯[編集]

アメリカ合衆国本土で使用されている時間帯は以下の4つである。使用地域はおおよそのもの。

アメリカ合衆国本土以外の州で使われる時間帯[編集]

海外領土で使われる時間帯[編集]

合衆国領有小離島[編集]

合衆国領有小離島の一部は合衆国法典が定める時間帯の範囲外、航海用の時間が定められた海域に位置している。ベーカー島ハウランド島ではUTC-12(Y時)、ウェーク島ではUTC+12(M時)が使用されている。これらの地域は国際日付変更線をはさんで互いに反対側に位置するため、丸1日違いの同時刻となる。その他の小離島では、ジャーヴィス島ミッドウェー島パルミラ環礁キングマン・リーフではUTC-11(X時)、ジョンストン島ではUTC-10(W時)、ナヴァッサ島バホヌエボ礁セラニャ礁ではUTC-5(R時)が使用されている。

南極観測基地[編集]

南極では、アメリカ合衆国の研究施設であるパーマー基地英語版ではUTC-3(P時)、マクマード基地アムンゼン・スコット基地では、ニュージーランドに補給基地がある関係でニュージーランド時間であるUTC+12(M時)を使用している。

時間帯の境界[編集]

それぞれ北から南の方向で記述している。

東部時間・中部時間[編集]

ウェイン郡 (ケンタッキー州)にある、東部時間の境界を示す標識
インディアナ時間:赤い部分が中部時間

中部時間・山岳部時間[編集]

山岳部時間・太平洋時間[編集]

夏時間[編集]

アメリカ合衆国の夏時間は3月第2日曜日に開始し、11月第1日曜日に終了する。開始日は午前2時に1時間進み、終了日は午前2時に1時間戻る。

開始 終了
2021 3月14日 11月7日
2022 3月13日 11月6日
2023 3月12日 11月5日
2024 3月10日 11月3日
2025 3月9日 11月2日
2026 3月8日 11月1日
2027 3月14日 11月7日
2028 3月12日 11月5日
2029 3月11日 11月4日

1966年に制定された統一時間法を受けて、各州はその全域に2つの規則のいずれかを公式に適用することを選択した。

  • ほとんどの州は、夏時間を使用している夏季の期間以外は、州の属する時間帯(あるいは州が2つの時間帯に分かれている場合はそれぞれの時間帯)の標準時を使用している。当初は夏時間の期間は4月最終日曜日から10月最終日曜日までであったが、1986年2006年の2回の改正により、現在は3月第2日曜日から11月第1日曜日までの適用となっている。
  • アリゾナ州ハワイ州では通年で標準時を使用している。ただし、ナバホ・ネイションではアリゾナ州にまたがる部分も含めた全域で夏時間を実施している。ナバホ・ネイションに囲まれ、全域がアリゾナ州内に位置するホピ居留地英語版は夏時間を採用していない
  • 2005年インディアナ州は2006年4月2日に施行される法案を可決し、州全体で夏時間を採用した(インディアナ時間を参照)。それ以前は、以下の例外を除き、公式には通年で標準時を使用していた。
    • 中部時間帯にあたる地域では夏時間が採用されていた。
    • シンシナティルイビルに近いいくつかの郡では、東部時間帯であるにもかかわらず非公式で夏時間が使用されていた。

2005年のエネルギー政策法により、2007年から夏時間を適用する期間がおよそひと月延長された。

過去の夏時間の期間は以下の通り。

開始 終了
2006 4月2日 10月29日
2007 3月11日 11月4日
2008 3月9日 11月2日
2009 3月8日 11月1日
2010 3月14日 11月日
2011 3月13日 11月6日
2012 3月11日 11月4日
2013 3月10日 11月3日
2014 3月9日 11月2日
2015 3月8日 11月1日
2016 3月13日 11月6日
2017 3月12日 11月5日
2018 3月11日 11月4日
2019 3月10日 11月3日
2020 3月8日 11月1日

IANA time zone database[編集]

IANA time zone databasezone.tab英語版には、アメリカ合衆国の標準時として以下の29の時間帯が含まれている。

国コード 座標 TZ 注釈 協定世界時との差 夏時間 備考
US +515248−1763929 America/Adak アリューシャン列島 −10:00 −09:00
US +611305−1495401 America/Anchorage アラスカ(ほとんどの地域) −09:00 −08:00
US +433649−1161209 America/Boise 山岳部 - ID(南部)、OR(東部) −07:00 −06:00
US +415100−0873900 America/Chicago 中部(ほとんどの地域) −06:00 −05:00
US +394421−1045903 America/Denver 山岳部(ほとんどの地域) −07:00 −06:00
US +421953−0830245 America/Detroit 東部 - MI(ほとんどの地域) −05:00 −04:00
US +394606−0860929 America/Indiana/Indianapolis 東部 - IN(ほとんどの地域) −05:00 −04:00
US +411745−0863730 America/Indiana/Knox 中部 - IN(スターク −06:00 −05:00
US +382232−0862041 America/Indiana/Marengo 東部 - IN(クロウフォード −05:00 −04:00
US +382931−0871643 America/Indiana/Petersburg 東部 - IN(パイク −05:00 −04:00
US +375711−0864541 America/Indiana/Tell_City 中部 - IN(ペリー −06:00 −05:00
US +384452−0850402 America/Indiana/Vevay 東部 - IN(スウィッツァランド −05:00 −04:00
US +384038−0873143 America/Indiana/Vincennes 東部 - IN(デイビーズデュボイスノックスマーティン −05:00 −04:00
US +410305−0863611 America/Indiana/Winamac 東部 - IN(プラスキ −05:00 −04:00
US +581807−1342511 America/Juneau アラスカ - ジュノー地域 −09:00 −08:00
US +381515−0854534 America/Kentucky/Louisville 東部 - KYルイビル地域) −05:00 −04:00
US +364947−0845057 America/Kentucky/Monticello 東部 - KY(ウェイン −05:00 −04:00
US +340308−1181434 America/Los_Angeles 太平洋 −08:00 −07:00
US +450628−0873651 America/Menominee 中部 - MI(ウィスコンシン州境) −06:00 −05:00
US +550737−1313435 America/Metlakatla アラスカ - アネット島 −09:00 −08:00
US +404251−0740023 America/New_York 東部(ほとんどの地域) −05:00 −04:00
US +643004−1652423 America/Nome アラスカ(西部) −09:00 −08:00
US +471551−1014640 America/North_Dakota/Beulah 中部 - NDマーサー −06:00 −05:00
US +470659−1011757 America/North_Dakota/Center 中部 - ND(オリバー −06:00 −05:00
US +465042−1012439 America/North_Dakota/New_Salem 中部 - ND(モートン農村部) −06:00 −05:00
US +332654−1120424 America/Phoenix 山岳部標準時 - アリゾナナバホを除く) −07:00 −07:00
US +571035−1351807 America/Sitka アラスカ - シトカ地域 −09:00 −08:00
US +593249−1394338 America/Yakutat アラスカ - ヤクタト −09:00 −08:00
US +211825−1575130 Pacific/Honolulu ハワイ −10:00 −10:00

また、海外領土の標準時としては以下のエントリーがある。

国コード 座標 TZ 注釈 協定世界時との差 夏時間 備考
AS −1416−17042 Pacific/Pago_Pago サモア −11:00 −11:00
GU +1328+14445 Pacific/Guam +10:00 +10:00
MP +1512+14545 Pacific/Saipan +10:00 +10:00 Pacific/Guamへのリンク
PR +182806−0660622 America/Puerto_Rico −04:00 −04:00
UM +2813−17722 Pacific/Midway ミッドウェー島 −11:00 −11:00 Pacific/Pago_Pagoへのリンク
UM +1917+16637 Pacific/Wake ウェーク島 +12:00 +12:00
VI +1821−06456 America/St_Thomas −04:00 −04:00 America/Port_of_Spain(トリニダード・トバゴ時間)へのリンク

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c Why Do We Have Time Zones?
  2. ^ Debus, Allen G. (1968). World Who's Who in Science: A Biographical Dictionary of Notable Scientists from Antiquity to the Present (1st ed.). Chicago, IL: A. N. Marquis Company. p. 2. ISBN 0-8379-1001-3. https://archive.org/details/worldwhoswhoinsc0000unse/page/2 
  3. ^ Greenwich Mean Time (GMT)—time, facts, history.” (英語). greenwichmeantime.com. 2019年4月18日閲覧。
  4. ^ The Central Standard Building” (英語). Open House Chicago. 2019年11月9日閲覧。
  5. ^ 15 U.S. Code Subchapter IX—STANDARD TIME
  6. ^ Public Law 110–69—America COMPETES Act (August 9, 2007). Sec. 3013)
  7. ^ Standard Time Zone Boundaries 49CFR71

外部リンク[編集]